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    かけはし2020年4月6日号

バイデンが勝ち続ける理由は


米国

大統領選民主党予備選

ダン・ラ・ボッツ

 
 スーパーチューズデーではジョー・バイデンが勝者になったことが分かった。票数すべてはまだ数えられていないものの、バイデンがおそらく多数を得る結果になるように見える。彼は今、残りの予備選でも成功する位置にあり、おそらく多数の代議員を抱えて民主党大会へと到達しそうに思われる。主要メディアは予想通り今、民主党の救済者として彼を歓呼して迎えている。

本来的に穏健派
の民主党支持者


 バーニーには一定の返り咲きがあるかもしれない。あくまでおそらくだが、ある者たちが示唆してきたように、自身のキャンペーンにいかなる意味でも前進がなかったエリザベス・ウォーレンも、もしかしたら彼を承認するかもしれない。伝えられるところでは、サンダースとウォーレンの側近たちはその可能性について討論中だ。
 それはサンダースに実のある推力を与えると思われるのだが、しかしそれはありそうには思えない。思い起こそう、ウォーレンは「私は骨の髄からの資本主義者だ」と言明したのだ。ウォーレンのバイデン承認は、彼女に閣僚ポストを獲得させるかもしれない。
 しかし本当の問題に向かおう。つまり、バイデンはなぜ今勝利に向かおうとしているのか、ということだ。
 もちろん第一は、サウスカロライナでのジョー・バイデンの勝利を受けて、他の候補者たち――ピート・ブティジェッジとエイミー・クロプシャー――が降りたことだ。次いで彼らは、その前に降りたベト・オルーク同様バイデンを承認した。この三人全員が、テキサス州ヒューストンの大集会でバイデンに合流した。そこには、この州と他のところの支持者に疑いなく影響を及ぼした、大量のメディアの注目が伴われていた。翌日、何百万ドルも費やしながらほんのわずかしか代議員を獲得しなかったマイケル・ブルームバーグもまた脱落し、バイデンを承認した。
 先頭を行く穏健派候補者を軸に既成エリート民主党員たちが連合することに、驚きはまったくない。特に、ブティジェッジの場合と同様、バラク・オバマからの勧奨があればなおのことだ。クロプシャー、ブティジェッジ、オルークは全く疑いなく、ある種の政治的報酬、おそらく閣僚あるいは高位の地位を、約束されたか今期待している。われわれには分かっていたことだが、既成エリートたちは強力――紛れもなく銀行、企業、企業メディアを代表して――であり、そしてわれわれはそれが機能していたことをこれまで見てきた。
 サンダースの支持もまた疑いなく、幾分か誇張されてきた。大規模で活力十分な諸集会、および彼が集めた途方もない額のマネー――とはいえそのほとんどは、二〇二〇年に有権者になりそうな約一億四〇〇〇万人内部のおそらく五〇〇万人から届いた――の結果としてだ。これらのことは、バーニー支持者がもつ熱烈な性格を示す十分な指標だったが、しかしキャンペーンの実際の深さと広がりの指標ではなかった。
 サンダースについて分かったことは、彼は彼の支持者の多くが理解していたよりも弱かった、ということだ。彼の基本的な戦略は失敗した。つまり、若い支持者と他の新たな支持者は、力関係を変え、彼に勝利をもたらすために十分に大きな数では集まってこなかった。事実として若者たちは、彼自身が認めていたように、投票に現れなかった。そして投票参加が増大したところでは、たとえばバージニア(めざましく)やテキサスのように、その多数は彼らの票をバイデンに投じた穏健な支持者だった。

