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    かけはし2020年10月12日号

菅新政権の露骨な脅し


「日本学術会議」への人事介入に抗議する

民主主義破壊の強権性明らかに

労働者・市民は共に闘おう


次々に怒りの
抗議声明が!


 一〇月一日早朝、スマホでツイッターを開くと参議院議員の有田芳生さんの投稿に見入った。「平田勝さんと久しぶりにお会いしました。共産党で起きて、いまや党史からも消えた新日和見主義事件(一九七二年)について聞くためです」と、平田さんの近著『未完の時代―一九六〇年代の記録』(花伝社)の書影が添えられた投稿だ。最寄りの書店に取り寄せできるネット書店で内容と在庫状況を確認し、お気に入りリストにとりあえず登録した。有田議員の次の投稿は拉致問題に「しんぶん赤旗」の一面を自身で撮影した紙面写真を添えて次の投稿が続いた。
 「菅首相が強権を発動しました。日本学術会議の会員(二一〇人)の半数が一〇月一日から新会員として任期がはじまります。安保法制や共謀罪法案を批判した数人が首相の任命名簿から外されました。事務局が政府に問い合わせると間違いではない。理由はノーコメント=B会議の推薦者が外されるのは初めてです」。
 数人はすぐに六人だったことがわかる(宇野重規教授〈政治思想史/東京大〉、芦名定道教授〈キリスト教学/京都大〉、岡田正則教授〈行政法/早稲田大学院〉、小沢隆一教授〈憲法学/東京慈恵会医科大〉、加藤陽子教授〈東京大大学院/日本近現代史〉、松宮孝明教授〈立命館大大学院/刑事法〉)。
 ツイートを検索すると、私の現在地に近い日本共産党地方議員や地域担当者の投稿が選ばれた。かのじょらの投稿にはデジタル画面の切り抜きが添えられていた。とりあえず、これを機会にフォローすることにした。翌朝にはこの作業がかのじょらのルーチンであることを知る。
 大手メディアでの取材記事がではじめたころ、有田議員の次の投稿に見入った。
 「小西さん、よく探してくれました。こんどの一件は菅政権の本質的性格を露呈した重大問題です」。この投稿は参議院議員の小西ひろゆきさんの次の投稿をリツイートしたものだ。
 「一九八三年に、実質的に総理の任命で会員の任命を左右することは考えていない∞任命制を実質的なものとは理解していない∞推薦のとおりに総理が形式的な発令行為を行うと条文を解釈∞内閣法制局の審査で十分に詰めた≠ネどと答弁」。
 小西議員は「『日本学術会議法改正の想定問答集』は総理府作成・内閣法制局審査による政府統一見解」などと、菅内閣の違法性を示す文書に写真を添えた投稿を重ねた。これらをもとに、内閣府との折衝、翌二日に開催した野党合同ヒアリングの準備を進めたのだろう。
 菅首相は二日夕、記者らの質問に対し「法に基づいて適切に対応した結果です」と答えて官邸を立ち去った。翌朝は内閣記者クラブに所属する記者と食事を共にする懇談会(オフ懇)だ。当日の欠席は「朝日」「東京」「京都」の三新聞社のみだったという。国会では七・八日、新型コロナウイルス対策を巡って衆・参両院の内閣委員会が開催される。注目だ。
 二日までに東大職員やマスコミ関係の労組がいち早く抗議声明を発した。三日には官邸前に三〇〇人が集まり抗議の声があげられた。また、週明けの五日に日本社会学会が「内閣総理大臣による任命拒否とその理由開示拒否という異例の決定が学問の自由を侵すものであると考え、六人の会員候補者の任命拒否理由のすみやかな開示、そして六名の会員への任命を求める」とする声明を発した。同様の行動が続くだろう。

