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    かけはし2020年5月4日号

競争教育ではなく、必要に応じた平等教育に


韓国社会再編戦略:「韓国社会構造変革案」C

チェ・ドクヒョン┃ソウル(全教組組合員)


深まる競争教育と教育不平等

 教育は、人間の全面的発達を促進する一方、自由で平等な個人に基づいて共感と連帯、協力で共に暮らす共同制を目指すべきである。しかし、上級学校への進学のための断片的な教科知識中心の競争教育は、児童・青少年を激しい競争に追い込み、性と学閥による不平等と差別は相対的剥奪感と敗北感を呼び起こす。教育は「共に暮らす人間・自然・社会」をめざすべきなのに、現在の教育は各自が生き残ることを強制している。その結果、学校では、競争による勝者と敗者との「分断」が蔓延し、普遍的人権を歪曲したり、嫌悪と差別さえ正当化しながら教育を崩壊させ、教育自体が不可能になった。
 2018年統計庁によると、韓国の自殺率は、OECD 1位で1日平均37・5人が自殺しているが、その中で、10代の割合が22・1%と最も高い。10代の自殺の理由は、主に競争入試教育による性や試験、進路の問題であった。一方、「チェ・スンシル事態」と「チョ・グク事態」で、親の社会・経済的地位が教育を通じて子供に相続されていることが改めて確認された。不平等教育は、結局負の不平等につながり、さらに社会・階級の不平等に拡大されているのが、現在の韓国教育の実状である。
 さらに、徹底的に序列化された大学の構造の中で良質の雇用は「一流大学」の卒業者に集中され、学歴による不平等が固定化する。大学序列に基づいて、政府支援が変わり、これは学校別教育環境の序列化をさらにあおる。2017年基準で法廷教員確保率を遵守する、私立大学は延世大と高麗大、成均館大の3校だけと分かった。特に私立大学は、校費の約60%を授業料に依存しているため、学齢人口の減少に伴う入学定員の縮小が学校運営に及ぼす影響は深刻である。学齢人口の減少で、いわゆる「低序列の大学」から門を閉める見通しだ。しかし、政府は、これらの大学の労働者と学生のための対策を出さずに傍観する。一部の大学は、生き残るために徹底的に企業が希望する労働力再生産機構に転落し、その結果、人文学と芸術・体育、基礎科学系学科はあちこちで統廃合や定員の縮小を余儀なくされている。

教育労働者と
児童・青少年の権利の剥奪

 現在、国家公務員法、初・中等教育法、教員労組法、政治活動に関連する政党法、公職選挙法などの各種法制度は、幼・小・中等教員の労働・政治基本権をはく奪している。それだけでなく、学校の内外の教育関連労働者のうち、約38万人が非正規職(全教職員の43%)である。公共部門の非正規職の中で最も大きな割合を占めており、その職種も多様で学校はまさに「非正規職の総合デパート」である。学校の非正規職労働者たちは、「公共部門の非正規職ゼロ」政策の失敗で、高い労働強度、雇用不安、低賃金とリスク労働、そして差別に苦しんでいる。
一方、児童・青少年の場合、「未熟だ」という、偏見のために様々な形態の暴力と差別を経験する。学校ではもちろんのこと、社会的にも青少年は、労働・政治の基本権を保障されておらず、性的志向性、外観、性別による序列、どこの学校に在学中か、在学の有無、国籍などによる嫌悪と差別に無防備にさらされている。

資本が支配する教育

 現在の資本が主導する教育は競争イデオロギーを注入し、資本が必要な労働力を養成し、社会の不平等を拡大する資本と国家のイデオロギー装置として機能している。また、教育は公共財ではなく、資本主義的利益生産のための商品として扱われながら、労働者民衆の教育費負担はますます増加している。政府も教育を官僚的に統制する一方、入試競争重視 - 資本中心 - 国家主義教育制度を維持することで、資本主義体制から来ている教育の矛盾を解決するより放置したり、むしろ拡大させている。
教育は「必要に応じて」「平等に」行われなければならないし、資本や国家官僚ではなく、労働者民衆が教育の民主的統制権を持たなければならない。そこで、社会変革労働者党は以下のように教育の構造改革を提案する。

