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    かけはし2020年7月20日号

無法な辺野古の埋立、即刻中止を!


読書案内

橋本健二著 河出新書 1100円

『〈格差〉と〈階級〉の戦後史』

「アンダークラス」の全般的登場




単なる格差の
拡大ではない


 著者の橋本健二は一九五九年生まれの社会学者で早稲田大学人間科学学術院教授。ここで紹介する書は、二〇〇九年に出版した『「格差」の戦後史――階級社会 日本の履歴書』を大幅に増補・改訂した上で改題し、今年一月に出版したものである。私は残念ながら「増補・改訂」前の書を読んでいないので対比はできないが、たんなる旧版の「増補」ではないと著者は本書序文で強調している。
 二〇〇九年の初版では「格差拡大」が一九八〇年代に始まった「トレンド」であり、小泉改革のような「短期的要因が主因ではない」ことを強調したものであったが、第10章「アンダークラスの時代――二〇一〇年代」を新たに付け加えた新版(二〇二〇年一月)では、旧版最終章だった第9章の「新しい階級社会の形成」を含む本書全般の内容を大きく書き換えることになった、と著者は説明している。「事実上の新著」である、と。
 本書は「階級構成」という観点から、日本の「格差と貧困」という課題を構造的なものとしてえぐり出そうとしている。ぜひ一読をお勧めしたい。

東日本大震災と
階級構造の再編


旧版(初版)を出版した二〇〇九年以後で、格差に対する人々の意識にとって大きな変化をもたらした最大の要因は二〇一一年三月一一日の「東日本大震災」だったと著者は述べている。どのように変わったのだろうか。
「二〇一一年三月一一日、東日本大震災と、これに続いて起こった福島第一原発のあと、格差に対する日本人の認識は大きく揺らいだ。格差に関する状況が、大きく変化したわけではない。一九八〇年代に始まった格差拡大は続いていたし、非正規労働者の増加も続き、……その状況はますます悪化していた」。「ところが、である。『国民生活に関する世論調査』によると、自分の生活程度は『中』以上だと考える人の比率(『上』『中の上』『中の中』の合計)は震災後に跳ね上がり、二〇一三年には七〇・三%となって、格差の小さかった一九七〇年代から八〇年代を上回って史上最高を記録し、以後も上昇が続くのである」。
著者は、世論調査での政府への要望を見たとき「高齢社会対策」「雇用・労働問題への対応」「環境保護」が東日本大震災・福島原発事故以後、大幅に減っていることを指摘している。それはこうした問題の深刻さが和らいだことを意味するものではもちろんない。
むしろそれはいっそうの深まりを見せていた。しかし著者は「震災直後の一〜二年間は、格差や貧困について論じることすらはばかられるような雰囲気があった」と述べている。こうした状況の中で、「貧困」問題はいっそう深刻化していた。
「当時、バブル期に非正規労働者となったフリーター第一世代は四〇歳代となり、氷河期世代は三〇歳代になっていた。二〇〇八年のリーマンショック後の、『第二氷河期』も始まっていた。こうして震災へと社会の関心が集中する中、新しい下層階級は拡大を続けたのである」と著者は語っている。

「新しい下層
階級」の拡大


この新しい下層階級とは、「アンダークラス」と規定されている。
「……新しく出現したこの下層階級は、低賃金のため家族を形成することが難しい。仮に結婚することができたとしても、子どもを産み育てることは難しい。つまり、結婚と出産・子育てによって、世代的に再生産することが困難な状態に置かれている。……非正規労働者の未婚率は、男性で六六・四%、女性で五六・一%と高い。子どものいる人の比率も、男性では二九・二%にすぎない。女性の場合は離死別を経て非正規労働者となっている人が四三・九%いることもあって、四七・七%に子どもがいるが、他に比べれば少ない」「このようにパート主婦以外の非正規労働者は、その極端な低賃金、家族形成と次世代を再生産することの困難といった点から考えて、労働者階級の最下層であるというにとどまらず、伝統的な意味での『労働者階級』以下の存在とすらいうことができる。つまりアンダークラスである」。
それでは、この「アンダークラス」としての低賃金労働者は、労働者階級全体の中でどれほどの比率を占めているのだろうか。
「二〇一七年時点で九二九万人(一四・九%)となる。それは正規の労働者の四割を超え、「階級構造の主要な構成要素の一つである」と著者は強調している。

