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    かけはし2020年7月13日号

「コロナ」理由の凍結・抑制反対


最低賃金の大幅引き上げを

宮城全労協ニュース(6月30日号)より

 新型コロナウィルス感染が特に東京圏を中心になお広がり続ける中、労働者民衆の生活保障の課題が切実化し、最低賃金の大幅引き上げの必要性はなおのこと明確になった。しかし政府はむしろ最賃抑制姿勢を露わにした。雇用維持が口実にされているが、あくまでも膨大な低賃金就労を前提とした大企業の高収益体制を一切変えないことが前提であり、これではその雇用維持という口実にすら何の保証もない。その彼らの前提を変えるためにも、全国一律最賃とその大幅引き上げを求める闘争の強化が求められている。宮城全労協の同志が同ニュース(六月三〇日号)で、この間の最賃をめぐる欺瞞的な政府の動きを整理し批判を加えている。同ニュースの了解の下に以下に転載する(「かけはし」編集部)。

 「コロナの年」の最賃改定である。安倍首相が示唆した引き上げ抑制へと舵を切るのか、それとも「コロナ事態」が浮き彫りにした低賃金労働者の生活と労働の抜本的な改善に向かって進むのか。六月二六日から中央審議会がスタートした。
この感染症拡大のなかで「エッセンシャルワーカー」と総称される労働者たちがクローズアップされてきた。社会の維持に不可欠な労働者たちが、高まる「感染リスク」の中で、しかも「いわれなき攻撃や差別」を受けながら働いている。「在宅労働」や「三密回避」という「自粛生活」は、このような労働者たちの存在があってのことであり、感謝で応えようという呼びかけがマスコミにも登場した。
これらの労働者の多くが低賃金と不安定雇用のなかにいる。パンデミックの各国では最賃が重要テーマに浮上している(注)。「コロナ事態」だからこそ、最低賃金審議に社会的な関心が向けられねばならない。
中央審議会は七月下旬に「目安」を策定する運びだが、今後の政治動向や感染状況の推移に少なからず影響される可能性がある。とくに安倍政権は感染防止と経済の両立だと言いながら、専門家会議の廃止を一方的に宣言するなど、明らかに経済に傾斜している。とくに東京都などでは危うい感染状況が続いている。リーマン危機など過去には中央審議会が「目安」を示さなかったとの指摘もある。
中央と各地で最賃大幅引上げの要求が掲げられている。宮城全労協は六月一五日〈「コロナ危機」を乗り越えるために、最賃大幅引き上げを求める〉との要請文を宮城労働局長に提出した(本紙前号資料)。全国各地の運動と連携して最賃大幅引き上げを訴えよう。

(注)NHKは「最低賃金の引き上げ議論/審議会始まる/新型コロナの影響は 」(六月二六日/NEWSWEB)でエッセンシャルワーカーと最賃について海外の動向も取り上げた。

 六月三日「全世代型社会保障検討会議」が開かれた。会議では少子化社会対策とならんで最低賃金が議題に設定され、首相は会議後のまとめの発言で最低賃金に言及した。

最賃抑制を示唆した首相発言

 「賃上げは、成長と分配の好循環を実現する鍵となるものであり、安倍政権として積極的に取り組んでまいりました。その中で、最低賃金は、政権発足前の一〇年間で、全国加重平均で八六円の引上げにとどまっていましたが、政権発足後の七年間で一五二円引き上げました。また、昨年度は二七円の引上げとなり、現行方式で過去最高の上げ幅となっています。さらに昨年、より早期に全国加重平均一〇〇〇円になることを目指す、との方針を閣議決定いたしました。経済の好循環を回していく上で、賃上げは重要であり、中小企業の取引関係を適正化しつつ、この方針を堅持します。
他方で、本日の議論にあったように、新型コロナウイルス感染症による雇用・経済への影響は厳しい状況にあり、今は、官民を挙げて雇用を守ることが最優先課題であります。
加藤大臣におかれては、中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況を考慮し、検討を進めていただくようお願いします」(第八回全世代型社会保障検討会議/官邸hpより抜粋)。

 日本商工会議所などは四月一六日要望書を提出、「引き上げ凍結も視野に」と主張していた。それ以降、政府からは特段の動きはなく、六月三日の会議にいたった。大方のマスコミは首相発言をとらえ、「雇用を最優先」「最賃引上げに慎重」などと報じた。
発言では政権発足前の一〇年間と第二次安倍政権の七年間を対比している。第二次安倍政権(最賃に直接関係するのは二〇一三年以降)の成果を印象づけるものだ。
一〇年間のうち二〇〇一年から二〇〇六年までは小泉政権であり、第一次安倍政権から福田、麻生政権を経て二〇〇九年九月に政権交替が実現した。民主党マニフェストは「全国平均一千円」を明記、二〇〇九年末には「雇用戦略対話」を労働、経済、有識者の同数で設置して二〇一〇年の最賃引き上げに向かった。これらの経緯も、またリーマン危機や東日本大震災という「経済の影響」にも触れていない数値の羅列なのだ。
「全世代型社会保障検討会議」(以下「検討会議」)は最賃中央審議会を目前に二度開催された。そもそも最賃がなぜ「検討会議」の議題となったのか。政府から説明はない。

