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    かけはし2020年3月30日号

必ず防がなければならない


目の前に迫ってきた「サムスン保護法」

ジョ・スンギュ・パノルリム労務士に聞く(半導体労働者の健康と人権守備・パノルリム(SHARPS))

 #産業災害の犠牲者である労働者が、逆に加害企業に損害賠償を求められる? このとんでもない状況がすぐに現実のものとなる。いわゆる「サムスン保護法」と呼ばれる「産業技術保護法」改悪案が昨年の8月に国会を通過し、今年の2月に施行を控えている。あらゆる有害物質を使用している半導体・電子産業では多くの労働者が英文も分からないまま難病にかかって死んだ。その有害物質が何であるかを明らかにするように要求すると、要求自体を封鎖するために、瞬く間に作られた改悪法。これまで労働者の安全のために職場の情報を公開するよう要求してサムスンに対抗して闘ってきた「パノルリム」で労務士として活動するチョ・スンギュ同志と「変革政治」が会った(社会変革労働者党「変革政治」98号より)。

Q まず、「パノルリム」での活動の紹介を簡単にお願いします。

 パノルリム(「半導体労働者の健康と人権守備パノルリム」)は、半導体と電子産業での職業病問題に対処する団体だ。私たちが大衆的に知られるようになったのは江南駅サムスン本館前での座り込み闘争からだったが、その後も労働者の被害情報提供が続いている。パノルリムは、産業災害関連の相談と一緒に作業場の現状を変えて、労災制度を改善するために活動している。
私がパノルリムで働いてもう1年半ほどになった。労務士として被害者の労災申請を代理するなどの業務を担当しており、活動家として制度改善を要求することも一緒に行っている。

Q 最近パノルリムが集中している事案である「産業技術保護法改悪」の問題に直接戻りましょう。この改悪は、いわゆる「パノルリム狙撃法」あるいは「サムスン保護法」とも呼ばれていたが。

 簡単に言えば、「事業所内の安全関連の情報は知っていても言えなくする」ということだ。パノルリムは、事業所の中でどのような有害な化学物質を使用しているかを確認して、労働者にどのような被害を与えるのかを知らせる闘争をしてきた。ところが、産業技術保護法改悪案が施行されれば、その活動を全くすることができなくなる。
改悪法の発議の趣旨をみると、パノルリムがサムスンを相手に有害な化学物質の情報公開訴訟と闘争を繰り広げたことを遠慮なく指摘している。改悪案通過後、実際にサムスン側が法廷でこの法律を自分たちに有利な根拠に掲げるなど、事実上「パノルリム狙撃法」ということを公然と示している。

フリーパスで通過した
「パノルリム狙撃法」

Q 改悪された産業技術保護法が国会で可決されたのは、昨年の8月であり、パノルリムが本格的な抗議をすることになったのは、その3カ月後からであった。このようにした事情があるように思えるが。

 改悪法が発議された時点から見てみましょう。一昨年10月パノルリムがサムスンを対象に有害な化学物質の情報公開訴訟を請求した。ところが、改悪法が発議されたのが、一昨年11月である。私たちが訴訟を請求したらすぐ、「今後は、このような訴訟もできないようにする」という改悪案が1カ月ほどで上がってきたのだ。
この改悪案は、国会に係留されていたが、昨年の7月に日本との貿易紛争が激しくなるととても速く通過した。どんな妨害も受けず、1カ月に満たない期間にフリーパスで通過したのである。瞬く間に処理された。
政府は、改悪法の問題点を知っていたようだ。8月の国会通過に続いて国務会議で、この法案を議決した後、政府が報道資料を配布したが、安全関連情報の公開を封鎖するという問題は、すっぽり抜いて「産業技術保護が強化される」という、部分だけを強調した。
私たちは一歩遅れてこの問題を知ることになったが、他でもない、サムスン側の弁護士の口を通じてであった。情報公開訴訟裁判で、サムスン側が「この問題は、立法的には終わった」と主張して改悪法を踏まえ、情報公開を拒否した。あまりにも不合理だ。

Q 通過した法律によると、今の有害物質の使用明細のような労働者の生命と健康を奪う作業環境に関する情報も確認することができない。サムスンは以前にも職業病被害の責任を隠蔽しようとしてきた。

 もちろん、サムスンはどのような情報も公開しようとしなかった。私は国の問題をもう少し話したい。労働部でさえ有害物質情報を公開したくなかった。私たちが訴訟を起こして闘った結果、裁判所の判決を受けて労働部はやむを得ず情報を公開するとしたのだ。
ところがようやく労働部が傾くと思ったら、今度は産業部が邪魔に入った。産業部は、「情報を公開せよ」は、裁判所の判決が出た後も「国家核心技術と関連しているので、公開してはいけない」と決定した。最終的には、一昨年に私達が情報公開を請求していた内容は公開されなかった。
改悪された産業技術保護法が施行されると、最初から情報公開請求自体が阻まることになる。「非公開が原則」となるからだ。労働者としては「なぜこのような稀な癌や病気にかかる」のか原因も分からないまま死んでいくことになる。さらに、現行法上の労働災害は、労働者が自ら証明しなければならないので、病気の原因を知ることができないから補償も受けられない。ただ苦痛が放置されるのである。

