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    かけはし2020年6月22日号

反資本主義的過渡的綱領が湧き上がり始めた


第四インターナショナル

世界的な反レイシスト反乱連帯を
新たな世代の将来の可能性開け

2020年6月9日 第四インターナショナル執行ビューロー

かつてない特徴もつ世界的動員

 アメリカのミネソタ州ミネアポリスで警官によって黒人労働者ジョージ・フロイドが殺害された後に起こった、レイシズムと警察の残虐な暴力に反対する世界的に広がった抗議行動と大衆的な高揚は、その範囲と規模においてかつてないものである。こうした動員の特徴は、世代を超えた運動の中でも、多数の若者たちが人種を超えて参加していることである。それは多くの場合、ロックダウンがおこなわれた国で起こった最初の動員であり、その存在を街頭で示すことに成功した。
 アメリカ全土での連日の抗議行動は、都市の大小にかかわらず二週間以上続いてきた。抗議行動のほとんどは、人種を超えた、黒人主導の、主として分散型の、自然発生的な性格を有しており、都市のさまざまな場所で同時に起こることもしばしばあった。これは本物の大衆的社会運動であることを示す間違えようのない兆しである。抗議行動参加者の多くは失業中である。来るべき時期には、多くの人々が失業給付を求める抗議行動やそれ以外の社会闘争に引き込まれるだろう。
 反レイシスト抗議行動に対しては、警察による弾圧が広い範囲でおこなわれた。その中には、危険な催涙ガスや催涙スプレーの使用、平和的な抗議行動参加者に対する正当な理由のない襲撃、夜間外出禁止令、大量逮捕が含まれている。
 アメリカ以外で起きている抗議行動は、ヨーロッパからオーストラリアにまで、日本からアフリカにまで、メキシコからブラジルにまで広がっており、フロイドの殺害に対する抗議、アメリカにおける反レイシスト抗議行動への連帯、その国での警官の残虐な暴力―ブラジルでのように黒人が多数を占める集団への暴力、オーストラリアでのように先住民への暴力、民族的・宗教的マイノリティおよび移民に対する暴力―に対する抗議が結びついたものであった。
 世界中の抗議行動参加者は、その国でジョージ・フロイドと同じような方法で警察に殺された有色人種の人々の名前―二〇一六年にフランスで殺されたアダマ・トラオレやイギリスでの何人か―や「黒人の命は大切」と叫び、それらが書かれたプラカードを持ち歩いた。王室領であったコンゴを搾取し尽くしたベルギー王レオポルド二世の像や大陸間奴隷貿易の中心地だったイギリスにある奴隷商人たちの像のような、レイシストと帝国主義者による抑圧の象徴を撤去せよという要求は、南軍の像や(奴隷制支持の)南部同盟の旗を撤去せよという要求に呼応するものである。

資本主義の正統性の危機


 資本主義政府―とりわけイギリス、ブラジル、アメリカ―が、新型コロナウイルス危機に適切に対処できなかったこと、そして何百万人に仕事を失わさせた大規模なレイオフの波が人種的特徴を持つ人々や移民に対してより暴力的に影響を与えていること、それと関連して大衆的な抗議行動が二週間におよぶ連日の動員のあとでも勢いを増していることは、通常の資本主義機能を取り戻そうとする際に、資本主義政府を守勢に立たせている。
 アメリカでは、反乱はすでに大ブルジョアジーとその政治的代表者の中での分裂を引き起こした。体制とトランプ政権それ自身の危機の兆候が見られる。軍の最高幹部とトランプ政権の国防長官―そしてジョージ・W・ブッシュを含めて今生きている元大統領四人全員―が公然と、トランプが「悪党」「テロリスト」というレッテルを貼っている、非常に若くて、人種を超えたデモ参加者に対して軍隊を用いるというトランプの脅しを否定したのだ。
 この分裂がときには残忍な弾圧を食い止めたという事実や「警察予算を減らせ、警察を武装解除せよ」というスローガンがデモ参加者の中で広がり、それが成功しているところもあるという事実は、その闘いにおける最初の部分的な勝利を表現している。
 現在の状況は同時に危険をもはらんでいる。トランプによる法と秩序というツイートは白人国家主義者グループを励まして、その中の何人かは、遠回しなレイシストのシンボルやライフルを見せびらかしながら、反レイシスト抗議行動に参加しようとした。ブラジル、フィリピン、インドやその他の極右・独裁主義的政府は、この状況を反テロ的な弾圧政策を強化するために利用している。そうした弾圧政策は、黒人、移民、先住民のコミュニティにより大きな影響を与えるだろう。ヨーロッパにおける移民コミュニティは、長い間ギリシャの「黄金の夜明け」のような極右グループに脅えてきたが、経済危機はレイシストによる反移民攻撃を増大させるだろう。

