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    かけはし2020年11月2日号

命を守る公共を取り戻そう


地域・職場から運動を作り上げるために

未来を構想する意識的努力を

「陣地戦」の構想力きたえよう

統計から読める現実


 全国の自治体で来年度予算編成に向けた動きが始まっている。東京都が一律一〇%のマイナスシーリングで予算編成を行う副知事通達を出したことに象徴されるように、コロナ不況下で税収減に苦しむ全国の自治体では緊縮予算へ向けた動きが活発である。しかし、この不況下で基礎自治体が緊縮予算を編成し公共サービスを切り縮めることになっては、それこそ、暮らしが破たんし路上に放り出される人、餓死する人などが続出することになりかねない。
 現在でも乏しい自治体のセーフティーネットからこぼれ落ちた人たちを支援団体がボランティアで支え、福祉につなげる活動を懸命に行っている。しかし支援団体につながることができた人たちが全体のどの程度なのか全く分からない。厚生労働省は七月一日、全国の四月の生活保護の申請件数が二万一四八六件と前年同月に比べ二四・八%増えたと発表した。生活保護の捕捉率は非常に低く二〇%程度と推定されている。だとすれば新たに二〇万近い貧困者が保護を受けることもなく耐え忍んでいる可能性がある。それが可能性ではない証拠に、失業も増えている。
 二〇年八月の労働力調査でも就業者数は五カ月連続の減少、同年前月に比べ七五万人の減少。完全失業者数は二〇六万人、前年同月比で四九万人の増加で七カ月連続。完全失業率は三・〇%で高止まりの状態である。
 今回のコロナ禍は、サービス業を中心に大きな打撃を与えた。そのためにこれらの産業で働く女性が最も打撃を受けた。二〇年四〜六月、非正規労働者数は前年同期比八八万人の減と二期連続の減少となった。内訳は男性二八万人に対して女性五九万人である。女性への打撃の深刻さがあらわれているのが自殺者数である。

命を守る自治体へ

 七月、突然自殺者数が二五九人増加し一八一八人となった。日本の自殺者数は通常三月と五月をピークに逓減していき、七月に自殺者数が突然増加に転ずることなどなかった。これは自粛期間が終わっても仕事が戻ってこないことに絶望して自殺を選んだ人が多かったと考えられる。
七月に増加に転じた自殺者数はその後も減ることはなく八月一八五四人、九月は一八〇五人と高止まったままだ。七月の増加者は、男性が一一四人に対して女性が一四五人。日本の自殺者の男女比は、男性が多く女性の二・三倍程度が続いてきたが七月は一・八倍程度に差が縮まっている。それほどまでに女性の自殺者は急増している。
自助はもはや限界にきている、コロナ不況は社会の最も脆弱な層を直撃したのである。残念ながら現状ではこの自殺者数が減少に転ずる要因は見当たらない。菅政権が非正規雇用に苦しむ労働者に発したメッセージが一〇月一三日の二〇条裁判の最高裁判決だ。非正規差別を正当化した判決に絶望し更に自殺者が増えることを危惧しなければならない状況だ。
来年度の自治体予算編成を巡る闘いがこれから本格化する。これ以上の自殺者を出さないために福祉や中小自営業者対策予算の拡充を求めていく必要がある。しかし、まず何よりも、命を救うために生活保護行政の現場での水際対策をなくすこと、必要な人には権利としての生活保護が保障されることが第一である。そのうえで、税収減を理由にした一律のマイナスシーリングでの予算編成を許さない闘いが重要になる。この対自治体闘争で野党共闘の枠組みと自治体労働組合そして貧困の当事者運動の連帯が追求されなければならない。
国保・介護保険料の値下げ、学校給食の無償化、保育園定員の拡充、公共サービスを担う自治体労働者の大幅増員による保育園・図書館・公共施設の民間委託化の中止による直営化。家を失った人が駆けこめるシェルターや公共住宅の増設。公共の職業訓練の充実、そして新型コロナ対策としての保健所の増設・保健師の増員、公立病院の開設・充実、など。地域により要求は様々なバリエーションがあるだろう。このバリエーションを豊かなものにしていくことが運動を強くすることにつながるだろう。東京都や大阪府のように企業に奉仕する自治体ではなく、住民の命を守る自治体本来の姿を実現しなければならない。