アフリカ系米国
人の実利的選択


 次にはもちろん黒人票がある。ほとんどの黒人の民衆は、自らをリベラルとは考えていない。したがって、サンダースは若いアフリカ系米国人有権者から相当な支持を獲得したとはいえ、バージニア、ノースカロライナ、アラバマ、テネシーの黒人有権者の多数――六〇から七〇%の間――はバイデンに投票した。サンダースは西部のラティーノの中では成功し、それは、スーパーチューズデーにおけるコロラドとカリフォルニアでの、またそれに先立つネバダでの、彼の勝利に貢献した。しかしこれは、黒人票での敗北を埋め合わせるものにはなり得なかった。
 黒人有権者はバイデンに、彼が初めての黒人大統領であるバラク・オバマの副大統領であったがゆえに票を投じた。そしてもっと重要なことだが、黒人有権者の運命は民主党次第だ、と彼らを説き伏せるために、民主党の既成エリートが何十年も活動してきたがゆえにそうしたのだ。バーニー・サンダースは、黒人政治家や宗教指導者と既成エリートの間で何十年にもわたって鋳込まれてきた強力な政治的結びつき、黒人コミュニティの従属と依存性を維持してきた一つの関係、これに打ち勝つことができなかった。
 黒人有権者は、虐待、無視、搾取、また抑圧を経て、バラク・オバマの選出にものすごい自尊心を覚えた。そして民主党の政治家は誰一人、サンダースを含めて、ウィリアム・A・ダリティ・ジュニア、アドルフ・リード、コーネル・ウエストのような何人かの黒人知識人がやったことがあるようには、思い切って真実を語ることをしなかった。すなわち、オバマは黒人コミュニティを見捨てた、と言明しなかった。あるいはまた、オバマの副大統領、バイデンは、彼の取るに足りない、ただほほえむだけの相棒以外の何者でもなかった、と大声で語る者も誰一人いない。とはいえもちろん黒人の民衆は、早くからそれは分かっていた。
 それでもアフリカ系米国人はトランプを前に、他に向かうべきところがまったくないままに、彼らを守るためにバイデンと民主党既成エリートの下にはせ参じている。この者たちが何十年間も彼らを守ることができてこなかったとしてもだ。したがって、また残念なことだが、まさに多くの時わが社会の諸闘争で前衛となってきた黒人の民衆(少なくともバイデンを支持している多数)は、予備選では彼らを保守化する勢力にする実利的な立場を取り入れた。

階級闘争の弱さ
にこそ真の問題


 バイデンが勝ち続けているもっと重要な理由は、サンダースのキャンペーンには一つの社会運動といういくつかの質があるとはいえ、われわれの下には、サンダースを大統領に推し進めるに十分な、また彼の同類を議会に送り込むに十分なレベルの階級闘争がない、ということだ。本物の左翼政治運動は、社会内部の深い危機意識、および社会的対立に表現されるにいたった社会変革を求める強い切望、を必要とする。しかしバイデン、ブティジェッジ、クロプシャーに対する票は、多くの、またおそらくほとんどの米国人はわれわれがそのような危機に直面しているとは感じていない、あるいは危機をトランプの大統領職としてのみ理解している、そして彼らは実質的な構造的変革を切望してはいない、と示唆している。
 ジャコバン誌とDSA(米国民主的社会主義者)の「ブレッド・アンド・ローゼズ」コーカスは、このところのストライキの高まりを大きく誇張する傾向を示してきた。そのストライキは、重要ではあるが、相当なストライキの波にはほとんど達していないのだ。近年の他の社会運動――オキュパイ・ウォール・ストリート、ブラック・ライヴズ・マター、さらにミー・トゥー――は、今日ここにあっても明日には過ぎ去る、ある種のエピソード的な性格を抱えてきた。それらが放出したエネルギーのある程度はサンダースキャンペーンに流れ込んだが、そのエネルギーの多くは消散している。
 四〇年にわたる経済の新自由主義的組織化と労働者階級の再構成は、一九三〇年代に、また再度一九七〇年代に、大衆的ストライキに、さらに独立した左翼諸政党内の諸々の実験に導いた力を備えた、新しい労働者階級の運動をまだ生み出していない。

