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    かけはし2020年2月10日号

レイシズム犯罪を根絶しよう


1・31 2020人権のつどい

包括的な人種差別撤廃法制度を

〜ヘイトスピーチを中心に


 一月三一日午後六時半から、東京・江東区亀戸文化センターホールで、「2020人権のつどい 包括的な人種差別撤廃法制度の制定にむけて〜ヘイトスピーチを中心に」がつどい実行委主催で行われた。
 二〇一六年に差別を解消するために「障害者差別解消法」、「部落差別解消推進法」、「ヘイトスピーチ解消法」の人権三法が施行された。これらの法律が制定試行された背景は、今もなお、様々な差別が現実に発生しているからだ。しかし、これら人権三法は、いずれも罰則規定のない個別理念法であることから、一定の抑止力とはなりうるものの被害者の救済という点では限界性を持っている。長年この問題に取り組んできた師岡康子弁護士(外国人人権法連絡会)が講演を行った。(M)

師岡康子弁護士の講演から


 川崎市の多文化交流施設「市ふれあい館」に「謹賀新年 在日韓国朝鮮人をこの世から抹殺しよう。生き残りがいたら、残酷に殺して行こう」と書かれた年賀状が届いた。殺害を宣言し、在日コリアン市民を恐怖に陥れるという許されざるヘイトクライム(差別に基づく犯罪)が起きた。おぞましい文面が示すのは同じ人間とみなさず、共に生きる存在と認めない迫害の意思だ。
 過去の例から、昨年一二月の川崎市の差別根絶条例の制定がきっかけとなったことは想像に難くない。ただちに抗議の署名運動が呼びかけられ、三万筆が集まった。市長も犯罪行為、必要な措置をとると表明した。その後一月二七日、市の職場に「爆破の犯罪行為を行う」と脅迫が続いている。せめぎあいであり、逃げることはできない。

1.ヘイトスピーチと人種差別

 ヘイトスピーチの本質は歴史的、構造的に差別されてきた人種、民族、社会的出身(世系)、国籍、性別、性的指向、障がいなどの属性に基づくマイノリティ(社会的少数者)集団・個人に対する、属性を理由とする、言動による差別、とりわけ差別の煽動。
植民地支配の時代と共通する根深い差別構造が継続している。マイノリティにとって全生活にわたって差別されている中の一部であり、差別全体と取り組む必要性がある。特殊の集団によるデモの問題に切り縮められない。
一九二三年の関東大震災での虐殺事件、拉致問題以後起きた朝鮮学校生への襲撃事件、政府の朝鮮学校生徒への授業料無償化からの排除、二〇一一年東日本大震災時の、中国人窃盗団というデマを信じて自警団を組織した事件、最近の韓国バッシングでの韓国学園生徒への暴力行為など。危険な状態になっていて、決して放置できない。ヘイトスピーチが物理的暴力に結びつき、戦争にまでつながる可能性さえある。
外国人住民調査結果(2016年)によると、
入居を断られた 四割 就職差別 四人に一人 直接侮辱された 三割。
身構えて生活しなければならない。ヘイトデモに合わないようにする。被害に先が見えない。「出ていけ。皆殺しにする」の暴言は、結局日本国籍を取るか通称を使うかと強制させられる。人権侵害が起きている。

2.国際社会におけるヘイトスピーチと人種差別

 世界共通の人種差別と排外主義との闘いの問題。日本も一九九五年に人種差別撤廃条約に加盟しており国際法上、人種差別を「禁止し、終了する義務」がある。
国際人権法の求める九つの最低限の基準
ア)法制度設計の前提となる差別の被害者グループとの認識及び実態調査
イ)国の行ってきた差別を生じさせ又は永続化させる法制度の洗い直し
ウ)平等な人権を保障する法制度
エ)人種差別禁止法
オ)ヘイトクライム及びヘイトスピーチの処罰
カ)人種差別撤廃教育
キ)被害者の保護と救済
ク)国内人権機関
ケ)個人通報制度
日本は致命的に取り組みが遅れている。人種差別撤廃政策も、担当省庁もない。
日本政府の基本姿勢。@新法を作るほどの差別もスピーチも認識していないA現行法で対処できるB差別は啓発でなくすべき。
現行法制度の欠陥。民事裁判提訴は可能だが、被害者に主張・立証責任があり、差別と認められることは容易ではない。極めて深刻な二次被害を伴い、効果も限定的。不特定多数の集団に対する差別的表現を規制する規定、救済手続きがない。