尖鋭化が進む
「階級的分岐」


著者は、所得に対応した明確な階級的分岐が進行し、企業経営者・高額所得者の利害を代表する自民党が、以前にも増して、貧困層の利害をまったく顧みない態度を鮮明にしていることを指摘している。自民党の看板だった「国民政党」の色合いがますます消え去り、大資本と富裕層の利害をストレートに反映する党に純化していることの指摘である。
「……今日の日本は……格差や貧困の問題が、とりわけアンダークラスの問題が、解決に向かうとは考えにくい状況にある。なぜなら、格差に対する認識があまりにも政党支持と明確に対応しすぎているからである。……人々は所得再分配を拒否する自民党支持者と、所得再分配を支持する他政党支持者に大きく二分される。……このとき政権党である自民党は、自らの支持層を裏切らないためにも、所得再分配の強化へと政策の舵を切ることはできない。たとえ公明党が求めたとしても、それは不可能だろう」。
著者は、かつては「国民諸階層の多様な利害」を調節するというポーズをとっていた自民党が「二〇一五年までに、……あらゆる年齢層と階層から、格差を容認する人々の支持を集める政党になってしまったらしい」とデータを通じて指摘している。
著者は本書の結論で次のように述べている。
「格差縮小と貧困の解消が、支持政党を超えた共通の要求であるならば、与野党間の交渉を経て、そのための政策を実現することもできるだろう。ところがこのように自民党支持層が格差容認で固まっていては、それも難しい。そうするうちに、フリーター第一世代は高齢期を迎え、氷河期世代がこれに続いていく。こうして二〇三〇年代には、日本のアンダークラスが全貌を現すことになるのである」。        (純)

7.6

防衛省に月例申し入れ行動

辺野古基地建設工事中止を

環境破壊にSTOPを!


 七月六日午後六時半から、辺野古への基地建設を許さない実行委員会が防衛省に対して月例の申し入れ行動を行った。
 最初に、辺野古実の尾沢さんが「@辺野古調査団が震度1で護岸が崩壊すると明らかにし、防衛省に再調査の申請をしたが防衛省はその必要はないと拒否した。A国は四月二〇日に埋め立て工事の設計変更申請したが、今後公告縦覧の手続きに入り、全国から意見が言える。沖縄県を応援するためにも意見を集中しよう。Bアメリカ議会の軍事委員会で、普天間基地移設計画について問題にされた」と辺野古基地建設をめぐる新たな状況について報告した。
 次に、沖縄環境ネットワーク」世話人の花輪伸一さんが「大浦湾にジュゴンが帰ってきていることが明らかにされている。三頭しかいないジュゴン、一頭は死亡、二頭は行方不明になっていた。ジュゴンを絶滅させてはいけない、工事を中止しろ。七万株のサンゴを移植させると国はしているが、県はその方法がずさんだと許可を出していない。にもかかわらず、国は無視して埋め立てている。野生生物は追いやられ、環境は破壊されている」と政府の姿勢を批判した。

山城博治さん
電話アピール


沖縄から山城博治さん(沖縄平和センター議長)が電話でアピールした。
「コロナで一時止まっていた工事が再開されたが、みんな元気で阻止行動を行っている。東京や全国から現地に入ってくれている。いま、基地建設をめぐって大きく動いている。米国議会軍事小委員会で、いったんはアメリカ議会の軍事委員会は国防予算の大枠を決める国防権限法案で辺野古への移設をめぐり、軟弱地盤や活断層の存在を背景に移設計画に懸念を示す文言を盛り込んでいたがそれを削除した。しかし、辺野古移設問題が取り上げられたことが重要だ」。
「長島防衛元副大臣や中谷元防衛大臣が『軍民共用空港』『海上ヘリポート』などの意見を言い出している。これは政府の言い訳にすぎず怒りがわく。辺野古調査団が活断層や軟弱地盤によって、建設中にも崩壊すると意見を出し、河野大臣にできるというのなら反証してほしいと申し入れした。無理して作っても震度1で壊れる。次には新しい基地建設の提案があるだろうが、どんな所に作ることになってもねばり強く闘い必ず基地建設を止める。コロナ感染が増えているなか、駆けつけてくれた人々に敬意を表する。辺野古ゲート前は運動の象徴の場だ。運動を爆発的に強めていきたい」。
官邸前スタンディングを行っている人が「六月二三日は沖縄終戦記念日、一九五九年六月三〇日、米軍機が宮森小学校に墜落し一八人が死亡した。米軍基地の七五%が沖縄に集中している。戦争のできる国にしてはならない」と発言した。
次に「小金井市議会で米軍普天間飛行場の代替施設の必要性を国民的に議論するよう求める陳情が採択された。同様の決議が沖縄県議会でも採択された。しかし、工事は止まっていない。法の下に平等をうたう憲法違反だ。公民の教科書で歴史修正主義の育鵬社を採択させる動きがある。まともな教育出版の教科書が採択されるように意見を出していく必要がある」と参加者から発言があった。
琉球人遺骨返還訴訟の会が「七月二九日にブックレットが販売されるので活用してほしい」と訴えた。最後に、沖縄の闘う歌、シュプレヒコールでしめた。この日の申し入れは労働運動活動家評議会が行った。(M)

