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    かけはし2020年3月23日号

南西諸島に自衛隊基地はいらない


投稿

宮古島・石垣島訪問記

環境・生活・平和のために住民は闘う

尾形 淳 (南西諸島への自衛隊配備に反対する会[大阪]会員

はじめに

  沖縄島を除く、与那国島、石垣島、宮古島、奄美大島のうち、二〇一六年以前に自衛隊基地があったのは、一九七三年に航空自衛隊が進出した宮古島と、一九七六年に航空自衛隊通信所が置かれた奄美大島のみであった。しかし、防衛省は二〇一〇年に策定された「二〇一四〜一八年度」の中期防衛力整備計画で、南西諸島の防衛力強化を打ち出した。
 そして、二〇一六年三月に与那国島に一六〇人の沿岸監視隊を配備し、以降、二〇一九年三月には宮古島と石垣島に駐屯地が開設され、八月には奄美瀬戸内分屯地で弾薬庫が新設された。また、九月には陸上自衛隊奄美駐屯地で日米合同軍事演習を実施し、一一月には宮古島の保良(ぼら)地区で弾薬庫の建設が始まっている。
 「南西諸島への自衛隊配備に反対する会」は昨二〇一九年の一二月二三日から二七日にかけて宮古島と石垣島への訪問団を組織し、現地で自衛隊基地の反対運動に取り組んでいる人たちとの交流会をもった。そして、二月一八日には大阪でその報告会を行った。
 私は宮古島のみの訪問だけだったのだが、以下に、私たちが訪ねた宮古島と石垣島の基地の概要を記し、併せて、私が訪問団の報告集に寄せた「宮古島訪問記」を記載して、その報告としたい。

「宮古島での訪問地=自衛隊基地の現況と水道水源の汚染の心配」

 宮古島は隆起サンゴ礁であり、琉球石灰岩からなっている。そのため、降った雨はすぐに石灰岩層に浸透してしまう。従って、宮古島には川がない。石灰岩層を通った雨水は、石灰岩層の下部にある泥岩層によって堰き止められて地下水流となり、宮古島の人たちの水道の水源になっている。
宮古島では「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」のSさんに二日間にわたって基地群を案内していただいた。千代田駐屯地正面では「基地反対」の横断幕を掲げシュプレヒコールを行った。そして、「住民連絡会」の何人かのメンバーとの交流の場を持つことができた。
当初、基地建設が計画された福山は白川田流域(水道水源)、に近く、宮古島市長はこの計画案を拒否、基地は現在の野原(のばる)と千代田に変更された。この地域は東添道流域、川満流域に位置している。両者とも水道水源なのだが、白川田流域とは違い詳細な調査は実施されておらず、流域界や水の流れについては、現在でも推測の域を出ない。
地元の人たちが最も危惧しているのは、自衛隊基地による水道水源の汚染である。しかし、防衛省は水源の調査をしないまま建設工事を強行している。
@保良鉱山跡地での弾薬庫の建設
二〇一九年にいったん撤去された誘導弾や迫撃砲弾も保管する計画。この基地のすぐ北には、保良の集落があり、もし事故があれば大惨事を引き起こす恐れがある。
A千代田の陸上自衛隊駐屯基地
地元の人たちの祈りの場であるウタキが基地に取り込まれてしまった。ウタキは残すと約束していたのだが、ウタキの面積は約束の半分にされてしまう。
ミサイル本体は置かないとしていたが、二〇一九年三月に誘導弾や迫撃砲弾が搬入されているのが明らかになる。その後一旦、島外に撤去したが、保良地区の弾薬庫が完成次第、搬入する計画。
B野原の大型レーダー基地
深刻な電磁波障害を引き起こしている。
C準天頂衛星追跡管理局
内閣官房の管轄下にあり、米軍機に位置情報を提供するなど、宇宙空間の軍事利用に供されている。
D平良港
クルーズ船が着岸できるように浚渫中。クルーズ船のみならず、米軍や海上自衛隊の護衛艦、空母化された護衛艦の着岸を想定しているのではないだろうか。
E伊良部島の長山港
尖閣諸島監視の海上保安庁の巡視船の係留港
F渡口の浜
米・日合同演習の場
G下地空港
三〇〇〇メートルの滑走路を持つ地方空港。各航空会社のパイロット訓練専用空港だったが、二〇一四年に撤退。その後、LCCが観光シーズンのみ、短期間運行していたが、その撤退も噂され、軍事空港化が危惧されている。
H海上保安庁の射撃訓練場

