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    かけはし2020年10月19日号

改憲・強硬突破体制許さない


菅政権の学術会議人事不当介入は明白

情報操作・民主主義破壊やめろ


脅威にさらされている学術的自治


 英科学誌ネイチャー(電子版)は一〇月付で六日、「科学と政治の切っても切れない関係」と題した社説を掲載、「脅威にさらされている学術的自治」の例として、気候変動問題における研究者と政治家の亀裂の例として、トランプ当落で大きく左右するアメリカ大統領選の影響、ブラジルのボルソナロ大統領による国立宇宙研究所所長の解任、インドのモディ首相による統計データへの政治的圧力の停止を求める経済学者らの書簡を挙げた。加えて「そして先週、日本では菅義偉首相が、これまで政府の科学政策に批判的だった六人の学者の日本学術会議への指名を拒否した」ことを紹介。「科学と政治の関係を導いてきた慣習は脅威にさらされており、ネイチャー誌は看過することはできません」とまとめている。
 米学術誌サイエンス(電子版)は「日本の新首相、学術会議に一戦仕掛ける」との見出しのニュース記事を掲載、英経済紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は「学術会議スキャンダルは、ヨシヒデ・スガの蜜月(政治指導者が就任した直後に一般に見られる、メディアや社会との良好な関係のこと)を脅かす」と報じた。米大統領選を前に、ネイチャー(電子版)は毎日のようにトランプ政権の科学政策検証の記事を掲載している。
 九日、自然史学会連合・日本数学会・生物科学学会連合・日本地球惑星科学連合・日本物理学会など自然科学系の九〇学協会が共同で「候補者の一部について、政府により理由を付さずに任命が行われなかったことに関して憂慮しています。従来の運営をベースとして対話による早期の解決が図られることを希望いたします」という緊急声明を発した。
 「安全保障関連法に反対する学者の会」は、日本学術会議会員任命拒否に対する声明・要望書を発表した学会・団体の集約を続け、その数は九日までに一三〇を超えた。

政府与党による論点ずらし

 一〇月三・四日調査のJNN世論調査結果が五日朝から報じられ、日本学術会議の会員候補六人の任命を見送ったことについて五一%の人が「妥当ではない」、二四%「が妥当だ」と答えた。また、菅内閣の支持率が七〇・七%(不支持は二四・二%)と、ひと月前の調査の六二・四%(不支持は三六・二%)から八・三ポイント上昇した。
自民党は政務調査会を中心に、支持率の大幅な低下を回避するための対策を講じ始めた。先兵役が老舗のフジサンケイグループや新興の右派ネットメディアだ。
五日午後、フジテレビの情報番組「バイキングMORE」で、同局の平井上席解説委員が、学術会議会員は「六年間ここで働いたら、そのあと学士院ってところに行って、年間二五〇万円の年金もらえるんですよ、死ぬまで、皆さんの税金から」と発言したという。この誤りは、ウィキペディアなどで記憶を確認しながらまとめた本紙前号の拙文をご覧いただけた方には明らかだろう。同番組は翌日の放送で釈明したという。
フジテレビは日曜の朝、橋下徹元大阪市長をレギュラーコメンテーターに担ぐ「報道特番ザ・プライム」を毎週生放送している。一一日のゲストは立憲民主党の今井雅人衆議院議員、甘利明元自民党政調会長が出演した。今井議員は後述する内閣委員会での政府追及の中心でもあった。甘利は自慢げに「日本の税金が学術会議を通じて中国の軍事研究に流れている」という自説を話した。橋下は局の誘導によるものか、七〇年に出版され現在は絶版の『赤い巨塔』を取り上げ、学術会議はいかにも左翼ずれして特権的なインテリが牛耳ってきたかのような印象を視聴者に与えようとした。
この番組では視聴者アンケートを行っている。この日の問いは「菅首相の総合的・ふかん的≠ニいう説明 あなたは?」で、回答は二択。約三〇分間で四万を超える人の投票があり、「納得できる」が四五%、「納得できない」が五五%だった。

