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    かけはし2020年6月8日号

東海第二原発再稼働県民投票条例 直接請求へ


再稼働への住民の強い抵抗形にし
首長まかせ気風上回る運動が課題

条例制定審議へ県議会日程確定

 茨城県庁で五月二五日、「東海第二発電所の再稼働の賛否を問う県民投票条例」制定の直接請求が行われた。県の窓口となる原子力安全対策課の担当に手渡された署名は法定必要数の一・七八倍に当たる八六七〇三筆。提出後、直接請求運動をとりまとめた「いばらき原発県民投票の会」の共同代表三人と大井川茨城県知事との直接面談も行われた(異例かもしれない)。大井川知事は二〇一七年の知事選出馬の記者会見で「県民投票も選択肢」との発言を行った。しかし就任以降は明言していない。福島第一原発からのトリチウムの海洋放水に関しては県内漁協からの要請を受け、「気持ちは同じ」「放出はまったく容認できない」と発言し、国の方針と対立している。
 直接請求を受けた首長は二〇日以内に条例案を議会提出しなければならない。
 六月一日、閉会中に開催された県議会議会運営委員会では条例案の審議方法と日程が次のように決められた。
 八日の定例会開会日に知事が意見を付けて条例案を本会議へ提出。午後一時開会の知事による提案理由の説明に続き、請求代表者一人による二〇分間の意見陳述が行われる。
 一一日から一五日、本会議で一般質問と質疑。本会議はいずれもインターネット中継される。
 一七日、総務企画と防災環境産業の常任委員会の連合審査会で条例案審査をすることを決定する。
 一八日午前一〇時から連合審査会。審査会ではまず執行部の説明聴取・質疑が行われる(九〇分)。続いて五組の参考人意見聴取・質疑が各三〇分ずつ行われる。五組とは、@大学教授(行政法)、A資源エネルギー庁職員、B原子力規制庁職員、C関係自治体の長、D請求代表者三人と補足意見二人、最後に会派の意見表明が行われる。採決は所管の防災環境産業委員会が単独で行う。今回、本会議以外ではじめてのインターネット中継が行われる。
 二三日午後一時、本会議で常任委員長が審査報告、討論と採決が行われる。

可決困難とはいえ希望も残る

 定数六二(欠員二)の県議会ではいばらき自民党が四二議席と過半数を占める。防災環境産業委員会は定数一〇のうち、自民六、県民フォーラム・公明・共産・無所属が各一で構成。県民フォーラムは日立製作所社員。公明は一八年末の県議選で再稼働反対の県連代表が引退したため立場は不鮮明、県民投票に関しては宮城や沖縄と同じく反対票をいれるだろう。無所属は中村喜四郎代議士の長男。この間の委員会での原子力関連の討論は共産にほぼ集中する。これまで再稼働について十分な審議を委員会では行っていない。
一八日の連合審査会にエネ庁や規制庁といった国を呼ぶことには「前例がない」などの批判がある。しかし関係自治体の首長や請求代表者、つまり地方自治体と県民を「国と同列」にあつかうことは異例だともいえないか。「エネルギーは国策」だからと委員会と本会議では自公を中心に条例案は否決されるかもしれない。やがて県議会は再稼働を認める決議をし、県知事に判断を迫ることもあるかもしれない。だが協定上、地元六市村すべての同意がなければ東海第二原発は運転を再開できない。
可決は期待できないが、否決されても希望が失われることはないだろう。

