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    かけはし2020年10月19日号

住民自治・民主主義の真価を


新自由主義的都市政策に反対

住民投票で「大阪市解体」にNOを

大阪都構想に反対しよう

「維新の会」の新自由主義的政策を拒否する

一一月一日投開票の「大阪都構想」をめぐる住民投票が一〇月一二日に告示され、本格的な闘い・組織戦が始まった。この住民投票は、いうまでもなく「大阪市を廃止し、四つの特別区を設置する」という「大阪都構想」協定案への賛否を問うものである。投票できるのは大阪市内の有権者に限られるが、もし住民投票で「特別区設置」が決まれば、大阪府内の他の市町村は、住民投票を経ずに議会の議決だけで「特別区」に移行できることになる。したがって、その影響は大阪市内にはとどまらないし、大阪以外の大都市再編にも影響が及ぶ。維新の会による新自由主義的都市政策にとどめをさす意味でも、再び住民投票で「都構想」にNO!を突きつけよう。


投票用紙には
  「大阪市廃止」と明記


 今回の住民投票で、大阪市民は二〇一五年に続き、再び「大阪市をなくすのかどうか?」という選択を迫られる。住民投票の投票権を持つのは、大阪市内の有権者約二二四万六千人である。前回の住民投票では、投票率六六・八三%、反対七〇万五五八五、賛成六九万四八四四という結果となり、わずか一万票少しの差で否決された。今回、維新の会は、あわよくば総選挙との同日実施で、大阪での吉村知事人気や維新の高い支持率に便乗して、一気に可決に持ち込もうとしていた。しかし、菅政権が一〇月下旬からの臨時国会招集を決めたため、その可能性はなくなった。
 今回の住民投票では、投票用紙の記載と住民説明会の開催方法が前回と異なる。まず、投票用紙に「大阪市廃止」が明記されることになった。前回の住民投票では、投票用紙には「大阪市における特別区の設置についての投票」と表記され、「市の廃止」が明確に分かる表記とはなっていなかった。これに対して、「大阪市の廃止」を明記するよう求める陳情書が提出され、大阪市会が二〇一八年五月に採択していた。「大阪市はなくならない。市役所がなくなるだけ」と強弁を続けていた松井市長は「市ではなく大阪市役所を廃止」と明記するよう求めたが、大阪市選挙管理委員会は変更しなかった。
 また、新型コロナウイルスの感染拡大を理由として、住民説明会が大幅に縮小された。前回の住民投票前には住民説明会が全二四行政区で計三九回開かれ、約三万二千人が参加した。会場では、反対派の意見も配布された。しかし、今回はコロナ感染防止を理由に、回数を五行政区の八回に減らして、会場の席数も制限し、しかも事前申し込みを必要とした。そのため、説明会の参加者は約四千人にとどまった。
 それだけではなく、説明会では、質疑の時間が二〇?三〇分と短く、質問項目も一人一項目に制限されたのである。まさに、「都構想」の本質が暴露されないうちに、早々に住民投票をおこなおうという意図が見え隠れしている。維新の会にとって、市民の関心が高まり、都構想の内容が理解される必要はまったくない。むしろ、投票率が低くなり、自らの岩盤支持層の賛成投票によって可決に持ち込む方が都合がいいと言わんばかりだ。

