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    かけはし2020年7月20日号

気候危機の根源は資本主義システム


繰り返される集中豪雨災害

今こそエコロジー社会主義への挑戦を

大森敏三

危機の根源に向けた闘い

 日本では、気候温暖化に起因する集中豪雨と新型コロナウイルスの再度の感染拡大が同時並行して起こっている。この二つの事象は、実はエコロジー危機という同じ根源的要因によるものだ。そして、このエコロジー危機を招来させているのは、単なる人間活動一般ではなく、グローバル化した新自由主義的な資本主義生産システムである。そして、今日の貧困・格差・レイシズム・移民排斥・女性への攻撃などの社会的・経済的危機の根源もまたそこにある。
そして、当然のことながら、自ら生み出したこの三つの危機を資本主義と資本家による政府は解決することができない。われわれは、資本主義に対するオルタナティブとしてのエコ社会主義に向けた闘いを直ちに準備し、開始しなければならない。それこそが、地球と人類の未来にとって唯一の希望だからである。

毎年のように拡大する災害


 七月三日に始まった集中豪雨は、熊本県をはじめとした九州全域や岐阜県・長野県などで、河川の氾濫、土砂崩れを引き起こし、人命や家屋、農業、地域産業に大きな被害を与えた。集中豪雨の原因となった梅雨前線はそのまま停滞し、何度も線状降水帯を生み出して、被害を長期化させている。
 人命の被害は、七月一一日現在で、死者六六人、行方不明一六人に達した(NHKニュースによる)。そして、それは球磨川などが氾濫した熊本県に集中している。多くの温泉街に甚大な被害をもたらし、山間部では道路が寸断されて孤立した集落を生み出した。熊本県球磨村の特別養護老人ホームでは、多くの高齢者が犠牲となった。
 近年こうした集中豪雨は毎年のように発生し、その頻度や強度は高まるばかりだ。気象庁は、顕著な被害(注)が発生した場合、集中豪雨などの気象現象に名称をつけている。そのうち、名称がつけられた集中豪雨は二一世紀に入ってから多発しており、今回を含めて全部で一二回にのぼっている(気象庁HPによる)。つまり、ほぼ毎年あるいは一年おきに発生していることになる。そして、その被害も最近になるほど大きくなっている。
 たとえば、名称がついた集中豪雨をとりあげてみると、二〇〇〇年代の一〇年間に起きた五件の集中豪雨での死者・行方不明者は九一人だったが、二〇一〇年代の六件(今年の集中豪雨を除く)では四五一人に達しているのである。
 このように集中豪雨が頻発するのは、地球温暖化、とりわけ日本を取りまく海面の水温上昇にあることは、すでに多くの専門家が指摘してきたことである。温室効果ガスによって生み出される地表の熱のうち、約九三%は海が吸収していると言われる。そのことによって、海水温の上昇が続き、二〇一九年の海水温は観測史上最高となった。海水温の上昇は、海面からの水分蒸発量を増加させ、陸地での降雨量を増加させる。他方では、地表からの蒸発需要も増加させるため、陸地の乾燥化を促進し森林火災の原因となる。このように、海水温の上昇は、一方では集中豪雨を、他方では森林火災をもたらすのである。

リスク生み出すダム


 集中豪雨は日本列島だけの現象ではない。中国南部では、長江流域での豪雨が続き、河川の氾濫が相次いでいる。世界最大級のダムである三峡ダムの貯水量は警戒水位を超え続け、緊急放流によって下流地域での洪水を加速させている。そして、考えたくないことではあるが、三峡ダム決壊の可能性すら取り沙汰されている。
 日本でも、同様にダムからの放流が洪水被害を引き起こした例が出てきている。たとえば、二〇一八年西日本豪雨では、愛媛県の肱川上流にある野村ダムと鹿野川ダムの緊急放流によって、下流域で洪水を引き起こし、大きな被害を生み出した。この二つのダムでは、激しい降雨を予想して事前に一定の放流をおこない、通常の一・五倍の貯水量を確保していたにもかかわらず、想定を超えるレベルの降水量があったため、ダム決壊のリスクが発生し、豪雨の真只中に緊急放流せざるを得なかったのである。
 同様のダム放流による被害はアメリカでも発生している。アメリカでのダムの実態について分析した『大洪水の後で』(『ソリダリティ』六月二六日)によれば、今年五月には豪雨によって「ティッタバワシー川にある四つのダムのうち二つが決壊し、新型コロナウイルスのパンデミックによって出された州知事の『ステイ・ホーム』命令の真只中で、一万人の住民が自宅から避難する」事態となった。また、「アメリカには九万五八〇のダムがあり、建設からの平均年数は五六年である[ダムの寿命はおおむね五〇年として設計されている]。そのうち一万五五〇〇のダムは『危険度が高い』、つまり決壊すれば人命にかかわると分類されている。
 さらにそれ以外の一万一八八二のダムには『顕著な潜在的危険』がある。それらは人命を失うまではいかないかもしれないが、確実に経済的損失をもたらす」と全米土木学会が指摘しているとのことだ。
 地球温暖化による降水量の集中的な激増によって、いまやダムは洪水対策に役立つどころか、重大なリスクをもたらすものとなっているのである。

