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    かけはし2020年2月10日号

下からの闘争が政府の本質を明るみに出す


ベク・ジョンソン 組織・闘争連帯委員長


キム・ヨンギュンの死が明らかにした公共部門民営化の残酷性

 2018年12月10日、テアン火力発電所の非正規職労働者キム・ヨンギュンはベルトコンベアーで残酷な死を迎えた。キム・ヨンギュンが働いていたテアン火力の外注事業主体「韓国発電技術」の最大株主は「カルリスタ」という私募ファンドであり、テアン火力1・8号機の下請け業者である「韓電産業開発」の最大株主は、「韓国自由総連盟」だった。公共部門の民営化と非正規職化の結果を明らかにしたキム・ヨンギュンの死に多くの人々が憤怒した。年末年始というなかでも闘いは広がり、政府・与党は28年ぶりに産業安全保健法(産安法)改正案を通過させた。
しかし、改正産安法は危険業務全般の請負禁止、安全規制違反に対する最低基準の導入、実質的作業中止権のどれも取り入れなかった。請負禁止範囲はメッキ業務と水銀を扱う業務など22の事業場に過ぎず、適用対象労働者も800人にとどまった。死後62日が経過した2019年2月5日、「燃料・環境設備運転分野の公共機関の設立を通じた正規職転換」、「国務総理室傘下の真相調査委員会構成」などで合意することで初めてキム・ヨンギュンの葬儀を行うことができた。
しかし、闘いは終わらなかった。8月19日、キム・ヨンギュン特別調査委員会が発表した22の勧告には、発電産業の非正規職労働者の直接雇用正規職転換、重大災害の企業処罰法の制定、懲罰的損害賠償制導入など労働死しないために必要な措置を盛り込んでいるが、政府は履行する意志がない。2009年から2019年6月までに産安法違反事件6144件中懲役・禁固刑が宣告された事件は、35件で0・57%に過ぎない。労災死亡に対する罰金はわずかで、平均432万ウォンだ。別の死を防ぐための闘争、キム・ヨンギュン闘争はまだ進行中である。

現代重工業の大宇造船引き取り合併、財閥のための産業再編に対決して闘争

 1月31日、産業銀行は大宇造船を現代重工業に売却すると発表した。それは13兆ウォンに達する公的資金を投入して、構造調整の後、年間兆単位の営業利益を上げる大宇造船海洋を、現代重工業に安値で渡すことだった。産業銀行は大宇造船を現代重工業グループに渡すのと引き換えに、議決権のない現代重工業優先株を渡されるだけだった。
これは現代重工業チョン氏一家の造船業略奪行為を国が助けるものにすぎない。そうでなくても鄭夢準(チョン・モンジュン)一家は現代重工業で分割持株会社を設立する過程で一家の持ち分を膨らませたし、配当率を70%に引き上げて、現代重工業の利益を私金庫に吸収するためだった。
大宇造船と現代重工業の現場の両方で闘争が燃え上がった。変革党をはじめとする運動勢力も「財閥特恵大宇造船売却阻止全国対策委」を構成した。現代重工業では、株主総会場占拠闘争、元下請が一緒になって全面的な非正規職労働者の組織運動が行われた。大宇造船でも正規職労働者の合併反対のストライキ闘争と上京闘争はもちろん、長い間こらえてきた非正規職労働者が総決起闘争に乗り出した。
現在、現代重工業 - 大宇造船合併は、国内外の企業結合審査を経ている。チョン氏一家のための造船業再編を阻止する課題は残っている。2019年、政治的なスローガンを越えていない「大宇造船公企業化」、「造船産業公営化」の課題も同様である。

7月に公共部門の労働者のゼネストが明らかにした政府の非正規職対策の破綻

 7月には、公共部門の非正規職労働者がゼネストに突入した。それは学校と介護非正規職労働者、自治体・公共機関の非正規職労働者などの公共部門の非正規職の最初の連帯ゼネストという点で歴史的な闘争だった。7月3日、光化門広場には6万人の非正規職労働者が集まってムン・ジェイン政府のうわべだけの非正規職対策を糾弾した。
2018年10月現在、公共部門の正規職転換者のうち54・7%が子会社に偏在された。また、2018年の公共機関無期契約職採用が1万1513人で、2017年比で6倍に増加したという統計で明らかになったように、政府が「正規職転換」だとする労働者の大部分が子会社に所属、または無期契約職である。そして民間委託部門については、これまで通り「民間委託を維持する」と宣言した。また政府は、「2019年の経済政策の方向」で職務給制の賃金体系の見直しを明示して、公共部門で先行して導入すると明らかにしている。
結局、職務給制のもとで生涯最低賃金を受ける「にせ正規職」として生活することを強要する政府への怒りが集まって行われたゼネストであった。さらに悪いことに、最低賃金1万ウォンの公約破棄と最低賃金算入範囲の拡大改悪まで行われたように、非正規職労働者たちは、怒りを抑えることができなかった。保守言論は「供給大乱」などと言ってストライキを非難したが、本当の大乱は正規職が「夢」であるこの社会そのものだ。

