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    かけはし2020年3月9日号

日一日と足場が崩れる政権に最後の一撃を


フランス

年金めぐる対決ヤマ場に

反対運動第一局面の成果に立ち
総力を注ぎ全部門スト組織化へ

レオン・クレミュー


 一月後半以来、フランスの社会、政治情勢は相変わらず、年金制度を標的とした政府の改悪政策への民衆的反対を特徴としたままにある。そして決起は、この数週間弱まりを見せてきたとはいえ、エマニュエル・マクロンと彼の政党の共和国前進(LREM)の弱体化と不安定化、という直接の政治的効果を及ぼしてきた。

反マクロンの諸行動と気運継続

 この数週間では、一月二九日、二月六日、同二〇日と、三回の新たな全国行動日が実現した。これらの行動日が街頭に引きだした人数は以前より少なかった。決意は依然強いとはいえ、運動がもはや、政府と対決するRATP(パリ交通公団)とSNCF(フランス国鉄)のストライキ労働者を頼りにはできず、彼らを引き継ぐ部門がまったくなかったからだ。
社会的決起はより小さな力で表現されているとはいえ、われわれは今も、さまざまな部門におけるストライキ、占拠行動、華々しい行動の増加を見続けている。ストライキは、港湾とフランス電力の発電所で電力と生産の停止と一体になって、またパリとマルセーユの家庭ごみ処理センターでは、後者でセンターへの出入り妨害を排除するための警察の介入を伴って継続した。ストライキに決起した消防士もまたパリにおける一月二八日の全国デモの中で、警察から殴打を受け、催涙ガスを浴びせられ、棘付手投げ弾で攻撃され、三〇人が負傷した。文化部門(国立図書館、エッフェル塔、その他)でもストライキが起きた。
年金制度への攻撃は、あらゆる社会的不公正を、不安定な職業における低賃金、あるいは過酷な労働条件を明るみに出すことになった。マクロン構想の実施は、この状況をさらに悪化させることになるだろう。自由業の職業、特に同じく攻撃下にある弁護士、医師、心理療法士、は二月三日にあらためてデモを行った。特に弁護士は、数多くの職種横断のデモに姿を現してきたが、過去七週間ストライキ中だ。
マクロン法案反対の闘争と平行して、二月の休日を前に教育機関でのストライキが、教員と学生に率いられて、年金改悪に対する拒絶を、そのボイコットをも加えた連続的なバカロレア(大学入学資格付与)試験拒否に結びつけて、増大した。これらの試験は高校の三分の一でボイコットされ、阻止され、延期された。ここでもまた警察は、高校生に対ししばしば暴力的に介入し、数多くの逮捕者を生み出した。
このボイコットの根拠は、バカロレア改革の実行にあり、それは、社会的差別や地域的差別を悪化させ、高等教育を受ける権利に対する選抜のあり方の改革を仕上げる(エリート選抜へと:訳者)のだ。教員たちは、マクロンの法案が彼らの年金から数百ユーロを取り上げると思われる以上、また教育相が行った唯一の提案が、この損失を教員が埋め合わせ可能とするための労働時間延長、あるいは追加の仕事だった以上、なおのこと決起を持続している。
加えて、数千人の病院職員が二月一四日に街頭に出た。病院職員(その七〇%は女性)は、医療サービスの取り止めや病院の閉鎖、また公共医療の全般的劣悪化に反対して、ほぼ一年前に始まった彼らのストライキを継続中だ。
二〇年間で、病院のベッドの二〇%(一〇万)、および地方の産科病院の四〇%が失われたのだ。予算とあらゆる職種の要員に対する俸給に関する交渉を求めて、多くの医科長を含む一二八五人の病院医師が一月半ばに辞職した。その中で政府は、全面的に不十分な「非常計画」をようやく公表したばかりだ。
同様に、スキーリゾート労働者もまた、ここ数週間ストライキを強化してきた。今年実施された失業保険改革に抗議するためであり、それは、季節労働者の失業手当を三〇%も引き下げているのだ。