対話拡大めざしコロナ下で努力


「いばらき原発県民投票の会」は昨年三月に旗揚げした。一〇月署名開始、今年三月定例議会提出を目指した。宮城の一年遅れだ。しかし九月、「来年一月から署名あつめを行い、六月議会への上程を目指す」ことに変更、会の公式HPでは次のように状況を伝えている。
――これまでに県内四四市町村のうち四〇市町村において受任者を確保することができましたが、八月末に一〇〇〇人を超えたところで、署名開始に十分な人数を確保できておりません。〜略〜東海第二原発や県民投票運動に関する情報が、多くの県民に届いているとはいえないのが実情です。―中略―そこで、原発や県民投票に関する対話をさらに広げ、運動を成功に導くためには、もう少し時間が必要と判断し、署名開始時期を見直すこととしました。開始時の受任者数三五〇〇人を目標とします……。
一月六日、「請求代表者証明書」が交付され署名収集開始。署名期間は原則二ヵ月間だが、一月から四月にかけて選挙がある一一の市町村では期間にズレが生じる。三三市町村は期間が三月六日まで、このズレによる市町村の最終日は四月一二日となった。
県民投票の会は二月二〇日、会の「新型コロナウイルス感染予防指針」を作成した。三月一二日には「県内で感染者が発生したら街頭署名と不特定多数への戸別訪問を中止」するなどの対策を追加した。三月一七日、茨城県内で初めての感染者が確認される。期間がズレた市町村では署名活動に大きな影響があったという。
参考:いばらき原発県民投票の会http://ibarakitohyo.net/

世代更新と「自治」「民主主義」

 直接請求後の記者会見では、開始時の受任者は三〇〇〇人を超えたという。宮城の「県民投票報告集」によれば、事前登録は「約七〇〇〇人」だった。宮城の署名数は一一万一七四三で茨城を超え、法定必要数比は茨城の約一・八に対し三倍強の約五・八倍だった。有権者数は茨城が一・二七倍ある。この差はどうしてか。(みんなで決める会https://minnadekimeru.jp/)
ともに東日本大震災で被災したBWR炉の再稼働に対してで、どちらも知事選が二〇一七年にあった。茨城は八月に保守系の現職、自公推薦の新人(現知事)、再稼働反対の新人三候補の争いとなった。宮城は一〇月に保守系現職と再稼働反対の新人の一騎打ちだった。茨城は直接請求まで二年以上かかった。宮城は一年ではじまった。宮城は運動の連続性が高揚につながったのだろう。
これまでの一部自治体や茨大などが行ったアンケート、選挙時の報道機関による出口調査ではいずれも再稼働反対が過半であった。もっとも大きな要因は独自(地元六市村すべての同意事項)の安全協定の締結だろう。六市村はJCO臨界事故の際には自宅避難したエリア、また福島からの避難者の多くを受け入れた。再稼働にあたっては他県などの立地地域とは比較にならない住民の強い抵抗が確実なことが独自の安全協定締結に向かわせた。一方、自民王国の茨城県民には「首長にまかせればいい」との考えも多い。
ならば県民投票の会はどう考えてあえて住民投票へ向かったのか。条例制定の請求要旨には「地方自治の本旨に基づき、間接民主制を補完する手段としての県民投票の実施を求める」と、「自治」「民主主義」といった普遍的な価値≠ェ簡潔に書かれている。
宮城の特徴は連続性、茨城は世代の更新かもしれない。象徴的な行動も行われた。
茨城ではまだ県知事に県民投票の実施を求める選挙権のない県民だけの署名五四筆が集められ、五月二六日に届けられた。署名を集めたのは中高生三人でつくる「U(アンダー)18花かんむり」で、HPによれば四歳の署名もあったようだ。また同日、全県議会議員宛に県民投票の実施をお願いする手書きの手紙が送られた。茨城では四月初め、県立高校の休校延長を求めるネット署名行動が行われ、県知事に方針を撤回させている。

再稼働阻止へいくつもの節目

 直接請求した条例案では「県民投票の期日は、知事が再稼働の是非を判断するまでの期間において、知事が定める」とある。六月八日開会の県議会ではこれらを含め、多くの質疑が行われるであろう。
日本原電は四月一七日、再稼働に向けた「使用前検査」を原子力規制委員会に申請、営業運転開始を「二〇二二年一二月」と手続き上明記、二〇三八年の廃炉まで、一日でも多くの営業利益を出そうと、再稼働に向けた工事を昼夜の区別なく行っている。営業運転前には当然、原子炉を起動した試験も含まれ、六市村の同意が必要となる。「二〇二二年一二月」には県議会選挙が行われる。来年八月には県知事選と東海村村長選がある。
(六月四日 斉藤浩二)

