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    かけはし2020年6月29日号

配備プランの白紙撤回を


河野防衛相が陸上イージス計画停止の談話

県民の闘いが政府を追い詰めた

 【秋田】河野防衛相は六月五日、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備プロセスを停止するとの談話を発表した。その理由として、ブースター落下のコントロールの不完全性をあげ、安全性が担保出来ないとした。
 解決のためにはソフト面だけでなく、ハード面も含め改善が必要であり、相当のコストと期間(一〇年以上との指摘がある)が必要となることが判明したためとした。
 イージス導入決定の経過、トランプ政権の成立による「アメリカン・ファースト」の政策のもとアメリカの軍事兵器の「爆買い」圧力を受けた安倍首相は一七年日米首脳会談においてトップダウンで自らイージス導入を決定したものである。
 この時点で「イージス・アショア」は開発途上の兵器であった。この点を考慮しただけでもこうしたトラブル発生は予測出来たにもかかわらず、秋田・新屋と山口・むつみ演習場配備を閣議決定し、地元住民の反対表明にもかかわらず配備計画を強行推進してきたものである。
 この背景にはアメリカ側の太平洋軍事戦略の重視があり、日本の配備はアメリカ防衛の前線基地として位置づけられた。これによって秋田新屋はハワイ、山口むつみは、グアム防衛の任務が真の狙いであったことは「太平洋の盾」(アメリカシンクタンクの報告書)と位置付けられていたことを見ても明らかである。
 こうして安倍は日米安保重視のもと未完成の「イージス・アショア」を「爆買い」し、一七八七億円もの先払いを実行したのである。
 こうして安倍は日米集団安保の具体化として、アメリカ防衛の前線基地としての軍事的役割を積極的に引き受け、新屋、むつみ演習場への設置計画を「黒を白」といいくるめる手法で推進してきたのである。

安倍軍拡路線
の大きな破綻


この間安倍政権に対する世論調査は、明白な支持率の低下傾向を示している。
コロナウイルス対策の立ち遅れ、検察庁法改正案の提出とその当事者としての黒川前東京高検検事長の賭けマージャンによる辞職問題、さらにはコロナ対策の消費喚起策「GoToキャンペーン事業」における巨額の民間委託による「中抜き」問題、河井前法相夫妻の選挙違反・離党問題等次々と安倍政権に対する負の連鎖が引き起こされている。
一方トランプの黒人差別問題の顕在化に見られるように日米両政権の矛盾がここに来てたてつづけに表面化している。これに追い打ちをかけるものとして陸上イージス配備計画の停止問題が加わり日米両政権の野合のほころびが明確となりつつあり、安倍政権の求心力の低下へ一層の拍車がかかって来ているのである。

「停止」ではなく
「中止」を求める


今年に入って国、防衛省は新屋配備を断念し、他の秋田県内一九カ所の再調査をあらためて開始しその調査の完了を当初三月末としていた。
それが四月末、五月末、さらに七月末と理由にもならない口実を付け次々と延期が発表され、候補地をはじめとする県民のイージス反対の声を無視し、神経を逆なでして来た。
こうした状況下におかれて県民の大半の声は―なぜ中止ではないのか「停止」という煮え切らない言葉が残念でならない。地上イージスを見直しその費用をコロナ対策に充てるのが国難に対するまっとうな政治でないのか―(地元紙「さきがけ」見解)に表現されているだろう。
河野防衛相は「なるべく早い時期に両県を訪れておわびと説明にうかがいたい」と述べたが、六月一六日、佐竹秋田県知事は談話を発表し「知事市長へのおわびより候補地住民に直接あやまって欲しい」と述べ、国、防衛省にとってますますハードルが高くなっていることが明らかとなった。
また新屋外の県内候補地の一つ能代市の斉藤市長は、「計画をなくすのか一時的に停止するのかは注視が必要だが現実的に配備の可能性はなくなったのではないかと受け止めている」とし、市川にかほ市長も、「計画が『停止』であれば後々動きがある可能性もある。今後も動向を注視したい」との談話を発表した。
演習場周辺の一六町内の新屋勝平地区振興会・佐々木会長は「地域を挙げての主張が伝わったと感じる。住宅密集地を最適地と位置づけ、ずさんなデータを用いてまで新屋に配備しようとした。まだ不信感が拭えない」と心の内を表明し、『地上イージスは配備しない』と言ってもらえれば、地元の人たちにも安心してもらえる」と話した。この佐々木会長の談話が秋田県民の集約的な気分であるだろう。

