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    かけはし2020年4月27日号

共に生きるための試練


寄稿

ロックダウンの南アフリカから

住民たちの模索と連帯

福島康真(南ア在住)

 「コロナパンデミック」状況の全世界的な広がりの中で、世界各地の人びとも生きぬくための共同の取り組みを進めている。南ア共和国に住む本紙読者の福島康真さんから、人々がこの試練にどのように対処しているのか報告していただいた。今だからこそ民衆連帯が不可欠だ。(編集部)


閣僚給与減額と
連帯基金に寄付


 ラマフォサ大統領はイースターが始まる前日の四月九日夜に行った演説で、全国ロックダウンを二週間延長して四月三〇日まで続けると発表した。
 南アフリカでは三月二七日から新型コロナウイルスの拡大を阻むためにロックダウンに入っており、国全体がほぼ止まった状態が続いている。
 この演説で大統領は、(1)感染を遅らせたり減らすために公的な保健体制を強め、(2)パンデミックで影響を受けているビジネスや個人を支援するための包括的な経済支援策をとり、(3)貧困層や影響を受けやすい世帯に対する社会的支援策を拡大するという、三つの政略に沿って政府は集中的組織的な対応を行うと述べた。
 政府はすでに検査体制を作ってきたが、これからの二週間、九つあるすべての州で特に脆弱な環境にある地区での集中的な検査を行うために戸別訪問検査を含めた体制を取るとしている。感染ホットスポットはすでに特定しており、そこからの拡大を防ぐためにそこにリソースを集中していくとした。
 経済対策としては、大企業から小規模ビジネスまで規模を問わない支援、労働者やフリーランサー、インフォーマル・ビジネスに対する支援を行うとし、UIF(失業保険基金)に四百億ランド(約二四〇〇億円)を投入し、すでに三億五六〇〇万ランド(約二一億円)が支払われていると述べた。また基礎医療品の供給のために資金を投入しているとしている。
中小企業に対してはローン返済の六カ月の繰延をすでに承認しており、救済のための政策の調整を行なっており、小規模農業に対しても最優先の資金投入を行うという。地域の工場などでマスク、手洗い用消毒液、薬用品などが生産できるようにし、医療労働者がこれらの製品を利用できる環境を作るとも述べた。
 またホームレスの人々に対して全国で一五四のシェルターを確保しており、すでに利用されているという。
 そして大統領は、これらの施策では現在のすべての要求に応えるのには不十分だが、これからの数週間で起きるであろう事態に対して迅速かつ素早い対応をとるためにこれらは必要で、今後さらに包括的な緊急経済政策を作っていくと述べた。
 演説の最後に、この政策を行うために大統領を含めた政府閣僚の報酬を今後三カ月の間三三%カットし、それを連帯基金に寄付すると発表した。

都市中間層から
始まった感染


政府の発表によると四月一〇日現在、検査総数六万八八七四のうち、これまでの感染者確認数は一九三四で、そのうちの一八人が死亡し、四五人が回復している。最初に感染者が確認されたのは三月五日で、三月一五日に政府は全国災害宣言を出したが、その段階での感染者総数は五一で死亡者はまだ出ていなかった。
ヨーロッパで感染が急速に拡大し始めた直後の三月上旬に感染者が確認されたことを考えると、南アフリカでの感染は海外からの旅行者によってもたらされた可能性が高い。ヨーロッパから戻ってきた大都市の中間層、中産階級の人からウイルスが拡大していったと考えられる。
現在も感染者の大多数はヨハネスブルグ、プレトリア、ダーバン、そしてケープタウンといった大都市に集中している。南アフリカでは、かつてのアパルトヘイト時代に作られた人種別居住区が現在も残っており、基本的な経済構造は変わっていない。都市周辺に住まわされている貧困層の人々が都市に仕事のために毎日通っている。
ウイルスが拡大するとすれば、都市に住んでいる中間層、中産階級の感染者が、かつての人種別居住区から通っている人を感染させ、その人が住んでいる地域に広がっていく。そのような拡大を阻むために、政府はロックダウンの導入を決断したと考えられる。

