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    かけはし2020年8月3日号

エコ社会主義に向けて


投稿

化石燃料ゼロ時代 @

どうしましょう? 精子のなくなる日

たじまよしお


(1)     

 今から六十と数年前、空気のなくなる日という映画を学校で観ました。実際にあった話ですが空気がなくなったわけではありません。しかしこのまま時間が過ぎて行けば「精子のなくなる日」は遠くない将来確実に訪れるホントの話なのです。私たちが今こうしている間に男性の精子は一年間に約一・四パーセント、十年間に一四パーセント確実に減り続けているのです。フランス・チームの調査によれば、一九六二年生まれの男性の精子は一九四五年生まれの男性の半分の五一○○万個(一ミリリットルあたりの平均)ということです。日本では、聖マリアンナ医科大学の岩本晃明教授(現、国際医療福祉大学教授)の調査によれば、平均二一歳、一九九九〜二○○三年時の大学生の平均精子数は五九○○万個であったということです。その中には一五○○万以下が九%、受胎率に影響する四○○○万以下が三一・九%となっています。
精子の減少はその子供に受け継がれるのです。今年、二○二○年生まれの男の子が二〇歳になった時の精子の数は計算するのも恐ろしくなってきます。
以上の記述は「『奪われし未来』『月刊世界/二○一八・二・空騒ぎではなかった環境ホルモン/水野玲子』」を参照したものです。

(2)

 先に紹介しました「奪われし未来」はシーア・コルボーン、ダイアン・ダマノスキ、ジョン・ピーターソン・マイヤーズの三名による共著で初版は一九九七年ですが、その後増補改訂版として二○○一年に初刷りされました。増補改訂版の解説は井口泰泉で「この一冊が地球を救う」と、世紀を超えたロングセラーとなっています。翻訳は長尾力、堀智恵子のお二人です。
私は二十と数年前、埼玉県所沢のホウレン草に含まれるダイオキシン濃度が大問題となっていた頃、東京東村山市の柳泉園という大型ごみ焼却場建て替え反対運動の渦中にいました。地球規模で見ますと、世界には一八○○基の大型焼却炉がありそのうち三分の二、つまり一二○○基は日本列島にあるということです。
六、七年前のことですが環境省嘱託員の馬場利子さんの講演で「過去十年で母乳に含まれるダイオキシンの濃度は約二倍になっている」という報告がありました。プラスチックなど石油製品を焼却することによって排出するダイオキシン、環境ホルモンが精子の減少に一役買っていることは広く知られていますが、では石油製品を燃やさなければ良いかというとそうでもありません。

(3)

 月刊『世界』「空騒ぎではなかった環境ホルモン/水野玲子」には以下のような記述が観られます。「一九九八年に雑誌『新潮』に『環境ホルモン空騒ぎ』と題する記事が掲載されたのを契機に、産業界よりの学者やジャーナリストを中心に環境問題を鎮静化しようとする動きが強まった。その後二十年、マスコミでこの問題が取り上げられることはほとんどなかった。研究費がつかないため追加研究も進まず、結果、日本ではこの問題はすっかり忘れさられてしまった」。
筆者も二十年前に、ここ長野県、愛知県、静岡県の三県の県境のあたりにある長野県最南端の生まれ故郷・阿南町へ越してきてから、環境問題に関する書籍に目を通すくらいで、運動からは遠ざかっていました。
新聞配達の区域外という人里離れた山の中の独り住まいですが、焼けボックリの火種は今も燻り続けています。月刊『世界』の水野玲子さんの文章は敗北宣言のように見えますが最後は「それを直視しなければ、日本は、いつか先進諸国の中で最も早く“不都合な真実”に押しつぶされる国になるに違いない」と結んでいます。これはまさに蹶起を促す狼煙であり私たちも呼応の声をあげなくてはならないと思いました。
昨年七月の参議院選挙のおり、山本太郎さん率いる「れいわ新選組」が旗揚げして、それへの選挙協力を要請するハガキを当時環境問題を闘った友人たちからいただき、少し異なる意見を持っていましたし、その後返事も出すことなく横着を決め込んでいるところです。そうしたことへの申し訳なさが、燻り続けていた焼けボックリを燃え立たせたのかも知れません。

(4)

 月刊『世界』で水野玲子さんは精子の減少のことが社会問題にされなくなった契機についてのべていますが、ここで一つ付け加えておいたほうが良いのではないかと思うことがあります。それは「ゼロエミッション」のことです。次に「内橋克人著・同時代への発言」の抜粋を紹介します。
廃棄物ゼロ計画─一九九二年、東京・渋谷に新本部施設を竣工した「国連大学」は今「ゼロ・エミッション」と呼ぶ大規模な研
究プロジェクトをスタートさせ、世界の企業に参加を呼びかけている。エミッションとは排出物、廃棄物のことだ。企業活動の結果、吐き出される廃棄物のすべてをゼロにする。廃棄物の量を削減するではなく、皆無にする生産システムの新たな構築を目指す、という「ゼロ・エミッション」体制に向けて全産業の製造工程をつくり直し、既存の産業を再編成して、全く新しい「産業集団」を生み出すというのだ。今年(一九九四年)七月、国連大学で第一回「ゼロ・エミッション研究会」が開かれ、初めて概念と構想が明らかにされた。
このゼロ・エミッションへの今日的評価は多角的、慎重に行われなくてはなりませんが、昨年九月の「気候マーチ」はこの国連大学の前で行われたと言います。そのあたりに私は今後の運動への希望を感じています。

