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    かけはし2020年7月27日号

香港自治の死:弾圧を超えて


區 龍宇(アウ・ロンユー)へのインタビュー(3)

聞き手/アンシュリー・スミス

 香港の自治と民主主義を求める運動は一年間の激闘を通じて新しい局面に入っている。民主主義と権利のための長期的な闘いを支援しよう。

非暴力・非協力の
抵抗を支持する

 スミス 運動はいま間接的にも直接的にも、中国と対決するという課題に直面している。いかに組織するのか、力はどこにあるのか、どんな戦術がもっとも有効なのかについて、運動の中での戦略的討論はどんなものか?

區龍宇 われわれは戦術については、ネット上で多くの討論をおこなっているが、不幸なことに、これは戦略にかかわるものではない。抗議行動参加者は指導者もなく、きちんとした組織もないまま、一日単位で考え、活動している。政治的直接行動の経験がないため、ほとんどの若者たちは戦略的に考えるという能力が身についていないだけなのである。近日中に出版される二〇一九年の反乱に関する私の本では、私はこの運動の特徴について議論している。もっとも声の大きな潮流は、はっきり言えば右翼ローカリストであり、ある大手タブロイド新聞の支援を受けているが、いまはアメリカ政府に助けを求めて仰ぎ見ている。これが彼らの戦略である。
このことはまた、もっとも急進的なグループが警察機動隊に対する物理的抵抗によって過剰な弾圧を受けるという結果を招いている。すでに物理的抵抗にとっての好機は過去のものとなったのだが。そしてついには、少数のメンバーに、爆弾を製造したり、銃を入手したりして、都市ゲリラ闘争の道を選択させている。多くはすでに逮捕されたり投獄されたりしている。戦略的に言えば、激烈な闘争、そして言うまでもないが、武装抵抗はわれわれに適してはいない。というのは、香港は、強大な一党独裁国家の中にある小さな都市に過ぎないからである。私は非暴力抵抗、非協力運動、あらゆる形態の消極的抵抗に賛成する。これはきちんとした組織的活動を必要とする。これがわれわれの戦略の一部であるべきだ。
一党独裁を終わらせるには共同のとりくみが必要なことを粘り強く説明して、本土人民と協力するという戦略(それは私も賛成する戦略だが)は、不幸なことにほとんど支持をえていない。急進的な若者たちはネット上に「抵抗指針」を投稿し続けている。最近投稿された中の一つで、彼らは大小の行動予定を書き込んでいたが、六月四日の追悼集会のことは完全に無視していた。彼らの「中国と袂を分かって、われわれを一人にしておいてくれ」という心情によって、彼らは中国民主化運動との連帯を表明することに無関心となっているのだ。これは悲しむべきことである。

米国の政策には
依拠できない!


スミス 運動の中には、いわゆる国際社会やアメリカが自分たちを守り、援助しに来てくれるのを期待する者もいる。これはなぜ罠なのか?