安倍の政治を
終らせよう


三年にわたって地元新屋地区住民、県民、全国の平和を希求する人々に「集団安保」をはじめとする反人民的反動法案で安倍政権は敵対してきた。陸上「イージス・アショア」配備計画もその安保防衛戦略の一環であった。
しかし一連の失態の中で安倍政権の求心力の低下が明白となっている。追及の手をゆるめず陸上イージス配備計画を断念させ、白紙撤回に追い込み、安倍退陣に向けて闘いをさらに強化していかなければならない。       (皆川)

トランプへの追従が失敗招く

破綻に追い込まれた戦争システム

沖縄県民の闘いと結びつこう


トランプへの
ご機嫌うかがい


六月一五日、河野太郎防衛相は秋田、山口両県への配備を予定していたイージス・アショア(地上配備型迎撃ミサイルシステム)計画の白紙撤回を発表した。河野が白紙撤回の理由としてあげているのは「発射された迎撃ミサイル(SM3ブロック2Aで一発が四〇億円)から切り離されるブースターが、民家などがない安全な場所に確実に落下させることができない」技術的な不備が発覚し、ミサイル改良のためには多額の費用と時間がかかるということだった。
しかしこれはあくまでも「公表」にあたっての言い訳に過ぎない。そんなことは配備地決定段階ですでに分かっていたことであり、もしも本気で配備するのであれば、陸自むつみ演習場からより海近くに位置する演習場や国有地に変更すれば済む話である。
「毎日新聞」の報道によると、河野は六月四日と一二日の二度にわたって安倍首相に直談判して、イージス・アショア配備の停止を迫ったという。そして安倍は一二日に河野の主張を受け入れた。この情報を共有していたのは菅官房長官とごく限られた防衛省幹部で、河野の発表に対して菅は「米側との協議を行い検討を進めてきた結果であり、適切だ」と擁護している。
一方で頭から湯気をあげて怒りを表明しているのが、一七年一二月にイージス・アショア配備を決定した当時の防衛相だった小野寺だ。しかしイージス・アショアの購入決定は、安倍が米国への日本車輸出と販売を損なわないようにするために、当時のトランプの機嫌取りのための手段のひとつだったことも明らかだ。

県民の草の根
運動が大成果


今回の河野発表にはいくつかの背景がある。まず特筆しなければならないのは、秋田市の新屋演習場への配備に反対し、実際に配備を断念させた秋田県民の地道な草の根運動である。配備が予定されていた地元の町内会から始まった反対運動は、昨年七月の参院選でイージス・アショア配備反対を訴えた新人候補が自民党の現職に大差をつけて勝利したことをバネにして、反対の声は急速に全県に拡大することになった。最後の最後まで反対運動に対して抵抗してきた秋田市を含む、二二自治体(全県二五自治体)が配備反対の決議を採択し、県内保守総崩れという状況を作り出して県議会と知事を包囲したのである。そして反対運動を草の根的に推進したのが昨年一〇月からスタートして、豪雪地帯という困難ななかで実施された地上イージス配備反対の「県民署名」運動だった。
秋田における反対運動の勝利は、河野発表を引き出すうえで決定的な要因であった。もうひとつの配備予定地であった安倍のおひざ元でもある山口県のむつみ演習場をめぐっても、地元の阿武町長(保守系)が計画発表当初から反対の意思を表明していた。阿武町は過疎地対策として数年前から若い人たちを対象とした町への移住政策を推進し成果を上げていた。
イージス・アショアの配備はこれまで進めてきた過疎地対策をその根幹から脅かすものとなったのである。敵国のミサイルの格好の標的となる地に移住を希望する人など皆無だからだ。秋田での勝利は山口にも飛び火しかねない状況を作り出したと言えるだろう。河野はそうなる前に先手を打つべきだと主張し、安倍はそれを受け入れたのだろう。

