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    かけはし2020年3月30日号

日本郵便の経営責任追及


郵政労契法20条裁判

非正規社員一五四人が集団訴訟



画期的な全国的
規模の取り組み
 二月一四日、郵便局で働く郵政産業労働者ユニオン(以下、郵政ユニオン)の非正規社員一五四人は、日本郵便を相手に全国七地裁に待遇差別の改善を求めて労働集団訴訟を起こした。
 郵政ユニオン非正規社員原告は、北海道、岩手、埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡、愛知、大阪、京都、兵庫、広島、岡山、高知、福岡、長崎の一五四人、訴訟は北海道、東京、大阪、広島、高知、福岡、長崎の七地裁に提訴となる大規模な争いとなった。弁護団は四三人。請求額は総計二億五千万円に上る大型訴訟だ。これほどの規模の労働訴訟は、国鉄の分割民営化によって国労組合員が受けたJRへの採用差別や社会保険庁の解体による民間委託の際に年金機構に採用されなかった職員らの分限免職裁判以来の争いとなる。加えて待遇格差の是正を求める全国規模のものとしては初めてであると言われている。
 二〇一二年に労契法が改正され、不合理な待遇格差が禁じられることになったとはいえ、郵便局では地域基幹職・一般職・短時間社員・月給制契約社員・時給制契約社員などの社員区分があり、給与体系も大きく異なっている。従って正社員と期間雇用社員においても各種手当について大きな格差が存在しているのが実情だ。

同一労働なのに
基本給三分の一
日本郵政グループには約四〇万人の職員がいる。日本郵便の正社員は約一九万三千人で、非正規社員は無期契約に転換した社員を含めて約一九万二千人いる。年収は正社員が平均六二六万円なのに対して、非正規社員は二三一万円だ。この郵便職場における一九万二千人の月給制・時給制契約社員は、集配業務においても局内で郵便物の仕分けをする内務の業務でも、正社員と同じシフト業務をしており、労働時間数も正社員と同じフルタイムも多い。業務内容も責任も管理者を除けばほぼ同じであると言える。それにもかかわらず、待遇面では月額の基本給で差をつけられ、時給制契約社員の月額給与のうち基本給は地域最賃にわずか数十円上乗せされたところで固定されている。
今回、集団訴訟を起こした原告である盛岡郵便局の細川さんは「東北は寒いところでの配達業務。正社員には月一万円の寒冷地手当があるが、私たちには一切ない」。船橋郵便局の渡邊弘さん(63歳)は「郵便事業は非正規なしに成り立たない。職場では正社員が二二人に対して非正規社員は一五〇人。今回私の請求額は二七六万円だが、そのうち賞与は一五〇万円。私は正社員だったが、そのときは九〇万円もらっていた。ところが再雇用で非正規になった途端、二万二千円になった」と格差の大きさに怒りをぶつけ、「みんな同じ仕事をしている。基本給で三倍もの差をつける理由はどこにもない。私は正社員のほうを下げてもこっちに回せと言っているのではない。同じ賃金体系をつくるべきだ」と述べていた。
労契法20条には、有期契約で働いている人と正社員など無期契約で働く人との間で、仕事の内容や責任などが同じならば、期間の定めがあることを理由に、賃金や福利厚生などの労働条件に不合理な差をつけることを禁じている。さらに、ここでいう不合理な待遇差について裁判例でも明確ではなかったために、今年四月から「同一労働同一賃金」に関連する法律が大企業に、来年四月から中小企業にそれぞれ順次施行されることとなったが、これに合わせて何が不合理かを具体的に示した指針(ガイドライン)もまとめられた。
朝日新聞(2月15日朝刊)は“「同一労働同一賃金」四月から 残るあいまいさ司法判断は”として、「関連法では手当の目的に応じて不合理かどうかを判断することをはっきりさせた。さらに指針で、通勤手当や食堂利用など非正規社員にも必要なものは、待遇差を認めないとした。一方で指針は基本給や賞与については、職業経験や能力などに基づく違いを認めるとしながらも『業績への貢献に応じた部分について正社員と同じように支給しなければならない』などとしており、どこまでの待遇差なら許容されるかが依然としてあいまいだ。日本郵便をめぐる一連の訴訟が企業現場に与える影響は大きい」と報じている。