區龍宇 われわれが苦境にあればあるほど、より多くの人々がアメリカからの援助を得るという考えに理解を示すようになっている。右翼ローカリストは、トランプ支持の巨大タブロイド紙の支援を得ながら、香港人権・民主主義法(HKHRD)を香港の自由を救うための手段として歓迎している。実際のところ、その法律の名称はむしろ誤解を招いている。
第一に、第三項では、法律はその目的について明確にしている。すなわち、重要なのはアメリカの国家的利益である。第五項a6は、香港が特定の国や個人に対するアメリカの制裁を効果的に遵守するどうか、についての評価を求めている。制裁の理由には、「国際的テロリズム、国際的な麻薬の違法取引、大量破壊兵器の拡散、あるいはアメリカの国家安全、外交政策、経済に脅威を与えること」に関与した国や個人に罰を加えることが含まれている。この条項はまた、香港政府に北朝鮮やイラクへの制裁を義務付けることを含んでいる。アメリカの外交政策に香港の人権を委ねるというこの試みは、それ自身人権を笑いものにするものだ。
香港人権・民主主義法の成立前には、香港、アジア、アメリカの二〇の団体が香港人権・民主主義法に関する公開声明を公表した。それはこの法令の欠陥を指摘する進歩的批評である。その声明はこの法令を一九八六年の反アパルトヘイト法と比較した。
アメリカ議会は以前に、そのような法制化にあたっては、こうした事項(アメリカ外交政策のこと。―筆者)を切り離すことが現実的であると説明していた。私個人の意見では、一九八六年の包括的反アパルトヘイト法は、国際社会とともに、アメリカ自らの国家利益や経済利益を語ることなく、南アフリカのアパルトヘイト体制に反対している。
トランプ政権は香港人民や中国人民の友人ではない。実際のところ、トランプと習近平はお互いに鏡に映りあうような存在である。最近、フィナンシャル・タイムズが掲載した論評は、「一九九〇年、彼(トランプ)は、雑誌『プレイボーイ』に対して、中国共産党が一九八九年に天安門広場で学生たちを弾圧した方法を賞賛し、アメリカが弱体だと見なされる一方で、それが『強力な権力』を示したものだと述べた」と報じた。昨年の香港の反乱の間に、トランプは一方では自分が習近平といかに親密かを強調しつつ、もう一方では香港の反乱を単なる「暴動」と呼んだ。トランプを民主主義の友人だと信じるのは愚かなことである。
トランプは、いまや香港に対するアメリカの優遇措置の終わりの始まりだと述べて、非常に重要な一歩を踏み出した。このことによって、香港のアメリカ支持者はいわゆる「焦土作戦」―「もしわれわれが燃えれば、お前たちにもわれわれと一緒に燃えるのだ!」―の勝利宣言をおこなった。彼らは、アメリカの動きが香港と中国本土の経済に損害を与え、それによって中国共産党体制が幕を降ろすことを期待している。
私の答えは次のようなものである。もし民主化運動が中国本土で成長することができないならば、そして香港の民主化運動がばらばらで組織化されないままならば、外交的制裁だけも、経済危機だけでも、その体制は幕を閉じないだろう。このことに加えて、われわれ自身の民主勢力の発展がなければ、われわれは、北京であろうとワシントンであろうと、永遠に巨大な力に依存し、完全になすがままになることを意味する。北京とアメリカとの間の対立に直面して、われわれは二つの相争う強国の真ん中に挟まれているために、「バナナ共和国」(訳注三)よりも悪い状況にある。

抵抗運動の政治
的分岐の中で

スミス 運動の中の政治潮流はどうなっているか? 人々は、自決権や独立、民主主義と平等を求める全中国的闘争について何を語っているのか? 戦略はどうあるべきか、あなたの考えは?

區龍宇 中文大学のコミュニケーション・世論調査センターは、二〇一九年一〇月に実施された(北京支持政党も含めた)全面的調査において、政治的傾向を七つの範疇に分類した。反対陣営に関するわれわれの討論のために、そのうち四つを選び出してみよう。

 さまざまな政治的傾向の支持者の割合についての調査(政治傾向、二〇一九年一〇月の支持率、二〇一四年九月の支持率の順)
穏健民主派 四〇・〇% 三七・九%
急進民主派 六・二% 三・九%
ローカリスト 一四・一% 無回答
中道/政治傾向なし 三三・五% 四八・六%

 「急進民主派」を支持していた人々は、自己決定権を支持している可能性が高い。近年おこなわれた以前の調査では、およそ一〇%の人々が独立を支持していることがわかっている。上記の調査ではもうひとつ重要なことがわかる。調査対象者の三分の一が決まった政治的立場を持っていなかったことである。それは香港人民の政治化がかなり最近になって始まったという事実を反映している。
そのセンターは、さまざまな抗議行動での参加者の政治的傾向を明らかにする調査もおこなった。一般的には、「ローカリスト」の支持は、抗議行動参加者の間でかなり高まっていた。その代わりに「穏健」・「急進」民主派の支持が減っていた。平和的な行進では、このことはそんなに明確ではない。「違法」デモのような市民的不服従行動では、「ローカリスト」の支持は四分の一を占めている可能性がある。

スミス 最後に、国際的左翼はその闘争およびいま互いに激しく争いあう二つの国―アメリカと中国―に対して、どんな立場をとるべきだろうか?