にせ正規職を強要する政府に対する料金所労働者の闘い

 「私たちが正しい!直接雇用勝ち取ろう!」、「子会社が正規職なら、からたちの実もみかんだ!」トールゲート労働者たちは直接雇用正規職化を要求して、6月以降、今まで闘っている。ソウル料金所入口で高空ろう城、青瓦台での野宿座り込み、キムチョン道路公社本社占拠ろう城、光化門小公園座り込みと青瓦台進撃闘争、17カ所の民主党議員事務所占拠ろう城など、強力な闘争で子会社転職を強要する政府と道路公社に対抗している。
ムン・ジェイン政府の仕打ちは卑劣なことこの上ない。2013年のトールゲート間接雇用非正規職労働者500人余りが道路公社を相手に申し立てる勤労者の地位確認訴訟では、2015年1審、2017年2審、2019年3審まですべて勝訴したが、道路公社は料金収納業務の子会社移管方針に固執した。「すべての労働者が最高裁判所の判決の対象となる必要がある」、「最高裁判決に基づいて直接雇用に転換する必要がある労働者には、収納業務を与えない」、「2015年以降は、不法派遣の余地をなくしたので、不法派遣ではない」、「料金収納業務は、最終的になくなる職業である」など。国家機関が違法派遣の是正命令を受けたのにもかかわらず、間接雇用を維持しようとあらゆる方法を総動員している。
料金所の労働者は「不法派遣資本家」に過ぎないムン・ジェイン政府の本性をあばき出して、すべての力を尽くして戦っている。個別事業場闘争が「子会社正規職」という政府の政策の虚構性を表わにし全体戦線を形成したのである。

ILO 100周年、推進されたのは、労働改悪だけ

 ムン・ジェイン政府は、もはや「親労働」のふりさえしない。大統領は国政を独占する主犯イ・ジェヨンと9回も会ってサムスンをおだて、民主党は解体対象であったはずの全経連と相次いで政策懇談会を開き、14の財閥が次々に打ち出した立法要求を聴取するなど、露骨な親資本への歩みを重ねた。
これはそのまま下半期労働改悪推進につながった。2018年10月には、ムン・ジェインは、経済4団体の代表と非公開の昼食会を開いて弾力勤労制の拡大を約束し、国務会議で、「弾力労働制など週52時間労働制の補完立法の国会通過が急がれる」とし「党・政協議と対国会説得などを通じて速やかに立法すること」を注文した。これにより、下半期の通常国会には、弾力勤労制単位期間の拡大はもちろん、団体協約の有効期間の3年延長、争議行為の際の生産設備占拠禁止(工場占拠ストライキの禁止)を含む労働改悪案が上程された。チョグク事態と選挙法改正をめぐる民主党と自由韓国党との政争でまだ立法化されなかっただけで、労働改悪で両者はなんら違うところがない。
日本との通商紛争も資本のための大幅な規制緩和の名分になっている。9月26日、政府・与党は「素材・部品・機器産業の競争力強化特別措置法」を民主党内で決定した。それは素材・部品・装備企業に対する規制を緩和し、環境・立地・予備妥当性調査で特例を新設し、化学物質認可と審査期間を短縮するというものである。2018年、労働部によると、2014年から2018年7月までに化学物質の取り扱い事業所労災死亡労働者だけでも1428人であり、被災者は4万9845人に達する。現実に起こっていることだ。

卑劣な政府、闘うしかない

 12月11日、労働部は、2020年1月1日に予定されていた300人未満の事業所での週52時間労働制の施行を先送りして準備期間1年をもうけると発表した。同時に、「経営上の理由」を特別延長勤労認定事由に含むと発表した。つまり、「通常でない業務量の大幅増加」、「新商品の研究開発」など資本の必要のための延長労働を許可するというものである。
実質労働時間短縮は再び延期され、「自然災害と災難」などの場合に限られていた特別延長勤労許可事由は大幅に拡大した。特別延長勤労制度は、労働時間に制限を設けないという点では、特別延長勤労許可事由」に「経営上必要」を含むことは、資本に無制限の延長労働を可能にしたものと変わらない。
振り返ってみよう。ムン・ジェイン政府はこれまで「1週間は5日」という奇怪な行政解釈に維持された週68時間労働制(法定40時間に延長労働12時間、これに土曜日、日曜日、各8時間ずつ16時間を加えた合計週間労働時間)をすぐに推し進めると言った。「週52時間労働時間を短縮する」という名分で休日の延長労働割増率を従来の100%から50%に削減した。労働時間の短縮を名分で資本に賃金削減をプレゼントして、今無制限延長労働をすべての産業現場に拡大しようとするのである。卑劣で醜悪だ。今年も、来年も私たちは、ムン・ジェイン政府と闘わなければならない。(社会変革労働者党「変革と政治」第98号)

