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    かけはし2020年4月27日号

個人の責任福祉から社会の責任福祉へ


韓国社会再編戦略:「韓国社会構造変革案」B

カン・ドンジン(社会運動委員会)

深化する所得の不平等と貧困

 2012年OECDは韓国社会が解決しなければならない最優先課題として「所得不平等の改善」を勧告した。OECDによると、韓国で家計が政府から受ける国民年金や基礎老齢年金と同様に公的移転所得は、家計所得の約4%で、OECD平均(22%)に大きく及ばない。世帯内に働いている人がいない場合、貧困率は55%で、OECD加盟国の中で最も高い。高齢者貧困率は70%を上回る。すなわち、韓国の社会保障の恩恵は、効果がなく、効率的でもない。

家計負債と不動産に依存した福祉、個人と家族に押し付ける福祉


 「所得主導の成長」を掲げたムン・ジェイン政府も所得の不平等と貧困の問題を改善していなかった。2月に統計庁が発表した2019年の第4四半期の家計動向調査によると、上位20%の平均所得を下位20%の平均所得で割った数値は5・26倍で、金融危機を経験した2008年(5・20倍)と2009年(5・23倍)に比べて、より悪くなった。
 新自由主義の後韓国の福祉は「個人」の責任で、それも「高い負債」に支えられている。個人可処分所得に対する家計負債比率は2014年末に138%を超えて、可処分所得の3分の1以上を借金でやり繰りしている。特に負債の半分程度が住宅準備や前月制の保証金充当に使用されており、労働者民衆は負債に住宅ローンに捕らわれた生活を送っている。
 脆弱な福祉は、住宅所有を老後の福祉対策の主要な手段としてきた。特に通貨危機以降、雇用不安の増加と公的福祉の不備は、中産層の不動産依存をより一層深化させた。逆に、政府の不動産市場育成政策によって、住宅価格が急騰して参入障壁が高くなり、住宅所有の不平等、住宅貧困、家計負債急増などの状況が引き起こされた。結局、「低賃金・低福祉」システムの問題を負債として埋めているのが韓国福祉の現実である。

低賃金・不安定雇用に帰結された「雇用連携福祉」


金大中政府以後、韓国社会の歴代政府の福祉政策は、「雇用連携福祉」だと言うことができる。金大中政府の「生産的福祉」、盧武鉉政府の「参与福祉」と「仕事を通じた貧困脱出戦略」、李明博政府の「能動的福祉」、朴槿恵政府の「雇用連携福祉」などのすべては「workfare(「仕事work 」と「福祉welfare 」の合成語)」、つまり「雇用連携福祉」であった。ムン・ジェイン政府の「包容的福祉」もこの枠組みを脱していない。これは「貧困から逃れるには、低賃金の不安定な雇用でも受け入れなさい」ということであり、雇用と社会福祉の両者からすべて差別を受ける非正規職を量産した。

医療・社会サービスの市場化で
資本の金儲けの手段になった健康と看護

 1997年の通貨危機以降、政府と資本は「新成長動力の確保」という美名の下に、医療・社会サービス領域を産業化・市場化している。その結果、民間保育園や民間中心の療養供給システムを中心に、社会サービスが提供されており、私立幼稚園事態のように質の低いサービスや不正問題が発生している。また、医療民営化は、病院を資本の利潤追求前進基地として作り上げて、病気を予防し、管理する健康管理サービス領域、さらに個人の健康情報まで資本の手に渡している。
つまり韓国社会の労働者民衆はそれぞれが生きるためにジャングルの中で不安な日々を送るしかなく、OECDの中で最高の自殺率を記録している。このような状況を変えるには、福祉政策も革命的に変換しなければならない。個人や家族に押し付ける福祉を社会と国家が責任を負わなければならない。労働する能力があろうがなかろうが、すべての人は、人間らしい生活を営む権利を享受しなければならない。
そのために、社会変革労働者党は以下のように提案する。