第一に、競争教育を撤廃して
「必要に応じて無償平等教育」が行われなければならない。

 資本主義が強要する競争・効率・成果を前面に出した教育は非人間的で反生態的であり、少数者に対する嫌悪を量産する反教育的教育である。さらに深刻な大学序列体制は子供の時から入試のための競争教育をあおっている。すべて競争的(入試)教育制度を廃止して学閥社会の土壌を除去しなければならない。
教育は社会構成員すべての「必要」に応じて、「平等」に実施する。基礎教養教育は、学齢期の子供と青少年の両方に平等に、無償で行われなければならない。専門的な知識と労働能力の習得、社会・文化的専門的素養を向上させるための高等教育(大学教育)も、誰にでも開放され、無償で行われなければならない。そのために教育のための社会(国家)の責任を強化しなければならず、各自の必要に応じて平等な教育、構成員間の協力的な教育が行われるように、現行の教育制度を全面的に改編しなければならない。

第二に、競争入試制度を廃止し、大学序列と学閥を打破する。すべての私立学校制度を廃止し、私立学校は国公立化しなければならない。

 韓国の大学は、徹底した序列化のために学閥中心社会を再生産する一方、高等教育の公的責務を果たさない私学資本の乱立問題も抱えている。私立学校中心の、高等教育システムは、資本による高等教育統制の問題を解決することができない。したがって、私学中心の大学システムを国公立中心に再編し、大学に対する予算支援を拡大して教育環境を上方平準化しなければならない。これに加えて、国公立大学の共同入学―共同学位制で競争入試制度を廃止して、大学平準化を実現する。これにより、大学入学後誰でも必要に応じて、高等教育を体験できるように保証しなければならない。
さらに、これまで私学財団と理事会が独占していた大学運営と統制権は、学生を含む大学の構成員が平等に享受できるようにしなければならない。現在私学経営難または学齢人口の減少で廃校の危機に瀕している大学の場合には、学生と教職員が他の大学で学業と生活を継続できるように、政府が責任を負わなければならない。

第三に、教育に対する労働者民衆主導の社会的統制が可能でなければならない。

 教育に対する資本の支配だけでなく、国の官僚的統制を防がなければならない。官僚的統制の中心である教育部を解体し、教育に対する労働者民衆の社会的統制が実現されるようにする。そのために教員の労働・政治基本権と政治・思想の自由を完全に保証しなければならない。児童・青少年の人権は制約と差別なく保証しなければならず、労働・政治基本権もまた発達段階に合わせて制限範囲を縮小しなければならない。
一方、既存の反教育的な教員評価と教員成果級制度を廃止し、その代わりに、教員と生徒が自ら教育課程編成や教育内容の選択、教育の結果の評価に参与できるようにしなければならない。消耗的な競争的選抜で教員を統制する現行の任用考査制度を廃止し、代替としての教員養成システムを用意する。
学校内には、教育関連の労働者と学生が参与する民主的な「学校自治機構」を構成して、市・郡・区単位に教育関連の労働者と青少年、地域住民が参与する「地域教育自治機構」を設置し、中央には、地域単位の教育関連の労働者と児童・青少年が参与する仮称「社会的教育委員会」を構成して、国家レベルの教育を民主的に管轄できるようにする。

第四に、非正規職のない学校、教育が可能な学校をつくらなければならない

 今のような「教育が不可能な学校」を「教育が可能な学校」に変えるためには、まず資本偏向教育、不平等教育、競争教育、官僚的統制、教育関連の労働者と児童・青少年の権利の制約などの問題を解消しなければならない。教育は、資本と国家の官僚的・イデオロギー的統制から脱して、各個人が自由で活発な人間に成長できるように支援し、共感と疎通、連帯に基づく平等な社会を目指すことができるようにしなければならない。そのために断片的で正解が初めから決められているような知識中心の教育から抜け出し、労働・生態・性・反戦平和・少数者等に関する感受性を拡大する教育に変えなければならない。同時に幼・初・中等・大学教育はもちろんのこと、学校の外で行われる様々な教育(社会構成員各自の人間的欲求、欲望、必要に応じた教育)は、国家が保障し、すべての費用を負担しなければならない。
一方、学齢人口の減少を理由に、進行中の学校などの教育機関の構造調整と教育予算の増額比率の縮小指導を中止しなければならない。学級当たりの生徒数を削減して、学級数に基づいて適正教員数を確保するようにする。さらに全体教職員の約43%を占める非正規労働者なしでは、現在、通常の学校教育が不可能である。したがって、これらの労働者が公教育で重要な役割を果たしていることを認め、学校で働くすべての労働者が教育の主体として参与できるようにしなければならない。そのために雇用不安と危険労働から抜け出して自由で平等に労働に参与できるように、労働条件と労働環境の改善はもちろんのこと、すべての学校非正規職労働者を正規職に転換して「非正規職のない学校」を作らなければならない。また、労使関係だけでなく、各種の教育政策の樹立過程と学校運営ですべての教育関連の労働者の参与を保証しなければならない。