世論調査に見る
    賛成・反対の動向

 各メディアは、大阪市民を対象にして、「都構想」の賛否を問う世論調査を実施している。読売新聞世論調査(九月四?六日実施)では、賛成四八%、反対三四%、答えない一八%だった。同じ時期におこなわれた毎日新聞の世論調査でも、賛成四九・二%、反対三九・六%、その他一一・二%とほぼ同じような傾向だった。その三週間後に実施された朝日新聞の調査では、賛成四二%、反対三七%とやや賛否の差が縮まった。しかし、前回と比較して賛成が多くなっているのは共通している。
注目すべきなのは、「特別区」ごとの賛否、および政党支持者別の賛否である。「特別区」ごとの賛否は、各紙によって大きな違いが見られ、一般的な傾向を見いだすのは難しい。読売新聞によれば、「北区」では「賛成」六二%、「反対」二五%だったのに対し、他の三つの「特別区」での賛否は「淀川区」四二%対三九%、「天王寺区」四一%対三七%、「中央区」四一%対三九%とわずかな差だった。ところが、朝日新聞によれば、「淀川区」で最も賛成の割合が多く、賛成四八%、反対三九%となっていて、他の三区は一?六%の差で賛成が多いという結果だった。
また、政党支持者別の賛否では、自民支持層で賛否が拮抗している、あるいは賛成の方が反対よりも多い。自民党は、紆余曲折の末、党府連としては「反対」の態度をとることになったものの、府議会議員の中には賛成の議員もいる。大阪市議団はまとまって「反対」を堅持してきたが、それにもかかわらず自民党支持者の中で「賛成」が多い状況にある。一方、公明支持層では反対が賛成を上回っている。公明党は、組織としては「都構想」支持だが、創価学会員の中には依然として反対の声が強く、創価学会としては「自由投票」で臨むと報じられている。無党派層では、反対の方が多い(毎日新聞)。
そして、前回の住民投票で「賛成に投票」した人の八二%が今回も「賛成」、「反対に投票」した人の八三%が「反対」と回答していて、賛否はほぼ固定化している状況が明らかになっている(朝日新聞)。こうした分断状況は、街頭で「都構想」反対の宣伝をしているときの実感とも一致している。
こうした世論形成には、メディアに頻繁に露出して、コロナ対策を「やってる感」を出しまくっている吉村知事の存在も大きいが、吉村知事を評価する割合よりも「都構想」賛成の割合の方がかなり低くなっている。また、カジノ・IRへの反対は賛成を大きく上回っている。こうしたことは、有権者の多くが「都構想」それ自体の評価によって賛否を決めていることを示すものであろう。

なりふり構わぬ維新の
    「都構想」宣伝工作


維新の会は、今回の住民投票にあたって、自らの統治下にある行政組織や公的機関をフル動員して、なりふり構わぬ宣伝をおこなっている。たとえば、大阪市の広報紙には、前回は賛否両論が掲載されていたが、今回は「都構想」推進の宣伝が一方的に掲載されてきた。つまり、維新の会の主張を垂れ流しているのである。そのため、市の特別参与から「広報というより広告」「バラ色の表現は避けたほうがいい」との指摘を繰り返し受けたと報道された。
また、PR動画を作成した「副首都推進局」(大阪府と市の共同部署)の職員が、検討過程の会議で「特別区制度の実現は市役所の基本方針。われわれとしては賛成に誘導するために、あくまでも市政広報でありますので」と発言していたことが公開された議事録によって明らかになった。これを受けて、松井一郎市長と吉村洋文知事はともに「不適切な発言だった」と認めざるをえなかったが、こうした事実はまさに維新の会による徹底した公務員支配の結果だったことは言うまでもない。
大阪府・市ともに維新の会が掌握してから九年近くがたち、その間に組合活動の全面的規制(とりわけ大阪市)によって、職場に労働組合が不在となる状況のもとで、大阪府・市の職員をトップダウンで完全に統制してきた。職員は自らの考えを持つことを事実上禁じられ、選挙で選ばれた知事・市長の「政策」(多くは「思いつき」なのだが)の具体化をすればいいと言われてきたのである。
また、大阪市立保育所・幼稚園で無料配布されている子育て情報誌「まみたん一〇月号」に大阪都構想のPRなどが記された「大阪維新の会」の広告(都構想に賛成、維新が子育て施策に集中的に予算を投入など)が発行規定に反して掲載されたことが問題となった。大阪市は形だけ「回収」を要請したが、多くは配布されたままになっている。さらには、最近になって、大阪ミナミのアメリカ村で、維新の会が許可を得ずに「変えるぜ、大阪」などの都構想PRのバナーを街路灯に掲示していたことも発覚した。まさに「やったもの勝ち」の状態だ。

