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    かけはし2020年4月27日号

隔離求め「命のためのストライキ」


チリ

民衆反乱が開いた変革展望に今も活力

ヤビエル・ピネダ

 あらゆるところの場合と同じように、チリの大ニュースは急速なコロナウィルス感染の高まりになっている。しかしまさに昨年一〇月、チリの新自由主義秩序は、民衆的反乱が爆発し、ゼネラルストライキ、占拠、さらに大衆的決起を爆発させた時、その深部まで揺さぶられた。主流政党はコーナーまで追い詰められ、ピノチェト独裁からの遺物である憲法を改定するために、今年四月を予定に国民投票を行うことの同意を強いられた。そしてちょうど二週間前、一〇〇万人を超える女性が、社会的平等と経済的平等を要求し、世界女性デー行動として三月八日と九日、ストライキに決起し、街頭に繰り出した。今コロナウィルスがこの闘争を隔離に追い込むことになり、その中でこのパンデミックを前にした政府の行為は単に、先の改憲国民投票を延期する、という鉄面皮なものにとどまっている。おそらく世界のどこにもないものは、チリでまさに激しいものになっている階級闘争とCovid―19に対する闘争だ。『ノー・ボーダー・ニュース』が現地の活動家に質問した。

スペインと似た
感染広がり速度


――あなたの国や都市のパンデミック状態を教えて下さい。 感染者数は? 死亡者数は? 今後数週間どのぐらいの速度で感染が広がるかについて、専門家の予想はどうか、など。

 チリでのパンデミックは急速に広がった。最初の感染は三月三日だったが、それはすぐさま国の様々の地域に達した。比較すれば、われわれはスペインの感染に似たコロナウィルス感染上昇率に今さらされている。三月二二日(一九日目)現在、チリには六三二の感染確認数があり、その一方スペインには同じ経過期間で五八九件の感染があった。三月二一日午後には、このウィルスによる最初の死亡が知らされた。犠牲者は、地方の労働者街で暮らしていた八三歳の女性だった。彼女は公立病院で死亡したが、その事実とは別に、暮らし向きのよい住宅街にはより高い感染率がある。
しかしながら、数字が意味するものについては多くの異論がある。保健省が記録する日々の数字には医科大学から異議が出されてきた。それらが記録されている方法も、それらがどの日付けに対応するものかも、知らされていないからだ。感染をつきとめている方法を前提に、これらの数字はおそらく最低二日遅れ、と理解されている。その上チリの人口は一八〇〇万人であり、対してスペインは四六六〇万人なのだ。
ここまでのところ、国民的な隔離は全く指令されていない。そしてパブ、カジノ、ディスコの閉鎖は三月一九日(一七日目)にやっと指令されたに過ぎない。連邦の当局は隔離命令を望まず、したがって学校や大学の閉鎖は市長による圧力からの結果となった。同様に、隔離を設けた企業やその労働者がテレワークで働いている企業は、当局からではなく労働者からの圧力でそれを行った。
包括的な隔離がもし指令されなければ、われわれは、スペインやイタリアのものに似た数字、あるいはもっと悪いとさえ言える数字を見ることになるだろう。三月二二日、政府は午後一〇時から午前五時までの夜間外出禁止令を発表した。まるでこのウィルスは昼間にしか広がらないかのようだ。

準備不足は歴然
政府も全く無策


――あなた方の政府は危機にあたってどんな具体的措置を講じてきたのか? 政府は責任をもって行動してきたのか、それとも準備していなかったのか? ウィルスを封じ込め、新型ウィルスに感染した人々に対処するために、政府がとっている措置について手短かに述べてほしい。非常事態なのか、学校は閉鎖されているのか、など。

