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    かけはし2020年4月20日号

資本主義が生む公共医療崩壊が育てた


新型コロナウイルス

アン・ジョンホ(江原・内科専門医)

 昨年12月に中国武漢で始まった新型コロナ(COVID19)感染症が全世界を席巻している。韓国でも1月20日に初の感染者が出て、2月18日に31人目の感染者を起点に爆発的に拡散して7千人を超えた。毎年10万人が被災し約2千人近くが死亡している産業災害の恐ろしさと深刻さがあまり知られていないのとは異なり、新型コロナは、マスコミを通してまたたく間に全国を恐怖に落とし入れた。
 このような災難は常に社会的・経済的弱者と呼ばれる貧困者と障害者、労働者、小商工人など民衆に最も大きな被害を与えて生存さえ危うくする。生活必需品買いだめで品薄状態が起こり、景気が低迷し、貧困者と低所得者層の窮乏はさらに悪化する。小商工人たちは、取引先がキャンセルすれば生存が危うくなる。低所得層に提供されていた雇用事業は中断され、それらの人々の生計は見通しが立たなくなる。この渦中で資本と企業は年休使用や無給休職を強要して、時には削減まで断行し売上高減少の損害を労働者に転嫁する。

公共医療が崩壊して防疫が崩れる


 新型コロナがこのように急速に拡散したのは宗教集団である新天地というスーパー感染集団の影響もこの上なく大きかったが、政府の初期防疫失敗がさらに根本的な原因である。感染源の流入と拡散を食い止めるための検疫と消毒をより徹底的にしなければならなかった。外国人でも韓国人でも危険地域からの入国を徹底的に管理しなければならなかったし、疑いがあれば、感染拡大の危険性がなくなるまで隔離して管理すべきだった。
 しかし、そのためには韓国の検疫と消毒システムや施設さらに人材が足りなかった。1年に約1330万人が入国して、人口も約5100万人に達するこの国で、検疫人員はわずか453人に過ぎない。このような、不足している人材で検疫と防疫が十分にできるはずがまったくないのである。結局、予見された事態ということだ。それは予防や生活環境の改善のような利益の創出とは多少距離がある分野に対しては、特別な関心を置かず、比較的収益性の高い分野の診断と治療に集中する商業化された資本主義の医療システムがもたらした結果でもある。公共分野での検疫と消毒は常に後回しにしかされなかったし、それさえも不足している財源で運営されている。このような、検疫と防疫システムが不十分な韓国では、伝染性が非常に強い新型コロナのような感染症を防ぐことはそもそも不可能だった。
 新型コロナ感染者が急激に増えて、より多くの問題点が明らかになった。隔離施設と陰圧病室は非常に不足しており、ほとんどの感染確定者と疑われる患者が自己隔離状態で放置された。結局、自己隔離状態で治療を適時受けられず死亡する事態が続出しており、自己隔離者を通してまた別の感染拡大も起こった。感染確定者が出た医療施設は閉鎖されてきちんと必要な診療も行うことができなくなった。
 現在、国家指定の専門隔離施設は29の病院、161病室、198病床に過ぎず、感染症専門病院に指定されたところも2カ所だけだ。これで40日、という短期間に感染者が7000人を超えた現在の状況に余裕がないのは当然である。結局、今回の新型コロナ事態の核心的な原因と問題点は、検疫と防疫、そして公共医療にかける施設と人材が絶対的に不足しているということである。現在、韓国は、経済協力開発機構OECD諸国の中で、人口比で最も多くの病床を保有しているが、肝心の公共病床は全体の10%にも満たず、OECD加盟国の平均(73%)の7分の1の程度に過ぎない。したがって、新型コロナのように定期的に迫ってくる感染症事態を防止し、解決するためには、何よりも、公共医療の拡充が絶対的に必要なのだ。