学術会議の説
明要求も無視


日本学術会議の会員の定員は二一〇人、任期は六年で三年ごとに半数の一〇五人が任命される。今年九月三〇日に半数の任期が終わり、翌一〇月一日に半数の一〇五人が任命されるはずだった。だが事前に学術会議事務局に届いた任命リストは九九人だった。再任はできず、七〇歳が定年。特別職の国家公務員だが非常勤のため無報酬だ。
一九四九年の発足当初、会員候補者の選任方法は「部、専門、地方別登録有権者による直接選挙」だった。修士論文が合格すれば投票権が得られるといい、任期は原則三年で全員改選、再任制限はなかった。支持政党などによる様々な票の取りまとめがあったことが推測される。
八五年、「登録学術研究団体」からの推薦に基づいて専門ごとの推薦委員会が選考。三年任期で全員改選、連続九年までとなった。推薦元が、大学などの基礎研究を中心とする団体か、ゼネコンの利益誘導を続ける土木学会のような学問との距離や接し方の違いから、学術会議全体の委員バランスが悪くなる。〇五年にこれが改められ現行の方法となる。
学術会議HPによれば、今回の選考のため、一六人の選考委員による一二回の会議が開催された。八月三一日、一〇五人の名簿を内閣府官房人事課に提出。九月二八日に同課から受け取った名簿は九九人に減らされていた。事務局は選考委委員長でもある山極壽一会長(当時)に連絡。山極は事務局に減らした理由を内閣府に確認するよう指示。事務局は三〇日付けで説明を求めたが、回答はなかった。学術会議総会では二日、「任命されない理由を説明いただきたい」「任命されていない方について、速やかに任命していただきたい」の二点を確認、幹事会は翌三日にEメールで首相宛に要望書を送った。

 

御用学者から
のバッシング


Web現代は「今すぐ民営化するのが正解だ」という記事をアップした。執筆者は経済学者の高橋純一。「予算一〇億円を国が負担している」「会員は国家公務員(特別職)である」と会員は無給であるとは書かずにパッシングする。
一七年に学術会議がまとめた「軍事的安全保障研究に関する声明」を盾に、「軍事研究を禁じた過去の声明を継承している。つまり、憲法で規定されている学問の自由に反することを言い続けている」一方で「中国共産党軍と関係の深い中国科学技術協会と協力覚書を結んでいる」とし「日本政府の軍事研究はダメと言いながら、中国政府の軍事研究はいいという国益に反する二枚舌だ」と論ずる。
そして「今の時代、国に提言するために、国の機関である必要はない。実際に、民間会社のシンクタンクは数多くある」と結論づける。この中国関係の部分は甘利明の「国会リポート第四一〇号」(今年八月六日付)の書き写しだ。安倍周辺で虎視眈々と学術会議人事への介入と「民営化」の策略がすでにあったことがうかがえる。
予算一〇億円の内訳は、職員人件費関係が約四割。委員会旅費、国際学術連合会議等分担金、庁費(庁舎の水道光熱費や家賃等か?)、国際学術会議開催庁費の合計で約四割、公用車は手放したようだ。交通費削減のため、事務局から会議回数を減らすように求められることもあったという。海外の科学アカデミーでは、米独が有給、英仏が無給と分かれる。
日本の科学アカデミーにはもう一つある。日本学士院だ。こちらの定員は一五〇人で終身、課税対象となる「年金」二五〇万円が支給される。『タテ社会の人間関係』の著者で社会人類学者の中根千枝が唯一の女性会員、最高齢は一〇一歳の社会思想学の水田洋。学術会議会員の女性比率は四割弱だ。
民間シンクタンクに笹川財団がバックアップする東京財団政策研究所がある。かつて「東京財団」だったころ、竹中平蔵が理事長だった。最近の有名どころでは経済学者の小林慶一郎を研究主幹として擁している。「政府の政策に対する優れた代案を示すことで有権者の選択肢を増やし、日本における政策競争を活性化させる」「研究活動費はほぼ全額、基金の運営によってまかなわれています。このことで、日本だけでなく世界の主要シンクタンクと比べても高い独立性と自由度を持った政策研究が可能となっています」とうたう。運用する基金は六〇〇億円を超え、研究員は三五人。公開されている研究数(政策提言などの文書)は年間一桁しかない。

