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    かけはし2020年10月26日号

住民・先住民族が抗議の訴え


核のゴミなんか絶対にゴメンだ

寿都町・神恵内村当局の応募を許さない


 【札幌】一〇月九日、経済産業省は文献調査の実施を神恵内村に申し入れ、申し入れ書を受け取った村長は調査の受諾を正式に表明した。また同日、寿都町長は原子力発電環境整備機構(NUMO)を訪れ、文献調査の応募書を提出した。

住民団体が住民投票
     条例の制定を直接請求

 一〇月七日、文献調査に応募することに反対する住民団体「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」が応募の是非を問う条例の制定を直接請求する署名簿を町選管に提出し、町議会にも条例制定を求める請願を出した。
直接請求に必要な有権者の五〇分の一に当たる五一人を大きく上回る二一四人が署名。したがって町選管の名簿審査を通って直接請求が受理されれば、地方自治法により町長は条例案を提案し、町議会も審議を開始しなければならない。
町が開いた住民説明会では反対論が続出し、直接請求による町民の応募反対表明がなされているにも関わらず、町長は「肌感覚で過半数の賛成を得られている」と勝手な判断で意思決定をしたことになる。町内の民意を正確に把握することなく意思決定できるのであれば、議会も条例も必要のない独裁と言わなければならない。
文献調査受諾の約二週間前からNUMOの職員一六人が、住民説明会のチラシを村内約四七〇世帯に全戸配布・戸別訪問し「ローラー作戦」を行った。あまりの段取りの良さは、NUMOと秘密裏に策を立て、住民の賛否の判断に余裕を与えない用意周到さが透けて見える。
従来の市町村が自ら応募する「手挙げ方式」は住民の賛否が割れ混乱し自治体の負担が大きいため、今後、経産省は住民の理解が進んだとみなした市町村に国が文献調査を申し入れる方式にする方針だ。
しかし今回は住民の理解からは程遠く「賛成、反対を考える時間もなかった。不信感しかない」との声もある。国との「あうんの呼吸」でことを進めた村長は「議会の結果を尊重する」とあくまでも手続きに則った受け身の姿勢を演出した。そして受諾後のアリバイ的な「報告会」。出席した住民からは「村議八人のうち六人が商工会関係者なのに、村民の意見を反映していると言えるのか」など、強引な進め方に批判が相次いだという。

アイヌ民族が寿都町・神恵内村に抗議

 アイヌ民族や研究者らでつくる「アイヌ政策検討市民会議」と日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センター、カトリック札幌教区正義と平和協議会、北海道宗教者平和協議会の四団体が寿都町と神恵内村が文献調査への応募をすすめていることに対して抗議声明を出した。以下、抗議文を全文掲載する(別掲)。
抗議文にある「宣言」の採択に日本は賛成票を投じ、翌年には国会で「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が満場一致で可決された。一九年には「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ新法)が成立。そして今年予定されていた東京オリンピックに合わせ、白老町に「民族共生象徴空間(ウポポイ)」がオープンした。
安倍前首相による一九年の施政方針演説では、アイヌ政策が「人権」や「共生」という項目ではなく、あろうことか「観光立国」の一部として述べられ、歴史的な犯罪への謝罪もなくアイヌを「観光資源」とみなしている。すなわち先住民族としての権利、特に「先住権」については一切触れていない。また「アイヌ新法」でもアイヌの権利を明確にしていない。
「宣言」によって国際的に認められている「先住権」とは、一八世紀以降に世界の列強国によって支配されてきた先住民族において、先住民族の中の個々の集団が列強国家による支配以前から歴史的、慣行的に有していた土地や自然資源などに対する排他的・独占的な使用権・利用権・管理権などの総称(アイヌの権利とは何か/北大開示文書研究会〈編〉より)である。
すなわち「先住権」の主体であるアイヌの事前の同意を取り付けなければ両町村長は意思決定はできない。抗議文にあるアイヌの主張を支持し、その立場からも処分場誘致に対して徹底的に批判しなければならない。

