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    かけはし2020年11月9日号

国有化による公的統制が必要だ


航空産業・無能で腐敗した資本家へのムダ金

イ・ジュヨン(変革党・機関紙委員長)


「涙の9カ月」、
まだ終わってもいない

 「涙の飛行」、「涙の割引」、「涙のチケット」…。航空産業は今年1月以降、悲惨な状態から抜け出せずにいる。「離陸はするが、目的地に到着するのではなく再び元の位置に戻ってくる」特異な観光商品まで出回った。

 韓国交通研究院の予測によると、航空需要がコロナ前の水準を回復するのは2022〜23年ころだ。最近済州島旅行が増加するなど、国内線旅客は徐々に例年の数値に戻りつつあるが、問題は国際線だ。2019年の国内航空会社の売上高の割合をみると、国際線が60%(大航空会社)90%(格安航空会社)以上を占めている。そして、その国際線旅客はコロナ拡散直後から90%以上急減し、まだ前年比のわずか2〜3%水準に過ぎず、回復の兆しも見えない(国土交通省発表の前年比国際線旅客推移では3月92%、5月98%、7月97%のマイナスである)。

 大韓航空とアシアナ航空のような大手航空会社は「貨物輸送収入で一定程度赤字を補った」としているが、これはごまかしにすぎない。統計庁の航空統計を見ると、貨物量(トン)で集計した大韓航空とアシアナ航空の貨物輸送実績は、今年の1〜8月は、昨年の同期間よりも45%も減少している。ただしコロナ拡散で送料がかなり上がったので、その分収入が増えたのだ。つまり、貨物輸送収入が航空会社の危機を克服してくれる安定的な基盤になったとは言いがたい。

 格安航空会社の状況はさらに悪い。しかもコロナだけを責めることもできない。国内6つの格安格航空会社(エア釜山・エアソウル・イースター航空・済州航空・ティーウェイ航空他)は、すでに2019年に全社が当期純損失を記録していた。日韓の貿易紛争の影響もあるが、より根本的な原因は、過剰参入による競争である。サムスン証券報告書によると、韓国の航空会社は大手航空会社2社と格安航空会社6社の上に新規格安航空会社3社も加わって、昨年末から就航に乗り出しており、合わせて11社になった。これにより、韓国の人口1000万人当たりの航空会社は2・1社で、日本(1・04社)、欧州(1・44社)はもちろんのこと、航空需要が大きい米国(0・81社)よりも多い。このため、今年の初めから格安航空会社を中心に構造調整と買収合併が進むだろうという観測が出てもいた。

生存の脅威

 こうした状況によって航空産業の労働者は、直接的な生存の脅威にさらされることになった。大韓航空の今年6月末の従業員数は1万8681人で、前年同期比で655人減り、全体の従業員対象の一時休職も実施している。さらに、「所属外勤労者」に分類された5395人(2019年末時点)の処遇は、報告されていないが、ほとんどが派遣・用役なのでこれらの人々はより大きな危機に直面していたようだ。例えば大韓航空子会社で地上操業(航空機牽引、貨物運搬、機内清掃など)を担当する「韓国空港」の場合、今年上半期だけで「所属外勤労者」の40%に当たる約1200人が減少した。これらのほとんどは、「勧告辞職」など理由も告げられずに整理解雇されたものと思われる。

 アシアナ航空では、所属職員の数は大幅に減らなかったが、すべての人員を対象として15日間以上の無給休職が進められていて、最近売却契約が破棄され、追加の構造調整の脅威が台頭している。さらに、大韓航空と同様に、地上操業を担当する「アシアナエアポート」の下請け業者である「アシアナKO」が整理解雇を強行する一方、他の下請け業者である「アジアKA」でも勧告辞職と無給休職による事実上の解雇が断行されている。アシアナ航空に機内食を運搬・搭載する下請け業者「ACS」も200人に達する労働者を追い出す廃業を通知した。