「平和利用と軍事利
用」を問い続ける


学術会議の役割の一つに「政府に対する政策提言」がある。かつては「科学研究振興予算」の答申を行っていた。五九年までは政府審議会委員の推薦枠があったが、「関係する国の行政機関の長」の一枠のみに削減された。現在参加する審議会は首相を議長に六閣僚と有識者七人が参加する「総合科学技術・イノベーション会議」だ。有識者には菅首相に近いとされるNTT会長の篠原がいる。
戦後保守政権は学術会議を政策策定から遠ざけようとしてきた。その結果、保守勢力は「非科学的」となり、原子力政策と軍備政策を筆頭に誤りを正すことができなくなった。
一五年に防衛施設庁がはじめた研究助成制度「安全保障技術研究推進制度」は年々予算を拡充する一方、大学からの応募が減少した。一五年の予算規模は三億円、一六年度は六億円、一七年度は一一〇億円となり、その後は一〇一億円で推移する。
応募数は、一五年には一〇九件で大学が五八件で過半数を占め、その後も二〇件超で推移した。一八年度は一二件、昨年度は八件と減少、採用は大阪市立大と大分大の二校だった。昨年度は追加募集があり、四四件の応募中、大学は筑波大の一件だけだった。今年度は採用二一件のうち大学は玉川大と情報セキュリティ大学院大の二校だった。
政府による「防衛装備品」の調達額のトップは一四年度まで三菱重工、一五年度に川崎重工と国内メーカーだったが、一六年度以降は米国政府となる。安倍政権による高額な米国製兵器の爆買いによる後年度負担(兵器ローン)の膨張による。また米国政府を窓口とした「対外有償軍事援助(FMS)」による調達は従来のライセンス生産に比べ収益が減少し、三菱重工などの下請け化が進んだ。大学の基礎研究を巻き込んで国内の軍事産業を維持発展させようとした政策の一つが「安全保障技術研究推進制度」だった。これらの政府政策に対する提言が一七年の学術会議による「軍事的安全保障研究に関する声明」だった。

高レベル放射性廃
棄物の最終処分


地球規模の危機に対する科学の知見の重要性が日々高まっている。
東日本大震災では、学術界などで指摘されていた津波への対策を国と東電が先延ばしした結果、福島第一原発事故を招いた。先延ばしによる政策不備は「廃棄物処分」でも顕在化している。
一二年九月、学術会議は原子力委員会に対して「回答―高レベル放射性廃棄物について」を提出した。震災前の一〇年に受けた答申への回答である。その後学術会議ではフォローアップ検討委員会と「暫定保管と社会的合意形成に関する分科会」を設け、原子力委員会への回答に沿った報告書「高レベル放射性廃棄物問題の社会的対処の前進のために」を一四年にまとめた。分科会の委員長は提携会員の船橋晴俊法政大学社会学部教授が務めた(船橋さんはいっぽうで市民として「社会的対処の前進」のために原子力市民委員会座長としても臨んだが、道半ばで一四年八月に亡くなった)。学術会議は翌一五年に「政策提言―国民的合意形成に向けた暫定保管」をまとめた。
これらの提言に対し、安倍政権は暫定保管方式はとらず、一六年中に「科学的有望地」を提示し従来の「地層処分」とスケジュール感を維持する政策を明らかにした。しかし「有望地」という表現では市町村が「文献調査」に応じにくいとして一七年に「科学的特性マップ」と名を変えて発表、応募方式を強化した。
学術会議の提言は安倍長期政権からは警戒される一方で「無視」とも表現できるほど軽んじられてきた。軽んじることができる理由として、いまだ御用学者の多くが会員や提携会員、特任会員のなかにいることも事実だ。また、こうした軽んじられている事実を知ろうとしなかった運動主体が多数である現状があっただろう。
「#日本学術会議への人事介入に抗議する!」行動の中から菅政権を追い込んでいこう。
(一〇月五日 斉藤浩二)

 〈追記〉所定の会議に出席した会員(公務員など一部を除く)には手当が支給される。一日当たりの金額は、会員が一万九六〇〇円、会長が二万八八〇〇円など。今年度予算では総額四九〇三万円、定員二一〇で割ると約二三万円。



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