提案1 財閥の独占利潤の還元で
公共福祉システムを構築しなければならない


まず、個人の所有権や市場に基づいた福祉を越えなければならない。医療・保育・教育・住宅で個人所有を最大限に制御し、公共的所有に基づく福祉システムを打ち立てなければならない。
第2に、財源準備の方式を変える。現在の福祉財源は国民が直接支払う社会保障寄与金と税金で構成されている。この両方を合わせた韓国の租税負担率は20%水準で、OECD平均の25%よりも低い。しかし、GDP比での民間保険料の比重は11・8%(2010〜18年の平均)で、ドイツ(6%台)や米国・カナダ・スウェーデン(7%台)などよりもはるかに高い。公共福祉システムを構築してこなかった結果だ。この問題を解決するためには、まず企業の利益を社会的に還元しなければならない。また、企業の法人税と社会保障寄与金の負担率を高めなければならない。これにより、公共福祉システムの基盤を築き、民間保険料に支出する個人の社会的負担から転換しなければならない。

提案2 社会保険・公共扶助保証の水準を高め、公共的社会サービス供給システムに転換する


福祉の核心は「社会構成員であれば誰でも人間らしい生活を享受できるように」するものである。そのためにまず、社会保険を民衆的に再編して、健康保険と国民年金、雇用・労災保険、高齢者療養保険などの保障水準を劇的に高める。また、社会保険の広範囲の死角地帯を取り除いていく。第2に、公共扶助の場合、基礎生活保障制度から扶養義務者基準を廃止し、保証水準を高める。
第3に、社会サービスを国家が責任を持って供給・運営する方式に転換する。保育・療養・活動支援サービスの拡大のために国公立子どもの家と公共療養病院を拡充し、地域レベルで「保育から療養まで」統合的なサービスシステムを構築する。このためモデル事業中の社会サービス員を基礎自治団体にまで拡大して、直接運用するサービス対象を広げ、社会サービスに対する国家の責任運用を明確にする。

提案3 住宅を「買う物」から「住む所」に変える


住居権は基本権である。住宅が商品の領域に残っている限り、不動産投機と住宅価格の上昇、住居不平等を解消するのは難しい。住宅を「買う物」から「住む所」に変えなければならない。
まず、住宅を「社会的財産」に変える政策が必要である。住宅の個人所有を止揚し、社会的・公共的所有に転換し、住居権に対する国家の義務を明示する。このためまず、宅地の私的所有の拡大を防ぎ、公共所有を拡大する。たとえば、投機不労所得と開発利益を還元し、この財源で国家(自治体)の所有宅地を拡大することができる。当面することは公示地価の現実化とともに投機に重課税を導入して住宅投機を通じた不労所得獲得を食い止める。土地賃貸住宅(土地は賃貸し、建物のみ分譲)方式の分譲制を導入し、一定規模以上の宅地は所有できないようにする宅地所有上限制を復活する。
第2に、宅地の公共所有に基づいて、低家賃の「国家社会住宅」(公共賃貸住宅)を大幅に供給することにより、現在の5%水準である公共住宅の割合を大幅に拡大する。民間住宅については家賃統制(家賃引き上げ上限制、賃貸借契約更新権の賃借人付与)案を導入する。
第3に、根本的に住宅の脱商品化を目指す。1世帯1住宅制度を導入し、非住居用住宅所有を禁止する一方、莫大な不動産投機で不労所得を得ている企業の不動産投機を防ぐために、企業の非業務用土地所有を禁止する。

提案4 負担なしで安全に、誰もが「健康権」を受けられなければならない


保健医療の目的は、労働者民衆の健康権の保障である。このため、医療の市場化・産業化・民営化を止揚して、医療の公共性を強化する。病気にかかった後の治療より「事前予防」に中心を置いた保健医療システムを構築する。
市場と民間を中心とした医療サービス供給システム、医療の市場化と民営化、民間大型病院中心の、医療供給システムを止揚する。このためにまず、健康保険の保障性を強化する。民間保険の力と影響力を縮小し、安定性と有効性が証明された非給与の給与化(無償医療)で負担のない医療を実現して傷病手当を導入する。第2に、医療供給システムとシステムに対する国家の責任を強化する。このために、1次医療・公共病院中心の医療供給システムを構築していく。そして主治医―保健所などの1次医療センター―病院-総合病院につながる医療提供システムを地域的に完備した「地域の標準病院システム」を公共的に構築する。また、防疫・緊急・分娩・慢性疾患の管理などの必須の医療サービスエリアは、必ず公共医療が担当し、そのために保健所と公共医療院を拡大し、総合病院を公共病院に転換する。最後に、患者自身の診療計画などについて認知する「知る権利」を保障し、合理的な費用で良質の医療サービスを享受できるようにする。