朝鮮半島通信

▲韓国の与党「共に民主党」の李洛淵前首相は7月7日、今年8月に実施される党代表選に出馬すると表明した。
▲朝鮮戦争で朝鮮の捕虜となり、休戦協定後も朝鮮に抑留されて強制労働をさせられたと主張する韓国男性2人が朝鮮と金正恩朝鮮労働党委員長に損害賠償を求めた訴訟の判決でソウル中央地裁は7月7日、朝鮮側に1人当たり2100万ウォンを支払うよう命じた。
▲朝鮮中央通信は7月8日、故金日成主席の死去から26年を迎え、金正恩党委員長が錦繍山太陽宮殿を訪れたと報じた。
▲ソウル市警察庁は7月10日未明、朴元淳・ソウル市長が市内の山中で死亡しているのを発見したと発表した。
▲収賄などの罪に問われた朴槿恵・韓国前大統領の差し戻し審でソウル高裁は7月10日、懲役20年の実刑判決を言い渡した。

コラム

変わらぬ光景


 本年末。夢に見た定年になる。中小民間の製造業に四一年以上勤めてきた。高校三年の終わり、担任教師と揉めるのが面倒で、推薦されたこの会社に「とりあえず」入った。「石の上にも三年」で辞めるつもりだった。
 皮肉なことに、最近特に仕事が面白くなり、同僚の間で発言力が増していると感じる。月日の経つのが異常に早く、過去の出来事の時期が正確に思い出せない。
 工場では、恒常的な人手不足により労働密度が高まっている。数年前に他者の異動のあおりを受けて旧職に復帰したが、生産計画に直結する事務職で「機械取り」の仕事が自分の性に合ってもいた。
 賃金を上げず一時金も満足に出さない資本は一方で、労働者が自発的に取り組むQCやZDの活動を奨励する。組合役員が旗振り役となり、乾いた雑巾を絞るような生産性向上のため、会議と点検が日常化した。私は業務上その会議に出ることが多々ある。
 営業担当が受注する物量は、自社の生産能力をはるかに超え、現場には険悪なムードが漂い、耐え切れない新入社員が連鎖的に次々と職場を去った。
 ある日の会議の席上。細かな改善案を求めるリーダークラスに対し、私は「大手○○便のように、仕事量そのものを元から減らさないと、いくらここで議論したって堂々めぐりだ」と声を荒げた。彼は次週一枚の白紙を配り「来週までにみなさんの意見を無記名で書いてください。これは現場の総意として、私がまとめて上に伝えます」と場を仕切り始めた。私は「またか」と思いつつ、ワープロで即席に「人と機械を増やす、外注を進める、受注を制限する」という三項目の選択肢とその効果についてのわずかな解説文を作成した。
 手書きでない文面が私だけなのか、組合役員らは翌日「○○さん、さすがですね」と真っ先に声をかけ、編集の際「最高の議題、模範的な提案」などと注釈を加え、機械につかず一日中「文字起こし」に励んでいた。
 「労働運動の右翼的再編」――一九八〇年前後に日本のナショナルセンターの「労戦統一」に反対して、左翼少数派組合が批判した「大同団結」路線の本質である。あれから社会は大きく変わり、働く環境も変化を遂げているにもかかわらず、旧態依然、変わっていないのが労働組合である。その官僚性、閉鎖性、保守性、後進性は、ユニオンショップに縛られる若者をして、早々と資本の側に着くか、退職するかという二者択一を迫っている。使いきれないほど貯められた組合費は、上納する本部費を除き、無責任な管理職と疲れ果てた組合員を慰撫するささやかなレク活動に使われている。
 職場を去るにせよ残るにせよ、御用労組から解放される日が、目前に迫っている。      (隆)


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