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    かけはし2020年11月16日号

1カ月後に迫った労働法改悪と課題


ムン政権 再び労働法改悪案を提出へ

キム・ソク(ソウル)


 ムン・ジェイン政府による労働改悪が現実として迫っている。さる20代国会で政府が発議した労働法改悪案は、20代国会の終了とともに廃棄されたが、21代国会が発足するやいなや再提出された。ムン・ジェイン政府が主張する労働法改悪の根拠は、「国際労働機関(ILO)核心協約批准」である。つまり、「ILO核心条約を批准するために労働法を整備しなければならない」ということだ。

 もちろんこれは真っ赤な嘘である。ILO核心条約は、労働法改正を前提にしていない。むしろILO核心条約批准といっしょに1年の過渡期の間に労働法をILO条約と国際労働基準に適合するように改定することが、通常のプロセスである。ILOは、条約批准を口実に労働法を改正しても、むしろ、国際労働基準より後退する改悪を強行することに対して反対の立場を明らかにしてきた。

ナンセンス、詐欺、歪曲

 今回ムン・ジェイン政府が推し進める労働法改悪は韓国労総までも認めているように、それこそ「労組嫌悪法」である。労働組合の日常的な活動全般を無力化させるための史上初の改悪である。産別労組の事業場の出入りも使用者の許可を受けなければならないとするだけではなく、事業場内の争議行為も大幅に制限される。争議行為の際の事業場占拠も禁止しようとしている。現行の判例でも争議行為の際の部分的・併存的事業場占拠を避けられないものと認めているにもかかわらず、今回の労働法改悪案は、事業場内でのストライキ隊伍が使用者の「操業の自由」を妨害するいかなる争議行為もできないように規定している。

 あわせて、団体協約の有効期間も2年(従来)から3年に延長するという。資本のコストを大幅に削減しながら、労働条件の改善は遅くれても構わないということである。さらに団体協約の有効期間の延長が現行労働組合法の「交渉窓口単一化の強制」手続きと結合する場合、少数労組は最低4年以上団体交渉要求すらできなくなる。これは団体交渉権の実質的な剥奪に他ならない。

 このような労働法改悪案を上げておいて「結社の自由に関するILO核心条約批准のために」と主張するのであれば、それこそ「牛が笑う」ようなものだ。国際的な恥さらしになるしかない。ILOと国際労働団体から数年「最悪の労働人権後進国」の中の一つとして規定されており、せめて韓―EU(欧州連合)自由貿易協定(FTA)の条項に基づいて「後進的労働人権状況」だとして通常の圧力まで受けているのに、「ILO核心条約を批准」したからといって労働法をむしろ改悪させようとすることはまったく理解するのが難しいことである。どうなろうが資本の立場を忠実に反映しようとする以外に他に解釈する道理がない。

 ムン・ジェイン政府の労働法改悪案は、「勤労者の団結権・団体交渉権及び団体行動権を保障」するためだとする労働法の趣旨を骨抜きにして、いわゆる「使用者の防御権」と「操業の自由」を守ると言って団体行動権を制限し、国際基準とかけ離れた現行団結権保障水準を維持するというものである。このように「ILO核心条約批准のための労働法改正」という政府の主張は一言でナンセンスに過ぎず、深刻な欺瞞であり、歪曲することだ。

さらなる改悪を要求する資本と極右野党

 この渦中で10月7日、国会環境労働委員会所属の民主党議員が労組法・公務員労組法・教員労組法の改正案を発議した。表面的な理由は、「政府が発議した改正案が国際基準に比べて不十分である」ということであり、野党はもちろんだが、労・使すべてに反対することに対する負担感のためだというのだ。もちろん、国会議員が新たに発議した改正案が政府発議案より一定進展した内容を盛り込んだのは事実だ。しかしこれすら国際労働基準にはまだ全然及んでいない。