有害物質情報開示すれば処罰だ

Q 改悪法が施行されれば「適法な手続き」で企業の有害物質の使用明細を知ったとしても、例えば、労災被害者が被害を訴えるために、この情報を他人に知らせると、かえって刑事罰を受けたり、企業に莫大な賠償金を求められることになるかもしれないと聞いた。

 「情報を得る目的」以外に誰が、どのような方法でその情報を話してもすべて処罰される。労災被害者が職務上の情報を社会団体に通知することも処罰される。私のような労災被害代理人は労災申請が職務だから情報を取得することまでは大丈夫だろうが、社会的に問題の危険性を知らせると処罰されることもありうる。
処罰条項を見ると、「3年以下の懲役、または3億ウォン以下の罰金」を受けることになる。さらに、「3倍以下の懲罰的損害賠償」まで規定に入った。本当にとんでもないことに、今まで労災被害者が「重大災害の企業処罰法」の制定を要求し、労災企業の懲罰的損害賠償を長い間主張してきたが、これまで全く受け入れられなかった。ところが、むしろ労災被害者が加害企業に「懲罰的損害賠償」をしなければならないという、今回の産業技術保護法改悪は、瞬く間に通過したのである。
さらに、産業部や国家情報院を含む情報捜査機関の調査を受けることもある。今でも「国家核心技術事業所」の中には、国家情報院が管理するところがかなりある。半導体も「国家核心技術」に指定されているが、この法律を契機に「国家核心技術事業場」に問題を提起すると、国家情報院が介入することができ、常時検閲状態に置かれる。

Q この法案が2019年8月2日、国会本会議で採決された時に在席議員210人のうち、棄権した4人を除いた国会議員206人が全員賛成し、反対は一人もいなかった。民主党はもちろん、本会議に出席した正義党と民衆党議員たちまで皆賛成票を投じた。パノルリムは、11月20日に記者会見を開き、議員に意見書を送って「法案に賛成するときに問題を知っていたのか、問題を正すために行動する意向があるか」として回答を送ってほしいと要請している。答えを受けましたか。

 まずは当時参席した国会議員全員が賛成したことを知って驚いた。法案を発議した自由韓国党は言うまでもないが、他の党も、さらには進歩政党までもこれに同意した。
今、韓国で貿易紛争のような、いわゆる「経済的温床」がいかに強力かということについてひしひしと感じた。すべての国会議員が検討もしっかりしないまま「産業技術を保護する」という名目で賛成票を投じた。この改悪案は、発議の趣旨からパノルリムを狙撃する内容が堂々と入っているのに、何の制裁も受けずに一気に通過した。
私たちが国会前で記者会見を通して国会議員に意見書を送り、民衆党からは質問の答えを受けた。正義党からは、文書の形では受けられず、口頭で伝えられた。両方の政党の両方が事案について問題があることを確認し、それに対して間違っていたという意見を受けた。民主党議員は、反応を見せていない状態だ。

Q ムン・ジェイン政府と与党は貿易紛争を口実にして資本家が執拗に要求する化学物質の使用規制緩和を進めている。産業技術保護法改悪も、これと同じ脈絡で見えるが。

 今回の産業技術保護法改悪過程と、昨年初めの産業安全保健法(産安法)改正の過程を比較してみると、このシステム自体がどれだけ大きな問題であるかを非常に露骨に示している。今年初めの三案法改正は、発電所の非正規職労働者故キム・ヨンギュンの死をきっかけに、本当に大きな大衆闘争を通じ、そのすべてが完全ではないが「キム・ヨンギュン法」と呼ばれる施行令が実施された。
このように、労働者の生命と安全のための法は、本当にやっと改正される一方で、資本の利益を保護する産業技術保護法改悪案は、いとも簡単に、何の妨害も受けず、瞬く間に処理された。結局我々の社会そのものが利益ではなく生命を優先する社会に変わらなければ、このような問題は存在し続けるしかない。

Q 最後に、「変革政治」読者に伝えたいメッセージがあれば?