国境閉鎖と外出
禁止措置の導入


政府が全国災害宣言を出してから一二日後の三月二七日に、ロックダウンが始まった。
それが始まるまで、政府は様々なメディアを使って手洗いの励行、社会的距離(ソシアル・ディスタンス)の確保、握手の代わりの腕での挨拶などを行うように宣伝してきた。
ロックダウンが始まると、国境はすべて閉鎖された。航空便は貨物便を除く国際・国内便がすべて運休、陸の国境も閉鎖され、二つの貨物専用港を除いて海の国境も閉鎖された。国内の長距離バスも運行停止した。長距離移動に鉄道は使われておらず、ほとんどが航空便が長距離バスの利用のために、都市間の移動も禁止された。
個人の外出も禁止され、一日中家にとどまること(ステイ・ホーム)が呼びかけられた。散歩、ジョギング、ペットの散歩も禁止され、友人の訪問や一緒に住んでいない家族の訪問も禁止された。大きな敷地を持つアパートなどでも、玄関や庭などは公共の場にあたるので敷地内とはいえそこに行くことも禁止された。
レストランを含めたすべての店が営業停止になったために、ウーバーイーツなどの出前サービスも営業停止になった。
また人の接触を行わないようにするために酒類販売は禁止され、ウイルスを拡散する恐れのためにたばこの販売も禁止された。
食料品を買うための外出と医療機関に行くための外出だけが許されており、そのためにスーバーマーケットなどの食料品店と薬局のみの営業が許可され、そこで働く労働者や医療機関で働く労働者の通勤のために午前中三時間、午後三時間だけ公共交通機関が運行している。
オンラインショップも取り扱えるのは医療関連品や生活必需品だけで、その配送も許可を受けた業者しか行うことができない。
こういった非常に厳しい環境の中で、南アフリカの人々は現在生活をしているが、現在のところ大きな混乱は起きていない。
中間層、中産階級、そして富裕層が住む地域で、この「規則」を破る人がほとんど出ていないのは、これらの人々は比較的大きな敷地の家や大きな部屋のアパートなどに住んでいるためだと思われる。
それに対して、かつての人種別居住区などに住んでいる貧困層の人にとっては非常に厳しいことになる。狭い家に大人数で住んでいたり、密集する掘立小屋に大人数で住んでいると、社会的距離そのものを確保することが難しい。常に密集している場所にいなければならないので、不満も高まっていく。
現在のところ感染者の多くは中間層以上が多く住む都市中心部に集中しているので、そこから感染を周辺地域に広げていかないための交通手段の遮断、人の移動の遮断という方法は、ある意味で合理的な方法だと思える。
しかし時が経つとフラストレーションが溜まっていく。毎日午後八時になると人々はそれぞれの家で一斉に拍手をしたり叫んだり、鳴り物を鳴らしたりする。これは最前線に立っている医療に携わっている人々を激励するために始められたのだが、現在ではフラストレーションを発散するために行われているようだ。

協力のあり方
めぐる模索へ


こういう状況の中で、労働組合や住民組織、NGOなどは、基本的に感染の拡大を阻むために社会的距離を確保することを呼びかけている。
労働組合のナショナル連合の一つのSAFTU(南アフリカ労働組合連合)は、この混乱に乗じて利益を上げようとする企業を厳しく非難すると同時に、社会的距離を確保することを労働者に呼びかけ、政府に対して様々な経済政策提案を行っている。そういう中で、SAFTU書記長が感染する事態が起きた。彼は隔離生活に入ったため当面の間書記長職を解任され、他の指導部全員に対しても検査を受けることを義務とした上で、全組合員に対して政府が推奨する社会的距離の確保に努めるように呼びかけている。
現在の南アフリカは、ほぼすべての人々が感染を拡大しないために一つになっているようだ。
大統領は演説で、政府閣僚の報酬を今後三カ月間カットすると述べた。ということは政府は少なくともこれから数カ月はこの事態は終息しないと考えているとも言える。
現在まだ人類がコントロールできない感染とその拡大を阻むためには、自分が感染を広げる当事者にならないことから始めるしかない。その上で、世界の人々がどのように協力できるのか。手探りの状態はまだしばらく続きそうだ。
(四月一〇日、南アフリカ・ケープタウン)