(5)

 (その4)「廃棄物ゼロ計画」の続きを以下に掲載します。
企業・産業の活動が廃棄物ゼロの循環において維持されるならば、地球環境・資源問題の解決は手近なものとなる。エイトール・グリグリーノ・デソウザ国連大学学長は述べている。「環境関連の諸問題は、多くの場合、企業がその原因を作っている。これを解決するには企業が中心的な役割を果たさなければならない」「産業界が二十一世紀に生き残るには、製造過程の再設計、再生可能な原材料の優先的活用、さらに最終的には排出物ゼロを目標としなければならず、このことを未来のトレンドとして認識できる企業こそが勝者たりうる。
レースに乗り遅れた企業は脱落する。
このゼロ・エミッション構想は一見高邁な理想を掲げているように見えますが、企業・産業の生き残り、つまりは資本主義の生き残りを至上命題としているのです。
「民衆とこの地上のいきとしいけるもの幸せのために」という思想は一つも見当たらないのです。そしてゼロ・エミッションの製造工程を誰が管理・監督するのか、それはこの文脈でゆけば企業・資本家です。労
働者・民衆が民主的に管理・監督するのでなければ心底信用する気持ちに慣れません。しかし、資本家側の主張するものはすべて評価に値しないと、そう言っているわけではありません。最近「呼び戻される宇沢弘文」という文字をどこかで見かけました。   (つづく)

コラム

「Go Toキャンペーン」

 相変わらず、連日のトップニュースは新型コロナウィルス感染症関連だ。いったん、感染者数が減ったこと、これ以上自粛していたら経済が持たないことなどを主な理由により、非常事態宣言は打ち切られ、学校なども再開されていった。しかし、人間が思うようにはウイルスはじっとしていてくれない。
 国交省が七月二二日から「Go Toキャンペーン」を開始しようとしていたが、東京都の感染者数が四月のピーク時を超え始めたことを受けて、東京都を除外することを七月一六日に発表した。
 この時、母親の介護の関係で静岡県の実家に帰っていた。静岡の各テレビで、この問題を大きく扱っていた。このキャンペーンから東京都民を除くことが、静岡県の観光地に与える影響がとても大きいことだ。県外からの観光客のほとんどが東京都民で、キャンセルが相次いだり、極端に客が減ったらたいへんだというものだ。そもそも、コロナ感染が終息したわけではなく、明らかに拡大しているこの時期に、旅行の拡大で人の動きを拡大させることを見切り発車することの無謀さ・無策さに対する批判の解説も行われていた。
 キャンペーンの中身は「国内旅行の半分額相当を政府が支援する。一人二万円までとされているものの、宿泊日数や使用回数に制限はない。今年度の一次補正に盛り込まれた予算は一兆六七九四億円」という大盤振る舞いだ。大手旅行代理店や業界団体でつくる「ツーリズム産業共同提案体」に委託し、その費用は一八九五億円にもなる。
 同じ一次補正で、感染拡大防止策や医療体制の整備に配分されたのは約六千七百億円だ。コロナ禍で病院経営が立ち行かなくなり、看護師などの待遇を下げようとしていると伝えられているさなかのことだ。
 その政策に対する人々の評価が、朝日新聞が七月一八、一九日に行った電話による世論調査の結果に出ている。
 政府の観光支援策「GO Toトラベル」を七月二二日から始めることに、七四%が「反対」と答えた。「賛成」は一九%だった。開始時期や対象地域を決めるまでの安倍政権の一連の対応も「評価しない」が七四%を占めた。安倍内閣の支持率は三三%(前回6月調査は31%)で、不支持率は五〇%(同52%)だった。
 安倍政権のコロナ感染症対策にも明らかなように、政策遂行能力のなさ、人々の生活や命を救わないあり方が誰にも分かるように出てきた。そしてここにきて、別の問題も大きく浮上してきている。
 東京オリンピック・パラリンピックを何としてでも開催しようとしている。どう見ても日本のみならず世界のコロナ感染は収まらず、巨大なスポーツイベントをやれる状況にない。当初簡素化して七〇〇〇億円とした開催費用は三兆円に膨らみ、さらに延期によって三〇〇〇億円が必要だと言われる。
 JR東海のリニア中央新幹線は静岡県工区の工事ができず、二〇二七年開業が絶望的だ。その工事費は七兆円。
 辺野古米軍基地建設も大浦湾の埋め立てがそのままではできず、設計変更を余儀なくされ、工事は三倍の九〇〇〇億円(県の予測では二兆円とも)、設計変更しても工事は完成できないと言われている。ムダな巨大事業をやめろ。       (滝)




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