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    かけはし2020年2月24日号

京都市長選の結果について


福山候補、現職に及ばず

「市民と野党の共闘」に問われている課題

 二月二日投票の京都市長選は、今後の国政の動向を予測する上でも、大きな注目が集まっていた。結果は野党のほとんどが保守現職の門川市長陣営についたのに対し、共産党が支持する福山和人氏は、れいわ新選組、新社会党、緑の党が支持にまわっただけで、福山氏の当選は果たせなかった。福山候補を支持して闘った仲間の分析を掲載する。(編集部)


 二月二日投票の京都市長選挙は、現職の門川大作市長に新人二人が挑む形になった。共産党や市民団体などでつくる「つなぐ京都2020」の福山和人氏は、一六万一六一八票(34・6%)を獲得したものの、門川氏には及ばなかった。門川氏は二一万六四〇票(45・1%)を獲得して四度目の当選を果たした。元京都党代表・京都市議の村山祥栄は九万四八五九票(20・3%)であった。投票率は四〇・七一%、前回より五・〇三%上昇した。とりわけ、期日前投票は一四万三〇一四人で前回より三五%増加した。

府知事選の流れ継いで


 福山氏は、市民運動と共産党や総評などの団体との共闘の深化の中で二〇一八年京都府知事選挙の候補者として推され、自民党主導で擁立された前復興庁次官の西脇隆俊氏(自民党、公明党、民進党、希望の党、立憲民主党推薦)を相手に四四・一%(京都市内では46・47%)の得票を得る大善戦をした。知事選の際には、共産党も加わる「民主府政の会」と市民運動とが合流して「つなぐ京都」という確認団体がつくられた。三・一一以降の脱原発運動(毎週金曜日の関電前抗議行動、毎年3月の円山野外音楽堂での集会など)や二〇一五年以降の安保法制反対運動(毎月19日の京都市役所前での行動など)を通じて、共産党や総評などの団体と、市民運動などの共闘が深められてきたことを背景に、「京都の市民運動のほぼすべての潮流が福山陣営に合流」(渡辺和俊共産党府委員長)するという形がつくられたのであった。
 二〇二〇年の市長選に向けて、こうした流れを引き継ぎ、「民主市政の会」に市民運動が加わる形で、候補者選定や政策づくりが行われてきた。その過程では、立憲民主党や国民民主党など野党への共闘の申し入れも行われた(立憲や国民も乗れる候補を、ということで候補者選定が遅れてしまった面もある)。候補者として様々な名前が挙がったもののなかなか決定には至らず、最終的に、知事選で大善戦した福山氏が一一月に出馬の意向を固め、新しい確認団体として「つなぐ京都2020」がつくられることになった。

れいわ新選組も福山推せん


 京都市長選挙は、「非共VS共産」という構図になることが多かったが、今回は福山陣営に共産党以外の国政政党としてれいわ新選組が加わった。新社会党の推薦に加え、緑の党京都府本部の支持も得た。「市民と野党の共闘」の強化を期待する立場からは立憲民主党、国民民主党の対応が注目されたが、結局は従来通り自民党、公明党とともに現職の門川市長を推薦した。門川推薦は、自民党府連、立憲民主党府連、国民民主党府連、公明党、社民党府連である(本部推薦は公明党のみ)。村山氏は政党の支援を辞退したが、事実上、京都党と維新の支援を得た。
 門川氏が初当選した二〇〇八年の京都市長選挙は、門川氏に加え、共産党推薦の中村和雄氏(弁護士)、京都党代表の村山氏の有力三候補によって争われ、中村氏が門川氏に九五一票差まで迫る大接戦となった。今回の京都市長選挙は、この時の選挙とほぼ同じ構図となったことに加え、二年前の府知事選挙で大善戦した福山氏が候補者となったことで、勝利への期待が大きく高まることとなった。また、今回の京都市長選挙は、れいわ新選組が本格的に取り組んだ初の首長選挙であり、山本太郎代表が、告示日、選挙戦最終日など複数回応援に入った。共産党支持者や市民運動の関係者などに加え、れいわ支持者が、ポスター張りや電話かけなどの選挙活動に参加することになった。

政策論戦回避した現職陣営


 初当選時「乾いたタオルを絞るような行財政改革が必要」と発言した門川氏は、この一二年間で市職員を三三〇〇人削減するなどしてきたことを成果として主張した。村山氏もまた、徹底した財政再建を掲げ、人件費の見直し、交通局の民営化などを進めると主張した。これに対して福山氏は、二〇一九年一一月一一日の出馬表明時の記者会見において、門川氏は緊縮、村山氏は超緊縮と評した上で、自身の立場を穏健な反緊縮と規定し、市民の暮らしを丸ごと応援する、と主張した。
 二年前の知事選では、福山氏が最終盤に、府の年間予算一%未満でできる「知事になったらすぐやる政策パッケージ」を打ち出したことが反響を呼んだが、今回は早い段階から、市の年間予算一%未満でできる「暮らし応援四つのすぐやるパッケージ」を前面に押し出し、「ないのはお金ではなく市長のやる気」と攻めた。