米ミサイル防衛
システム見直し


イージス・アショア配備白紙撤回の決定的な背景は、米国のミサイル防衛システム(MDS)の全面的な見直しが迫られていることだ。ロシア、中国、朝鮮が開発するミサイルの攻撃能力が向上して、これまでの米国のMDSでは防衛できなくなっているのだ。それに加えて中距離弾道ミサイルの地上配備を禁止した米露の中距離核戦力(INF)全廃条約が、昨年の八月二日で失効し、ミサイル地上配備の環境が一変したということである。
ロシアはNATOに対して地上発射型巡航ミサイル(9M729)の配備を一七年から進めてきたが、NATOがそれに対抗してルーマニアとポーランドに配備したのが、巡航ミサイル「トマホーク」も発射可能とされているイージス・アショアであった。しかしロシアは一八年に入ってから現行のMDSでは「迎撃不可能」とされている、音速の二〇倍で飛行する滑空型ミサイル「アバンガルド」と、戦闘機搭載型の超音速ミサイル「キンジャール」の実験を成功させた。そして一九年一二月にロシア国防相は「アバンガルド」の実戦配備を発表した。
中国もまた「東風(DF)17」という音速の六倍で飛行し滑空する中距離弾道ミサイル(射程二五〇〇q)を保有している。昨年の五月からミサイル発射実験を繰り返している朝鮮は、〇六年からロシアが量産している滑空型の短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の改良型(在韓米軍が「KN23」と命名)を発射させている。これらのミサイルは高度五〇q以下の低空を滑空するために、迎撃は極めて困難だとされている。
もうひとつ注目しておくべきなのが、昨年イエメンのフーシがサウジアラビアの石油施設を狙ったドローンによる爆撃である。砂漠を超低空で飛ぶドローン型爆弾は既存のレーダー網にキャッチされることなく目標物を破壊している。これはMDSの弱点を突いた安上がりな、サウジの空爆に対する報復攻撃であった。

米ミサイル防衛
システムの弱点


こうして米国主導で構築されてきたミサイル防衛システムは、弾道ミサイルの高性能化によって打ち破られることになった。そのことは同時に、現行のMDSによる核を含めた弾道ミサイルに対する抑止力が著しく弱体化したということを意味している。トランプが提案してきた米露中三カ国による新たな核軍縮条約は、中国の拒否によってとん挫した。中国にとってミサイル戦力は、米軍の本土接近を阻止する安保戦略の生命線なのであり、これまでロケット軍と海軍の戦闘能力の向上を図ってきたのである。
INF全廃条約が失効した現在、トランプ政権は太平洋地域における中国への抑止力を最重視し、ミサイル開発と配備を進める方針である。米軍は昨年の一二月に新精密攻撃型ミサイル(PrSM)の発射実験を行った。またアジア太平洋での新たなミサイル配備場所として、日本列島・台湾・フィリピンを上げている。米戦略予算評価センター(CSBA)は、沖縄・九州を候補地としている。
しかしよりショッキングだったのは、二月四日の米国防総省の発表であった。米海軍が潜水艦発射型の低出力核弾頭(W76―2)を配備したのである。TNT火薬換算で広島型が一五kトンとされているが、今回配備されたW76―2は五〜七kトンだ。トランプと米軍はMDS弱体化の穴を攻撃型の小型核弾道ミサイルで埋めようとしているのだ。