 政府発議案と民主党議員らの発議案、このうちどちらが政府与党の立場なのであろうか? 資本の利害関係を大幅に反映する政府発議案と不十分だが、国際基準を真似た民主党議員の発議案は、このうち資本と「国民の力」(極右野党)の選択は何だろうか? 結局、民主党議員らが、新たに発議した改正案は、資本と「国民の力」を政府発議案にそって牽引するための「餌」のようなものだと見るほかない。

 すでに資本は、政府発議案に対する「プラスアルファ」を要求している。正式にはじめて「ILO条約批准反対」と「労働法改正反対」を主張しているが、彼らの本音は「労組の強化が必要ならば、それに対応して経営界の『対抗権』も同時に立法しなければならない」という主張の中に示されている。「国民の力」も同じだ。「経営界の要求を反映して『経営権防御手段』を用意するための補完立法を一緒に推進しなければならない」ということの意味は、現在の政府改悪案よりも数歩進めなければだめだという意味だ。

 資本と「国民の力」が口をそろえて、さらに進めなければならないと主張する内容には、「争議行為の際の代替勤労許可」、「不当労働行為の使用者処罰条項廃止」などがある。「国民の力」の代表キム・ジョンインは、最近、いわゆる「公正経済3法」と連動して解雇と賃金の柔軟性を強化する方向で「聖域化された労働法」を改正しなければならないと明らかにしている。

1カ月しか残っていない

 ムン・ジェイン政府の労働法改悪案は、9月15日、国会環境労働委全体会議に上程され、あらましの議論(案件の問題点と可否等に関する一般的議論)を経て、雇用労働法案審査小委員会(法案小委)に回付された。今与野党間の協議を経て、環境労働委法案小委の、審査と環境労働委全体会議を残している。来る10月26日の国政監査終了後にも本格的な法案審議に入る状態だ。

 同時に、これと関連し、欧州連合(EU)の「専門家パネル審理」が10月8〜9日にかけて行われ、45日以内に最終報告書を提出する予定だ。欧州連合は、2018年に「韓国政府が韓―EU FTAにおいてILO核心条約批准の努力義務を十分に履行していない」という理由で、該当FTAの条項の中の、「貿易と持続可能な発展」の章の労働・環境関連項目で規定した紛争解決手続きである「政府間協議」を公式要請したことがある。それに伴う専門家パネルの最終報告書の提出期限が11月25日である。この紛争解決手続きとそれに伴うパネル報告書の結論は、事実上の通常圧力として動作しており、政府与党としては、報告書の発表前にILO核心条約批准と労働法改悪を仕上げようとするだろう。このように見ると、労働法改正案の国会論議は、11月中旬にも頂点に達する。わずか1カ月余りしか残っていない。

 彼らの枠組みは巧妙で抜け目がない。ILO核心条約批准と労働法改悪を連動させるムン・ジェイン政府の主張は「過度な労組活動の保障に対抗する使用者防御権の強化が必要である」という、資本の立場と相通じている。「傾いた運動場」という表現を、今は資本が持て遊びながら「使用者防御権」を語るという今の情勢は、労働者階級に甘くない状況だ。「労働改悪阻止」という目標自体が労働法改悪局面という枠組みで始まるだけに、ともすると歪曲された構図の中で、守勢的・防御的な状況に埋没する恐れもある。

 このような脈絡の中で、チョン・テイル3法争奪闘争の意味が再び生きてくる。「コロナ19の対応と未組織・非正規労働者の生存権、安全な職場と社会のための最小限の保護装置としてのチョン・テイル3法とILO核心条約批准」 vs「パク・クネ立法、財閥請負立法、組合嫌悪法としての労働法改悪」として対決する戦線が、労働者の闘う枠組みが必要だ。

民主労総再生のための第一歩として

 民主労総は今年下半期チョン・テイル3法争奪とILO核心条約批准、労働法改悪阻止を重要な立法闘争課題として設定した。しかし、依然として、昨年20代国会当時ほどの組織的緊張や準備態勢をまだ整えられずにいる。すでに代議員大会を通して「労働法改悪案環境労働委(法案小委)想定時のゼネスト闘争」を決意したが、まだ熱く燃え上がるような組織決意と意志が作られていない。

