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    かけはし2020年7月6日号

連帯広げ弾圧を止めよう


6.21

関西生コン労組の闘いは正当だ

警察による弾圧見逃すな

団結を広げ、資本・権力を包囲しよう

 【大阪】労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会主催のシンポジウムが六月二一日、大阪の学働館(関生会館)で事前申し込みの参加者一〇〇人限定で開かれ、小林さん(全港湾大阪支部書記長)が開会のあいさつをした。その様子はライブ配信された。
 パネラーは、ネットで参加の永嶋靖久さん(関生弁護団弁護士)、亀石倫子さん(GPS捜査、えん罪事件と闘う弁護士)、竹信三恵子さん(ジャーナリスト、和光大学名誉教授)、吉田美喜夫さん(立命館大学名誉教授、労働法)。コーディネーターを大椿ゆうこさん(クビを切られた元非正規労働者、社民党全国連合常任幹事)が務めた。

弾圧の経過と現状
 
 弾圧の全体像を初めて知った人がほとんどではないだろうか。永嶋さん作成の一覧表をもとに主観的に整理をしてみた。五年も前のものまで対象にしている。
 弾圧の初めは二〇一八年七月一八日のフジタ事件(2017年3月〜7月、フジタの施行する倉庫増築工事で施工業者への要請行動、工事現場におけるコンプライアンス活動をし、フジタから生コン調達の依頼を受けている藤田商事と近江アサノとの間で生コンの供給契約を締結させようとした。被害届は出ていない)。最初は業者四人の逮捕。その後弾圧は八月九日、八月二八日、二〇一九年二月五日、二月一八日と断続的に続き、組合側逮捕者は委員長・副委員長はじめ二〇人、業者側は計五人。先行起訴状では氏名不詳とした共犯者を徐々に明示し、五分割起訴した。罪名は恐喝未遂・威力業務妨害。
 二〇一八年九月一八日〜一一月二一日まで三度にわたる弾圧の宇部三菱大阪港SS・中央大阪生コン事件(大阪広域協組が約束を履行しないので、生コン輸送運賃値上げを目的として二〇一七年一二月一二〜一三日に決行されたストライキとその関連行為)。逮捕者は委員長ほか二七人、罪名は威力業務妨害。
 二〇一八年一一月二七日セキスイハイム近畿事件(2017年2月〜3月、セキスイハイム近畿の施行する住宅工事現場におけるコンプライアンス活動)。逮捕者は副委員長ほか七人、罪名は威力業務妨害。
 二〇一九年四月一一日タイヨー生コン事件(2015年3〜5月、生コン納入現場で会館建設に関わるカンパ要請)。逮捕者は委員長・副委員長、罪名は恐喝。
 二〇一九年六月一八日と八月二〇日の日本建設事件(2017年11月、工事現場におけるコンプライアンス活動)。逮捕者は副委員長ほか四人、罪名は威力業務妨害。
 二〇一九年六月一九日加茂生コン事件(2017年10月〜2018年4月、日雇い運転手の組合員の正社員化要求、子どもの保育所に出すため、組合員の就労証明書の作成・提出要求)。逮捕者は、委員長・副委員長ほか三人、業者二人。
 二〇一九年七月一七日近畿生コン事件(2016年10月〜11月、京都協組加盟の生コン会社の破産に伴う倒産争議の労使合意に基づく解決金支払い)。逮捕者は、委員長・副委員長、罪名は恐喝。
 二〇一九年七月一七日東横イン電設事件(2017年11月、工事現場におけるコンプライアンス活動)。逮捕者は四人、罪名は威力業務妨害、勾留請求棄却。
 二〇一九年七月二二日、一一月一四日和歌山広域協組事件(2017年8月、広域協組が関生組合事務所に元暴力団員を差し向けたことに対する謝罪要求)。逮捕者は副委員長ほか四人、罪名は、強要未遂と威力業務妨害。
 二〇一九年九月四日ベスト・ライナー事件(2014年3〜8月、倒産争議に伴う労使合意に基づく解決金、協同組合理事会の正式決定による支払い)。逮捕者は、委員長・副委員長、罪名は恐喝。  
 以上が弾圧の概要だ。

逮捕・拘留の多さが裁判の妨げ
 
 裁判は大津・大阪・京都・和歌山に分かれている。大津地裁では、検察側尋問が終盤にさしかかっている。大阪地裁では、五月の公判が取り消しになり、七月二日に審理再開。京都地裁では、加茂生コン事件が八月に被告人質問の予定。その他は、公判前整理手続き中。和歌山地裁では、整理手続き中。
 五月二九日武委員長、六月一日湯川副委員長が保釈され、やっと長期拘留が終わった。保釈は、抗議の声の広がりに加え、好き勝手な逮捕・拘留・超長期の身体拘束が、裁判官から見ても刑事裁判をまともに進める上で妨害になったからだと考えられる。なぜこれほど長期身体拘束を? 長い組合運動の歴史の中の出来事を部分的に切り取って事件にしたからだ。