地域を足場にして


同時にこれ以上失業者を出さないための闘いが必要である。非正規労働者が多く働くサービス業は小規模事業所が多く、労働組合などないところが多数を占める。失業者を放り出させないためには、一人でも加入できる地域労組などの反失業闘争がますます重要になるだろう。そして最低賃金一五〇〇円を目指す闘いと共に、一三日出された最高裁二〇条裁判の判決を世論で包囲する闘いが必要だ。それは、最も脆弱な立場に追いやられた女性をエンパワーメントし、守る闘いでなければならない。
新自由主義に破壊された暮らしを再建するには、地域から職場まで網の目のように様々な課題を担う運動が組織されなければならない。来る衆議院選挙をそのためのきっかけにしなければならない。
これだけ暮らしが破壊され自殺者が増えている時に、逆進性の高い消費税廃止を求めること、累進課税を強化すること、大企業減税を撤廃することは当然である。しかし求められているのは、消費税廃止と現金給付でコロナ禍に苦しむ人々の票を獲得しようとする「機動戦」ではなく、命と生活を守るための公共を取り戻すための地域運動・労働運動を組織化し、闘い取るべき社会像を共有する「陣地戦」である。
(矢野薫)

10.11

小笠原みどりさん講演会

「新型コロナと監視社会」

「プライバシーと自由」のために


民衆管理のため
の「コロナ対策」


 一〇月一一日、盗聴法に反対する市民連絡会は、かながわ県民センターで「新型コロナと監視社会」というテーマで小笠原みどりさん講演会を行った。
 連絡会は、世界的な新型コロナ・パンデミックのなかで、各国の政府は感染拡大を抑えると称してスマホのアプリなどを利用して感染者接触確認や感染経路を特定し、膨大な個人情報を収集している状況に対して、目的外の使用の危険性、民衆管理の一環としての政策の危険性を批判してきた。あらためてコロナ対策を口実とした監視社会化の加速化に反対し、その役割を担う政府や監視テクノロジー企業に対して統制していくための方向性を探った。
 こういったアプローチからカナダ在住の監視研究家・小笠原みどりさんの講演をオンラインで行った(講演要旨・別掲)。

デジタル庁法
に反対しよう


なお小笠原さんは、米国家安全保障局による世界監視システムを告発したエドワード・スノーデンに日本人ジャーナリストとして初めてインタビューし、著書に『スノーデン、監視社会の恐怖を語る』『スノーデン・ファイル徹底検証』(共に毎日新聞出版)などがある。
宮崎俊郎さん(共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会)は、「菅政権になってデジタル化を進め来年デジタル庁をつくると言っている。上から強制的な仕組みを作るということだ。地方自治体のシステムも統一化すると言っているが、個人情報保護条例も含めて否定し、国が統一化していこうとしている。その中にマイナンバー制度を位置づけ、デジタル番号とつなげカードを持たせようとしている。デジタル庁に反対していこう」と訴えた。
角田富夫さん(共謀罪NO!実行委員会)は、「実行委員会としてデジタル庁反対の取り組みを行っていく。デジタル庁は監視社会の柱になる。準備されているデジタル庁法に反対していこう」とアピールした。          (Y)

小笠原みどりさん講演要旨

強権政治をとめよう!

コロナ資本主義
が作り出される


各国政府は、スマートフォンを使う市民一人ひとりの生活・個人情報データを監視しコロナ対策を行っている。政策的にコロナ緊急事態を宣言し、その一環として「ビッグデータ」利用に門戸を開いた。つまり、人々の「行動変容」を予測し、掌握することにある。まさに新たな「コロナ資本主義」が作り出されようとしている。ナオミ・クラインが規定したショック・ドクトリンをおおいに利用した。
これまで政府と企業はビッグデータによって利害を一致させてきた。一九九〇年代からインターネットの普及によりIT企業が台頭、個人情報を利用したターゲット広告で巨大な利益をあげてきた。
米国政府は、二〇〇一年から「対テロ戦争」の下で極秘裏にデジタル通信システムに監視機器を埋め込み、個人情報の大量収集を開始した。人権団体、労働組合、ジャーナリストなどを対象に情報を収集し様々な妨害をしてきた。連動して日本も二〇一三年から特定秘密保護法、共謀罪、盗聴法などを制定し、プライバシー侵害を合法化させ、市民監視を強めてきた。

