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新型コロナウイルスについての論文集

かけはし2020年2月3日号 2606号

新型肺炎の感染拡大

すべての人に
医療を、食事を、住まいを!

 コロナウイルスによる新型肺炎の感染が拡大している。今後どの程度感染が拡大するのか予断を許さない状態だ。しかし現時点ではっきり言えることがある。日本において、そして中国でもこの新型肺炎に対する決定打は新薬などではない。すべての人に良質な医療サービスへのアクセスを保証すること。すべての人に、栄養ある食事、そして住まいを確保すること。つまり公共サービスを充実させること。これこそが新型肺炎に対する決定打である。
人類と感染症の闘いを振り返ってみればこれは自明のことである。例えば過去には死をもたらす病として恐れられた結核が克服されたのは抗結核薬のためだけではない。栄養状態の改善による体力の向上こそが結核を克服したのである。そもそも結核菌に曝露しても健康体であれば発病することはない。先進資本主義国であるヨーロッパ列強に比べて、後進帝国主義国であった日本が結核を第二次世界戦後も克服できなかったのは貧しさのせいである。

医療へのアク
セス保障を!
格差社会は新規感染症や「自然」災害に脆弱な社会である。今回の新型肺炎に対する特効薬があったとしてもすべての人に保険証がなければ治療を受けることができない。したがってすべての人に医療へのアクセスを保証することが必要である。しかし最も必要なのは感染しないことである。感染予防の基本は手を洗うこと。しかし清潔な水にアクセスできない、例えばホームレスの人に手を差し伸べないで感染を封じ込めることはできない。
また長時間労働を強制される、一日休むことが解雇や収入減に直結するような劣悪な労働条件が放置されていれば、体調不良にもかかわらず出勤を強制され感染を拡大するリスクとなる。新規感染症のリスクを前にしても、あくまでも健康リスクは自己責任ではない。社会の責任である。学費と生活費を稼ぐために睡眠時間を削って外国人旅行者が多く集まる歌舞伎町の居酒屋でバイトをする学生の感染リスクは、「上流階級」の子どもの感染リスクと決して同じではない。
中国は武漢を封鎖したとニュースが報じている。最悪の対策である。すべての人に医療へのアクセスを保証せずに強権的な封じ込めによって感染症に勝利することはできない。十分な情報公開をせず、感染者に負の烙印を押すような隔離政策は差別による被害をもたらし、感染者が医療機関を受診することをためらわせることに繋がり、逆に感染を拡大しかねない。これは日本のハンセン病への隔離政策の失敗によって証明されている。
新型肺炎の国内での感染拡大は時間の問題である。政府・自治体はすべての住民に医療へのアクセスを保証すること、具体的には自ら新型肺炎の感染を疑い受診する住民の医療費を無償にすること。そして新型肺炎での休業補償を行うこと。感染拡大に対する正確な情報公開を行うこと、マスクや手指消毒薬を無償で配布すること。ホームレスに対して住居を提供することなどが早急に求められている。
格差を解消する取り組み抜きに感染症に勝利することはできない。
(矢野 薫)


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