 政府はこの危機に準備されていなかった。彼らは揺れ動き、それら同士で矛盾を見せた。彼らが最初に採用した方策は、三月一五日(一三日目)に学級閉鎖を宣言することだった。とはいえ事実としては、このイニシアチブは大学管理者と市長――チリの教育システムの三〇%を管理している――によって宣言された。同日、連邦政府が招集した専門家委員会は、学級閉鎖に反対する勧告を行った。しかし一時間後大統領は、コミュニティからの圧力の結果として、全国テレビで閉鎖を公表したのだ。
今週になって、ある種の「国民的隔離」が、感染率を抑制するためとして、社会組織と労組により攻勢的に推し進められてきた。しかしながら政府は依然として、われわれの命よりも企業の利益を優先する方をむしろ選んでいる。
三月一八日(一六日目)、大統領は全国レベルの破局的非常事態を宣言した。それが意味するものは、軍が全国的に公共の秩序の管理を引き受けることであり、彼らに集会の権利、移動の自由、また個人的財産の保護を制限する権力を与えることだ。軍は今にいたるまで、破局に関する行動は何も取っていない。軍の使命は、住民の援助にやって来るどころか、サンチャゴ首都圏の国防を担当する将軍の言葉では、「公共の秩序を守る」ことなのだ。今回の保健上の緊急事態は軍によって解決されることなどあり得ない。

――あなた方の医療システムは危機に対してどのように対応してきたのか? あなた方の医療システムの最大の弱点と強みは何か?

 われわれの公的医療システムは新自由主義諸政策によって解体されてきた。国家は、公立病院――住民の八〇%以上が処置されている――と私立の医院の間で資金を等しく分け、それによって資金を私立医院の利益に流している。
保健システムは今回のパンデミックに立ち向かうようには準備されていない。利用可能なベッド数は、対人口比で不十分であり、パンデミックの高まりの持続は、公私双方の保健システムの対応を不可能にするだろう。
このシステムの唯一の強みは、彼ら自身も気付いている不安定な諸条件にもかかわらず、この危機に立ち向かおうとしているその職業人だ。たとえばタルカフアノ市のある病院では労働者たちが、医療資材供給の不足のために、マスクの蒸気消毒を始めた。

政治諸勢力
と社会運動

――極右・保守からリベラル・社会民主主義にいたる各政党の新型コロナウィルスについての公式の政治的反応を述べてほしい。もし該当すれば左翼政党についても。

 右翼と保守派はパンデミックについて恐怖を振りまこうとする試みを始めた。しかし民衆がこの問題を真剣に考え始め、職場の閉鎖を要求するや否や、右翼は反動的な立場を取り始めた。民衆から圧力を受けた後に全面的な隔離を支持するにいたった右翼の市長は、二、三の例外にすぎない。
リベラルと社会民主主義の部分は、いつものように優柔不断だった。彼らは一定の方策を要求しているが、全面的な隔離、あるいは経済の相当な部分の閉鎖を求めるつもりはない。彼らはこの非常期の中で何に対しても貢献していない。
拡張戦線(フレンテ・アンプリコ)の諸政党と議会外左翼の諸組織は全面的な隔離を求めて声を上げてきた。左翼諸組織は主に、予防的ゼネストを提案して、社会的諸組織を通じて組織してきた。そしてこのストライキは、健康とわれわれの家族の命は企業の利益よりも重要だ、とのスローガンの下に、「国民的隔離」と「国民的人道ストライキ」とも呼ばれてきた。

――労働組合は危機にどのように対応してきたのか? とりわけ公共部門、教育、医療の労働組合はどうか?

 教育労働者は、学級閉鎖を求めた最初の部分であり、三月一五日に勝利を得た。公務部門労働者もまた、ほとんどの期間で要員を削減し、不可欠な機能だけを果たすために労働を限定し、何とかシフト数を減らすことができた。
公的な医療労働者の場合、彼らはコロナウィルス感染の前進を押さえ込む「前線」に立ってきた。彼らは、いかにパンデミックに立ち向かうかに関する決定策定へのより大きな参画を求め続けてきた。しかしその声を聞くことに対する政府の拒絶のために大きな成功を見ていない。
全体として多くの労組や労働者は、パンデミックに関する懸念の声を上げ、感染に立ち向かうために必ずしも必要でないあらゆる活動の停止を求めてきた。衛生管理や安全方策を欠いているいくつかの職場ではこれまでにいくつかのストライキが起き、たとえば、公共交通の労働者やいくつかのモールやショッピングセンターの従業員が、そうした方策をめぐってストライキを行った。要するに、諸労組は今パンデミック対処のために国民的隔離を推し進め、不可欠ではない全企業の閉鎖に向け主導性を発揮している。

――社会運動(学生、フェミニスト、環境保護、移民、先住民など)は危機にどのように対応してきたのか?