朝鮮半島通信

▲ベトナム戦争に派遣された韓国軍によるベトナム民間人の虐殺の際に生き残ったベトナム人女性が4月21日、韓国政府に損害賠償を求め、ソウル中央地裁に提訴した。
▲2014年に発生した旅客船セウォル号沈没事故に関する韓国検察の特別捜査団は4月22日、朴槿恵政権による事故調査妨害疑惑に関連して、行政安全部や企画財政部などの家宅捜索に入った。
▲韓国銀行が4月23日発表した2020年1〜3月期のGDP速報値は、前期に比べ1・4%減少した。

コラム

アベを雪隠詰めに

 店頭からマスクが消えて二カ月以上になった。感染予防のための三点セット「マスク」「手洗い」「うがい」。有り余る生産力と物質的豊かさを誇る「先進国日本」。「本日の入荷は在りません。次回予定も不明」の張り紙の前で溜息をつく人。医療の最前線から医療用品、器具不足の悲鳴があがっている。海外依存を強め国内製造業を失った日本の姿が「マスク」から透けて見える。
 全国的非常事態宣言。自粛要請が拡がり繁華街も「休業中」のシャッター店舗。賃金の未払い、一時休業、雇止め、解雇、そして内定取り消し等、雇用不安も拡がる。バイト先を失った多くの若者が大学や専門学校を退学しようかどうか悩んでいると報道された。バイトによって学業生活を支える若者の多さ、企業の内定取り消し、新規雇用者数の削減等、夢や未来を語ることも遮断される息苦しい社会。
 震災後、巨額の税金投入で「国土強靭化」が進み海岸線は巨大防波堤が張り巡らされた。だがリーマンショック時に「年越し派遣村」が浮き彫りにした脆弱なセーフティネット「すべり台社会」は新たな歯止めで解消はしたのか?? 低賃金、長時間、細切れ労働、パワハラ企業等が陰湿に広がる。
 国は国民の生存を保障することが最大の使命だ。「コロナ感染拡大を防ぐ」国の対処方針は経済的支援をせず「自粛」と言う言葉でごまかす。いわば「欲しがりません。勝つまでは」という「精神論」を振り撒き国民への責任転嫁であり、自粛と経済支援はセットでしか機能できないのだ。
 そしてもう一つ。安倍政権が「国難」と叫ぶなら何で財界・大企業に「内部留保」を使い雇用を維持せよ! と何故言わないのか? 国民がコロナと闘っているときに、巨額の経済対策などと甘やかすな! 
 初期対応の致命的な遅れ。そこで忖度官僚案件「全国民の不安がパッと消える魔法の布マスク二枚」発表。既に国民はネット配信の「布マスクの作り方」を参考に生産開始。同じ集合住宅に住むおばあちゃんが「暫くぶりに裁縫したから出来が悪いのよ」と手縫いの「自家製マスク」をつけて買い物に出かけていく。
 ゴタゴタ後手後手。あまりにも酷すぎる安倍内閣の動きに「この国は本当に大丈夫?」。「軽症者」は自宅隔離〈庶民の住宅事情・家庭生活を知らない〉〈結果、感染拡大。隔離施設がない?〉〈国、行政機関、企業所有の研修施設、寮、保養所の開放、オリンピック関連施設、選手村等いくらでもある〉問題は政治がやる気があるかどうかだ!
 日本政府は、コロナ感染で危機的状況を経験した韓国から、ノウハウを学び生かそうとしていない。ドライブスルーによるPCR検査、重症者を選別隔離する仕組みと体制、空港での入国者ウオークスルー等様々なノウハウがある。既に米国食品医薬局が承認し輸入できる「新コロナ診断キッド」は検査時間の大幅な短縮になる。韓国の経験とノウハウを共有することは有意義だ。
 仮に安倍首相の歪んだ歴史観と嫌韓思想が妨げなら国民にとって不幸なことだ。国境を超え、拡がるコロナ禍に連帯して闘うこと。しかるに、狭い度量で愚挙を冒してはならないし、国の使命は「国民の命を守る」ことなのだ。      (朝田)
                      



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