シャモによる侵略の歴史を繰り返すな


応募の検討が明らかになってから、寿都町では約二カ月足らず、神恵内村に至っては約一カ月で両首長が調査に応じることになった。このように当該町村民との議論に時間をかけず、近隣町村との対話もなされず意思決定を急いだのは、明らかに反対意見の噴出を恐れ東洋町の二の舞を危惧してのことだろう。決して調査推進側の態勢が万全ではないことの証左である。
東洋町では応募ののち反対派住民が立ち上がり、約二カ月ほどで、経産相による事業の認可前に町長のリコールに向けた手続きを始め、町長の出直し選挙で反対派が圧勝し、NUMOは調査を断念した。
神恵内とはアイヌ語の「カムイ・ナイ」(美しい神の沢)からきたものと言われ、「地形がけわしく、人が近づきがたい神秘な沢」(神恵内村HPより)を意味しているという。
先住民族の抗議の声を無視し、アイヌモシリ(人間の静かな大地)を核のゴミ処分場にするという暴挙によって、明治以降のシャモによる侵略の歴史を繰り返してはならない。(白石実)

 

「核のごみ」最終処分場の選定をめぐる
自治体の決定に関する声明 2020年10月5日

 寿都町および神恵内村は、「人口減で低迷する地元経済を立て直すためには更なる交付金が必要」との理由から、それぞれ、一〇月八日、国の「核のごみ」最終処分場選定プロセスへの応募に踏み切ると報じられています。いずれも、町民に加えて近隣自治体の首長や北海道知事からの反対意見を無視し、自らの住民集会や議会における異論も熟慮せず、議会の多数決で国による文献調査への応募を拙速に決めようとしています。
 そもそも北海道は、夭折の天才詩人知里幸恵が『アイヌ神謡集』の冒頭、「その昔この広い北海道は私たちの先祖の自由の天地でありました」と述べているように、悠久の昔からアイヌモシリ、アイヌの土地でした。「しかし、」とアイヌの言語・文化の復興の巨人萱野茂は次のように話をつづけます。「江戸時代にシャモ(和人)が、この地に入ってくると、この恵まれた大地に住むアイヌに目をつけ、漁場の労働に強制的に連行したりしました。また、明治になると、本格的にシャモが侵入してきて、アイヌが自然の摂理に従って守っていた決まりを無視し、勝手に『法律』なるものをおしつけ、二風谷の美しい林も、『日本国』や財閥に強制的に収奪されてしまいました」。
 こうしてアイヌを含む世界の先住民族は後からやってきた今日の国家の多数派の民族に土地、資源はもとより、同化政策の下、言語も文化も奪われ、差別と抑圧の中で社会の周辺に追いやられました。国際社会は、このような歴史的不正義を正すため、二〇〇七年九月「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を採択し、先住民族の国際人権基準を明確にし、その遵守を国に義務付けています。日本においても、国や自治体は、アイヌに関する政策や法律を決定する際、アイヌからの「自由で事前の情報に基づく同意」を保障する義務を負っています(第一九条、第三二条二項)。また、同宣言の第二九条二項では、「国家は、先住民族の土地および領域において彼/女らの自由で事前の情報に基づく合意なしに、有害物質のいかなる貯蔵および廃棄処分が行われないことを確保するための効果的な措置をとる」と、されています。加えて、一九九七年八月、人権先進国のノルウェーのハラルド五世国王は、長年ノルウェー国が先住民族サーミに与えた不正義を謝罪し、「ノルウェー国はノルウェーとサーミの二つの民族の領土の上に築かれている」と述べています。このことに鑑みれば、北海道は和人とアイヌの二つの民族の歴史の上に成り立っています。したがって、今回の「核のごみ」最終処分場の選定プロセスにおいては、法的、倫理的、歴史的に、北海道の先住民族アイヌの「自由で事前の情報に基づく同意」を求めなければならないことが導かれます。
 私たちは、町内外の反対や異論のみならず、北海道を植民地化した歴史を顧みず、先住民族アイヌの国際人権基準も考慮することなく、交付金を目当てにした寿都町および神恵内村の拙速な意思決定は、マイノリティの人権保障という世代内の平等に加えて資源・環境に関する世代間の衡平を求める現代民主主義に反するものとして、強く抗議します。

アイヌ政策検討市民会議、日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センター、カトリック札幌教区正義と平和協議会、北海道宗教者平和協議会



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