「石垣島での訪問地」

 二〇一七年一月、中山宮古島市長は地元住民の意見を聞かないまま、事実上の基地の受け入れを表明。二〇一九年三月一日、沖縄防衛局は工事を開始した。
基地建設開始に先立つ同年二月には、「平得(ひらえ)大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う条令案」が、一万四二六三人の有効署名とともに石垣市議会に提出されたが、与党の反対多数で否決された。石垣市の有権者は三万八七七九人であり、署名者は実にその三七パーセントに上る数である。市議会の否決に対して、現在、「市自治基本条令」に基づき、市に計画の賛否を問う住民投票を実施するよう求める訴訟が行われている。
自衛隊の基地建設や、リゾート開発によって、石垣島でも宮古島と同様に、信じられないほどの土地の高騰が引き起こされており、リゾートホテル建設に対する反対運動も起きている。今後、オーバーツーリズムの問題が深刻になるのではなかろうか。
石垣島では「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」の皆さんのお話を聞く機会を得た。また、一二月二六日には同連絡会の記者会見を傍聴させていただいた。
@平得(ひらえ)大俣、陸上自衛隊五〇〇〜六〇〇人を配備する予定
二〇一九年四月に改正された沖縄県環境影響評価の適用を逃れるため、基地予定地の全体の買収はまだ行われていない。しかし、前述したように、於茂登岳南側山麓のジュマールゴルフガーデン、一三ヘクタールではすでに工事が始められている。
ちなみに、於茂登岳は標高五二六メートルで、沖縄県の最高峰である。また、基地予定地周辺は冠鷲の生息地であり、営巣期間の三月から九月の工事中止も申し入れられている。
石垣市民の生活用水、農業用水を取水する宮良川、名蔵川の両河川はともに、於茂登岳中腹が水源となっている。また、南斜面には水源涵養林もあり、自衛隊基地による汚染が心配されている。
工事現場に向かうダンプカーも多く、子どもたちの通学路での安全も危惧されている。また、予定地には大きな岩も多く、その破砕音による騒音公害が引き起こされている。
A島南部の埋め立て地
コンテナヤードや石油の貯蔵タンクなどが敷設されているのだが、海上自衛隊の艦船に利用されるのではないかと危惧される。
B準天頂衛星システム
アメリカ軍との連携による高度な軍事情報施設。日本及びアジア太平洋地域向けの航法衛星システム。内閣府の宇宙開発推進事務局がこのシステムを構築した。
C石垣島旧空港
石垣市旧空港跡地計画により消防署等が移転しており、県立八重山病院、市役所新庁舎の移転も決定している。空港跡地と市街地の間には約五〇ヘクタールの未利用地があり、建設中の平得大俣地区の自衛隊基地建設予定地の未買収地との交換なども想定されている。
D新石垣空港
海上保安庁の空港基地もあり、軍事利用の可能性もある。
注 文中、宮古島の訪問地に振ったナンバーは、資料として送った報告集の記載の宮古島の地図に振ってあるナンバーと一緒である。
しかし、「石垣島の訪問地」の文のナンバーは報告集の地図のナンバーとは違っている。 

コラム

カラオケ中止に怒り?

 脳出血で半身不随の生活を強いられるようになって以来、世界の出来事をテレビ、ラジオ、新聞などのマスメディアで知るという形は、旧来とあまり変化はないが、社会との繋がり方というか社会との廊下は格段と少なくなった。それでもその形をしいて上げれば次の四つである。
 一つは週二回通うデイサービス、一つは病院、とくに待合室。一つは部屋の窓から見える小学校の校庭。この東京砂漠で唯一とも言える季節を告げ知らせてくれるのが校庭。春の桜、秋の紅葉もここから入って来る。そしてもう一つは、当然にも友人から届く手紙と電話。
 今回は「新型肺炎」を人々がどのように見ているかを一番おもしろかったデイサービスの出来事で紹介したい。先週デイで明日病院に出掛けることを隣人に話すと、「今はチャンス、人がいない。ウィルスが恐いから病院に人は来ないよ。老人、高齢者が集まる所ほどすいているよ」という。その言葉を信じたわけではないが、翌日二週に一回通う整形外科に出向くと、待合室はいつもの半分、通常は一時間半もかかるのにその日は三五分で終わった。
 二月二四日のデイサービス。いつものように所長代理のあいさつが始まった。「今日は『新型肺炎』についての厚労省指示を読み上げます。質問・意見は終わってからにして下さい。第一は手洗い、うがいは一番大事なのでていねいにお願いします」。ここでテーブルから野次が飛んだ。
 「マスクはどうするんだ。介護士はマスクを着けているのに、デイに通う者には出さないのか。マスクはウィルスと関係がないのか」。
 「マスクについては、あとに係の方から別個に説明します。話を続けます。第二は検温についてです。朝起きたら、自分かあるいはヘルパーさんに体温を計ってもらい、三七度を超えたらデイは休んで下さい。三七度以上が二日続いたら、デイを休むだけではなく、かかりつけのお医者さんに看てもらって下さい。中には平熱が三七度以上という人がいるかもしれませんが、自分で判断しないでこちらに連絡下さい。当方の医師が施設に保存しているデータを見て判断します。自分で朝体温を計れない人は施設に連絡下さい。施設の方で係員を派遣します」。
 介護施設というよりまるで客商売のような気の使い方だ。「第三は毎日午後にここで行っているカラオケを今日から中止します。これも厚労省の指示です」。この一連のあいさつに対して最も反発が出たのは「カラオケの中止」であった。
 数人発言したがその中の二人は異口同音に「カラオケをやらないなら、やれるようになるまでデイは休む」と宣言した。デイサービスに通って来る人は、私と同じように入浴が最大の目的と思っていたが、目的がカラオケの人もいることを初めて知った。カラオケは娯楽だと思っていたが彼らはカラオケが「生きがい」だと言うのだ。発言した二人を含めてカラオケ派の三人が次回から毎日休んでいる。
 デイサービスではカラオケが断然の人気。私が通う施設は毎日五五人程集まるが、三分の一強の二〇人近くがカラオケ派で、書道三人、絵画二人、パズル三人、一〇人くらいが雑誌を読み、残りは机を囲んでダベっている。
 安倍首相が緊急事態宣言を出し、小中高の全校に休校を要請するニュースが流れると、お茶を運んでくれた若い女性の介護士が「私には小三と小一の子どもがいるが、休校だと言われてもどうしようもない」「この施設は人手不足で、絶対に休めない。それに学童保育の場所は教室よりぎゅうぎゅうでもっと危ない。実家の青森にでも子どもを預けろ! とでも言うのかな。送り迎え、出校日の往復となれば四日以上休むことになり、その上三人分の旅費を出してくれるのかねえ!」。
 隣で聞いていた別の介護士が「安倍さんも後手後手だと批判されたので名誉挽回のつもりかねえ、政府のツケを私たちに回すんじゃないよ」。それにつけてもよく見ている。(武)



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