 短期間で20万人が参加しチョン・テイル3法直接発議運動を組織してきた勢いを今、実質的なチョン・テイル3法争奪とILO核心条約批准、労働法改悪阻止として引きつがなければならない。ただ、現在の労働法体系改悪を「防ぐためにだけ」で終わるのではなく、チョン・テイル3法争奪とILO核心条約批准で労働基本権完全保障のための第一歩を踏み出さなければならない。組織された労働者だけの権利を守るための労働改悪阻止ではなく、未組織・非正規労働者を含めた労働者階級全体の労働組合運動の権利のための第一歩、現在の無気力で限界いっぱいの労働法システムを防御して、その中に安住するのではなく、労組嫌悪を超えて、世の中を変革する労働者階級の組織としての民主労総を作るための第一歩としなければならない。

 ムン・ジェイン政府の今回の労働法改悪は「労働改悪阻止闘争」のスローガンだけ掲げる方式では、食い止めることは難しいだろう。

 ムン・ジェイン政府と資本の労働改悪の合作は単に労働法に毒素条項をいくつか入れることだけを意味しない。すでに主流として登場した自由主義勢力と財閥が作成した「新しい」韓国社会と「新しい」労働世界で「過激な」民主労組は立ちどころがない。彼らのシステムの中で飼いならされたり、その外側に投げ捨てられたり、どちらを選択するのか、それとも労働者階級が作る新しい社会、新しいシステムに向けた第一歩を踏み出すのか? 
差し迫った労働改悪を前にして、われわれ自身に投じられた突きつけである。

「被害者中心主義」を必要としない性平等な世界のために

キム・テヨン(社会変革労働者党代表)


 否定と攻撃を受けている
 被害者中心主義

 社会変革労働者党が結党してから5年にしかならないが、党内で決して少なくない性的暴力やセクハラ提訴事件などが発生している。最近でも党員がセクハラ2次加害で提訴され、対策委員会が構成された。変革党3号党規に制定された「性差別・性暴力根絶および予防に関する規定」に基づいて提訴事件を解決している。この党規は「被害者中心主義」と「2次加害禁止」の概念を適用している。

党規制定の過程で、この原則がまったく自然に受け入れられたのではなかった。民主主義と人権を守るための原則として認識してきた「無罪推定主義」に反するという問題提起があったし、真実究明のための民主的議論を阻害することができるという疑問が提起された。さらに党規を制定してから5年が経過した、最近の提訴事件でも被提訴人は「無罪推定の原則」を主張した。このように変革党が党規で被害者中心主義を原則として立て、ほとんどの党員が受け入れているが、まだ党内で問題提起が全くないわけではない。

 進歩運動陣営内でも被害者中心主義と2次加害に関する論議が提起されている。最近、「民衆共同行動」代表者会議で、この問題について議論が行われた。その経緯はこうだ。今年4月に民主労総中央執行委員会が性的暴行事件2次加害を理由に7月1日から「労働者連帯」との連帯を全面的に中断すると決定した。これにより、9月1日の民衆共同行動の執行委員会で、民主労総は、労働者連帯との連帯を全面的に中断することを要請した。民主労総のこの提案に変革党をはじめとするいくつかの団体が同意を表明した。すでに2017年に民主労総が女性事業に限定して、労働者連帯との連帯破棄を決定していたこともあり、差別禁止法制定連帯は、組織を再構成する方法で労働者連帯との連帯を破棄した。左派団体の連帯体も労働者連帯との連帯破棄を決定している。

 今回の民衆共同行動で連帯破棄を決定したということは、あれこれのすべての連帯体での連帯破棄を決定することと同じである。以後、民衆共同行動の共同代表団会議で労働者連帯の言い分を聴取した後、10月14日の全体代表者会議で議題として取り扱うことにした。去る9月22日の民衆共同行動代表者会議で、民主労総女性委員会がその趣旨を再度詳細に説明した。すると労働者連帯代表者が反論した。それは被害者中心主義を否定する趣旨の反論だった。

