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    かけはし2020年10月19日号

トランプ 平和的権力移行確約拒否


米国

極めて深刻な街頭での対立シナリオも現実味

ダン・ラボッツ



権力居座りへ
何でもあり!


 米国大統領のドナルド・トランプは繰り返し受けたインタビューで、敗北の場合の平和的権力移行の約束を拒絶してきた。そして彼の言明は、人々や野党民主党内部に、さらに彼自身の共和党にも驚きを引き起こした。トランプは、郵便投票――二〇万五〇〇〇人の死者を残した新型コロナウイルス・パンデミックを理由に今さらに広く利用されている――は「詐欺」だ、と主張している。郵便投票はこれまで何年もいくつかの州で利用され、不正の証拠は一つもないにもかかわらず、彼は、大量の不正票が出るだろう、と語る。米国人すべてが今、トランプによる違法な権力強奪の可能性について議論を交わしている(注)。
 民主党下院指導者のナンシー・ペロシはトランプに向かって、「あなたは北朝鮮にいるのではない、トルコやロシアにいるのでもない。大統領、ついでながらそこはサウジアラビアでもない。あなたがいるところはアメリカ合衆国なのだ。それは民主主義の国であり、そうであるならばなぜあなたは一時でも、合衆国憲法への就任宣誓を尊重しようとしないのか」と話しかけた。
 トランプを強く支持してきた共和党上院指導者のミッチ・マコンネルすらも、言明の必要を感じさせられ、「一一月三日の選挙の勝者は一月二〇日に就任するだろう。一七九二年以来四年ごとにあったこととまったく同じに、整然とした移行になるだろう」とのツイートを明らかにした。ほとんどの共和党政治家はコメントを避けようと努めている。
 トランプの対立候補、民主党大統領候補者、ジョセフ・バイデンは今激戦州で、世論調査でリードを続けている。そして多くの女性、ある程度の白人労働者の有権者、さらに高齢層有権者がトランプを見捨てつつある。それゆえ彼は、選挙を盗み取るために努力し続けてきた。
 彼は、合衆国郵便サービス予算を削減した。そしてそれは、郵送票が間に合って届くことを妨げることになる。彼は、郵便投票をさらに困難にするために、四つの州――アイオワ、ネバダ、ニュージャージー、モンタナ――に対し またナバホ部族連合に対し訴訟を起こした。彼は、郵便投票は大統領選挙に誰が勝利したかを決定することを不可能にするだろう、と主張している。
 予想されていることとして、いくつかの州では最終選挙集計は、投票日後数日では、おそらく数週間後であっても確定しないかもしれない。トランプは、法廷が選挙結果を決めなければならないかもしれないと言いつつ、ルース・ベーダー・ギングスバーグの死によって生み出された最高裁判事の空席を早急に埋めるよう圧力をかけ続けている。

投票日には
一体何が?


▼トランプが一般投票で勝つことは事実上あり得ない。しかし彼が選挙人で明確な多数を勝ち取るならば、彼が勝者となり、大統領職を維持、米国の政治システムの権威主義的変革を続けることになる。
▼不公正だと、あるいは盗まれたと民主党員が信じる選挙をもしトランプが勝ち取るならば、選挙をひっくり返そうと民主党は裁判に訴える可能性があり、そうするだろう。とはいえ司法長官は、あらゆる決定を遅らせようと訴訟を闘うと思われる。全く疑いなく大規模な抗議が起こるだろう。トランプはもしかしたら、この抗議を抑え込むために軍を出動させるかもしれない。多くが武装した彼の支持者も、彼の敵と闘おうと出てくるかもしれない。
▼もしトランプが選挙ではっきりと敗北し、しかし敗北を認めることを拒否し、一月二〇日までホワイトハウスを去らなければ、これはもっと深いと言える対立に幕を開く可能性があるだろう。ひょっとすると、トランプを取り除きジョゼフ・バイデンを就任させるに際し、軍が決定的要素になるかもしれない。もしそうしたことが起きることがあれば、米国社会における軍の役割は本質的に変わるだろう。軍は米国の民主主義の保護者となるだろう。まさに、民主主義自身の理念をそこなうと思われる見通しだ。
▼われわれが想像できるほとんどすべてのシナリオは、トランプ支持者と彼の敵対者間の、これまでわれわれが見たことのあるすべてよりもはるかに大規模で暴力的な、米国の街頭での武装対立に導く可能性も十分にあると思われる。