バイデン指名
確定的な大会

 バイデンには、代議員の多数派を抱えて大会に到達する可能性が十分にある。しかし、サンダースかバイデンのどちらかが相対多数のまま大会に到達し、第一回投票で勝利できないとしても、次には第二回投票で、スーパー代議員(今年は「機械式代議員」と称されている)が投票できるだろう。これらの者たちは、「著名な政治指導者(元大統領など)」、州知事、上院議員、下院の代表者たち、そして民主党全国委員会メンバー、つまり民主党既成エリートだ。これらのスーパー代議員は七七五人(全数四七五〇人の代議員の一六%を構成)であり、これらの大多数はバイデンを支持するとの予想が可能だ。そして彼らの票がバイデンに指名を与えることになるだろう。
サンダースは、これまでに民主党の指名者を支持すると誓ってきた。そして彼は、まさに二〇一六年に行ったようにそうする、と予想できる。彼が敗北すれば、サンダースの支持者の多くは深く志気をくじかれるだろう。そして他は怒りを覚えるだろう。

基本的課題への
挑戦がなお続く

 何人かは、この経験から新たな政党、労働者階級の政党、大衆的な社会主義の政党、の創出という大望を携えて出てくるかもしれない。彼らにもっと多くの力を与えよう(そして私は、その努力では喜んで彼らに加わる)。とはいえわれわれは、サンダースキャンペーンと同じ基本的な問題に直面するだろう。つまり、低レベルの階級闘争、大衆運動のエピソード的性質、民主党の組織的かつ思想的支配力、といったことだ。
私は、私が間違っていたと分かるかもしれないと願いつつも、二、三カ月前次のように書いた。
つまり「それでもわれわれが分かっていることは、米国の資本家と企業メディアは、サンダースをひどく嫌っている民主党指導部を含む政治の既成エリート全体同様、サンダースと彼がそのために立ち上がっているものに憎しみをもっている、ということだ。最初からサンダースの勝利は、実現がひどく難しいものだった……。われわれの下には、下院と上院に入り込む大きな数の民主党員と一体的に、もしかしたらサンダースを大統領職へと推し進めるかもしれないレベルの階級闘争がない。そして前者は、米国の政治的方向に彼が影響を及ぼすことができると思われる唯一の道なのだ」と。
さらに「われわれは、われわれがやっかいな位置――共産党宣言以後のこの一七〇年にわたるさまざまな時期の社会主義者にとってまさに普通ではないわけではない――にいるということに気付いている。それは、労働者階級がそれ自身で行動する準備がまだできていない、と認めなければならない、という位置だ。われわれは、それなしにはわれわれの政治が全く進まない、そうした大衆運動の爆発に引き金を引くことになるできごとを待ちつつ、労働運動と社会運動の中でわれわれの政治に向け組織化と闘いを続けるつもりだ」と。(「ニューポリティクス」二〇二〇年三月五日号より)
(「インターナショナルビューポイント」三月号) 

ギリシャ

EU国境の開放を

戦争屋と民族主義者が
難民を人質にしている

アンドレアス・サルツェキス

 新型コロナウィルスのパンデミックが世界を揺るがしているが、その陰に隠れるように、トルコ・ギリシャ国境で難民が深刻な状況に置かれた。具体的には、トルコのエルドアン大統領が難民の欧州への移動を妨げない、と公表したものの、欧州側が難民受け入れを拒否、結果として難民が国境地帯で立ち往生状態になったことだ。この事態には、国境の即時開放と難民の権利を求める世界の諸組織による共同声明が出されている(6面共同声明を参照)。以下は、当事国の一つであるギリシャから何が起きているかを伝えている。(「かけはし」編集部)