政府へのボディーブロー

 五日夕、着座する菅首相を囲んだ内閣記者会のグループインタビュー≠ェはじめて開かれた。質問できるのは申し込み順で三社に限られ、他社などは傍聴だ。菅は記者の事前通告されていると思われる質問にメモに目を落としながら次のように答えた。
「推薦者をそのまま任命してきた前例を踏襲してよいのか考えてきた。省庁再編の際に、必要性を含め、在り方について相当の議論が行われ、その結果として、総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を求めることになった。まさに総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から、今回の任命についても判断した」「学問の自由とは全く関係ない。それはどう考えてもそうではないか」。
この翌日、時事通信は「首相は自分で招いたことなのにおろおろしている」「始めからやらなければよかった」「大失敗だ。首相の責任は免れない」という政府や公明党の関係者の声があったことを配信している。
六日、野党は合同ヒアリングを開き、二日に開催したヒアリングで政府に求めた首相による会員の任命権に関する文書を公表させた。
七日午前、衆議院内閣委員会で閉会中審査が開かれ、野党は過去の答弁との整合性や法解釈に変更があったのかなどの政府への追及を行った。
同日午後、自民党の下村政調会長は「法律に基づく答申が二〇〇七年以降政府に提出されていない」「欧米の同様の機関はほとんどが非政府組織で独立性を維持」などを根拠に、党内に日本学術会議のあり方を検討する作業チームを設け、年内にも意見をまとめ、政府に要望すると発表した。答申は政府からの諮問がなければ作成しないもの、諮問がなかっただけだ。明らかな印象操作だ。
八日午前、参議院内閣委員会で閉会中審査が開かれ、政府は「総合的、俯瞰的」という文言の出所を〇三年二月二六日に総合科学技術会議(議長は小泉総理)がまとめた「日本学術会議のあり方について」であると答弁した。
この文書で「総合的、俯瞰的」との記載は次の一カ所。「日本学術会議は―(中略)―総合的、俯瞰的な観点から活動することが求められている」と主語は学術会議で、文書では会員に対する「人事」や「任命権」は触れていない。
九日午前の閣議後記者会見で、河野行政改革担当大臣は「私のところで、年末に向け、予算や機構、定員について、聖域なく、例外なく見る」と強弁した。河野の大臣権限内である検討の対象は、予算や事務局の定員などで、会員は含まれないと説明を付け加えた。
九日午後、二度目の内閣記者会のグループインタビュー≠ェ開かれ、記者団からはこの間の野党合同ヒアリングや両院での閉会中審査で明らかになってきた内容を任命権者である菅首相本人に問うた。菅は「先月二八日に決裁、その直前に任命する九九人のリストを見ており学術会議が推薦した一〇五人のリストは見ていない」ことを明らかにした。日本学術会議法の「推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する」という規定から逸脱していることが奇しくも明らかとなった。
野党サイドは「現状の違法行為を解消することが政府の責任だ。違法状態を放置したままでは何を言っても何の説得力もない」(一〇日、枝野立憲民主党代表)と、政府に対して六人の任命を求めていく。

6人を外したのは誰か

 政府サイドは印象操作を目的に情報操作を行っている。本人が真実と思って発言したかが不明だが、副作用の一つが九日のブリーフィングでの首相発言だろう。情報操作は、その誤りを信じたものにとっては毒物である。
「日本学術会議のあり方について」の(当面の改革案)の章中の事務局体制について≠ナは「人事運用の工夫により専門的職員の養成を検討すべき」など事務局の充実を求める内容だ。財務運営≠ナは「学協会または科学者が経費や人員の一部を負担する仕組みの導入について検討すべき」とある。また、「今回の改革後一〇年以内に―(中略)―評価、検討を客観的に行い、その結果を踏まえ、あり方の検討を行うこととすべき」とある。このあり方の検討は、一五年に有識者会議が「日本学術会議の今後の展望について」としてまとめている。
学術会議が提出した一〇五の推薦リストから六人を外したのは誰か。
二〇一四年、国家公務員法が改定され内閣人事局が発足、局長には官房副長官が就き、加藤官房長官、萩生田文科相が兼務してきたが、一七年八月、警察官僚出身で事務職の杉田和博が就いた。
前川喜平元文科事務次官は八日放送のJNN系インタビューで、「一六年八月に文化審議会の文化功労者選考分科会の委員について大臣の了解をもらった案を官邸に持っていったことがあった。杉田副長官のところに持って行ったが、一週間そこいらしたところで呼び出されて、一〇人程度の候補者のうち二人差し替えろと言われた。二人は好ましからざる人物であると。この候補は任命するなと」「こういうことが世の中に見せられることによってさまざまな意見が萎縮する」「そういう意味で表現の自由に対する威嚇、萎縮の効果が非常に大きい」と発言している。
これまでの報道では、官邸が学術会議会員任命に介入したのは一六年一一月の補充人事から。臨時国会を今月二六日から一二月初旬までの約四〇日間の会期で開くことで与野党は合意した。
映画監督の森達也は、五日に発表した「映画人有志二二人の抗議声明」の中に、ドイツの牧師マルティン・ニーメラーの次の言葉を入れたらどうかと提案したという(六日「朝日」)。
「ナチスが共産主義者を攻撃し始めたとき、私は声をあげなかった。なぜなら私は共産主義者ではなかったから。次に社会民主主義者が投獄されたとき、私はやはり抗議しなかった。なぜなら私は社会民主主義者ではなかったから。労働組合員たちが攻撃されたときも、私は沈黙していた。だって労働組合員ではなかったから。そして、彼らが私を攻撃したとき、私のために声をあげる人は一人もいなかった」。
自公政権による情報操作をはね返そう。分断をはねのけ、菅政権を退陣に追い込もう。
(10月12日 斉藤浩二) 

