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    かけはし2020年6月22日号

中国はどういう社会体制なのか


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独裁者を支え利権むさぼる そのC

中国はアフリカで何をしているか(二)

「喰い尽くされるアフリカ/トム・バージェス著」

たじま よしお

ニジェールの独裁者との確執

 ナイジェリアのすぐ北側のニジェールは世界最貧国と言われている。首都ニアメの緑豊かな大通りにある官邸のママドゥ・タンジャ大統領は二○一○年二月一八日の午前官邸に大臣を集め、恒例の閣議を開いていた。しかしすでに任期は二ヶ月前に失効しているのである。ニジェールが参加する西アフリカ諸国経済協力体には民主的な指導者などほとんどいないが、それでも公然と大統領の任期を取り除くようなまねをするような者はいない。

 p188〜「羊飼いの家に生まれ、国軍大佐にまで出世したタンジャは、ニジェール史上初めて二度続けて選挙に勝利した大統領だった。クーデターが頻発する国では驚くべき偉業である。しかし最近になって、タンジャは民主主義をないがしろにし始めた。任期はすでに二カ月前に終わりを迎えていたが、いまだに退陣する気配を見せない」。「自分にはなすべき仕事があり、まだ辞職はできないと宣言した。ニジェールの憲法裁判所は、この大統領の行為は違法だとの判決を下したが、大統領はこれを無視した。裁判所がなおも異議を唱えると、大統領は判事を解任した。そして任期制限のない新憲法を定め、国民投票で承認を得ようとした。この計画に国会が反対すると、大統領は国会も解散させ、大統領布告のみで統治を始めた」。
「中国は、ニジェールでウランを採鉱し、未開発の油田を掘削する権利を受け取る代わりに、タンジャが独裁政治を遂行するために必要な手段を提供した。地元の反汚職活動家アリ・イドリッサによれば、アレヴァに相当する中国の原子力企業、中国国核海外?資源開発が、ニジェールにおけるウラン採掘権を五六○○万ドルで購入したが、そのうちの四七○○万ドルは、トゥアレグ人の反乱を鎮圧する武器の購入に充てられたという」。
「さらに、中国石油化工に次ぐ中国第二の国有石油企業、中国石油天然気集団が、欧米諸国ににべもなく開発を断られた石油鉱区の開発権を手に入れたが、その際にも契約金として、三億ドルがニジェール政府に支払われている。政界におけるタンジャの反対勢力の指導者の一人、モハメド・バズームは言う。『タンジャがEU や西アフリカ諸国経済共同体、アメリカをばかにできるのは、中国の金があるからだ。あの男はニジェールの王様になりたがっている』。資金源はほかにもある。後に政府調査局が発見したところによれば、タンジャが政権を掌握していた一○年ほどの間に、横領や汚職により、ニジェールの国庫から一億八○○○万ドルが消えたという」。
「タンジャは、大統領の権力を抑えるための機関を強引に押しつぶし、国民や兵士の間に湧き上がってきた不満にも耳を貸さなかった。中国に寄り添っていれば、もしものときには中国政府が助けてくれると思っていたのかもしれない。だが、その考えは間違っていた。本章の冒頭で紹介したあの日(二○一○年二月一八日)タンジャが閣議を開いているさなかに銃撃が始まった。間もなく大統領官邸から、もくもくと煙が上がった。この銃撃で少なくとも三人が死んだ。反乱兵士の一団が大統領官邸を占拠し、タンジャや大臣を拘束したのだ」。
「私(トム・バージェス)は、クーデターの後ダヒル・マンガルが支配するナイジェリア北部の密輸地帯を通り抜け、あの寂れた国境検問所を超えてニジェールへ入ると、南部の食料配給所を訪れた。干ばつが続き、食料価格が高騰したことで、当時は数百万人が餓えに苦しんでいた。ニジェールではこうした飢饉が定期的に発生している。その配給所では、ある三歳児がベッドに寝そべり一心に天井を見つめていた。異常なほど痩せこけ、骨に皮が張り付いているだけだ。体重は通常の半分ほどしかない」。……略……
「だがニジェールの子は、五歳になるまでに四分の一が死亡する。この子もその一人になってしまうのだろう。この衰弱している子供たちは、そっとすすり泣く程度で何もいわない。だがその姿は、これほど天然資源が豊富なのに最低限の生活もできないことを非難しているように見える」。
「タンジャ政権が崩壊するころにはすでに、ニジェール川の橋梁工事は終わっていた。中国の石油プロジェクトやウラン採掘プロジェクトは進み、中国が建設していた石油精製所は完成し、ニアメの動物園のライオン飼育エリアの拡張計画も策定されていた。中国大使の趙昌会によれば、軍事政権の指導者は、中国の立場が脅かされることはないと保証してくれたという」。…… 略……
「タンジャを打倒した軍事政府は、約束を忠実に守った。選挙を実施し(国際監視団により合法と認められた)、クーデターから一四カ月後の二○一一年四月に政権から手を引いたのだ。選挙で選ばれたマハマドゥ・イスフ大統領は、ギニアのアルファ・コンデと同じように長らく反政府勢力を率いてきた人物で、大統領に就任するとすぐに汚職撲滅運動を展開した。マリ国境周辺でイスラム過激派が混乱を引き起こしているが、それでもイスフは、この騒然とした国に安定をもたらしてくれる人物との評判を獲得している」。
「西アフリカでは、数十年にわたる混乱から脱け出し、代議員制による統治 や安定に向かいつつある国が、わずかながら増えている。ギニアやシエラレオネ、リベリアのほか、ニジェールもそうした国に含まれる。しかし、近隣でもっとも安定しているガーナを見れば、いくら平和であっても資源の呪いは消えないことがわかる。アフリカの貧困の緩和に取り組んでいる国際機関、およびアフリカの天然資源の収益を奪う金融システムが、呪いをいっそうあおっているのだ」。
この文章の最後の部分は「アフリカの貧困の緩和に取り組んでいる国際機関が、呪いをいっそうあおっているのだ」と矛盾した内容になっているが、これにはひと言付け加えなくてはならない。
一九九九年に、シアトルで開かれたWTO閣僚会議に数万人の抗議者が詰めかけ、WTOがグローバル資本の走狗になっていると非難し、機動隊と衝突する事件があった。その二年後、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得した著名なエコノミスト・エミル・サリムは、世界銀行の鉱業部門の元責任者のボンドという人物から依頼されて「石油・天然ガス産業や鉱業の発展を促進する世界銀行のプロジェクトが、実際に貧困の撲滅という目的に貢献しているかどうかを明らかにする調査」の指揮を取ることになった。
p235〜 サムリは二年を費やし、六つの調査プロジェクトを実施した。チームを従え、世界銀行が支援する石油・鉱業事業の現場を訪れ、アフリカやラテンアメリカ、東ヨーロッパ、アジアで公聴会を開いた。この調査については活動家の間で、世界銀行自身の過失や不備をごまかすためだけのものではないかという懸念もあった。サムリはかってインドネシアのスハルト独裁政権の閣僚を務め、この産業に取り込まれているような印象があったからだ。