東アジアに米軍
基地はいらない


昨年一二月に決定された日本の軍事政策の基本となる防衛大綱と中期防では、最優先事項として「宇宙・サイバー・電磁波の領域における能力の獲得・強化」が挙げられた。トランプもその同日に米軍の陸海空を統合する一六〇〇〇人規模の宇宙軍創設を指示した。これは地上や海上からの迎撃ミサイルでは迎撃不可能な敵国の弾頭を将来、宇宙空間で破壊、あるいは無能力化することを狙いとしている。
米露中は衛星攻撃兵器(ASAT)の開発と実験にしのぎを削っている。またサイバー攻撃や電磁戦も、高精度のコンピューターやAIの活用などによって生まれる兵器の弱点(例えばAI搭載の無人戦闘機)を攻撃して無力化させようとすることに他ならない。同一二月にはNATOのサイバー防衛拠点が置かれているエストニアで最大規模(一〇〇〇人)のサイバー演習が実施されている。
現在、日本のミサイル防衛システムは、八隻体制になろうとしているイージス艦の迎撃ミサイルで高度七〇〜二〇〇qの宇宙空間を飛ぶ弾頭を迎撃するのと、地上配備されている迎撃ミサイル「PAC3」による低空域での迎撃という二段構えだ。しかし防衛大綱と中期防で明らかにされていることは、すでにその体制では敵国の弾道ミサイルに対応できなくなっていることを防衛省は認識済みだということである。
安倍自身もそういう報告は受けていたはずである。しかし安倍は最近になってからも桜を見る会での公職選挙違反問題や検察問題でのドタバタ、コロナ対策での民間委託疑惑と支援の遅れの問題、そして広島での公職選挙法違反問題など「未解決問題」を山のように抱えて判断停止状態におちいっていた。日米間での新たな問題など発生させたくないというのが安倍の本音だったろう。
トランプへの御機嫌取りでF35など米国製兵器の爆買いは、防衛省の予算を圧迫するものになっていたはずだ。張子の虎になりかねないイージス・アショア配備に少なくとも四五〇〇億円を支出することは河野にとどまらず防衛省にとって耐えきれないものになっていたに違いない。「すべての責任は私がとる」と安倍を説得して、山口県と秋田県の県庁を訪問して深々と頭を下げる河野を見ていると、それは「安倍一強」の終わりの始まりを見る思いがする。佐竹秋田県知事は深々と頭を下げて謝罪する河野に対して「一度決めたことをよくぞ撤回してくれました。そのことに敬意を表明します」と言葉を返している。そこにはすべての不祥事から逃げ回り、説明も謝罪もしてこなかった不誠実極まりない自己保身だけの政治を行ってきた安倍との違いを感じたからなのであろう。秋田県知事をしてそう発言させたのは、秋田県民による地道な草の根的なイージス・アショア配備反対の運動があったからこそである。
イージス・アショア配備の白紙撤回決定は、米国のトランプと日本の安倍「一強政治」の終わりの始まりを記すものとなるだろう。「毎日新聞」の世論調査(六月二〇日実施)によると、東京オリ・パラは「来年実施できない」と回答した人が五九%で、「できる」と回答した人の二一%を圧倒した。非営利団体(NPO)でありながらも巨額の営利に群がるIOCと、安倍政権・東京都政の抵抗があったとしても、東京オリ・パラは風前の灯火である。今年の秋から来春にかけて総選挙は間違いなしに実施される。安倍政権の打倒は「コロナ後」の社会を展望するうえで欠かせない必要条件となるだろう。
平和主義をうたう憲法第九条を空洞化してきたのは、日米安保条約に基づく日本での米軍と米軍基地の存在に他ならない。「戦争するやつら」を懐に受け入れながら平和をうたうことはできない。朝鮮でベトナムで、そして中東で在日米軍は多くの人々を殺害してきた。イージス・アショア配備白紙撤回の闘いの成果は、憲法第九条の実践として、在日米軍基地の撤去のための闘いとして引き継がれなければならないだろう。米軍を日本から韓国から叩き出そう。アジアから叩き出そう。沖縄県民と連帯して、辺野古新基地建設阻止の闘いを全国的に展開しよう。「沖縄県民の命と生活は大切」。(高松竜二)



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