マクロンが社会の不安定化促進

 ジレ・ジョーヌ(黄色のベスト)運動の開始から一五ヵ月、こうしてフランスは、社会的諸権利、賃金、年金、さらに社会的保護の領域で民衆諸階級が攻撃を受けるという国のイメージを示している。マクロンと彼の政権の攻撃は三年の間傷を広げ続けてきた。そしてそれは、不平等と社会的不公正、気候と環境、差別、あるいは女性敵視の暴力という非常事態には最低限の対応も示すことなく、もっと多くの不平等をつくり出している。
民衆階級は、二〇一七年に他の制度化された諸政党を中立化したことでフリーハンドを確保したと考えた政府に対決する位置についている。しかしマクロンの攻撃は、システムへの社会的支持を一層掘り崩し、民衆諸階級内部のあきらめを引き下げる結果に終わっている。LREMは諸政党の正統性喪失から利益を受けたが、しかしそれはただ、この正統性喪失を深め、自身をもその犠牲者にすることに成功したにすぎない。これは、あらゆる世論調査におけるマクロンの孤立、そして彼の年金法案に対する多数の反対の継続、という姿をとっている。
新自由主義的資本主義は、階級的アイデンティティおよびコーポラティズムと特徴づけられた社会的成果の根絶を追求する。個人主義、不安定性の文化、また「実力に基づく」成功に対する礼賛を力づけ、彼らの特権を正当化する支配階級の成功を賞讃することによってだ。しかし皮肉なことに、まずジレ・ジョーヌ運動によって、今や年金防衛の闘争によって、マクロンは階級的アイデンティティと集団行動に意味を復活させるにいたり、搾取された者たちの団結の必要をかつて以上に見えるものにした。
彼はさらに、富をもつ階級と彼らの政治とメディアの従僕に対する拒絶、また警察の暴力に対する拒絶を直感的なものにする点でも成功した。マクロンと彼の従者たちは、労組官僚という「社会的パートナー」にこの政策を受け容れ可能にするために必要な最低限の社会的妥協に関し思い悩むことすらなく、資本家集団の利益を守る攻撃的な政策を選択することによって、フランス社会を今も不安定化し続けている。
この姿勢の漫画版が先頃の日々国民議会で見られた。その時LREMグループは、彼らの行動は雇用主の利益に役立っていると考え、子供と死別した従業員向けの有給休暇を五日から一二日に伸ばすための票決提案に全面的に反対した。民衆的抗議を前にして、雇用主組織のMEDEF自身は政府に、その立場を変え、新しい票決を組み込むよう頼んだのだ。この哀れなけいれん的ドタバタは、この政府の超反動的な心性と現在の政治的壊れやすさを同時に表に出しつつある。

改革構想の道理のなさも明白に


本当のところ議会多数派の指導者は誰も、「普遍的」退職制度を擁護するために敢然と演壇に登ることをしてない。提案されている制度に対する真実味のある将来の展開予測は全く公開されていない。そして、この改革から生まれる大きな勝者として描かれた女性も農民も、逆にこの新たなシステムから利益を受けることはないだろう、と思える。毎週、この構想が内包する、特にもっとも不安定な人々に対する有害な本性に対する新たな分析が現れているのだ。
マクロンは、法的な退職年齢を引き上げ、現在の年金制度がもっている優位さすべてをダメにする、と同時に主張する改革を選択することによって、彼自身の多数派を不安定化し、彼の社会的基盤を縮小し続けている。
二月一七日以来、国民議会は完全にガタガタになっている法案の討論を続けてきた。この法案は、これからの年月におけるこの制度の均衡、その財源、その支出を明らかにする財政的構成要素を完全に欠いているのだ。ストライキの数部門への拡大を避けるために二ヵ月間、政府がさまざまな約束を行ってきたからには、この問題はなおのこと困難なものになっている。ちなみに先の約束は、今後の数年に退職する世代が彼らの年金減少を受けないようにするためのものだ。そしてこれは明らかに、拠出額が下がる中での給付の維持を意味するのだ。
また欠けているものとしては、ポイント清算価値を変更するための指標もあるが、政府は、平均賃金上昇率より労働者にとって利点の少ない新たな指標の創出を公的な統計機関(INSEE)に依頼している。
同時に、二〇二五年までの年金に対する資金手当てをめざす一つの構想を提案すると想定されている労組と雇用主によって、一つの社会的評議会が開催されようとしている。そしてその中では次のことがはっきり見えている。つまり有名な「受給年齢」が、退職年齢を少なくとも二年引き上げる(六二歳から六四ないし六五歳へ)ことが、政府が選んだ選択肢として残っている。唯一の実体のある労組の政府連携者であるCFDTは、この問題ではじっと苦痛をこらえることに同意せざるを得なくなるだろう。しかしながら、早期退職を可能にする困苦労働者の認定に関しいかなる進歩も得ることなく、ということだ。
逆に、公務部門の多くの労組は現在の制度の下で受けてきた早期退職の利益(病院、ごみ収集、下水道、その他の労働者)を失うだろう。CGTがボイコットし、ソリダリエもFSUもそこに招かれなかった(公共サービスでは両者ともが代表的であるにもかかわらず)この資金問題評議会は、政府の選択を承認するための、労組運動少数派との対話に切り縮められた。