 私たちは、今回の産業技術保護法改悪問題がまたひとつの難しく長い闘争になるのではないかと予想している。名前だけ聞いても不慣れな法ではあるが、私たちの戦いに多くの関心をお願いし社会的に対応するためにも一緒にやれればありがたい。
とりあえず開始の段階ではあるが、初めに対策委員会を作り、一緒に団体を集めたい。改悪された産業技術保護法に対する憲法訴訟も考えている。国会で対処できる問題ではないと見ている。政権与党である民主党は、この事案について反省する態度を見せていない。結局、終着地は、憲法裁や国会になるかもしれないが、これを強制するためにも、社会的な闘いを通して力をつけなければならない。読者と多くの仲間たちが力を合わせていただければ良いだろう。
■インタビュー:イ・ジュヨン機関紙委員長

朝鮮半島通信

▲平壌国際映画祭組織委員会は3月17日、第18回平壌国際映画祭(PIFF)が10月16日から1週間、平壌で開かれると発表した。
▲平壌総合病院の着工式が3月17日、金正恩朝鮮労働党委員長の出席のもとに開催された。
▲韓国軍合同参謀本部は3月21日、朝鮮が同日、平安北道から日本海に向けて飛翔体を2発発射したと発表した。
▲韓国の丁世均首相は3月21日、国民向けの談話を発表し、生活必需品を購入する場合などを除き、可能な限り外出や旅行を控えるよう要請した。また丁氏は、集団感染の恐れがある宗教施設や屋内のスポーツ施設などについて15日間の運用停止を勧告した。

コラム

五十九番 福會課宜

 

 湘南観光のメッカ江ノ島の喧噪を離れ、江ノ島駅から江ノ電が道路上を走る併用軌道沿いに腰越漁港へ向かうと、大きな三叉路がある。その右側に目を移すと日蓮聖人法難の霊場として知られる日蓮宗霊跡本山である寂光山龍口寺の境内が広がり、仁王門が参拝客を迎えてくれる。室町時代にあたる一三三七年創建という古刹だが、鎌倉の街から離れているせいか観光客の姿もまばらで落ち着いた雰囲気。仁王門の階段を登り、後ろを振り返ると湘南の光る海が美しい。
 この龍口寺を訪ねるのは今回が初めてではない。鎌倉や江ノ島とはまた違った漁師町の雰囲気や商店街が続く腰越の街並みと同寺の佇まいに癒やされたくての再訪である。再訪といっても腰越に来るたびに訪れているから五回以上は来山していると思う。交通も至便で、混雑する江ノ電を避けて大船からモノレールでまっすぐ来ることができるのもうれしい。
 龍口寺の縁起は次の通り。日蓮の没後、弟子の日法が堂宇を建立したのが始まりという。『吾妻鏡』によれば、この場所はもともと刑場だった。一二七一年九月一三日午前二時頃、鎌倉幕府を戒めた『立正安国論』により幕府に捕らえられた日蓮は、この龍ノ口刑場で斬首を待つばかりとなった。言い伝えによれば斬首の寸前、死刑執行の役人が江ノ島の方向より飛来した眩しい光に目がくらみ処刑が中止になった。この生還劇を「龍ノ口の法難」と呼ぶ。斬首から逃れたこの地は、日蓮宗の霊跡、霊場として今日まで篤く信仰され、境内には刑を待つまで幽閉された土牢「御霊窟」や神奈川県唯一の五重塔などが建つ。
 前にも書いたが、ボクは仏教とはまったく筋違いのカトリックである。しかし、このごろ難儀なことが重なり少し気疲れしていたボクは、何かにすがるように寝ながら般若心経や観音経などの梵音をYouTubeで聴くようになった。読経や梵鐘の音色になぜか心が安まるのだ。そんな時、久々に腰越でも行こうかと思い、何気なく龍口寺を詣でたのが今回の話である。
 大本堂で願い事をする前に験担ぎにおみくじを引いてみた。同寺のおみくじは、よそでよく見られるような箱の中に手を入れ、探り引く形式のものとは違う。からくり筒を振って飛び出してきた竹ひごの番号にあわせて箪笥状の引き出しを開け、おみくじをいただくものだ。番号は五十九とあった。おそるおそる手にした内容は、大吉や小吉などの吉凶は記されず「福會課宜」とあり、その仏言にはこう書かれてあった。「数々の幸福がここに生まれ、正にめでたい。病は去り、求めるところすべて成就する。家中はいつまでも栄え、何ごとも思うようになる。自身も、草原に草が生えるように、吉事が多く起こるだろう」。これ以上の内容はあるまい。あとで龍口寺のおみくじを調べたら、厳しいことで知られ、「凶」や「恐」の一文字が入っていることも少なくないらしい。
 ボクはそのおみくじを手に願い事をし、線香とろうそくを手向け龍口寺をあとにした。そして、その一週間後、願い事がまさかの満願成就。御礼にと再び同寺に詣で、初めて千円札を賽銭箱に投じ頭を垂れた。そして、近くの料理屋で直会の一献。家に帰りそのおみくじを持ち、裏打ちと額装を額縁屋にお願いした。我が家のご本尊にするつもりである。この吉事から落ちないように、もう二度とおみくじを引かないことを心に誓った。(雨)


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