 

どうしてこれが
犯罪になるのか


背景に「被害者」(相手企業など)・警察・検察が労働組合に対してもつ嫌悪感がある。労働組合は、企業内で活動するもの、企業の業務を阻害してはいけない。正規労働者以外は労働者ではない。憲法や労働三権を盾に企業に不都合な要求をするのは、ヤクザよりたちが悪い。彼らからすると、生コンの安売り競争を労使で規制してゼネコンに高い生コンを買わせようとしたことは犯罪となる。

少数者から手
をつける警察


亀石さんが関わった事件の裁判は次のようなものだ。二〇一二年ナイトクラブが摘発された。
それまで何の問題もなかったのに、突然、公安委員会に風俗営業の許可を取っていないという理由で。この件は無罪を勝ち取り、条文も変えさせた。
二つ目は、入れ墨師が医師免許を持っていないのに入れ墨を彫ったと二〇一五年逮捕された。入れ墨師が入れ墨を彫れなくなったら廃業しなければいけなくなる。
一審は有罪だったが、お金がないので、無実の立証ができない。そこで、ネットを使いクラウドファンディングで資金提供を呼びかけたら、裁判費用を超える三四〇万円が集まり、高裁で無罪を勝ち取った。
亀石さんを一躍有名にしたGPS裁判では、最高裁まで争われ、いくら犯罪者でも(その車に)GPSを取り付けるのは違法だと確定判決を勝ち取った。亀石さんは現在、鹿児島で四一年前に起きた殺人・死体遺棄の大崎事件の再審請求(請求人は主犯とされた原口ヤス子さん)にかかわっている。
事件に関わったとされる共犯者(長兄・次兄・甥)には知的障害があり、彼らの自白証言により長兄の妻が逮捕され主犯とされたが、彼女は一貫して事件の関与を否認している。事件発生後二年で刑は確定し一〇年服役した。警察は四一年前、牛小屋に死体があったことをはじめから殺人事件と断定し捜査を進めた。でも四〇年もたつと、さまざまな技術の進歩により、当時の医学鑑定の間違いを明らかにでき、証言に使われている言語の分析からも当時と別の判断ができるようになった。
六四人もの弁護団が手弁当で弁護している。これからの裁判にお金が要る。そこでまたクラウドファンディングで資金を呼びかけたら、一二四〇万円も集まった。
風俗営業・入れ墨・犯罪者のGPSいずれも世間ではあまりよく思われていない人たち。警察はこのような孤立していて介入しやすいところから手をつけてくるのだなと思った。この点は、関生弾圧とよく似ている。でもクラウドファンディングでわかったように、まず事件を正しく知って貰うことが大切だ。支援したいと思っている人は意外といるものだ。

竹信三恵子さんの講演から


朝日新聞記者だった時は、女性問題に関心があった。労働問題のことは東京にいてもよくわからなかったが、子どもの保育所入所に必要な就業証明書を要求したことで逮捕される。これはどう見てもおかしい、なんとかしなければと思った。
鎌田慧さんとも相談した。本当に暴力集団なのか。母子家庭の母親ドライバーが組合員にたくさんいる。その労働条件を改善すれば、その家庭を支えることができる。関生支部はSNSでいわれているのとどう違うのか。関生支部に会ってみるしかないと思った。
SNSで拡散されている動画は、ヘイトスピーチで知られている人物が作成編集したもの。大手メディアは、事件直後の警察発表のままを報道している。ヘイトSNSをネット検索してみると、ストライキや逮捕シーンを意図的に切り取った映像やものものしい音楽とナレーションが飛び込んでくる。近づかない方がいいと思ってしまう。
そのことが社会的関心を抑制する。国会議員封じに繋がる。労働問題に関心がない関東の自治体職員は「確か、暴力的な集団かなんかですよね」。労働問題に関心のある男性は「労働基本権の侵害は問題だが、ネットなどで見るとカネをせびるとか、大丈夫なのか」。
企業を超えた労組活動の排除に向けた企業・警察・メディアの連携がある。でも、『世界』に関生の記事を書いてから、SNSとは違う見方ができることに気付いて、大手が記事を書いてくれるようになった。
メディアに正しい情報を流していくのにどうすればいいのか、工夫が要る。事件報道は報道の中核。被疑者の逮捕拘留による警察の情報独占の状況の中で、事件直後は警察発表に頼るしかなく、警察を敵に回すと事件情報から排除される。初めは、労働基本権からの報道となる。その意味で、労働法研究者有志の声明と厚労記者クラブでの会見(2019年12月)は大きな影響があった。
「これだけの事件はめったにないと私は思うのだが、なぜメディアは関心がないのか。取り上げにくい何かがあるのか」→「刑事事件が絡むと取り上げにくいという面があるかもしれない」と記者。その後、警察担当のテリトリーから外した報道枠組みへの転換があり、市議声明で「警察問題」から「市民運動問題」へ移り、「朝日」(大阪版)、「東京」「京都新聞」毎日ネット記事に繋がった。
SNSのヘイト情報対策は重要だ。例えば、加茂生コン事件をめぐるネット記事(2019年7月22日、ハーバービジネスオンライン)「保育所に入るための書類と正社員化要求で逮捕?」はよい例だ。経済的弾圧と名誉毀損という新手のメディアと運動弾圧には対策が必要。民事執行法の悪用による経済的弱者からの賠償の強制取り立て等もある(ふじせ請求では、労組員の自宅差し押さえ)。メディアは第二の現実、「運動で乗り越える」と言っているだけでは、情報戦を支配されてしまう。「ストーリー」が重要だ。