東京オリンピック・パラリンピック
延期に反対し、中止/廃止を求める声明

2020「オリンピック災害」おことわり連絡会

 3月24日、東京オリンピック・パラリンピックの1年延期が決められた。新型コロナウイルス感染が加速しつつある状況の中で、7月24日にオリンピックの開幕を迎えることなど無理であることは誰の目にも明らかだった。しかし安倍政権やJOCなどは、ぎりぎりまで「完全な形での開催」にこだわった。そのことが新型コロナウイルス感染を拡大させる結果につながったことは間違いない。政府は必要な検査体制を取ることに一貫して消極的であり、感染者をいたずらに増加させたが、それもオリンピックをなんとか開催するためだったのだ。
 実際、新型コロナウイルスの感染者数は、延期決定後に激増しているではないか。まさしく「オリンピック災害」そのものといわなければならない。そして4月7日には、安倍政権はコロナ特措法に基づく「緊急事態宣言」を発令した。検査体制や医療体制の充実など、いま最も必要な措置を取るよりも、人びとの行動を制限することによって「事態の収束」を図ろうという思考に貫かれた「緊急事態宣言」のもとで、私たちの基本的人権が大幅に制限されていく。日本の緊急事態宣言は諸外国に比べて生ぬるいとして、さらなる立法化などを通して外出禁止の強化を迫る声を背景に、安倍政権は基本的人権の大幅な規制を行おうとし、さらには改憲へのはずみにさえしようとしている。…(略) …
 東京オリンピック・パラリンピックは、延期ではなく中止されなければならない。これまでにも3兆円を超える経費がつぎこまれ、延期によって数千億円規模の経費増が見込まれるという。延期ではなく中止の方が経済的損失は大きいという試算もあるが、オリンピック開催による「経済効果」や「レガシー効果」などという、きわめて怪しげな「根拠」がそこでは挙げられている。仮にそうであったとしても、オリンピック中止にかかる損失は、これまでオリンピックの準備を通じて、行政の協力も得た脱法的な手段も使いつつ、社会的・公共的な資産を山分けにし、莫大な儲けを手にしてきた大手ゼネコンやデベロッパー、情報・宣伝産業、オリンピックによって利益を得る利権団体すべての責任で補填すべきだ。コロナ状況によって営業停止や活動休止に追い込まれ、困窮している中小企業や個人事業主、この社会で生きる全ての人びとに対する経済的救済と、コロナ検査体制・医療体制の圧倒的な拡充に、オリンピック資金のすべてを振り替えよ。無用なカネをこれ以上オリンピックにつぎこむな。まさに「オリンピックをやっている場合ではない」。はじめからそうであったし、いまもそうである。
 3月28日、私たちは郡山市で「聖火リレーと五輪災害」トークリレー集会を開催した。3月26日にJビレッジから始まる聖火リレーは中止となったが、復興とはほど遠い福島の状況を、あたかも復興したかのように演出する「復興五輪」の欺瞞を、私たちは福島の方々の怒りとの出会いのなかで、あらためて再認識させられた。
 コロナ状況の打開に終わりが見えない「いま」だからこそ、オリンピック・パラリンピックの中止がいますぐ決定されなければならない。「復興五輪」は「コロナからの復興」を含めたものに読み替えられ、資本と利権集団の「災害便乗型」の祝祭として、「国民」を動員していくナショナルイベントとして再組織されようとしている。いまこそオリンピックに終止符を打とう。東京だけでなく、あらゆる地域で行われようとしている近代オリンピックそのものを廃止しよう。このことを私たちは、内外のすべての仲間に向けて呼びかける。
 2020年4月15日
      



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