3.ヘイトスピーチ解消法の意義

 理念法とはいえ、ヘイト側を「表現の自由」として守ってきた国が、それを差別として認め、重大な害悪を認め、許さないとの反差別の立場に立ったことは反差別法整備の出発点となる。
両院附帯決議、参議院法務委員会決議により、人種差別撤廃条約の義務の履行の一部と明確化したのであり、人種差別撤廃条約及び人種差別撤廃委員会の勧告などを解釈の指針とすべき。地方公共団体においても取り組む責務、義務がある。
しかし、人種差別撤廃基本法ではない。その結果、対象が差別的言動のみ、在日外国人のみ、基本方針策定義務、国会報告義務、実態調査義務、施策を検討する専門機関の設置も財政措置もない。実効性が弱い。
解消法設立後の現状。ヘイトデモの回数は半減、ただし東京集中。ヘイト街宣は微増。二〇一八年のヘイトデモ・街宣数合計は三〇〇。嫌韓・嫌中流の日常化、ネットの書き込み、選挙活動に名を借りたヘイト街宣、地方議会への進出。日本第一党(在特会元代表桜井誠が党首)―都知事選、衆院選挙にも。NHKから国民を守る会、日本国民党(維新政党新風東京都本部、代表鈴木信行・葛飾区議)。
裁判所でヘイトデモ禁止仮処分の決定や損害賠償を認める判決が出ている。警察は二〇一六年六月三日通達後、デモ届け出時点でヘイトスピーチをしないよう注意。一部の警察ではデモ中、解消法の条文をアナウンスしたり、カウンターへの敵視一辺倒の態度が変化。カウンターの逮捕者数は激減。
解消法実行化の地方レベルの現段階。@公共施設の利用をガイドラインを作り制限、川崎や京都。条例制定についての行政・議会の動き。大阪市、香川県観音寺市(差別禁止条項・罰則つき、五万円)、国立市、神戸市、大阪府、狛江市。

4.今後の課題

 川崎市は「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」を成立させ、違反した場合、五〇万円以下の罰金を科すことを決めた。何回やってもカウンターしても止められないヘイトスピーチに対して行政が踏み込んだ。他の地域で川崎市のように作るのかが問われている。
江東区地域でもヘイト行動が行われている。江東地域でもぜひ条例を作ってほしい。
条例の内容で重要なのは、@人種差別全体に取り組むことが不可欠A禁止条項+何らか制裁規定B救済制度と第三者機関による審査手続きは不可欠である。禁止規定のみだと結局裁判をやるしかなく、絵にかいた餅になる。
解消法、条例制定など、市民があきらめず、声を出し働きかけ続ければ、社会は変えられる。差別を許さない強い姿勢を示すことが求められている。差別のない社会を作っていこう。
(講演とレジメをもとに編集部がまとめた、文責編集部)

2.1

学校と地域をむすぶ板橋の会

「日の丸・君が代」強制に反対!

前川喜平さんが講演


不当処分反対
地域から闘う
 二月一日、学校と地域をむすぶ板橋の会は、板橋グリーンホールで「『日の丸・君が代』強制に反対!板橋のつどい20」を行った。
 安倍政権による新自由主義と国家主義教育路線に連動して小池都知事と都教委は、当時の石原都政(二〇〇三年)の10・23通達(卒業式・入学式などで「日の丸・君が代」を強制)の強要を継承している。すでに「君が代」斉唱時の不起立・不伴奏等を理由にのべ四八三人の教職員に対して不当処分を乱発してきた。しかも安倍政権は、憲法改悪の先取りとして学習指導要領改悪による小中学校の「道徳」の教科化、高校の科目「公共」の創設、教育勅語の教材化容認、「働き方改革」と称して教育労働者への長時間労働の強要、民間業者と共謀した大学入試改革の策動など次々と反動教育を押し進めている。
 だが「日の丸・君が代」強制に反対する教育労働者と地域の仲間たちは、粘り強く反対運動を積み上げてきた。とりわけ毎年、春の卒業式・入学式シーズンには、各学校の正門前・付近で「本当に必要? 卒業式・入学式に『日の丸・君が代』」などのビラを生徒、保護者に配布し、反対ネツトワークを広げている。板橋地区の仲間たちも、「日の丸・君が代」反対ビラ配布や集会など、安倍政権の野望を許さない取り組みを行ってきた。そもそも板橋は、教育再生実行会議など数々の反動施策を推し進めてきた下村博文(自民党/元文部科学相/日本会議)の選挙区だ。会は、下村を厳しく監視し、草の根から包囲し、果敢に闘ってきた。