 韓国社会全体でも被害者中心主義に対する攻撃は、激しさを増している。パク・ウォンスン・ソウル市長がセクハラで告訴されて、自ら命を絶った事件が発生すると、被害者中心主義への攻撃が激しくなった。加えて、民主党とソウル市は「被害者」という用語を拒否して「被害訴え人」、「被害訴え職員」と呼ぶことで、被害者中心主義の基本的な趣旨さえ否定してしまった。SNSでは無罪推定主義を主張し、被害者中心主義を攻撃した。被害者中心主義に立脚して弔問を拒否した進歩政党の議員たちに激しい非難が加えられ、さらには数千人が離党する事態につながった。

 被害者中心主義は不可欠 な起点

 9月22日の民衆共同行動代表者会議で、民主労総女性局長は、労働者連帯の性暴力2次加害事件を説明しながら、このような話から始めた。「民主労総は前にもそうであり今でもそうであるように性暴力の被害組織でもあり加害組織でもある。絶えず性暴力の被害者と加害者が発生する。
しかし幸いなことは、被害者中心主義と2次加害禁止が組織全体の原則として定着したという点だ。この原則のおかげで被害者らが言うことができ、Metoo運動に進むことができた。被害者中心主義と2次加害禁止の原則は、性暴力事件に対して無罪判決を乱発する裁判所など既存のシステムを超える、真の進歩運動であった」。

 強盗を受けた被害者に「なぜ財布を持って通っていたのか」、「なぜもっと積極的に避けずにナイフで刺されたのか」というふうに責任を転ずることはない。しかし、ただひとつ性暴力事件については「装いがどうだったのか」「好きなことではないのか」、「なぜ暗い道を行ったのか」、「積極的に抵抗したのか」などとして性暴力の責任を被害者に向けるのがこの社会の現実である。ここで「貞操」観念、権力関係、組織保存論理など、あらゆるものが性暴行被害者を構造的に締め付ける。このような社会システムで性暴力被害者の生存と事件の合理的解決のために不可欠な原則的として提起されているのが被害者中心主義であり、2次加害禁止だ。

 ひとりの個人としてどうすることもできない社会構造的な問題を解決するために、このような類似の原則を適用する例は少なくない。不平等な階級構造で資本主義の「契約自由の原則」は、労働者の切迫した生存の問題を解決することができない。だから勝手に解雇(契約破棄)することができないという労働法の原則が通用されないのか? 被害者中心主義を否定して無罪推定の原則を云々することは解雇禁止について「契約自由の原則」を云々することよりも深刻な水準だと思われる。

 変革党も、進歩運動陣営も、韓国社会も、性暴力のない性平等な社会に進んでいることは明らかである。そして、その流れに逆らうことはできない。しかし、まだ水路を防ぐ障害物は多い。それは性暴力による被害者の苦痛、さらに人類の苦痛がより長くなるということを意味する。私たちは、万人が平等な世界のために闘争する。被害者中心主義のような原則を必要としない、まさに性平等な世界を一日も早く実現するために、今必要なのが、被害者中心主義だ。
(社会変革労働者党「変革と政治」114号より)

朝鮮半島通信

▲朝鮮の最高人民会議は11月4日、常任委員会総会を開き、禁煙法制定に関する政令を全会一致で採択した。
▲韓国政府は11月4日、これまで中断されていた軍事境界線に位置する板門店の見学を1年1カ月ぶりに再開した。
▲韓国疾病管理庁は11月5日、インフルエンザの予防接種後数日以内に死亡した人が全国で計94人確認されたと発表した。
▲韓国軍合同参謀本部は11月5日、4日に南北軍事境界線を越えて朝鮮側から韓国側に入った男性が亡命の意思を示していると発表した。

 

 


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