(社会変革労働者党「変革と政治」102号より)

朝鮮半島通信

▲朝鮮中央通信は12日、金正恩朝鮮労働党委員長が西部地区航空および防空師団管下の追撃襲撃機連隊を視察したと報じた。
▲4月13日の朝鮮中央通信は12日に開催された最高人民会議について報道した。会議では、本年の予算や人事などが決定された。
▲韓国軍合同参謀本部によると、朝鮮は4月14日、江原道から複数の飛翔体を日本海に向けて発射した。
▲韓国で4月15日、4年に1度の総選挙が行われ、与党「共に民主党」と比例政党である「共に市民党」が定数300に対して180席を獲得した。

コラム

自宅籠城する叔母

 緊急事態宣言が発令されてから、八五歳の叔母はほぼ自宅にたてこもるようになってしまった。外出はといえば、ゴミ出しとすぐ近所のコンビニに行くくらいだ。年齢と狭心症を持っているということで、感染することに対する極度の警戒と恐怖心があるようだ。
 これには医者をしている私の兄からの「外出しないように」というアドバイスを受けたことも大きく影響しているようなのだが、はたしてそれが賢明な「選択」なのかと私は疑問に思っている。
 私が感染拡大以前から叔母さんや娘に言っていたことは、「季節性のインフルエンザと同様に、新型コロナウイルスから完全に逃れることはできないのだから、大量に吸収することで重篤になることを避けながら、抗体を獲得するしかない。
 八〇代の死亡率も一〇%台だし、過剰に心配することはない。しかも感染するのであれば医療崩壊する前の早い段階の方がよい」というものであった。
 私は宣言が発令されてから手作り料理を持って叔母さんの家を三度訪問しているが、人との接触を断っている叔母にとって、外部から侵入してきた私は「ばい菌」そのものなのだろう。叔母さんが訪問する私をものすごく「警戒」していることがよくわかるのである。これが非常に悲しいのだ。私の「楽観主義」は年寄りには通用しないのだろうか。
 ちょうど一年前に狭心症の発作で叔母が救急車で病院に緊急搬送されてから私は毎週、雨の日も風の日も自転車をこいで叔母の所に手作り料理を運び続けてきた。そのことを叔母が強く感謝していることは良くわかってはいるのだが、自宅にこもって一日中、コロナ一色の新聞とテレビを見ていると、人は完全に「コロナパニック」に陥ってしまうのだろうか。つい先日も「ウイルスとは何者なのか」ということを説明したのだが、どこまで心に響いたのかわからない。
 今は一年で一番いい季節を迎えているのだから、人との接触は避けながらも、一斉に咲き始めた花々を散策しながら、心を和ますことが一番の健康法だと私は考えている。私の自宅近所のお寺の境内には今、様々な色のボタンの花が満開だ。赤、ピンク、白、まだら模様など、一週間もすればポトリと落ちてしまう大輪の花々が愛おしい。イチョウの大木からは新芽が噴き出している。
 叔母さんの所には叔母が今でも籍を置いている貿易会社から、不定期で野菜やクール宅急便や、中国から取り寄せた紙製のマスクなどが届く。
 しかしその会社の人たちは叔母が炊事をほとんどまったくやらない人だということを知らないようだ。結局それらの食材は私を通して料理になり、叔母の所に届けられることになる。
 来週からは予定通りの禁煙だ。減煙作戦は敗退してしまったのだが、周りに「宣言」してきたのだから実行するしかない。たぶん禁断症状で一〜二週間は悶え苦しむことになるのだろう。コロナどころではなくなるだろう。       (星)
 



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