シリア・中東の
難民に苦難追加
ギリシャ・トルコ国境で起きている出来事への懸念は極めて深い。EUからの称賛を受けてギリシャ首相のミツォタキスが指令した国境閉鎖に続いて、ギリシャへと国境を越えようとしている人々は暴力的に追い返されている(おそらくギリシャからの銃撃後に生まれた少なくとも一人の死、および沿岸警備隊の目前で溺れ死んだ一人の子どもを伴って)。
同時に、難民にも極端な方策が取られている。すなわち、難民になる権利を確かめるための手続きに対する一ヵ月凍結、この間難民資格を持たないままに到着したすべての移民を「出身国」に戻す決定、がある。そしてここには、空港近くに二ヵ所の特別キャンプを建設することが一体になっている。そして、難民への財政援助支払いの停止の公表、および無人島への閉鎖的センター設置という構想の公表もあった。
極右の閣僚が「非合法移民の侵略」と呼ぶものに対し「国境を守る」ために軍と警察が行動に入っているが、他方で民族主義とレイシズムの空気もまたこの間、島々での、またエヴロス川沿いの非正規な国境警備パトロールの組織化を容認してきた。そしてそれらの行動は、移民と連帯活動中の人々に攻撃を加え、あるいは移民のための場所に焼き討ちをかけている、ギリシャと外国のファシストのごろつきたちに支援されている。
ギリシャの住民に対するヒトラーの虐殺に共鳴しているドイツのナチスは、反ファシスト行動に敵対する警察によって保護されている。主流メディアによって励ましを受けた常軌を逸した民族主義的興奮の結果として、ギリシャ人の九〇%が政府の強硬路線に賛意を示している、と示す二つの世論調査がある。

不健康な空気
右翼にも矛盾
われわれは、要塞化されたEUを背景としたこのような事態の突発の二つの原因を知っている。三〇〇万人から四〇〇万人の難民をトルコに閉じ込めることを目的にしてEUと結んだ二〇一六年の悪名高い協定を棚上げするというエルドアンのマキアベリ流の決定、そしていくつかのギリシャの島に設置された過密で不衛生なキャンプに詰め込まれた難民(三〇〇〇ヵ所に二万人以上)の憤激であり、またこれらの島の住民の憤激だ。政府が、難民を大陸に向かわせるよりもむしろ、島に設置する閉鎖的キャンプという構想をもって、これらの難民をそこにとどめておきたいと願っているからだ。
この数カ月島の怒りは、大陸への移送を求める要求と閉鎖的キャンプに対する拒絶をもって高まることになった。ある種混乱した情勢が、難民と諸々のNGOに対する攻撃を伴ったファシストの浸透に伝導性をもつ結果になった。
しかしわれわれはまた、諸要求を島民と難民に共通にしようとするいくつかの試みをも見ている。それゆえ、右翼の側でのいくつかの矛盾、あらゆる者をこん棒で殴りつける機動隊をレスボスに送った政府に対する地域の首長の反対、機動隊の追い払い、などがある。
この非常に緊張した情勢の中で、左翼は島の集会に向かうべきか否かについて論争中だ。そして健全な部分は、レスボスのような民主的な伝統に基づいて、島にいる少数派のファシストが駆り立てたレイシズムとまさに闘うために、行くべきだと考えている。

反レイシズムの
EU規模対抗を
現在の不快な空気は、一つの対抗を生み出し始めている。右翼の者でさえ何人かは、ミツォタキスが当地とEUのファシストと民兵に行動の余地を与えることになるのでは(言われているところでは、後者の一人が移民と間違えて一人の警官に銃撃を加えた!)、と懸念をもっている。六六のNGOが一つのアピールを出した。それは、違法な諸々の方策を糾弾し、難民の権利の尊重、連帯活動中の人々の保護、そしてEUへの自由な定住を要求している。
そしてシリザ指導部は二〇一六年協定への復帰を求めているが、反資本主義左翼は、アテネでの三月一八日の大デモと国の他の八都市における行進をもって、また決起を求めるシリザ青年部からの呼びかけをも加えて、最初の国民的対抗に乗りだした。主な要求は、EU国境の即時開放であり、それは、EU左翼の優先目標でなければならない。これは、フランスの地方選で、「自治体内への難民の即時定住」の要求に移し替えられる可能性があるだろうか?(二〇二〇年三月一一日、アテネ)

▼筆者は、ギリシャの第四インターナショナルメンバー。(「インターナショナルビューポイント」二〇二〇年三月号)


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