吉田美喜夫
さんの話


関生支部としては弾圧を受けている以上、闘う意味を問うまでもなく闘わざるを得ないが、@この弾圧をどう見るのか。出る杭は打たれる・長いものには巻かれろ・自己責任の社会意識の中で、関生がターゲットになったのはなぜか。労働運動が全体として低調な中での事件・まれに見る大規模な刑事弾圧事件・暴力的な行為ではなく、労働組合であれば当然の行為が立件された。
A外形的に違法な組合活動は珍しくない。賭け麻雀は外形的に賭博罪に該当するが、まだ逮捕はない。関生事件の場合、刑事司法手続きが異常で、捜査段階で組合脱退を勧誘、長期拘留(641日、644日)で、保釈条件は組合事務所への出入りや組合員と会うことの禁止に特徴。
関生が自由競争にとって看過できない存在。関生は職業別(産業別)組合で、中小企業が組織対象。企業経営者との新しい関係:一面闘争・一面共闘という、新しい組合モデルの創造。日々雇用という有期雇用の極限形態の労働者を組織している。政治課題への取り組み。組合のこのような性格が、新自由主義政策と衝突する。
B関生支部は、「取引自由」に対して無視できない規制力を持っている。だから国家が乗り出してきた。日本企業は、安い労働力を求めて生産拠点を海外に移してきた。だが、生コンという商品は使用する近くでしか生産できない。輸送運賃を上げれば生コン価格が上がる。それは企業にとっては困る。今労働力不足で、コンビニの経営がピンチになっている。
労働者がストをしてオーナーが協力するという構造が成立することは許されない。この構造は、まさに関生と企業の関係と同じだ。新しい社会運動に発展することに強い警戒がある。
C日々雇用という普通の雇用によらない形態が増えており、正社員でなくても、個人加盟で交渉する。一面闘争・一面共闘の新しいモデルを揺るぎないものにしていくことが重要。刑事罰を加えることなどあり得ないと思われていたのに、それが加えられたことで権利の実態が明らかになった。
闘う意味は、何か。侵害されて初めて人権の存在を自覚させられた(西谷敏「労働法の基本構造」)。弾圧を見過ごせば人権の存在への自覚が薄れる。
国家にとって、新しい可能性は芽のうちに摘んでおかねばならない=労使の対等な対抗関係が形成されては困る。今、組織されていないところに影響が及ぶのは困る。企業の大多数を占める中小企業が抵抗するようになっては困る。社会の課題にまで取り組む組合運動は困る=ということだ。
日本国憲法は、世界最高水準の労働基本権を保障している。これは人類の努力の成果であり、それを活かすには努力が必要だ。

団結を広げる
チャンス到来


短い休憩の後、三点の質疑が行われた。
さらに三人から永嶋さん:これ以上の弾圧を許さない。無罪を勝ち取る。組合を去っていった仲間が戻ってくるような組合をつくること。竹信さん:情報公開についてもっと活用を。双方の言い分を聞くことが大切。よい情報は互いにまわしていく。吉田さん:賭け麻雀は違法だ。社会の小さな悪をひとつずつ無くしていく労組活動は必要だ。社会的に支持される組合をつくること。
最後に武委員長・湯川副委員長からの短いビデオメッセージが上映された。二人とも元気だった。武委員長は拘置所に冷暖房がなく辛かったと。「今、コロナで首切り・中小の倒産。決して諦めないこと。コロナで団結の幅は拡がっている。チャンスでもある」の言葉が印象的だった。
山川さん(全国交歓会)がまとめ、公判の傍聴支援などの行動提起をした。(T・T)




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