?子育て応援セット(年間52・5億円)…みんなで食べる温かい中学校給食、子ども医療費無料化など、子ども分の国保料均等割免除など。
?若者セット(年間6億円)…返済不要の奨学金の創設、利息分の補助、地下鉄定期割引率のアップなど。
・高齢者応援セット(年間12億円)…老人医療費の窓口負担軽減、敬老乗車証の現行制度を守る
?地域経済支援…地元密着の公共事業の推進、市の発注する事業はまず時給一五〇〇円へ

 門川氏は告示前の京都新聞紙上での討論で「福山の公約には二〇〇億円足らない」と主張、最後までその根拠を示さぬまま論戦を回避した。選挙戦中盤に「大切な京都に共産党の市長は『NO』」と大書した広告を新聞各紙に掲載するとともに、九五一票差を忘れるな、と組織的な締めつけを強め、期日前投票を徹底した(期日前投票が前回に比べて大きく伸びたのはその結果と思われる)。
大接戦となった一二年前の市長選挙とほぼ同じ構図となったことや、二年前の府知事選挙で大善戦した福山氏が候補となったことで、勝利への期待はかつてなく高まっていたものの、残念ながら、現職市長を倒すまでには至らなかったのである(前回4年前の市長選挙が、門川大作25万4545票に対して本田久美子12万9119票という大差だったことを考えれば差を大きく縮めたとはいえる)。

出口調査の結果から

 京都新聞の出口調査によれば、福山氏は、日本共産党・れいわ新選組支持層を固めるとともに、無党派層の中で一位の三八・七%を獲得した(門川26・4%、村山30・6%)。門川氏を推薦した立憲民主党支持層からも一位の四五・四%、社民党支持層からは一〇〇%の支持を獲得した。一八歳・一九歳の五割近くを獲得し、「子育て・教育」を争点として重視した有権者の五割近くが福山候補に投票した。
しかし、新人三人争いとなった一二年前の選挙と異なり、今回は現職に対する批判票が新人二人に分散する形になった。西脇氏と福山氏の新人二人の争いとなった二年前の知事選挙では、立憲民主党の支持層の六割以上が福山氏に投票していたし(今回は門川24・4%、福山45・4%、村山29・4%)、無党派層も五割以上が福山氏に投票していた。
勝利への期待の大きさから、批判の矛先はほとんど現職に向けられ、緊縮的な色彩がより濃い第三の候補への批判が弱かったのは否めない。現職への批判票の分散という可能性、より具体的には、緊縮的立場からの現職批判の根強さ(立憲支持層の投票行動によく現れている)を軽視すべきではなかったのではないかと思われる。
また、福山氏の政策が、子育て世代(市長選挙に向けて、全員制の温かい中学校給食を求める運動が取り組まれ、2万人以上の署名を集めたことは注目すべき)や若者を重視した打ち出し方になっており、投票に行った人の半数近くを占めるとされる高齢者層(60代、70代以上)にアピールする力が弱かったのではないかとも思われる。
福山陣営内部の問題としては、今回初めて加わったれいわ支持者の動きが、様々な軋轢を引き起こしていたことも軽視できないだろう。京都市内に「れいわトラック」を走らせたり街宣で「山本太郎」と大書されたのぼりを立てたり、「れいわ新選組」や「山本太郎」の名を前面に出しての行動が、総選挙に向けたれいわの地盤づくりに京都市長選挙を利用しているのではないか、との疑念を招いた面があったのである。こうしたやり方になってしまったのは、れいわ支持者の中に、最近政治に関心を持ち始めたばかりでこれまで選挙活動に関わったことがない人たちが少なくなかったことが影響しているのかもしれないし、“共産党候補”というレッテル貼りに対抗するためにあえてれいわ色を出していこうという思惑もあったのかもしれない。しかし、共産党色を出さないよう配慮を強いられていると感じる共産党の支持者や、特定の政党色を出すことは抑えるべきだと考える市民活動家の間から批判が出ることは避けられなかった。選挙戦を通じて一定の改善は図られた面はあったものの、今後に課題を残したといえる。
二〇二二年四月の京都府知事選挙、二〇二四年二月の京都市長選挙に向けて、れいわ新選組も含めた「市民と野党の共闘」を丁寧に発展させつつ、根強い財政危機論への対応も含めて、より具体的で説得力のある経済政策を練り上げていくことが求められているといえよう。  (田沼啓史)



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