資料

東海第二発電所の再稼働の賛否を
問う県民投票条例制定請求の要旨


茨城県の東海第二発電所は、日本初の大型原子力発電所として一九七八年に営業運転を開始しました。東日本大震災以降は稼働を停止していますが、二〇一八年、原子力規制委員会が二〇年の運転延長を認可しました。これによれば、運転開始から六〇年となる二〇三八年までの運転が可能となります。
東海第二発電所の再稼働にあたっては、周辺六市村に加え、茨城県の同意が必要とされています。これは、地方自治は当該団体の意思と責任の下で行われるという団体自治の理念に照らし、正当な権利であるといえます。
また、県の意思決定に関して、知事は「県民の意見をしっかりと伺い、慎重に判断したい」と繰り返し述べています。これは、地方自治は住民の意思に基づいて行われるという住民自治の理念を具現化したものであるといえます。
私たちは、広く県民の意思を確認する方法として、県民投票の実施が最も適していると考えます。県民投票が実施されることになれば、東海第二発電所を再稼働した場合、またしなかった場合に、将来どのような影響が生じるかについて、多方面から様々な情報が広く県民に提供されます。それにより、県民は、熟慮と討議を重ねた上で賛否の判断を行い、個々の選択を表明できるようになります。
一方、住民アンケート等の手段では、意思を表明できるのは無作為抽出された一部の県民に限られ、多様な情報に基づく熟議の上での回答となるかは不明です。また、選挙の際に知事や多くの議員は再稼働に対する賛否を明らかにしておらず、有権者がこの問題に関する判断を委ねたということはできません。
東海第二発電所の再稼動の可否は、社会的にも、経済的にも、茨城県民の生活に大きな影響を及ぼします。よって私たちは、地方自治の本旨に基づき、間接民主制を補完する手段としての県民投票の実施を求め、本条例の制定を請求します。
請求代表者 鵜澤恵一・コ田太郎・山ア咲知

6.1

ATTAC公共サービス研究会

「住まい」からの排除の転換を

命の問題軽視する都政撃つ

 六月一日、ATTAC公共サービス研究会は「新型コロナが明らかにした社会のほころびを繕う〜ハウジングファーストの活動から見えた都政の課題」をテーマに、東京都文京区のピープルズ・プラン研究所でオンライン・シンポジウムを行った。
 コロナ・パンデミックは、住まい・居場所を奪われた「ネットカフェ難民」と言われる人びとが直面する問題を改めて明るみに出すことになった。「ステイ・ホーム」と言われても安定した「住まい」を持てない人々にとって、それはただちに「いのちの問題」に帰結する。このコロナ・パンデミック状況は「人間関係の喪失・社会の喪失」へとストレートに帰着するのだ。
 この日の「オンライン・シンポジウム」は「つくろい東京ファンド」で活動している稲葉剛さんを講師にして行われた。稲葉剛さんは二〇〇八年暮れのリーマンショックの中で「派遣切り」で職も住まいも奪われた労働者を支援する「年越し派遣村」の活動に取り組み、その後も「住まい」に体現される貧困と人権の分野での活動を続けている。立教大学特任准教授でもある。司会は都庁職病院支部の大利英昭さん。  (K)