 格安航空会社の場合、整理解雇を強行するイースター航空を含めて、すべての企業が昨年、すでに損失を記録した状況で、今年の追加決定打を受けても、出血競争と市場の飽和問題は全く解決されなかった。当面は雇用維持支援金のために、大規模な解雇を断行はしなくても、売上の90%以上を占めていた国際線の運航がほぼ停止した状態の中で休職が続き、生計困難はもちろんのこと「いつ休職が勧告辞職もしくは解雇に変わるか分からない」という不安がつきまとう。

 すでに下請け業者を中心に最小限の負担すら拒否し、雇用維持支援金自体を申請せずに、支援金支給終了後に、労働者を解雇するなどの事態が起こっている。政府がいくら企業を「補助」しようとしても、利益の見通しが立たなければ、資本は容赦なく、労働者を追い出すという事実を、あるがまま確認している。

 したがって、航空産業の労働者の生存を安定的に守るためには「国有化」が必要である。国家が責任を持って公営の航空会社として運営しながら、出血競争ではなく、社会的必要に応じてサービスが提供され、これまで「追われるようにご飯を食べる時間もなく」働いていた労働者の労働時間を大幅に下げながら、下請労働者を含む総雇用を保証することが必要である。特に先の売却が失敗に終わったアシアナ航空とイースター航空でまず国有化を断行しなければならない。この二社については、次で見ていくが、今後、格安航空会社などの危機がさらに深刻になるので航空産業全般にも国有化を適用することができる。

アシアナ航空

構造調整・再売却ではなく完全な国有化を!

 この間政府は、アシアナ航空国有化に必死に距離を置こうとしてきたが、今の時点で、結果的に国有化は、「とりあえず」現実になっている。去る9月11日、HDC現代産業開発(以下「現産」)によるアシアナ航空の買収契約が正式に破棄された。

 これでアシアナ航空は、産業銀行・輸出入銀行など債権団の管理体制に入り、両国策銀行が保有するアシアナ航空の永久債8千億ウォンを株式に転換すると持ち株比率が37%に達し、これまでの最大株主であるクモ産業(30・77%)を上回ることになる。株だけで見れば、事実上、国有化されているわけだ。一方、産業銀行は売却契約破棄直後「基幹産業安定基金」の2兆4000億ウォンをアシアナ航空に投入することにした。すでに昨年1兆6千億ウォン、今年1兆7000億ウォンの公的資金が入ったが、今回の金額まで加えるとアシアナ航空総資産(資本+負債)の半分に達する規模だ。

 しかし、産業銀行はすぐの「再売却」を狙っている。「条件が整えば売却を再推進する方針」であることを9月11日当日の契約破棄を知らせる報道資料と一緒に明らかにした。「コスト削減など企業価値の向上」を通して「売れる商品」としてM&A市場に再び出すというものだ。同日、産業銀行副頭取のチェ・デヒョンはリストラについて急にする状況ではない」としながらも、「今後の時期と方法などを考慮したい」とした。基幹産業安定基金の支援条件が「雇用人員の90%を6カ月間維持」することとしているので、すぐに大規模な解雇は難しいだろうが、今後再売却を前提としているだけに厳しい構造調整の脅威を背負ったいばらの道である。

 産業銀行は大宇造船海洋のようにアシアナ航空も何とか払い下げようとするだろう。大宇造船海洋が過去数年間の構造調整で正規職だけでも3千人以上減らし下請け労働者はそれ以上の数えることができないほど追い出した後、現在、現代重工業に渡されたという状況を振り返ってみよう。アシアナ航空もとりあえず持ち株上国有化の条件は、整っているが、重要なのは「誰のための」国有化であるかだ。アシアナ航空の借金を積み重ねた重要な原因の一つは、クモグループ総帥パク・サムグの無理な事業拡大と資金動員のためだった。したがって、労働者に犠牲を押し付けるのではなく、経営失敗の責任を問い、既存の最大株主の持分を全量売却し、社内留保金をはじめとする、これまでの収益を返還して下請労働者まですべて包括する総雇用保障を要求しなければならない。

 『韓国経済』のような資本家のメディアは「産業銀行など債権団には航空業のノウハウがないため、再売却は不可欠」だと主張する。産業銀行もこれまで、このような主張を「実践」に移した張本人である。しかし、これは口実に過ぎない。過去30年間、アシアナ航空を運営したクモグループは、「ノウハウがなくて」会社をこの境地にいたらしめたのか? 航空業に携わったこともない現産は「ノウハウがあるので」アシアナ航空買収者に選ばれたと言うのか?

