もどる

    かけはし2020年2月24日号

多国籍アグリ企業に 日本農業売り渡すな


2.8

山田雅彦さんの講演から A

ゲノム編集は安全か


 しかしゲノム編集は安全なのか。ゲノム編集はEU等各国では、遺伝子組み換えと同じ規制が必要とされている。そうでないのは、米国と日本だ。この分野の世界的権威であるイグナシオ・チャペラ教授(カリフォールニア大学バークレー校)にインタビューしたら、ゲノム編集も遺伝子組み換えもいずれも危険だと。遺伝子組み換えは別の遺伝子を外部から持ち込むのに対して、ゲノム編集は自分の中の遺伝子の一つを標的として破壊するだけだから安全だと言われるが、壊した遺伝子の周りの遺伝子が変化し、抗生物質が効かなくなる等のことが起きるということだ。
 日本ではTPP批准後急速に拡大し、世界で最大の遺伝子組み換え農産物の承認国になった。今では、三一七種類が承認され、二位の米国一九七種類に比べ、ダントツ一位である。日本の粉ミルクに含まれる遺伝子組み換え原材料は、輸入した牛の飼料に含まれていて、最も多く使っているのは明治乳業だ。
 さらに、F1品種が増えている。日本の農家が栽培する野菜のほとんど(マメ科とキク科以外)は海外で生産し輸入されたF1品種である。この分野には、トヨタグループの豊田通商が参入している。F1品種は遠縁の品種同士の交配で生まれ、両親の優れた性質がそろった品種だが、1代しか使えない。F1品種の方が早く成長し、収穫物の形状や数量が一定している。そのため作業効率が上がり市場などに流通させやすい。しかしF1品種は孫の代からはハイブリッドな特性が表れないので、毎年種子を購入しなければならない。
 前述した企業の遺伝子組み換えのコメの種子を栽培する場合、例えば「みつひかり」(三井化学)を栽培すると、収穫量も多いし、収穫されたすべての米を三井化学アグロが買い取る。そのかわり、稲の茎や葉の育成を促進させる化学肥料を通常の固定種より三〜四割も多く使用する必要があるという。米の買い取り価格は交渉によるが、年々下がっているのが実態だ。
 相手企業がモンサントの場合は、栽培契約で種子は毎年購入、自家採種は禁止されていて、違反するとモンサントに生じた損害を弁償しなければいけない。イネの花粉が風で運ばれ別の場所で受粉すれば裁判を起こされ法外な賠償金を請求されかねない。農薬と化学肥料はセットで購入しなければいけない。契約に従わなければ損害賠償請求を起こされかねない。契約農家では自殺に追い込まれた場合もある。

有機栽培の重要性


 除草剤グリホサートも遺伝子組み換え作物と密接な関係がある。日本のホームセンターや一〇〇円ショップでも販売されているラウンドアップの主成分がグリホサートだ。モンサントは、小麦の遺伝子を組み換えてグリホサートに耐性を持つ種子をつくり、その種子と化学肥料とラウンドアップをセットで販売してきた。だから、一度この種子を使うとラウンドアップも肥料もセットで使用することになる。世界ではグリホサート農薬は大きく規制されているが、日本では二〇一七年一二月に残留基準値が最大四〇〇倍に緩和された(ヒマワリ400倍。ソバ150倍、甜菜75倍)。日本で流通している主成分グリホサート製品の不買運動が小樽・子どもの環境を考える親の会が始め、二〇一九年八月この除草剤の販売が中止になった。
 サンフランシスコ地裁は二〇一九年八月、学校の用務員をしていたジョンソンさんが、学校での除草の仕事として行っていたラウンドアップの散布でガンになったとして起こした訴訟に対し、三二〇億円(後に80億円に減額)の損害賠償を命じた。弁護をしたのは元米国大統領JFKの甥のロバートケネディJrで、会って聞いたら、ラウンドアップはガンを引き起こすという三〇〜四〇年前のモンサントの内部資料を手に入れたことが勝因だったとか。モンサントは、ガンを引き起こすとわかっていながらそれを隠して販売していたのだ。
 このニュースは全世界を駆け巡ったが、日本ではほとんど報道されなかった。裁判資料をくれと頼んだら、ケネディJrは快く承諾したという。この訴訟が契機となり、その後何万件もの裁判が起きている。
 もうひとつ米国の話。三人の子どもの母親ロサンゼルスのゼン・ハニーカットさん。子どもがアレルギーで、突然分けもなく怒りっぽくなり、自閉症になったその原因が、パンやパスタの材料である小麦にグリホサートが残留していたと推測した。それからゼンさんは農薬や化学肥料を使わない有機栽培で育てられたオーガニック食品を食べさせるようにして六週間後、子どもの体内からグリホサートは検出できないぐらい低い数値になったという。
 ゼンさんは、それまで食べさせていたものを徹底的に調べた結果、米国で流通している加工食品の八五%に遺伝子組み換え食品が含まれていることを知り、それ以降遺伝子組み換え食品をすべて除いていったら、短期間に子どものアレルギー症状は改善したという。ゼンさんの活動は全米で有名になった。
 ロスで会ったときのゼンさんの話では、オーガニック食品は高いが、その代わり健康を取り戻し、大幅に医療費が減ったそうだ。今では、ロスアンゼルスでは、一般のスーパーでもオーガニック食品があふれているという。日本では、大手三社(日清製粉・日本製粉・昭和産業)の小麦粉からグリホサートが検出された。日本の国会議員を含む二八人中一九人の毛髪からグリホサートが検出された。
 今や、世界の流れは有機・自然栽培及び、非遺伝子組み換え農産物に変わってきている。ロシアは二〇一四年から遺伝子組み換え農産物の栽培を禁止し、中国でも二〇一七年に遺伝子組み換え農産物の輸入を禁止した。米国ですら、遺伝子組み換え農産物は頭打ちになり、年に一〇%の割合でオーガニックの生産が伸びている。韓国では有機栽培の農業をめざし、ラウンドアップの使用を禁止した。韓国のほとんどの小中高の学校給食は無償かつ、有機栽培の食材が使われている。
 日本では日本農業過保護論が横行しているが、ヨーロッパ型の農業は収入の六〜九割が国の助成金でまかなわれている。食糧自給率の達成・食の安全を守る・国土の環境保全のために、日本でもヨーロッパに学ばなければいけない。

暮らしを守るために


 日本の種子を守る会がつくられ、県条例を作ってそれぞれの地域で育った農産物品種の種子を守る運動が広がりを見せている。最初にこの動きを始めたのは新潟県だった。現在二三道県で条例化・準備が進んでいる。また、これから国会で審議されるであろう種苗法改正案について、意見書を出してほしい旨の請願を自治体議員を通して行い、市町村議会から国に意見書を提出する運動が始まっている。これはそれぞれ地域の特産品種を守るという点で党派を超えた動きになりうる。
 各県の優良品種を民間に渡すときは議会の承認が必要だという条例を作る。育種権者が移るとき議会は承諾しない。伝統的な品種の詳しい特性表をつくり管理する。広島県のジーンバンク(遺伝子銀行)の取り組みに学ぼう。これは、地方分権一括法に基づくものだ。私たちの暮らしは私たちで守るしかない。有機農産物は確かに少し割り高だが、学校給食に採用することが突破口になる。 


もどる

Back