支給総額では
倍もの格差
郵政ユニオンは二〇一四年、組合員の原告三人が待遇格差の改善を求める労契法20条裁判を東京地裁に提訴(東日本裁判)し、同年原告八人が大阪地裁に提訴(西日本裁判)した。現在、この二つの裁判は高裁まで確定しており、住居手当、年末年始手当や夏期冬期休暇などが認められたが現在、最高裁で係争中。しかし、地位確認が認められなかったことから今回の原告一五四人の集団訴訟を起こすこととなった。
今回の請求はこの東西の労契法20条裁判の地裁・高裁で認められた手当や休暇にしぼって請求するとともに、地裁・高裁で認められなかった賞与については、もっとも格差が大きく非正規労働者の待遇改善には最重要であるとしてあえて今回の請求に組込まれた。この東西の二つの裁判が提起される以前では、非正規労働者には住居手当、扶養手当、年末年始勤務手当、祝日勤務の割り増し手当も寒冷地手当など正社員には支給されている各種手当はまったくなかった。
また、正社員には最大で九〇日ある有給の病気休暇や夏冬それぞれ三日ある夏期冬期休暇もなかった。加えて、賞与は多くの企業で月額給与の何カ月かという形で計算し支給するのが大勢だが、郵政職場の時給制契約社員は月額基本給で大きく差別された上に一律に「〇・三」の乗率をかけられ、正社員との金額は一〇倍もの差が出ているのが実情だ。

処遇改善・均等
待遇かちとろう
この東西二つの20条裁判の一一人の原告が切り拓いてきた司法の判断をさらに広げていくために昨年八月、郵政ユニオン非正規組合員一八七人が日本郵便に対して早期に待遇格差を改善し、各種手当等の差額を支払うよう要求した。しかし、日本郵便はこの要求に応じなかったばかりか、現在最高裁でこれら手当が係争中であるにもかかわらず、卑劣にも東西二つの地裁・高裁で原告が勝ち取った住居手当の支給を正社員の一般職を含めて段階的に廃止した(前述したように、正社員は地域基幹職と一般職に二分され、基本給も異なる)。そして年末年始手当についても正社員の八割支給が認められたにもかかわらず、年末手当を廃止し年始手当のみとする。
さらには無給の病気休暇の日数を増やす。これら三つの項目を、日本郵便は郵政最大労組であるJP労組と結託して、労働協約で定めるという離れ技をやってのけたのだ。かんぽ不正販売でもJP労組はかんぽ渉外社員の基本給一二%をカットしたが、現場組合員には周知しなかった。このカットが労使合意され、不正販売に拍車をかけたことと通底している。
これによって労使協調路線から企業防衛へと突き進むJP労組に加入していないすべての労働者に、変更された就業規則が適用されてしまうこととなった。このように手当の不支給が裁判によって違法と判断されたら、手当そのものを廃止してしまうことをJP労組の協力の下で真正面から実行しているのが日本郵便の実態だ。
こうした現場労働者へのあくなき攻撃の背景には、日本郵便の経営戦略の相次ぐ失敗がある。民営化の下で日本郵便は採算のとれない郵便部門を物流部門への参入をめざしてグローバル化する戦略を立てた。しかし「かけはし」(11月4日付)で述べたように、この戦略の下でオーストラリア・トール社を六千億円で買収したが、業績不振で四千億円の損失が計上されたことやJPエクスプレス統合の失敗で一千億円を超す赤字の計上などが重くのしかかり、ここで六五歳雇い止め、四年連続のベアゼロ、一時金の大幅カット、リストラ等が全国で強行展開された。ところがここでは経営陣の経営責任はまったく問われることはなかった。これら損失のツケは前述したようにすべて現場にまわってきたのだ。
いま、かんぽ生命の不正販売は底の知れない組織ぐるみの展開が明るみに出されてきたが、とりわけ日本郵便経営陣がこの中心軸であり、彼らにこそ、いわばサギ行為を率先して領導してきた責任を取らせていかなければならない。厳罰の実態に目を向けることなく、ひたすら上意下達の運営を強行している日本郵便の組織のあり方を変えていかなければならない。
こうしたなかで郵政ユニオンの非正規組合員原告一五四人が格差是正を求めて裁判に立ち上がった。非正規差別を許さず、処遇改善、均等待遇を求めて闘う今回の集団訴訟は、すべての非正規労働者の格差是正を求めて広げていく闘いであり、日本郵便会社ひいては社会を変えていく一歩を確実に踏み出した。           (M・M)