弱者に集中する被害

 こうした異常気象(集中豪雨)の被害を被るのは、社会的に脆弱な位置にある人々や地域に集中している。たとえば、九州での死者のうち、身元が公表された五五人の中で六五歳以上の方が四九人を占めている。被害が社会的「弱者」に集中するという構図は、まさにコロナ危機と共通したものだ。
感染者が爆発的に増加しているブラジルでは、新型コロナウイルスの感染者は当初は海外に渡航した富裕層が中心だったが、そうした富裕層は郊外や別荘地に「避難」してしまい、そのあとで感染が猛威を振るったのは貧困地区や「エッセンシャルワーク」に就く不安定雇用・低賃金労働者、高齢者、医療従事者においてだった。
そして、世界的に見て、ロックダウンによって困難な立場に追い込まれたのは、貧困層、移民・難民、不安定労働者、女性などであり、とりわけアメリカ・ヨーロッパにおいては、非白人労働者やその家族の死亡率は白人のそれと比べて明らかに高くなっている。
気候危機とコロナ危機は主たる被害者が同じであるだけでなく、その根源もまた同じである。気候危機とコロナ危機は密接につながっており、相互に関連している。この点について、二〇〇九年にブラジル・ベレンでおこなわれた世界社会フォーラムの際に配布されたエコ社会主義者による『ベレン宣言』は、すでに以下のように指摘していた。
「このまま放置されるならば、地球温暖化は人間・動物・植物の生命に対して破壊的な影響をもたらすだろう。穀物収穫量は劇的に減少し、広範囲な地域で飢饉を招くだろう。何億人もの人々が、ある地域では干ばつによって、別の地域では海面上昇によって、故郷から追われるだろう。予想したこともない天候が当たり前になり、大混乱を招くだろう。空気・水・土は毒されるだろう。マラリアやコレラに加えて、もっと致死率の高い病気の大流行が、あらゆる社会におけるもっとも貧しく、もっとも弱い人々を直撃するだろう」。

資本主義との対決

 また、最近出された第四インターナショナル執行ビューロー声明では、「森林伐採、資源略奪、資本主義的生産性、エコシステムの破壊、監禁状態での動物飼育の増加、食肉需要の増加によって、ウイルスはより容易に、より頻繁に種の境界を跳び越えるようになった。一九六〇年以降に出現した新たな病気の四分の三は、動物由来感染症である。この中には、エボラ出血熱、エイズ、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、そして新型コロナウイルスが含まれる。貿易のグローバル化はウイルスの急速な世界的拡散を導いた。巨大都市とそれと結びついたスラムの増加は、人間間での伝染のスピードを加速させている。それゆえに、新型コロナウイルスのパンデミックはグローバリゼーションのさまざまな影響の相互作用の結果である。」(『かけはし』六月二九日号)と指摘されている。
大気汚染による健康被害者に対しては、それを引き起こした企業の賠償責任が認められたように、こうした気候災害の被害者に対する補償は、その根本的原因である地球温暖化を作り出した資本主義独占企業と資本家政府こそが支払わなければならない。その意味では、神戸製鋼火力発電所増設に反対する民事訴訟・行政訴訟をはじめとして、現在日本各地でとりくまれている、あるいは世界のいたるところで闘われている気候裁判は、資本主義企業の責任を明確にし、そのことを大衆的に明らかにする上で決定的に重要である。
そして、われわれが闘うべき根源的な敵は、言うまでもなく資本主義生産システムそのものである。資本主義システムは、利益追求・資本蓄積の飽くなき欲求を至上命題として、これまで思うままに温室効果ガスを排出し、工業的農業の拡大・森林伐採など環境破壊・生態系破壊をおしすすめ、生物多様性を著しく減少させてきた。その結果として、今日の気候危機とコロナ危機があるのだ。
こうした危機に対するわれわれの回答は、気候危機への根本的挑戦としてのエコ社会主義である(エコ社会主義については、近刊『エコロジー社会主義 気候破局へのラディカルな挑戦』をぜひ参照してほしい)。
「現在の危機を収束させるためには、それが人間の生命の基盤を危機に陥れるので、エコ社会主義的展望を持った反資本主義的政策が必要である。それは社会的ニーズに基礎を置き、労働者階級によって、労働者階級のために組織された、銀行や主要生産手段の公的所有をともなう社会が緊急に求められていることを示している。そして、この危機が示すのは、その緊急性が気候変動の原因にブレーキをかけること、『われわれの共同の故郷』を破壊し、生物多様性を減少させ、ウイルス性の深刻な呼吸器症候群のような現代のペストへの道を開いている環境破壊を食い止めることが必要であるということである」。
「新型コロナウイルス以前のいわゆる通常の状態に戻ることは不可能だろう。未来の人間と地球を脅威にさらしてきたのは、資本主義的『常態』だったからである。社会的ニーズに基礎を置き、労働者階級によって、労働者階級のために組織された、銀行や主要生産手段を公的所有に移した新たな社会へと変革することは緊急の課題である。それが根本的な社会―エコロジー的転換の展望が必要な理由である」(第四インターナショナル執行ビューロー声明、『かけはし』七月六日号)。

(注:「顕著な被害」とは、損壊家屋等一千棟程度以上または浸水家屋一万棟程度以上の家屋被害、相当の人的被害、特異な気象現象による被害などを指す)




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