朝鮮半島通信

▲労働新聞によると金正恩朝鮮労働党委員長は1月25日、正月を祝う記念公演を観覧した。
▲在韓米軍司令部が1月29日、第11次韓米防衛費分担金特別協定(SMA)交渉が妥結していないことを理由に、在韓米軍で働く9000人余りの韓国人職員に対し、4月1日付で暫定的な無給休職を実施する方針を通知したと発表した。
▲朝鮮の鉄道省は中国の鉄道当局に対し、1月30日から北京と平壌を結ぶ旅客列車、31日から丹東と平壌を結ぶ旅客列車などを運行停止にすると通知した。高麗航空は、2月1日の北京―平壌便を最後に航空機の運航を停止した。
▲韓国産業通商資源部によると日本政府は1月31日(ジュネーブ現地時間)、韓国政府の造船産業再編措置などに関連してWTO紛争解決手続き上の2国間協議を要請した。
▲韓国保健福祉省は2月1日、日本から韓国に入国した中国人男性の新型コロナウイルス感染が確認されたと発表した。1日現在の韓国の新型コロナウイルス感染者は12人。

コラム

高田渡と酎さん

 フォークシンガー高田渡の新作CDをアマゾンで見つけた。タイトルはそのままズバリ「高田渡」。新作といっても彼自身は、二〇〇五年四月に亡くなっているのだから新作というより発掘されたライブ盤である。内容は、かつて埼玉県浦和市で活動していた音楽サークル「ロック・ソサエティ」が、一九七三年に開催した「第二回RSU音楽祭」の模様を収録したものだ。もちろんすぐさま購入したのはいうまでもない。
 この時、高田渡は二四歳という若さ。わずか十曲二十数分のライブであるが、そのギターワークはなかなかなものだ。その後、たくさんのアルバムが出ているが、高田渡の原点を聴いているようで心地よかった。
 その高田渡であるが、詩人山之内漠の詩に曲をつけた名曲「生活の柄」をはじめ、ボクが実際に彼の曲を知ったのは長野大学に入学した七六年のこと。もちろんそれまでも中津川フォークジャンボリーのライブ盤など「自転車に乗って」などは知っていたが、それはほんの入口だったことを痛く知らされた。教えてくれたのは、同期で三歳年上の長髪で髭をたくわえたM氏。みんなからは酒が好きなことから酎さんと呼ばれ慕われていたギター弾きだった。
 出会いはボクがギターケースをぶらさげて彼女と学内のベランダにいたときのことだった。たぶん入学して間もないころだっただろうか。記憶は定かでないが、「どういう曲をやるの」と声を掛けてきたのだ。早速ボクはギターを手に取り、カーターファミリーのようなインストを弾いたら、高田渡の「朝日楼?」と尋ねられたことを今でもよく憶えている。
 その後、夜を徹しての大学祭で「来夢来人」というライブハウスの模擬店をつくり、酎さんを中心としたメンバーが酒を呑みながら歌い明かした。酎さんのギターは、当時も今も高級手工ギターの代名詞K・ヤイリのマーチンD18モデル。今でも二〇万円はする代物である。そして、そこで酎さんが愛器を抱えて熱唱してくれたのが高田渡であり加川良のナンバーだった。ボクとすれば、初めての曲ばかりで当時流行っていた吉田拓郎や泉谷しげるというエレック系とはまったくかけ離れた、URC系の存在を肌で知ったのである。
 いわば酎さんはギター仲間にとっても、塩田夜間活動部〈もちろんそんなサークルはありません。酒呑み仲間の自称です(笑い)〉という破天荒の面々にとっても兄貴的な存在だったのだ。そして、年上だということもあり、酎さんは誰しものよき相談相手だった。
 加えて塩田夜間活動部のことを書けば、「男はつらいよ」第一八作 「寅次郎純情詩集」にも登場した上田交通別所線の中程に塩田駅という駅舎があった。今では到底考えられないが、なんと駅舎そのものが三部屋に仕切られた下宿だったのである。窓を開ければホームという漫画のような風景だった。そして、そこに住むSの六畳間を根城に毎日、毎晩酒盛りやら麻雀など放蕩な日々を過ごした面々を塩田夜間活動部と自称したのがその由来だと思う。
 一枚のアルバムが大学時代のことを思い出させてくれた。酎さんは埼玉県の与野出身。卒業後は、上田市の福祉施設に職を得て、施設長を務めた。定年後の今でも通園バスの運転手をやっているという。歌い方がそっくりに聴こえる前述したアルバム。酎さんも浦和でのコンサートを聴きに行ったのだろうか。今度会ったら聞いてみたいものだ。 (雨)
 



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