政権支持基盤に亀裂と動揺進行

 マクロンのLREM運動は、一定数の下院議員からなる議会グループの離脱(三一四人の内の二〇人)に直面しなければならなかった。そして来る三月の地方選前夜に、数都市では、大統領与党のラベルを使いたくないと思った者たちには触れないとしても、LREMの立候補で競合が浮上した。
この数週間、まさに危機を示す多くの兆候が、今までのところマクロンを阻止するには十分な強さはないとしても、議会多数派と政府に亀裂を入れるには十分強力な、社会運動からの打撃の結果が蓄積してきた。その上地方選との関係でマクロンの党は、共和党や社会党と競争する能力を大きく欠いているように、あるいは社会党や共和党からの離脱者であったマクロン派がすでに六年前市長であった少数の都市以外では、自治体機関を勝ち取る能力を欠いているように見える。
二〇一七年の大統領選とフィヨンの大失敗(金銭スキャンダルが発覚したが、二〇一七年大統領選に強行出馬し大敗:訳者)の後大きく弱体化した共和党は、マクロンの諸困難から元気を得つつあり、二〇二二年の次期大統領選に向けて彼らの指導者数人を配置しつつある。
同時に彼らは今、このガタガタになっている改革から距離をとろうとしている。まさにこの改革は、自身向けの特別な制度の喪失により深い傷を受けた自由業専門職の強い憎しみを特に深めているのだ。
これまでかなりの程度沈黙を守っているMEDEF自身は、今その不満を表し始めている。この雇用主連合は、いずれにしろ年金制度の全体的オーバーホールを求めていたわけではなかった。それはただ、追加の支出ゼロ、および彼らの「負担」の削減に対して、特に退職年齢の六四歳あるいは六五歳への引き上げを通して、保証を得たいと求めただけだ。
この包括的改革は彼らを立腹させ始めている。それが資金問題に何らの可視性も与えていないからであり、ビジネス指導者内に本当のところ信頼を吹き込んでいるわけではない国家統制を支持して、MEDEFを完全に満足させていた労組との共同管理の枠組みを破壊することを狙っているからだ。実際補足年金の共同管理(ARRCO―AGIRC)は、ここ何年か沈黙の内に、労組官僚の同意に基づき社会的後退の獲得を可能にしてきたのだ。
加えて雇用主たちは、義務的制度の月額俸給一万ユーロ以下までの引き下げを喜んでいない。これは彼らに、彼らの高級管理職向け追加年金(年金基金形態における)への資金手当を義務づけることになるのだが、そこには当面、現在の制度の中で高給取りが払っている社会保障拠出を利してきた税に関する優遇はないのだ。したがってMEDEFは、困苦労働に関するいかなる新たな認定ももちろん拒絶しつつ、提案されている年金の上限設定に反対の論陣を張っている。
それは政府に本当のところは、何よりも財政計画の明確化と退職年齢のはっきりした決定を求め続けている。何人かのマクロン改革構想の新自由主義的鼓吹者は今や、ぐらぐらになり分かりにくくなっている構想に公然と批判的になっている。過去三ヵ月の巨大な決起と社会運動が巻き起こした豊かな論争は、こうして政権を揺さぶり続けている。