區龍宇 広範な国際的左翼の間で、香港での抵抗運動を「外国勢力」の道具だとしてあからさまな非難をしないまでも、その運動について沈黙を守る傾向があることは承知している。私は別のところで最後のポイントにつて話してきたので、ここでそれを繰り返すつもりはない。私は、今週カナダで、保守党が香港情勢を見極めるために、カナダ・中国関係特別委員会を再開する動議を提案したが、自由党、新民主党、緑の党によって否決されたと聞いた。
私は彼らが反対した理由は知らないし、その動議がどんな表現だったのかも知らない。しかし、カナダの自由党や広範な左翼が動議の表現に満足していなかったとしても、人権についてまじめに考えるのなら、香港の自治を守るために香港の運動を支持する別の動議を出すことも考えられただろう。どうして新民主党と緑の党が香港情勢を詳しく調べるという考えを支持するのを拒否したのか、誰か私に説明してくれれば嬉しいのだが。
一般的には、私は左翼が心配していることのいくつかを知っている。つまり、彼らは、(香港に対するトランプの態度は昨年には冷淡だったことを忘れてはならないが)アメリカ政府がいまや突然に香港の抗議行動の声高な支持者となっているため、アメリカ政府と協力していると見られたくないのだ。しかし、香港民主化運動をアメリカ政府が言葉だけ支持しているからと言って、どうして特定の左翼活動家がこの正義の闘いに対する支持を放棄することができるのだろうか? 抗議行動参加者の中にアメリカ支持者がいるという事実を理由にして、どうして国際的左翼が運動全体―二百万人の支持者がいて、「アメリカ支持」とか「独立支持」とか「反中国」で団結しているわけではなく、普通選挙権が中心的要求である有名な「五項目要求」によって団結している運動―を見捨てることができるのか? どうして国際的左翼の支部がそのような基本的権利を求める香港人の闘いを見捨てるのだろうか? どうして彼らはトランプ政権から距離をとった独立した香港連帯キャンペーンにとりくめないのだろうか?
他方では、香港ではじめて、ローカリストやアメリカ帝国の友人たちが困惑すべき状況に直面している。彼らは香港に対するトランプの言葉だけの支持に賛成する合唱を繰り返し歌ってきた。しかしながら、アメリカでのジョージ・フロイドと連帯する巨大な抗議行動に対するトランプの反動的態度、および抗議行動を弾圧するために連邦軍を派遣するという要求は、一九八九年の民主化運動および昨年の香港での運動に対する中国共産党の弾圧を繰り返し香港人民に思い起こさせているのだ。
ネット上での討論で、人々は右翼ローカリストに「われわれは昨年、同じような警察国家の弾圧を受けてきたのに、どうしたらわれわれがジョージ・フロイドと連帯する抗議行動を支持できないなんてことがあるのか?」という質問をおこなっている。同じようにジョージ・フロイドへの連帯を表現するのによりガッツがあることを示すために、香港ではとるにたらない存在でしかない左翼活動家への接近も始まりつつある。アメリカでの闘いのおかげで、より多くの香港人民が自分たちの政治的展望を再考している兆しが見えるのだ。
(了)
(訳注一:社会ダーウィニズムは、ダーウィンが示した進化における自然淘汰=生存競争、適者生存、優勝劣敗などを人間社会に適用した考え方で、そのことにより帝国主義的支配や人種差別主義、優生思想を合理化した)
(訳注二:李嘉誠は、香港最大の企業集団・長江実業グループの創設者で、アジア一の大金持ちと言われた時期もあった)
(訳注三:バナナ共和国とは、バナナなどの第一次産品の輸出に依存しているために、アメリカなどの外国資本によって支配されている国のこと)
(『インターナショナル・ビューポイント』六月一〇日)




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