このすきに、医療民営化


 しかし、現政権と政界は、公共医療を強化する考えがあまりないようだ。去る2月26日、国会を通過した「コロナ3法」という△検疫法△医療法改正案△感染症の予防法などは、従来の感染症の管理をより強化し、隔離措置違反に対する処罰を強化することだけである。いざ必要な公共医療の強化については何も内容がなかった。保守野党は、公共医療の拡充については、一切の言及もなく、今では有効性もほとんどない「中国人入国禁止」だけを主張しながら、新型コロナを政争の道具として利用している。
 感染症専門病院や陰圧病床を拡充するという総選挙公約も出ているが、公共医療の拡充を前提に出していないために、実効性がないに等しい。端的には、収益をきちんと出せない圏域外傷センターが民間分野で自らの役割をするのは難しいことを示したアジュ大病院の圏域外傷センターの事例を見ると、これは明らかになる。結局、現政権と政界が新型コロナ事態の根本的な問題を解決する意志や能力がないということを明らかにしている。
 むしろ現政権は、新型コロナ事態が絶頂だった17日、民間業者の「消費者向け直接遺伝子検査(DTC)」の項目を拡大すると、21日には遠隔医療を前提とするモバイル医療用アプリ安全管理指針を出した。新型コロナの恐怖に便乗して電話診療および遠隔処方を施行し遠隔医療をしようとするなど、医療民営化への野心を表わにしたのである。遠隔医療は、それに必要な通信装備と処方せん伝達システム、各種生体信号測定機具などの装備はもちろんのこと、患者の健康情報を分析・加工するプラットフォームなどを介して通信、およびバイオヘルス産業と直結する。さらに、遠隔医療は、健康情報ビッグデータの収集に活用され、企業の健康管理サービスと連携されているパラメーターで作動するため、医療民営化の重要な軸をなす。何よりも、遠隔医療は、安定性と有効性が不確実で、薬物乱用と誤診の危険性を高めるなど、患者の健康の観点からも問題が多い。さらに遠隔医療に伴う装備の構築と莫大な資本投資が可能な大型病院を中心に運営される可能性が高いので、多くの専門医と有名な医師を立てることができ大型病院に患者が集まると一次医療と公共医療を危険にさらすことになる。このように、いろいろと問題があるにもかかわらず、唯一資本の利益のために(コロナを口実に)遠隔医療を強行するのである。
 医療民営化は、保健医療を「ヘルスケア」という利潤創出の道具として商業化することであり、新型コロナ事態悪化の原因である公共医療崩壊をさらにあおる。結局、公共医療の強化と拡大は、資本の利益を代弁する現政権と政界に期待することはできない。ウイルスの被害を最も多く受けて、同時に最も切迫した主体である労働者民衆が闘争で勝ち取るしかないだろう。

資本主義では、治すことができない感染症


 前述したように、検疫および防疫人員と施設の不足、不十分な公共医療システムが今回の新型コロナ事態を悪化させたが、そのほかに考察してみなければならない根源的な問題がある。
 まず、新型コロナの発生原因である。新型コロナ事態は野生動物に、主に寄生するコロナウイルスが突然変異を起こしながら、人体に感染して発生したものである。それでは、なぜ野生動物に寄生するコロナウイルスが突然変異を起こしたのか。ここでは、利益のために無分別に環境を破壊する資本主義的生産にその原因がある。大規模に森林資源を破壊しながら、人間と野生動物の接触面が拡大され、野生動物の生存は、危機に陥った。ウイルスも絶滅していく野生動物に残っているよりは突然変異を起こして新たな宿主に人間を選択しているようだ。2002年のSARS、2009年の新型インフルエンザ、2012年MERS、2019年の新型コロナに至るまでに、資本主義で必然的な経済恐慌のようなウイルスの突然変異による新たな感染症が5〜7年単位で周期的に起こるうえ、そのサイクルも短くなっている。
 また、化石原料を利用した資本主義的大量生産が空気や土壌を汚染させて、地球温暖化を誘発しながら、蚊やダニの生息地がさらに広まった。このためデング熱、黄熱病、マラリア、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)など蚊やダニによる感染症も拡大している。したがって資本主義的生産を環境に優しい新たな生産システムに変えなくては、この感染症の流行事態を止めることはできないだろう。
 第二に、新しい感染症に対する治療と対応である。今、新型コロナウイルス治療剤とワクチン開発のためにいくつかの国で研究を進めているという。治療剤とワクチンの開発には長い時間が必要で、数兆ウォンのお金が必要だ。しかし、収益を生み出すのは容易ではない。治療剤とワクチンが開発される頃に、その病気はすでに過ぎ去っていたということもあり、再度発生するという保証もない。つまり開発された治療剤とワクチンが必要とされない物になることもある。利益創出を目的とする資本の立場では、収益が不確実なところに気軽に投資しようとはしないだろう。結局、医療も利益創出の道具と見る資本主義的医療システムでは、SARS、MERS、新型コロナのような単発的な大流行の感染症に対処することはできない。資本主義的医療は収益創出が容易な診断と治療に集中しており、それが収益創出が容易でない予防的医療に関心がない理由だ。
 病気を「個人的なできごと、あるいは責任」だと考えて、個人の病気に対する診断と治療に集中してきた資本主義的医療では、もはや新型コロナのような大規模感染疾患や病気の予防と社会的対応を十分に行うことができない。医療と病気は「社会的」なものだ。診断と治療だけでなく、予防と生活環境の改善まで含めた統合的な新しい医療、収益性の計算にぶら下がる資本主義を超えた新しい医療への変革が避けられない。
(社会変革労働者党「変革と政治」102号より)