全世界的な大衆的高揚

 フロイド殺害に続く反レイシスト動員の巨大な爆発は、「ラクダの背を折ったわら」(訳注一)の結果だと見なされている。このことには、警官による一連の黒人殺害だけでなく、パンデミックの影響や経済危機も含まれている。パンデミックは、黒人コミュニティに人口全体と比べて二倍から三倍も高い致死率をもたらし、経済危機も、黒人労働者や民族的マイノリティの労働者により大きな被害を与えたからである。
街頭での大衆的抗議が展開される一方で、それと同時に、非白人、移民、非主流のコミュニティがパンデミックに対してとりわけ脆弱で、物理的距離をとる必要があることは、この時期の大きな矛盾の一つである。
黒人コミュニティは、若者や白人労働者の支援を受けて街頭に進出している。というのは、彼らは、レイシズム、弾圧的暴力、ネオファシスト政権を止めることの方が、家庭の中や収入・雇用がないという状況のもとでは、おこなうのが不可能な措置を遵守するよりも緊急のことだと考えているからである。
レイシストによる暴力―その中には、警察による黒人の殺害、殺人的な反ユダヤ主義攻撃、反ムスリムテロが含まれる―で蓄積された緊張と先住諸民族の大量虐殺は、景気後退とパンデミックによって引き起こされた大量の失業と結びついている。景気後退とパンデミックは、人口全体よりも有色人種の労働者階級コミュニティに対してより厳しい打撃を与えた。そのことが闘いの意欲と弾圧者と向き合った際の勇気を説明する。
抗議行動参加者によって作られた、フロイド殺害と世界各地でのレイシスト警察による暴力との間のつながりは深くなっている。アメリカ、カナダ、オーストラリア、南アフリカ、ラテンアメリカにおける国内で植民地化された有色人種の先住民に対する扱いとヨーロッパの帝国主義的大都市における有色人種の移民コミュニティに対する扱いは、グローバル・ノースによるグローバル・サウスに対する何世紀にもわたる植民地支配・帝国主義支配―それは資本主義にとって中心的位置を占めてきた―を反映したものである。
スペイン植民者による一六世紀のポトシ銀鉱山の略奪―それはヨーロッパ資本主義の発展を支えた資本蓄積の一部となった―やヨーロッパによる何百万人のアフリカ人の奴隷化にはじまって、一九世紀におけるアフリカの植民地化や今日のグローバルサウスにおける有色人種の人々に対するネオ帝国主義支配にいたるまで、資本主義の発展と拡張の影響をもろに被ってきたのである。
過去数十年間の人間に対する最悪の残虐行為のいくつかが、民族的・宗教的マイノリティに対しておこなわれてきた。民族的マイノリティや社会的に形成された人種グループは世界中で抑圧に直面してきた。それは、旧ユーゴスラビアやルワンダでの一九九〇年代における民族浄化から、現在の中国やインドにおけるムスリムへの抑圧やイスラエル・非占領地域におけるパレスチナ人の扱いにまで及んでいる。

彼らの反レイシズムとわれわれの反レイシズム

 改良主義的資本主義政治家は、人気を維持し、奴隷貿易のシンボルの撤去や警察活動の表面的な変革に限定された、政府による聞き取り、委員会、うわべだけの改革といった安全なチャンネルの中へ運動のエネルギーを流し込むために先を競っている。
多国籍企業―その中にはアメリカの「フォーチュン五〇〇」(訳注二)に入っている多くの企業が入っている―が、先を争って反レイシズムを声高に宣言している。そして、メディアに高額の広告を掲載し、寄付を約束し、会社のハンドブックを改訂している。これらの企業は、人種差別的・性差別的な雇用をおこない、長年にわたって改革に抵抗してきたのと同じ企業なのである。多くの企業は有色人種の労働者を搾取して巨額の利益を上げてきたのだ。
伝統的な政党によるリーダーシップや声は存在していない。アメリカにおける政治的リーダーシップの欠如はとりわけ深刻である。民主党・共和党という資本主義二大政党がアメリカ政治を支配していることは、街頭でのエネルギーが全国的な政治的表現を見いだせていないことを意味する。民主党の予備選挙期間中に、バーニー・サンダース上院議員は、彼の社会民主主義的でニューディール的な改革プログラムに対する、とりわけ若者たちの間での熱情的で広範な支持を作り出した。しかし、サンダース・キャンペーンは、パンデミックや大量のレイオフを前にして、民主党をコントロールするという共同の利害によって終わりを告げた。そしていまや、街頭での反レイシスト抗議行動が始まって、左翼のための余地を作り出した。
資本にとっての新自由主義的な道具へのヨーロッパ社会民主主義の変質や共産党の選挙での挫折は、反レイシストの要求と反資本主義の要求を結びつけるという課題と機会を提供するヨーロッパ左翼に余地を残している。