大阪都構想の狙い?
「二重行政解消」から「大阪の成長戦略」へ


大阪都構想の狙いについては、本紙でも度々指摘してきたが、大阪市の財産・税収・権限を大阪府に吸い上げて、夢洲をはじめとしたベイエリア開発などの大規模開発を一元的にすすめようとするものだった。住民説明会でも、吉村知事らは「大阪の成長を止めないためには都構想が必要」と主張し、「万博・IR・カジノ」と「うめきた開発」、「JRなにわ筋線」、「淀川左岸線延伸」、さらには「リニア新幹線の大阪延伸」などという「大型開発・大型投資」を推進すると宣伝していた。これには莫大な投資が必要である。つまり、そのために「大阪市」を解体して税収・財産・権限を府に統合すると維新の会自らが認めているに等しい。さらに維新は、大阪市内で、西成地域などでのジェントリフィケーションの推進、夢洲などベイエリアを中心としたスーパーシティ構想など、新自由主義的な都市政策を推進しようとしており、その財源も必要となってくる。
維新の会は、前回の住民投票にあたっては「二重行政の解消」によって無駄遣いが減り、大きな財源を生み出せるという点を強調していた。そして、二重行政のムダの象徴として、大阪市立環境科学研究所(環科研)と大阪府立公衆衛生研究所(公衛研)を「大阪健康安全基盤研究所(新研究所)」という新たな研究所に統合して、地方独立行政法人化による民営化をおこなった。環科研にあった環境分野については、当初は廃止と言いながら、結局は「大阪市立環境科学研究センター」として直営で存続させることになった。
この統合・民営化の結果、十分に統合されていない状態のまま、新型コロナウイルスの感染拡大に直面することになった。そのため、PCR検査については、旧公衛研の森ノ宮センターで大阪府内の検体を、旧環科研の天王寺センターで大阪市の検体を検査している。新研究所の労組によれば、むしろ統合せずに別々に検査を続けた方がリスク管理という点ではベターとのことである。全国的に見ても、道府県と政令市の両方に衛生研究所があるのが普通であり、大阪府と大阪市にそれぞれ衛生研究所があるのは、そもそも二重行政ですらなかったのである。
世論調査での都構想賛成の理由で一番多いのは、読売でも毎日でも「二重行政がなくなる」だったが、最近の維新は「二重行政の解消」よりはむしろ、「住民サービスの向上」「成長する大阪の実現」を宣伝文句にしている。「成長する大阪の実現」の本質についてはすでに述べたが、「住民サービスの向上」についても具体的な中味は語られてはいない。ただ、「一人だった市長の仕事を四人の区長で分けて行う」ことで「課題解決のスピードは四倍に」なるとか、「近くに権限のある区長がいることで住民の声が伝わりやすくなる」とか言っているだけなのだ。