 左翼の一部――自分自身も含む――は、トランプが勝利を主張し権力強奪を正当化することをもっと難しくするために、バイデンへの投票を強く促している。米国民主的社会主義者(DSA)はトランプに立ち向かう中で数千人の新メンバーを得ている。そして左翼全体は、強力な抵抗運動とわれわれが必要とする新たな社会主義政党を作り上げる上で、重要な役割を果たす可能性がある。(二〇二〇年九月二八日、「ニューポリティクス」より)
(注)この記事は、トランプが新型コロナウィルス感染検査で陽性となり、入院した、との一〇月二日の公表以前に書かれた。(「インターナショナルビューポイント」二〇二〇年一〇月号)

ブラジル

世界的に重要な大湿原が炎上中

ボルソナロ政権の打倒が不可欠

エスクエルダ・オンライン

 ブラジルでもっとも重要な生物相の一つの、動物相と植物相を現在進行形で荒廃させている恐るべき火災として、今パンタナール(パラグアイとの国境地帯のブラジル南部に広がる世界でも有数の大湿原:訳者)で起きている生態環境の破局的事態は、不幸なことに単なる自然災害ではない。アマゾンの破壊とまさに同じくこれは何よりも、ボルソナロ政権の反環境政策の直接的結果だ。二〇二〇年九月の最初の一四日間にアマゾンで起きた火災件数は、二〇一九年九月全体で記録された数をすでに上回った。

恐るべき惨害
が今進行中だ


しかしまさに今、パンタナールの状況はさらにもっとと言えるほど深刻だ。一月から九月の前半までで、パンタナールはすでに二九〇万ヘクタール以上が火災で消失させられた。これは、数千種にのぼるブラジルの動物相と植物相の生息地である世界最大の熱帯湿原、パンタナール領域全体の一九%に等しい。そして前述の種の多くは絶滅の怖れがあり、科学界ではまだ知られていない他のものもまだ多くある。
今年に入ってこれまでで、宇宙探査全国研究所(INPE)によってこの地域で一万五〇〇〇件以上の火災発生が記録された。これは、監視が一九九九年に始まって以来記録に残された中では最高の火災率だ。そして二〇一九年全体に記録された一万件よりもはるかに多い。死んだか重度の火傷を負ったか、あるいは激しい苦悶を示すまさに多くの動物――ジャガー、ワニ、アリクイ、その他――の像は、この事態のひどさに対する強力な証拠になっている。
これらの火災はすでに、パンタナールにある先住民の土地全体のおよそ半分に打撃を与えた。その土地は、八月にぱっと燃え上がる二〇〇件の火災を経験、九月の前半にはさらに別の一六四件の火災に遭遇した。抑えようのない火災は村々を取り囲み、家や畑を破壊し、さまざまなエスニックグループの先住民に呼吸器系の問題によって入院という状況を味合わせた。

アグリビジネス
こそ暴虐の黒幕


火災は外から彼らの先住民領域に入った、つまりこれらの火災は農民や大事業家によって不法に着火させられた、という先住民指導者からの数え切れない報告がある。そしてその不法な着火は、アグリビジネス向けに生産と利潤を増大させるという分別のない行為の中で行われているのだ。
この資本主義システムの中で、またボルソナロ政権の下でアグリビジネスは、米や大豆オイルといった商品に対しさらなる食品価格インフレを推し進めている。ドル高の結果彼らが海外で生産しているもののほとんどを輸出し、こうしてアグリビジネスにその利益をさらに引き上げる余地を与えているからだ。
この森林火災の影響は、パンタナールが位置している二つの州、マット・グロッソとマット・グロッソ・ド・スルーでだけ感じられているわけではない。これらの火災の影響は地球的だ。サンパウロ州の空を今覆いつつある煤と煙はアフリカにまで伝わり、ブラジルの他の部分における気候変動を引き起こし、水と煙の混合物である「黒い雨」のような現象を引き起こす。ブラジル経済もまた、政府の環境的無責任さが引き起こす悪イメージが原因となって海外市場の喪失で苦しむかもしれない。