略奪システムの暴露

 しかし二○○三年一二月に公表された調査報告書は、世界銀行を痛烈に批判していた。
サムリの調査チームは、天然資源の輸出に依存している国について、世界銀行のデータを詳細に検討した。その結果、一九六○年から二○○○年にかけて、天然資源が豊富な貧しい国よりも、そうでない貧しい国のほうが、成長が二〜三倍速いことがわかった。この期間に経済成長を維持できなかった四五カ国のうち、実に三九カ国が石油や鉱物資源に大きく依存していた。また一九九○年代、世界銀行から融資を受けていた国は例外なく、石油産業・工業に依存している割合が高い国ほど、経済が悪化していた。結果的にサムリの調査チームは、世界銀行の方針に誤りがあるようだと結論付け、こう記している。
「世界のどこを見ても、石油・鉱業関連の主要企業、市民社会、発展途上国の政府、地域の間で、知識、能力、資金、技術に大きな差がある。地域と多国籍企業との格差は、経済的な格差だけにとどまらない。政治権力に近づく手段、情報、法制度を理解して有利に利用する能力などにも差がある」。
サムリはまた、世界銀行らしい飾り気のない言葉で、略奪システムについて説明している。「影の政府と資源産業が結託し、油田や鉱山のある地域に住んでいる人々の生活を踏みにじっている」、と。