今こそ好機である

 レイシズムと警察の抑圧に反対する世界的な反乱には、新たな世代の将来にとっての巨大な可能性がある。新たな世代の若者たちは、労働現場での闘いや労働組合闘争を始めたところであり、気候変動に反対する闘いやフェミニストの抵抗運動に立ち上がっている。そして、民主主義的な自己組織化にもとづいて進行中の運動を構築するという必要性だけでなく、デモやその他の大衆的イベントの間に、運動による自己防衛を組織する必要性をも明らかにしつつ、ブルジョア民主主義の武装勢力としての警察に対する直接闘争に参加している。
今のところ、抗議運動は怒りを表現し、ときには急進的だが焦点の定まらない変革の要求を表現している。これは、運動の新しさ、抗議行動参加者の未経験を反映しているだけでなく、多くの改良主義的な既成政治指導部の破産をも反映しているのだ。アメリカの状況においては、「警察予算を減らせ、警察を武装解除せよ」という要求や「警察を解体せよ」という要求さえもが広範な大衆的共感を得た。
そして、そうした要求は反資本主義的な過渡的要求として重要な可能性を持っている。いまだにレイシストで極右の警察官組合を含んでいることについて、AFL―CIOへの拒否感が広範に存在している。そのほかの要求は、運動が発展するとともに定式化されたり、さまざまな国内情勢から生まれたりしている。つまり、特に黒人、先住民、民族的マイノリティに対する警察の暴力に反対すること、抗議行動に罪を着せることに反対すること、構造的レイシズムに反対すること、植民地支配・奴隷制支持のシンボルの永続化に反対すること、歴史的格差を是正する社会正義と経済正義のための積極的な行動を支持することなどである。
今日、数十年間見たことがないような方法で、多くの聴衆を得ながら、労働者階級の国際連帯の旗を掲げることが可能となっている。そして、マルコムX(訳注三)が述べたように、「レイシズムなしでは資本主義は存在しえない」ので、レイシズムに反対する闘いは資本主義に反対する闘いにとって本質的なものであると説明することも可能であるし、新しい公正な社会への道筋を切り開くために、この運動がさらに拡大して、世界中の労働運動、女性運動、反資本主義運動と一体となる大きな可能性を持っていると説明することも可能になっているのだ。
こうした理由で、第四インターナショナルは、今日反レイシスト・反ネオファシスト反乱を起こしている女性・男性とともに闘いにとりくむ。国家による暴力と資本主義のもとでの構造的レイシズムに対する闘いは、われわれがその影響を直視したときに、首尾一貫した結果をもたらすことができる。われわれ全員が、地球を破壊し、ジェンダー・人種・性的志向・アイデンティティによって人間を差別し、企業存続の名の下にわれわれを過剰搾取し、その唯一の目的がわれわれの生命や身体を犠牲にした永続的な利益増加にあるシステムに対する戦争の中にいるのである。

(訳注一:「ラクダの背を折ったわら」とは、わらの一本一本は重くないが、らくだの背にわらを載せ続けた結果、ついには最後に載せた一本のわらでらくだの背が折れたということ。つまり、一見ささいなことのように見えることも、不快なことが重なりに重なればついには我慢の限界が来るということのたとえ。)
(訳注二:「フォーチュン五〇〇」とは、アメリカの経済誌『フォーチュン』が毎年、アメリカ企業のうち売上上位五〇〇社をランキングしたもの。)
(訳注三:マルコムXは、アメリカの戦闘的黒人運動指導者で、アフリカ系アメリカ人統一機構の創立者。一九六五年に暗殺された。彼の著作の日本語訳としては、『マルコムX・スピークス』『マルコムX自伝』『いかなる手段をとろうとも』、評伝としては『評伝マルコムX―黒人は叛逆する』などがある)。



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