環境保全活動は
意識的破壊下に


それでは、この破局的事態を前に、ボルソナロと環境相のリカルド・サレスは何を語り何を行っているのだろうか? ボルソナロは、パンタナールの火災からの煙が理由で彼が乗っていた飛行機が最初の着陸の中止を迫られたまさに一日前に、ブラジルはその環境保護の努力で讃辞を送られるべきだ、などと語ったのだ。そして先の着陸中断は、これらの犯罪的な火災に対し直接的な責任が最大である経済部門の一つ、アグリビジネスが助成したイベントに彼が向かっていた中でのことだった。
一方サレスはその間ずっと、アマゾンとパンタナールでの森林破壊を止めようとする活動すべてを密かに傷付けている。彼は、環境保全計画のための環境省諸基金の積み増しを(意図的に)拒否し、この省の管理部局の二つ、ブラジル環境・再生可能自然資源研究所(IBAMA)と生物多様性保全チコ・メンデス研究所(ICMBIO)に対する予算を削減、こうして監視と環境保全を行う政府の枠組みを解体している。
市民社会諸組織のネットワークである「気候観測所」はつい先週、環境省は二〇二〇年の最初の八カ月で環境保全計画にその予算の〇・四%しか、つまり米ドル換算(以下の金額も同様)で総額四八五万ドルの内一万九二〇〇ドルしか使わなかった、との情報を公表した。
この国の環境保全作業に責任を負う機関、IBAMAとICMBIOに対する今年八月三一日に政府が公表した資金停止(前者の三七五万ドル、後者の三九七〇万ドル)は、憤りと憤激を引き起こした。これに加えてさらに、環境諸施策二〇二一年予算からすでに削減された二二〇〇万ドルがある。見てきたようなこの恐るべき危機の最中に起きているこれらの資金削減は、ボルソナロとサレイが環境に対して犯している真正の犯罪だ。

大衆的決起で
環境相追放へ


大統領と環境相は、彼らの反環境的発言と環境規制解体の殺到を通して、違法伐採者や森林への放火者にその行為への動機を与えた。それでも十分ではないかのようにその上ブラジル政府は、パンタナールとアマゾンがこれまで経験したことのないような最悪の荒廃にさらされているまさにその時、環境監視機関の解体に向けても意識的に行動中なのだ。
ボルソナロ政権の、またドナルド・トランプの気候変動と環境問題に対する否認は、地球の命に対する脅威だ。資本主義は、その中心目標が人間的必要の充足や自然と命の尊重ではなく、利潤と資本主義的富の抑制なき成長である無分別なシステムだ。だからこそ世界規模の気候危機は、世界中における資本主義的開発の副産物なのだ
われわれはリカルド・サレスの行動を即刻止め、彼を環境相という地位から取り除く必要がある。この犯罪的な閣僚の打倒は「フォラ・ボルソナロ(ボルソナロ出ていけ)」に向けて闘いを強化し、同時に環境保全の真剣で首尾一貫した計画の必要をめぐる論争をも広げるだろう。そうである以上、「フォラ・サレス」キャンペーンは拡張され強化される必要がある。
先のような計画はこの国の環境諸政策における深い変化を含まなければならない。つまり、監視、環境啓発、さらに保全計画に対する資金の相当な増額、全環境機関に対する公的なてこ入れプロセス、違法な伐採者と森林放火者および環境犯罪に対する厳しい罰則を伴った立法の強化、そして森林火災や他の環境犯罪に対する闘いに向け全国的にまた国際的に協調した政策の実行だ。(エスクエルダ・オンライン、二〇二〇年九月二〇日)

▼エスクエルダ・オンラインは、「社会主義と自由党(PSOL)」内の革命的社会主義潮流であるレシステンシアと連携する、幅広い読者をもつブラジルの政治サイト。(「インターナショナルビューポイント」二〇二〇年一〇月号)  



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