議会内決着不可能な配分問題


年金への資金充当が政治的選択、社会の選択、であることもまたはっきりしている。DARES(雇用省付属の、調査、研究、統計を統括する出先機関)の労組活動家たちは、ここ何週間で幅広く広められた一つの研究で、年金の資金充当に関しては、資金供給問題も人口統計に関わる問題もない、とあらためて見せつけた。
一九六〇年には退職者一人に対し四人の現役労働者がいたということ、今ではそれが一・七人だということ、それは本当だ。しかしその間、インフレを除外して、GDPは四・九倍になり、一人あたりでは三・四倍になっている。こうして、一九六〇年では四人の現役労働者が九万五〇〇〇ユーロを生み出した。そして二〇二〇年には、一・七人の現役労働者が一四万二〇〇〇ユーロを生み出す。
したがって今日では、年金への資金充当という点では一・五倍以上の富が生み出されているのだ。それゆえ、現役労働者が少なすぎるという議論は、完全に道理を欠いている。
もちろん真の問題は、生産された富の配分の問題だ。一九六〇年から今日まで、社会的保護への資金拠出における雇用主負担は六〇%から四〇%へと落ち込んでいる。この不足を埋め合わせているのは、アルコールとタバコに払っている税を通す形で家計だ。残りは国家財源から払われているが、それは、雇用主に認められた軽減措置を埋めるものであり、これらの合計はそうしていなければ、公共サービスの資金になることもできたと思われる。
議会論争は、さまざまな議会野党グループがマクロンの多数派の不安定化を利用したいと思う中で、これから数週間続くだろう。しかし制度圏のゲリラ戦は、それだけでこの法を敗北させることは不可能だ。議会論争が長期化する場合、政府は憲法四九条三項を利用する方を選ぶだろう。それは、修正に関する論争を終わらせることで法の採択を可能にしているのだ。

職種横断連続ストめざし全力を

 マクロンは、自分自ら作ってしまった罠から抜け出す目的で、年金問題から注意をそらそうとあらゆる努力を払っている。何よりもまず彼は自らを、欧州共同防衛のための国際的国家の首脳として描こうと努めた。次いで彼は、地方選で緑の候補者リストがいくつか極めて良好な結果に十分用意ができているように見える時勢に合わせて、環境と地球温暖化反対行動の擁護者であるポーズをとろうと、シャモニーのメール・ド・グラス氷河(深さ二〇〇メートル、全長七キロメートルのフランス最大の氷河:訳者)に出かけた。
そして最後に、昔ながらの悪臭漂う処方箋に戻り、「イスラム主義の分離主義」に反対するイスラム排撃キャンペーンを打ち上げるためにミュールーズ(スイス国境に近いフランス東部の町:訳者)にたどり着いた。彼はその主題で来る数週間、政治の空気を二極化するつもりでいる。
いずれにしろ、社会運動の肯定的な結果にとっての唯一の道に変わりはない。つまり、マクロンと彼の政府にこの法案を力づくで撤回させる民衆的決起の道だ。
活動家の諸勢力は、この運動の最初の局面に対する評価から利益を引きだすことができる。そしてその局面では、SNCFとRATPのストライキ労働者が運動の真の指導部だった。昨年一二月五日にこれら二部門で始まった連続ストライキは、活動家たちの徹底的な活動によってそれに先立つ三ヵ月間準備された。多くが次のように力説している。それは、三月末までに全体の運動、つまり職種横断的連続ストライキを始めるというような一つの目標を、もっとも重要な職種部門で設定することが必要、という主張だ。
この目標は、全労組と社会運動が準備するパリでの全国行動の段階的拡大を求める提案と協力する形でことが運ぶ。急進左翼の範囲を超えて、ソリダリエがそうした提案を行っているが、それはこれまで全国労組間共闘から承認を受けていない。先の機関は今のところ運動継続を可能にしてきたが、運動に一つの戦略、マクロンを屈服に追い込む新しい生気を吹き込むことのできる戦略、を与えないままにある。
エネルギーも公正で連帯を基礎とした年金に対する提案も欠けてはいない。勝利を可能にする総対決を築き上げるために力を発揮できるのは、何万人という活動家にほかならない。(二〇二〇年二月二二日)  



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