 つまらない資本家らにこびへつらうのではなく、その「ノウハウ」をアシアナ航空で今まで働いた労働者から探す方法もいくらでもある。構造調整と再売却を予告する「資本のための一時的な国有化」ではなく、労働者が統制して、公的に運営する完全な国有化を要求して闘いを作らなければならない。

 イースター航空は、すでに公的資金が天文学的に投入され、国策銀行の最大株保有まで、事実上行われたアシアナ航空とはもちろん、性格が違う。しかし、済州航空からの買収契約失敗以降最大の株主一家が莫大な財産を貯めていながら見え透いた大量解雇を犯し、事実上の廃業手順を踏むことや同様な状況で、資本家に厳重な責任を問い労働者の雇用を守らなければならないという点では、変わらない。

 3月にイースター航空を買収するとして株式売買契約を締結していた済州航空(愛敬グループの系列会社)は、7月22日にこの契約を解約し、交渉を中断した。表面上の理由は、「イースター航空が未払い賃金を含む1700億ウォンの未支給金の問題を解決していない」とするもので、先の現産と同様に、結局現在の経済状況では航空会社を買収するリスクがものすごくあるからだ。

イースター航空

犯罪資産を返還して国有化せよ

 イースター航空は、本来の人員1600人のうち、済州航空との買収交渉過程で600人を削減し、9月7日の追加で600人を整理解雇しようとした。全労働者の4分の1だけ残して追い出すということだ。イースター航空のオーナーで与党国会議員だったイ・サンジク(現在は離党し、無所属議員)は、申告財産だけで200億ウォンを超えるが、雇用保険料5億ウォンを滞納して労働者が政府の雇用維持支援金さえ受けられなくした。そうして「これ以上やることはない」と手を引き、イースター航空会社側は「再売却を推進する」として構造調整を押し付けている。

 現在イースター航空の最大株主は持分率約40%の「イースターホールディングス」であり、2番目の株主は「ビデオ・インターナショナル」というところである。ところが、「イースターホールディングス」は、イサンジクの息子と娘が株式全体を握っていて、「ビデオ・インターナショナル」もマスコミの取材で明らかになったイ・サンジクの兄が代表になっているが、実体さえ不明な「会社」だ。すぐ後の記事で確認してみるなら、イースター航空とその関連会社の至る所でイ・サンジク一家の横領と不正の根が張りめぐらされている。

 このような、犯罪と破廉恥で綴られた資本家の資産と持ち株、犯罪収益を還収し、イースター航空を国有化して労働者の生存権を保障しなければならない。格安航空会社の乱立を助長した政府も責任を免れることはできない。さらに、「コロナ対応」の名目で企業支援に130兆ウォン以上の公的資金をつくって、また「韓国型ニューディール」とし、5年間で110兆ウォン(民間金融を含めると160兆ウォン)を注ぐことで、政府による資産規模総額1500億ウォン余りがイースター航空に注入されていて国有化するには「お金がない」というのは言い訳にもならない。資本家のためにこのように注ぎ込むお金があるのなら、すでに整理解雇通知を受けた労働者を生かすために責任を持って国有化して雇用を守るために使用するように要求しよう。この危機的状況で「再売却相手を探す」と、従業員の4分の3の首を切る者たちの言葉を信じることよりも、国有化こそが労働者の生存を守るためのはるかに現実的な対案である。
(社会変革労働者党「変革と政治」)

朝鮮半島通信

▲サムスングループの李健煕会長が10月25日、ソウル市内で死去した。
▲韓国疾病予防管理庁(KDCA)は10月26日、インフルエンザ予防接種後に死亡する事例が相次いでいる問題に関連し、死者数が59人になったと発表した。
▲韓国大法院は10月29日、収賄罪に問われ懲役17年などの判決を受けた李明博元大統領と検察の上告を棄却し、実刑判決が確定した。



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