3.11

「復興五輪」など許さない

被災者・被災地切り捨て

反天皇制・反原発の闘いを

 三月一一日、星陵会館で「被災者・被災地切り捨ての『復興五輪』反対!3・11を反天皇制・反原発の日に!」(主催‥3・11行動実行委)が行われ、六一人が参加した。
 安倍政権は、この日、国立劇場で「東日本大震災九周年追悼式」を秋篠宮夫婦、政府関係などの出席で実施する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ必要があると判断して中止にし、追悼式に代わる献花式を首相官邸で行った。安倍首相は、談話で「防災・減災、国土強靱化を進め、災害に強い故郷を創り上げてまいります」と強調し、原発事故を引き起こした国家責任・原発企業責任に触れることもなく、過去のものとして葬り去ろうという狙いだ。すでに政府主催の「追悼式」は、来年で一〇周年となり終えることを明らかにしている。
 秋篠宮の式典出席は四回目であり、皇嗣として初めての出席の予定だった。秋篠宮の出席は、「天皇代替わり」キャンペーンの延長のうえで式典を天皇制賛美の一環として作り上げ、被災者に「寄り添う」ポーズをとりながら原発事故責任を覆い隠し、天皇制による民衆統合の役割を振舞うことでしかない。
 式典は中止になったが、実行委はこのような政治的意図を許さず、「政府・東電・電力独占の責任を隠ぺいし、原発を推進する『皇族出席の追悼式典』・一斉黙祷反対!」を掲げ、集会とデモを行った。
 集会は基調報告から始まり、以下のポイントを提起した。
 @「復興」と原発政策推進に「国民」を向かわせる政治的意図のもとに行われる儀式。原発事故責任への抗議や怒りを封じ込めるための「追悼」動員であり、それに従わないものの排除、切り捨てだ。
 A東電は住民・労働者の健康被害の責任をいっさい拒否。福島第一原発の労働者は、溶融燃料取り出しなど高線量下での危険な作業が予定され、労働者被ばくが深刻化している。
 B聖火リレーのスタートを「復興のシンボル」として原発事故の対応拠点としていた「Jビレッジ」とし、オリンピックで野球とソフトボールの一部試合を福島市でおこない「復興」をアピールしようとしている。
 C「象徴としての務め」という天皇の「非政治的」政治の拡大と権力性の強大化は、象徴天皇制を超えた元首性を天皇に付与し、戦争国家の要素となった。
 Dオリンピック・パラリンピックで天皇が、「国家元首」として世界に向かって開会宣言を行う。それは原発事故責任追及ではなく、「国難」と「復興」に立ち向かう「国民」の一体性をつくりだす国民の融和(「復興五輪」)と、天皇制と一体となったナショナリズム=国威発揚だ。

差別に貫かれた
「復興五輪」NO
鵜飼哲さん(一橋大学教員)は、「福島原発事故隠しの東京オリンピック・パラリンピックと天皇制」というテーマで講演した。
鵜飼さんは、@二〇一三年九月、五輪招致決定A「復興五輪」と天皇制B惨事便乗型資本主義と祝賀資本主義について批判。
さらにグリーンウォッシング(欺瞞的な環境配慮)を取り上げ、「五輪組織委員会は、『環境五輪』の例として新国立競技場には木がたくさん使われている。だが、熱帯雨林を破壊、多摩川河口の橋建設で干潟が減少、しじみの減少へと追い込んだ。外国人記者から『グリーンウォッシング』だと批判された。コロナウィルス等、周期的に発生する感染症は、世界的な森林破壊による野生動物の生育域の縮小が構造的な原因だと言う研究者もいる。『復興五輪』と称して、その一方で福島原発汚染水の海洋投棄強行が迫っている」と批判した。
また、「国内の少数民族・外国人とオリンピック」について「アイヌの『民族共生象徴空間』は、先住権を認めず、遺骨を返還せず、『文化』のみ多文化主義のアリバイでしかない。沖縄では『聖火』は消失した首里城跡から出発だ。国民統合の強化による反基地運動の切り崩しをねらっている」ことなどを指摘し、東京五輪の反動性を明らかにした。

原発労働と重層
的下請構造批判
池田実さん(元原発労働者)は、「重層的下請け構造と原発労働の実態」について報告。
「浪江町の除染作業では、工期が迫ってくると下請け会社から『草だけ刈ればいい』とせかされ、いいかげんだった。イチエフ(第一原発)構内の作業に移った。APD(アラーム付線量計)が鳴っても、すぐに慣れてしまう。『白血病など、年間五ミリSv以上が認定基準』とはじめに講習をうけるが、これまでに認定された人はわずか。自分は二〇一四年二月から一五年五月まで働いた。累積線量は七・二五ミリSvだった。白血病の五ミリSvを上回っている。今も不安を抱えている」。
「福島第一原発だけでも一〇万人近くの労働者が入っている。除染労働、中間貯蔵施設、警備も含めて様々な関連労働者がいて被ばく者が増え続けている。ガン、白血病になった人、過労死で亡くなった人もいる。しかし、その補償はまったくない。労災申請もあるが、時間とカネがかり、申請しない労働者が多い、ほとんど泣き寝入りだ。政府・東京電力は、無視し続けている。福島原発労災認定された人の損害賠償裁判(あらかぶ裁判)を支援している。東電は、『放射能の因果関係が認められない。喫煙、食生活との因果関係も考えられる』と居直り続けている。被害者切り捨てを許さない。原発関連労働者ユニオンを作りました。労働者の命と健康、福利厚生、労働条件向上を求めていきたい。今後も被ばく労働者への支援をお願いしたい」と訴えた。
連帯アピールが「3・11から10年目 原発被ばく隠しを許さない 首都圏行動」、「オリンピック災害」おことわり・連絡会、4・28━29行動実行委員会、ピリカ全国実・関東グループから行われた。
集会後、デモに移り、千代田区一帯にわたって「3・11を反天皇制・反原発の日に!」などのシュプレヒコールを響かせた。 (Y)



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