長時間労働と
教育の反動化
集会は、事務局の開催あいさつで始まり、「二〇一九年 教育をめぐって〜学校における働き方は改革されるのか?」について取り上げ、「一九年一月、中央教育審議会は、『学校における働き方改革に関する総合的な方策について』を答申し、教育労働者に対して一年単位の変形時間労働制の導入を言及した。文科省は、『勤務時間の上限に関するガイドライン』を提起し、上限の目安時間について月四五時間、年三六〇時間としたが変形時間労働制による実質、長時間労働を強要し、『もっと働け』という反労働者政策そのものだ」と批判。
さらに「来年度から使用される小学校の教科書採択が行われる。新指導要領が打ち出した『資質・能力の育成』により、教育内容は『質』も『量』も増加だ。外国語の教科化に加え、『プログラミング教育』も必修化され、小学校六年間で使う教科書の平均ページ数は、現行より一〇%増え、英語科を入れると前回より一四%増となる。新指導要領は、『主体的・対話的で深い学び』というが、現場では学力テスト対策が蔓延し、子どもも教員も求められるのは『点数学力』でしかない」と指摘し、安倍政権による教育反動化の加速に警鐘乱打した。

伊藤詩織さん
への性暴力
前川喜平さん(現代教育行政研究会/元文部科学事務次官)は、教育の変遷とこれから」をテーマに講演した。
前川さんは、とりわけ下村博文元文部科学相による教育再生実行会議を通して日本会議の反動教育政策を反映させてきたことを長年の文部行政にたずさわってきた経験、上意下達方式による諸命令などによって具体化してきたことを反省も含めて批判を交えながら紹介した。
とりわけ安倍政権による三権分立破壊を象徴する事件として、伊藤詩織さん性暴力被害事件、刑事司法問題を取り上げた。
「伊藤さんは、ジャーナリストの山口敬之から性的暴行に遭ったとして刑事告発し、警視庁は裁判所からの逮捕状の発布を受けた。だが山口を逮捕する直前に当時の警視庁刑事部長の中村格から逮捕中止の命令が入り、逮捕を見送った。山口は安倍晋三のお友達でもあり、首相官邸の強い指示によって動いたようだ。その後、あの中村は、警察庁の官房長に成り上がった。さらに安倍内閣は、定年となる東京高等検察庁の黒川弘務東京高検検事長を八月まで延長させ、稲田伸夫・検事総長の後任に着かせようとしている。首相官邸は、お友達の黒川を操作しながら、司法権にまで介入し、政権基盤の強化をねらっている。この間だけでも『安倍一強』のひどさがこのように現れている」と浮き彫りにした。

 

「日の丸・君が
代」強制拒否
「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議準備会は、「ILO(国際労働機関)とユネスコは、二〇一九年春、日本政府に対して『日の丸・君が代』の強制を是正するように勧告した。文科省は、(起立斉唱は)『適切に行われている』と無視している。都教委は、話し合いの場にも出てこない。このような状況を許さないために『日の丸・君が代』ILO/ユネスコ勧告実施市民会議を発足させる(三月一日〈日〉/一三時四〇分/日比谷図書文化館)」と呼びかけた。
天皇奉迎に児童を動員することに反対する市民の会は、「八王子『天皇奉迎』に子どもたちは動員されなかった」取り組みを報告し、「児童の思想・良心の自由を侵害することは許されない。今後も厳しく監視し、草の根ネットワークを広げていきたい」と訴えた。
集会の最後に区内の都立高校での卒業式にビラ撒きの行動提起し、参加を呼びかけた。      (Y)

 【訂正】本紙1月27日付4面「沖縄報告」県内市町村の「戦争体験記を読む」(2)下から2段目32〜33行目「日本の丸太」を「二本の丸太」に訂正します。2月3日付2面「秋田・イージス・アショア基地をつくるな」下から4段目「再調査結果待ちを許さないぞ」の項、12行目かっこ内「秋田県」の前に、「青森県六地点、山形県四地点と」を挿入します。

 




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