異例の強制捜査

 この調査は、「世界の経済秩序の世話役である世界銀行、IMF、世界貿易機
構(WTO)に対し、異例の強制捜査が行われたことを意味する」のであるが、この「世界経済の世話役」のその後の変化はほんのわずかばかりで、本質的には何も変わっていないという。そういう極悪非道の悪人どもはどこにどんな顔をして居座っているのか。「天に唾すれば我が顔に」とかいう諺があったが、この世界銀行へ出資している約一九〇カ国が加盟しているワールドバンクへの日本の出資は、米国に次ぐ世界第二位で、投票権も第二位ということである。    
前文において「この衰弱している子供たちは、そっとすすり泣く程度で何もいわない。だがその姿は、これほど天然資源が豊富なのに最低限の生活もできないことを非難しているように見える」と抜粋を紹介したが、非難されているのは私たち自身なのである。世界銀行が悪い日本政府が悪いと言いはなって済まされるものではない。

「絶望」の根源に迫る


本書『喰い尽くされるアフリカ』には、一日一・二五ドル以下では生活できない若者は、アルカイダなどに誘い込まれテロリストとなり、また多くの民衆はヨーロッパ大陸への難民の予備軍となっていることが記されている。今回のオーマン湾への自衛隊派兵反対運動にも、大変な苦難な状況に置かれているアフリカ民衆への連帯が問われていると私は思う。
それと石油を運ぶタンカーの安全運航というが、化石燃料に依存したエネルギー政策の全世界的な転換で気候破壊を食い止める、そのためには自衛隊の派兵にとどまることなく、トランプに同調するすべての国々の民衆に呼びかける、グローバルな運動の展開も同時に必要なのではないか。
なお、紙幅の関係でここで紹介できないが、これらのことを更に掘り下げるには『貧困の世界化/ミシェル・チョスドフスキー著/つげ書房新社』が好著であると思う。  (つづく)

『季刊ピープルズ・プラン』誌88号

「原子力・新型コロナ〈非常事態〉下の天皇『代替わり』」

 『季刊ピープルズ・プラン』誌の88号(2020年6月10日付)は特集の題名を「原子力・新型コロナ〈非常事態〉下の天皇『代替わり』」と題する特集を組んだ。明仁天皇による「生前退位・代替わり」という異例の事態を経て、即位した徳仁天皇は、コロナ・パンデミック状況の深刻化、「即位の年」を飾るはずだった東京五輪の「延期」、などともあいまって「新天皇」としてのイメージづくりもままならぬ事態に直面している。
 天野恵一氏の責任編集による今号では、海渡雄一弁護士の「巻頭言」が「命の危機と自由の危機が同時に我々に襲い掛かってきている」と現状を捉え、人びとが自らの自由な意思に基づく発信を続け、それを共同の力にしていくことが、今まで以上に必要になっていることを強調している。
 それは、私たちの新聞づくりについても問われていることだと、あらためて痛感する。原発・地球温暖化への対応不能はいうまでもなく、コロナ・パンデミックの深まりはますます今日の資本主義システムが生み出した気候変動、地球全体の汚染、貧困の深まり、人権と民主主義の破壊という危機の姿を明るみにさらけ出した。誰もが「昨日までと同じようにはやっていけない時代」という危機の古典的規定が文字通りあてはまる時代に私たちが直面している。
 トランプ政権の暴走、超大国・中国が抱える矛盾と香港の民主主義運動への更なる弾圧の中で、改憲に突き進んできた安倍政権の限界と矛盾、危機も随所に噴き出している。読者の皆さんからの報告、提案、率直な疑問を、ぜひ寄せてください。共に討議し、行動を。
 「かけはし」紙を通じて、議論の広がりと発展を。(K)



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