10.10

響かせあおう死刑廃止の声

国家による殺人やめろ

49人を執行した安倍政権

 一〇月一〇日、東京の四谷区民ホールで「世界死刑廃止デー企画 響かせあおう死刑廃止の声2020」が開催された。コロナ禍もあってデモは中止になったが、集会には一二〇人が参加した。主催は死刑廃止国際条約批准を求めるFORUM90。この日、福岡ではデモ、大阪でも集会が行われている。
 二〇〇二年に設立された世界死刑廃止連盟(本部パリ)は、一〇月一〇日を前後して毎年行動を呼びかけてきた。日本でも「響かせ合おう死刑廃止の声」を掲げた集会を行ってきた。
 世界の多くの国が、「死刑」という残忍きわまる国家犯罪の中止に踏み切る中で、日本の安倍政権は第一次で一〇人、第二次以降で三九人、あわせて四九人もの死刑を執行している。安倍首相は病気退陣したが安倍政権を引き継いだ菅政権が、「死刑執行」を強行する姿勢を変えないことは、法相に在任中一六人の死刑を執行した上川陽子議員が法相として再々任したことを見ても明らかだ。
 一九八九年一二月、国連総会は「死刑廃止条約」を賛成五九カ国・反対二六カ国で採択したが、日本は安倍政権の下で「死刑」という「国家の名による殺人」を繰り返している。この日の集会は、日本が「死刑廃止条約」を批准し、死刑制度をなくしていくことを求めて開催された。

106カ国が
死刑を廃止!


集会では冒頭に死刑制度を考える議員の会副会長の福島みずほ参院議員のメッセ―ジが紹介された後、主催者を代表してアムネスティー・インターナショナル日本事務局が死刑制度をめぐる国際的状況について報告した。
「昨年、ナイジェリア、シンガポールでオンラインで死刑判決が下されるというショッキングな事態が起きた。上川陽子法相は『死刑停止は現在のところ適切ではない』と死刑廃止に背を向けている。生存権は基本的人権の柱だ。一九八九年に採決された死刑廃止国際条約を日本も批准すべきだ。現在死刑を廃止している国は一〇六カ国、事実上廃止している国を含めれば国連加盟国一九三国中一四二カ国に達する」。
「二〇一九年に死刑を執行した国は、日本、朝鮮、中国、シンガポール、バングラデシュ、パキスタン、バーレーン、イラン、イラク、サウジアラビア、イエメン(以上アジア、中東)、スーダン、南スーダン、ソマリア、ボツアナ(以上アフリカ)、そして米国だ。死刑廃止国である南アとスウェーデンは『死刑を執行しないという確約がない限り、容疑者を日本に引き渡さない』という対応を取っている」。
「日本の世論調査では死刑廃止は時期尚早という意見が八〇%を占めるが、将来的にはどうかという質問では拮抗している」。

障がい者差別
と相模原事件


「スペシャル・トーク」が「いのちの選別と死刑」というテーマで、作家の雨宮処凛さんと映画監督・作家の森達也さんの対談という形で行われた。
対談では、非正規・フリーター・いじめ・生きづらさという形で一九九〇年代から問題にされてきたことがさらに構造的に深刻化してきたことが改めて焦点化されていった。
森達也さんは相模原事件で一九人もの障がい者を殺害し死刑判決を受け、控訴せずに死刑が確定した植松聖(一審死刑判決)の件に関して、植松のように世間的に注目を浴びた事件に関して、裁判所としては「本人に責任能力がなかった」ことには絶対にさせず、その上で「まわりに『迷惑』をかけている障がい者を殺してもいい、と彼が急速に変わっていった契機、については明らかにすべきではない」という判決に至った問題点を厳しく指摘した。
論議の中では、菅新内閣が第一次安倍改造内閣で法相をつとめオウム事件の三人の死刑執行にサインした上川陽子を再び法相に任命したことが批判された。また、「被害と加害の二分化・二項対立」という矮小化の問題点も指摘された。
最後に、太田昌国さん、池田浩士さん、香山リカさんの間で「死刑廃止のための大道寺幸子・赤堀政夫基金・死刑囚の作品展への講評」が行われた。「死刑制度」はいますぐ廃止しなければならない。     (K)




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