朝鮮半島通信

▲韓国銀行は4月9日、金融通貨委員会で政策金利を年0・75%で据え置くことを決定した。
▲4月10日の朝鮮中央通信は、金正恩朝鮮労働党委員長が人民軍軍団別の迫撃砲兵区分隊の砲射撃訓練を指導した、と報じた。

コラム

新型ウイルスと政治

 三月二四日、東京五輪の一年延期と東京都知事の「東京封鎖」発言から、東京の様子が一挙に自粛に変わった。企業も翌週から、テレワークなど自宅での仕事を増やし、半数が出社しないように変わっていった。瞬く間に、その会社に出入りしているさまざまな関連企業の仕事がなくなり、そこで働く非正規の労働者を不安のどん底に陥れた。
 新型コロナウィルスをめぐって、刻一刻と事態は変化し、その対応に政府・自治体は追われた。四月七日、安倍は非常事態宣言を出したが「都市封鎖」でなく、都市機能を生かしたうえで、ウイルスを終息させるとした。補償がはっきりしないままの休業と外出の自粛の要請の呼びかけは人々に不安ばかりを作り出している。
 それにしても新型コロナウィルスをめぐる大騒動は、いかに新自由主義グローバリゼーションが脆弱なものか、資本主義経済・社会が簡単に大危機に陥るかを示した。そして、安倍政権や東京・大阪などの大都市圏の首長が保健所や病院を切り捨て、ベッド数、医師・看護師を減らしてきたことが明らかになっている。
 一月段階で、中国武漢での感染が明らかになったにもかかわらず、春節の中国人旅行客をあてにして、渡航を迅速に制限しなかった。企業には手をつけずに、学校の一斉休校を強行した。PCR検査を限定し、患者数を減らし、東京オリンピック・バランリンピックを強行開催しようとした。自粛によって被害を被っている人たちへの補償を明確に打ち出さず、綿マスク二枚を全世帯へ配布(466億円も費用がかかる)や、制限付きの一世帯三〇万円の支給、大企業への一千億円から四千億円の支給など小手先の施策。
 台湾や韓国など一定の封じ込めに成功した国々を見ると、政権と民衆との信頼関係が重要なことが分かる。政権が十分な情報を開示し、その政策を示すことで、民衆の信頼・安心感を作り出すことで、ウイルス封じ込めの政策が貫徹できた。
 安倍政権はこのことができなかった。非常事態宣言についての世論調査によると、宣言については七割が支持するが、七割が不安をもっているというのだ。安倍政権の政策遂行能力が限界にきているのだ。安倍はコロナを終息させ、改憲へ進みたいのだろうがそれができずに引退をせざるを得ないだろう。
 新型ウイルスのパンデミックは過去何度も起き、戦争と同様に人類を危機に落としいれてきた。仮に新型コロナウィルスが収まっても人間が森を破壊し、新たな病原菌をもたらす動物に近づいたら、必ず新たな新型ウイルスが登場する。気候温暖化は蚊などを媒介する感染症を蔓延させる。人口の爆発的増大と大都市の形成、全世界の交通網の発達は容易に全世界感染の広がりを作り出す。公共サービスを破壊し、医療の基盤を崩してきた新自由主義政策は、先進資本主義国だけではなく、アフリカなどの医療の脆弱な国々を大きな危機にさらすことになる。資本主義システムの転換が求められている。       (滝)


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