「特別区」の財政不安と
    住民サービス低下


大阪市が廃止された結果として設置される特別区は、財政的にも権限的にも、政令市はもちろんのこと、中核市以下の存在になってしまう。大阪市の一般財源のうち、特別区に配分される財源は、住民税、地方消費税交付金、たばこ税、軽自動車税などで、固定資産税・都市計画税・法人市民税・事業所税などは大阪府税となる。特別区の独自財源は、二〇一六年決算ベースでは大阪市の約八六〇〇億円から約二九〇〇億円に激減する。 したがって、特別区は府からの財政調整交付金に依存することになる。しかも、大阪府に移転される財源が約二〇〇〇億円ある。財政調整交付金の金額をどうするか、どの特別区にどれくらい配分されるかは、あくまで府と各「特別区」との協議次第である。大阪府と「特別区」、「特別区」相互の予算争奪戦が予想される。
確かに、公明党との協議によって、今後一〇年間に三七〇億円を府から上積み配分されることになっている。しかし、特別区への移行にともなう初期投資やランニングコストを考慮すると、特別区の財政は、維新の会による楽観的な試算とは異なるものとなり、府の財政状態によっては、協定書で「維持する」とされた「特別区」の住民サービス、とりわけ福祉・教育分野などでのサービスが低下することは必至である。
大阪府・大阪市の財政状況は、カジノ・IRの先行き不透明、大阪メトロの収支悪化、インバウンド激減、新型コロナウイルス感染拡大による経済状況悪化などで、極めて厳しくなることが予想される。大阪市について言えば、二〇二一年度の税収は、今年度当初予算比で約五〇〇億円減少すると試算されている。しかも、コロナ対策で今後も膨大な支出が必要となる。しかし、維新はこうした状況の変化を都構想の財政試算に盛り込むことを拒否し、「都構想で経済効果見込み額、最大約一・一兆円」と根拠のない数字を並べている。

いよいよ正念場の
   「都構想」反対運動


住民投票は一一月一日に投開票されるが、事前の運動は通常の選挙と違って、かなり自由におこなうことができる。維新の会は前回同様、豊富な資金を投入してメディアを通じた宣伝などを展開してくるだろう。これと対峙する都構想反対運動は前回と違って、自民党市議団、立憲民主党・連合、共産党、市民運動などがそれぞれで反対運動を展開する状況になっている。
自民党府議団の一部は賛成の立場をとっており、公明党も前回の「住民投票は賛成、都構想は反対」から、全面的賛成に転じた。二〇一五年には、市民運動、共産党、民主党(当時)、自民党、町内会まで含めた共同戦線が成立し(公明党市議団も事実上反対)、草の根からの運動の盛り上がりによって、住民投票での否決に持ち込むことができたが、今回はそういう状況には至っていない。前回の住民投票やその後の府知事・大阪市長選では、維新の会による「野合」批判が展開されたこともその一因となっているが、主な要因は維新の会をさらに追い詰める闘いを組織できなかった運動の側にあったと言わざるを得ないだろう。
前回の住民投票で「府民のちから2015」を結成して、反対運動を展開したグループは、七月に結成された「大阪・市民交流会」(平松邦夫元大阪市長らが共同代表)と九月になって発足した「REAL OSAKA」(田中誠太前八尾市長が代表)などに分かれて活動することになった。
「どないする大阪の未来ネット」(どないネット)は、「大阪・市民交流会」とともに、毎土曜日の街宣・商店街練り歩き、市民街宣車の運行など持続的な運動を展開してきた。港合同の労働者は、自転車に宣伝用ののぼりを立てて、宣伝活動をおこなっている。
大阪市外の市民運動団体も、今回の住民投票で大阪市解体・「特別区」設置が決まれば、府下の自治体でも議会の議決だけで「特別区」に変えられるため、危機感を深めて市内での反対運動に参加してきている。堺市の「市民一〇〇〇人委員会」などは西成区天下茶屋駅周辺の活動を展開している。北摂地域では「豊中市民連合」「高槻・島本市民連合」「MINITs9(大阪九区の市民グループ)」などが「大阪市廃止・分割、住民投票NO!北摂市民アクション」を立ち上げて、東淀川区での活動にとりくんでいる。「茨木総がかり行動」も同じく東淀川区上新庄駅周辺での街宣を始めている。
実際に街宣をしていると、飛び入りで手伝ってくれたり、横断幕を寄付してくれたりと市民の反応は徐々に良くなっている。迷っている人が街宣メンバーに真剣に語りかけてくる場面も増えてきた。まさに都構想反対運動にとっての正念場である。さまざまな創意工夫をしながら、できるだけ多くの市民に「都構想」の問題点・矛盾点を語りかけ、住民投票を否決に追い込み、維新の会による新自由主義的な都市政策に改めてNOをつきつけよう。     (大森敏三)




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