 社会運動はすぐさま主導性を発揮した。われわれは、三月初めに大きな決起を経験したが、それは三月八日と九日の大規模なフェミニストゼネストを受けてフェミニストの運動が先導したときだ。しかしながら、感染の最初の事例の後、また政府の無能さを前に、同じ民衆諸組織は、われわれの命とわれわれの家族の命を守ることを優先するよう決定し、密集することを回避し、パンデミックに立ち向かうための自己ケアを求めて声を上げることを決定した。
これらの方策の中では、「三月八日フェミニスト連合(コーディナドラ・フェミニスタ8M)」が呼びかけた「命のためのストライキ」が際立っている。中でも、労働組合、学生、フェミニスト、社会・環境活動諸組織、移民諸組織を結集している一団体であるウニダード・ソシアルが「人道的ストライキ」を求めてきた。それらすべてがわれわれの労働者階級の保護を求めている。
先住民コミュニティの事例では、新型ウィルスの感染者がまだ確認されていない町に感染者や観光客が入るのを妨げるために、いくつかの道路が封鎖されている。

犠牲負担拒否し
ピニェラ打倒へ


――社会的正義、全国的な医療、失業手当のための緊急措置、家賃や借金の支払い停止などを要求する活動は存在しているのか?

 民衆的反乱は民衆全体の社会的権利の保証といった、新自由主義の解体を求める綱領的な諸要求を掲げてきた。これはパンデミックが広がるにつれさらに強さを増し続けている。そして傷ついた公的医療システムの結果がより明らかになっている。この危機は、仕事がなければ食べられない人々の不安定さを暴き出し、国家がその住民にではなくどれほど雇用主に奉仕しているか、を示している。
こうして、公的医療システムの強化に対する必要性が、隔離期間の職の保護とレイオフを禁止する法の制定同様、自明になっている。われわれは、非公式かつ不安定な労働者に対する補助金を必要としている。そして普遍性のあるベイシック・インカムの考えが次第に定着しつつある。
われわれは、料金不払いの場合でも電力と水道のような基本的なサービスを維持しなければならない。そしてパンデミックが続く間、債務の返済について、債務を抱えている人々に対する行政管理的裁定を差し止めることと並んで、一時差し止めを定めなければならない。最後にわれわれは、医療システム全体の国家管理、またマスクや消毒薬のような基本的な製品と医療用品の退蔵に関する規制、を求めている。
これらはパンデミックに立ち向かうための具体的な方策だ。しかし、昨年一〇月に始まった民衆反乱によって幕を開けられた変革力を秘めた展望は今も活力を保っている。

――新型コロナウィルスによる危機の影響について最後の一言を、これからの何週間、何ヵ月間に、それは全国政治にどのような影響を与えると考えているか?

 チリでの新型コロナウィルス感染は 昨年秋の民衆反乱で始まった社会的・政治的危機、新たな不可避的経済危機で今後悪化させられる以外ない二重の危機、という脈絡の中で理解されなければならない。
政府はこの危機に立ち向かう上で不適任だ。隔離が終わるや否や、決起が再び始まるだろう。第一幕で反乱の引き金を引いた問題すべてが解決されていないからだ。さらに、政府は改憲国民投票を二〇二一年五月まで延期したとはいえ、この問題を抑え込むことはできない。
今後の数週間は、パンデミックに対処し、可能な限り死を阻止する上で決定的となるだろう。非常時が去った後われわれは、レイオフに立ち向かわなければならないだろう。国家が危機の犠牲を民衆諸層と労働者階級に回すことを阻止しなければならない。われわれは、この危機には裕福な者たちが支払をする、と力説する闘いを行わなければならない。こうしてわれわれは、経営者がわれわれの生活を一層さらに不安定にすることを阻止する目的で、年金と最低賃金の増額のような諸要求を掲げつつ、保守派のピニェラ大統領を打倒する闘いを続けなければならない。これからの二、三週は、コロナウィルスとの闘いをピニェラの役立たず政権と対決する闘いに結びつけるだろう。(二〇二〇年三月二五日、『ノー・ボーダー・ニュース』より)

▼ヤビエル・ピネダは、「コンベルゲンシア・デ・2・アブリル(四月二日共闘)」のオルガナイザー、またサンチャゴの「コンベルゲンシア・メディオス(共同通信)」のジャーナリスト。(「インターナショナルビューポイント」二〇二〇年四月号) 



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