稲葉剛さん 講演要旨

住宅政策の貧困さ赤裸々に

電話相談に
約五千件も
この間のコロナ危機は、リーマンショックで生起した事態が、形を変えて、さらに大きな広がりと深さをもって、進んでいることを示すものだった。四月一八〜一九日の電話相談では約五〇〇〇件の訴えがあった。直接に電話相談に至らない形でも、実に四二万件のアクセスが記録されたという。そのほとんどは収入がなくなり家賃が払えない、という切実な訴えだった。
大学を卒業したがこのままでは家賃が払えない、すぐさま生活困窮に直面しているという。いったん住民票に記載された住居がなくなると生活再建が成り立たない。住民票に住居を設定しないと公的サービスも受けられなくなる。
リーマンショックによる「派遣切り」の際、住居確保交付金制度が導入され、生活保護を受けられる要件の緩和も行われた。
現在の状況はどうか。海外ではホームレスになるような人々も、ドヤやネットカフェで夜を過ごしてきた。屋根はあるが「家」はない、あるいは「家」はあるが居住権が侵害されやすい状況が広がっていた。
路上生活者の現状を見た場合、建築・土木の仕事は激減し、アルミ缶回収の仕事も少なく、「ビッグ・イッシュー」の売り上げも減少している。一方、ネットカフェで暮らしている人は二〇一七年の調査では四〇〇〇人で、二〇代、三〇代の人が半数。ほとんどの人は生活保護受給可能だという。

都の対応なおも
選別主義に固執


四月三日に東京都に要望書を提出した。パリ、ロンドン、ニューヨークではすでにホームレスの人に個室の部屋を提供している。ネットカフェにいられなくなる状況で、東京でもホテル借り上げを要求した。二〇代、三〇代の人はメールで相談してもらいスマホで発信して、面談・支援というプロセスを取っている。
三月に刊行した朝日新書『閉ざされた扉をこじあける』(稲葉剛著)では中高卒の若者がホームレス状態になっていることを書いている。私たちは、難民支援団体、LGBT支援の人びと、ホームレス支援団体の枠を超えて、共通の財布でクラウドファンディングを行い六〇〇万円の基金を集めた。東京アンブレラ基金を拡充し、一泊六〇〇〇円で七泊まで支援できるようにした。
四月六日には、小池都知事と面談し、住まいを失った生活困窮者には使い勝手の悪い東京都の対応を指摘した。たとえば「都内に六カ月以上住んでいた人に限る。その証明を出せ」とかの条件だ。生活保護を申請しても、貧困ビジネスそのものの「相部屋」にいれられるとか。
四月一七日の面談では、当初は多くが共同部屋とされていたのが「原則個室対応」となったが、行政は「屋根があるだけでいい」という対応を取っていた。まさに都の住宅政策と福祉政策は一体のものだ。
住まいの問題を軽視し、相部屋でいいというのは逆行だ、と言うと、都側は「障がい者も相部屋だ」と言う。ここでは「真に困った人」のみを救う、という厳しい選別主義が横行している。これまでさんざん「ふるい」にかけられてきてコロナでもそれが続いているのだ。
居住福祉政策の破綻は、生活保護の「オンライン申請」とともに、公営住宅の拡充要求に対し、民間の空き部屋を借りあげ、新たな都営住宅を作らないという都の対応にも示されている。いま必要なのは行政のタテ割りを超えた居住福祉政策だ。公共住宅政策の問題点は、都営住宅の倍率の高さにも示されている。セーフティーネットが機能していないのだ。
生活保護は、第二のセーフティーネットだが、行政の手法は「真に困窮している人」を支えるという言い方に現れている。つまり「タダ乗りしているヤツがいる」という言い方であり、そこで人びとを分断するやり方だ。
都営住宅については、家賃補助自体の重要性を見るべきであり、生活保護、社会保険とならぶセーフティーネットという意義がある。いまの問題点は、生活保護の窓口にすらたどりつけない、ということだ。「ワーキング・プア」型の貧困は、それには使えなかったのが一部改善された。その上で、どうしたら北欧型のセーフティーネットに行きつけるか、だ。
今の状況には一定の改善も見られる。その上で例えば音楽関係の人には使いにくさもあるようだ。声を上げることで、さまざまな障がいを下げていこう。

自己責任論排し
排除ない社会へ


コロナ・パンデミックは社会的排除という問題を、あらためてえぐり出した。外国では新自由主義に対する反省が語られてきたが、日本ではそうした批判は拡がらなかった。しかし今、コロナ問題は社会的排除という問題に直面している。その中で、健康格差の拡大に私たちは直面している。人びとが排除されない社会、格差のない社会に向かわなければならない。住まいは人権であり、自己責任ではすまない。あきらめずに言葉を発しよう。(講演要旨:文責本紙編集部)




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