「全世代型社会保障」と「最低賃金」

 六月二六日が最賃中央審議会の初会合だった。そこで審議会会長は「新型コロナによる影響に配慮する必要がある」との「基本的な認識」を示したと報じられている。これは首相発言の踏襲である。前日の六月二五日に「検討会議」が開かれているが、まとめの発言で首相は最低賃金に触れることはなかった。最賃に関する限り「検討会議」の役割はもう終わっているということか。
「検討会議」は昨年一二月、中間報告を行った。年金、労働、医療、予防・介護の四分野が報告されている。「労働」は次の四項目であり、「最低賃金」は含まれていない。

@七〇歳までの就業機会確保
A中途採用・経験者採用の促進
B兼業・副業の拡大
Cフリーランスなど、雇用によらない働き方の保護の在り方

 「全世代型社会保障」は安倍政権の重点政策の一つだ。「検討会議」は総裁三選を果たした首相の肝入りであり、昨年末の中間報告に続き今年夏に最終報告を成文化する予定だった。しかし、今春、感染拡大によって審議を中断、予定変更を余儀なくされた。六月三日、ようやく再開した「検討会議」に最低賃金改定という急ぎのテーマが持ち込まれたことになる。
再開して二回目、六月二五日「検討会議(第九回)」で第二次中間報告(案)の議論がなされた。報告には「昨年末(中間報告)以降の検討結果」が六項目、掲載されている。フリーランス、介護、医療、少子化対策の四項目に「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた社会保障の新たな課題」が加わり、この五つの項目に多くが割かれている。
「最低賃金」はわずかに触れられているだけで、しかも前回会議での首相発言の文体を変えただけだ。文章の最後には「このため、今年度の最低賃金については、最低賃金審議会において、中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況を考慮し、検討を進める」と記されている。
「検討会議」は三週間、何をしてきたのだろうか。最低賃金を社会保障と関連づけて検討するということなら、経営者や研究者など参加者のそれぞれの立場で問題意識や知見があるということかもしれない。しかし、実際は「最賃抑制」の方向付けのために「検討会議」の場を利用したのではないか。あまりにもずさんだ。安倍政治のおぞましさが浮かび上がる。

「エッセンシャルワーカー」への「感謝」


安倍首相は四月一七日、緊急事態宣言を「発出」してから一〇日を経た会見の冒頭、次のように述べた。

 「緊急事態宣言を発出してから一〇日がたちました。この間、毎朝、店を開き、食料品など生活必需品を棚に並べてくださっている皆さんがいます。レジの対応をしてくださっている皆さん、そして、物の流れを絶やすことのないよう、昼夜分かたず配送に携わっている皆さんがおられます。緊急事態の中にあっても、私たちの生活を守るために事業を、営業を継続してくださっている皆様に心より感謝申し上げたいと思います。
高齢者の介護施設や、保育所などでは、多くの職員の皆さんが感染予防に細心の注意を払いながら、必要とする方々のため、事業を続けてくださっています。電力やガス、水道の供給、ごみの収集・焼却、鉄道の運行、こうした社会インフラがしっかりと維持されなければ、私たちの生活は成り立ちません。そのために日夜、頑張ってくださっている皆さん、こうした皆さんの存在なくして、私たちは長期にわたるこのウイルスとの闘いに打ち勝つことはできません。目に見えない恐ろしい敵との闘いを支えてくださっている、こうした全ての皆様に心より御礼を申し上げます」(官邸hpより「安倍総理冒頭発言」)。

 首相への不信、不満が広がっていた。「特定世帯への三〇万円給付金」が「一律一人一〇万円」に突然、変更された。「緊急事態宣言」の全国化は重要政策の変更を正当化するためではないかという憶測さえ飛び出していた。首相の「プロンプター演説」が話題になった。海外の首脳たちとの違いが指摘され、ドイツ・メルケル首相演説の日本語訳が注目されたほどだった。
緊急事態の宣言によって社会は緊迫感に包まれていた。医療や保健、福祉現場などから悲鳴があがっていた。「自粛」をめぐって攻撃的な言動が広がり、情報番組を通して社会問題化していた。首相は有名アーティストの動画に便乗して「ステイホーム」をアピールしようとしたが、その感覚が世間からかけ離れていると反感を買った。
四月一七日の会見は、そのように首相への強い風当たりの中で開かれた。「国民の皆様との一体感」「日本全体が一丸となって」などと強調、その冒頭で「感謝」が語られたのだった。
四月一四日夜九時のNHK定時ニュースは「在宅勤務が困難“エッセンシャルワーカー”から悲痛な叫び…」というタイトルで「自粛」や「三密回避」の実態と矛盾に鋭く迫っていた。社会を支える労働者たちに政治トップが率先して感謝しているとして、海外の映像も流された。
首相発言には「エッセンシャルワーカー」という言葉は出てこない。このくだりが首相自身の発案だったのかも不明だ。しかし、異例ともいうべき冒頭発言が社会状況を反映していたことは確かだ。
首相には「感謝」を具体化する責任がある。危機的な中小・零細企業を支援して「雇用と最賃の両立」を実現するために、政治と政策が問われている。
二〇二〇年六月三〇日
(U・J)

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