各国「対策措
置」の問題点


各国のコロナ対策と称する接触者追跡アプリの危険性は、こうだ。
@移動の追跡―GPSによる位置情報から携帯使用者の移動した場所を特定、追跡する。感染可能性を予測し、政府が外出を許可したり、自己隔離を要求したりする(中国、イスラエル)。
A隔離の強制―政府によって隔離の必要があると判断された人たちが、実際に自己隔離を実行しているかを位置情報によって見張る。隔離場所から離れると、本人と警察に警告が発信される(台湾、ポーランド)。
B接触者の追跡―携帯アプリによって、近距離で一定時間接触した者同士の携帯電話がお互いを暗号化して記録し、後で感染が判明した場合、アプリに感染を入力すると、接触した相手に通知される(シンガポール、イギリス、アメリカ、日本)。
接触者追跡とは、感染経路を明らかにし、感染拡大を防ぐため、これまで保健所などで専門家が感染者から聞き取りをしてきた。感染者に接触した人々を割り出し、連絡して、検査や自己隔離を促す。長年の新自由主義政策によって日本や欧米各国で保険医療が削減され、人手と資源が不足しているため接触者追跡アプリが急ごしらえされる。

一人ひとりの
心身状況把握


日本の接触者追跡アプリは、@プライバシーに「最大配慮」?Aブルートゥース(返信通信機能)B陽性者との接触の可能性を通知、検査の受診などを案内、となっている。だがPCR検査態勢の不十分な状況を前提にしており、いまだに改善されていない。
そもそも個人の健康情報、身体情報の掌握はプライバシーの侵害であり、人権被害の危険を繰り返してきた。ハンセン病、水俣病、被曝、精神疾患など、病歴や健康情報をもとに本人や家族が、結婚や就職などで社会的に差別されてきた例は枚挙にいとまがない。
それだけではない。近代の政治は、個人の身体に優劣をつけ、優生思想によって「生きるべき人間」と「死ぬべき人間」の線引きをしてきた。例えば、ナチスの強制収容所、障害者の不妊強制手術、先住民虐殺などを見れば明らかだ。
企業のねらいは、健康情報をもとに人々の心身の状況を把握し、利益を最大化するとともに、リスクを回避しようとすることにある。

自由・平等・民主
主義破壊NO!


あらためてプライバシーの意味をとらえ直す必要がある。三つの観点から捉えよう。
「プライバシーと自由」とは、通信の秘密、内心の自由、表現の自由、個人の尊厳などを守ること。「プライバシーと平等」とは、人種/民族、性別、年齢、職業、収入、学歴、その他の属性によって差別されることを防ぐこと。「プライバシーと民主主義」とは、人々の個人情報を握った指導層ではなく、人々が政治を決定することを促すこと。
参考例として「カナダ自由人権協会の接触者追跡アプリに対する声明」がある。声明は、「・意味のある同意を伴っているか ・目的が限定され、正当性があるか ・必要性が証拠とともに認められるか ・有効性はあるのか ・プライバシー侵害の度合いがより少ない他の方法がなく、達成しようとする目的に対して失うものの大きさが見合っているか」について問いただしている。
これらの観点からの個人情報保護法制が必要だ。一つの柱は、データ収集、移動、保管、修正、消去について透明性のあるルールを。目的外使用した企業への罰則を伴うEUの一般データ保護規則(GDPR)の水準に到達し、さらに、侵害性の高い監視技術やデータ収集自体を禁止(顔認証、非公開情報)し、あらゆるデータ・システムにプライバシー評価を導入することが重要だ。
さらに個人情報保護の監督システムが必要であり、現在の日本の個人情報保護委員会は圧倒的に企業よりであり、人権範囲が狭い個人情報でしかない。独立した第三者機関に勧告以上の指導権も必要だ。プライバシーをデジタル時代の自由、平等、民主主義を確保する権利としてとらえ直し、要求する。すでにEUで勝訴が続いている。
現在のスマフホプリなどを通したコロナ対策は、人々の「行動変容」ばかりが対策として叫ばれる異様な世界だ。強権政治のパンデミックが同時進行している。ショック・ドクトリンとしてのデジタル庁によって自由、平等、民主主義の破壊を許してはならない。



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