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    かけはし2020年8月10日号

六ケ所再処理工場は廃止だ、廃止!


混迷深めるエネルギー基本政策

原発に固執する政策の破綻

建設期間が六倍に

 原子力規制委員会は七月二九日の定例会議で、六ヶ所再処理工場の事業変更許可申請に対し、新規制基準に適合すると判断して許可した。
 再処理工場は「準国産エネルギー」として位置付ける国の原子力政策の要の一つとされ、一九九七年完成をめざし、九三年に着工された。トラブルや東日本大震災の影響で、日本原燃はこれまで完成時期を二四回延期している。「二一年上半期(四〜九月)完成」が二四目回の延期だ。当初四年間で完成する計画が、着工から現在の完成予定は二四年間と六倍になった。
 翌三〇日公開された日本原燃の定例社長記者懇談会挨拶概要≠ナは、「次のステップである設工認の申請、審査となりますが、再処理工場は設備の数が多いため、更田委員長からも、設備の類型化による審査の効率化と、そのための規制庁との意思疎通を求められており、しっかりコミュニケーションを図り、設工認の審査に臨んでまいります。(中略)今後ひと月をかけて、改めて各工事の物量、工程の詰めの精査をして、全体工程を決定したいと考えております」と、今月中にも完成時期までの工程が公表される見通しだ。
 社長はこの記者懇談会に先立ち、六ケ所村役場と青森県庁を訪ねてこれらの説明を行った。村と県は「四月か九月」でも税収が大きく変わる。この八月中にも完成時期が「何月」まで明らかにされる。それは二五回目の延期となるかもしれない。

福島第1を上まわる
トリチウム海洋放出

 未完成とはいえ、六ケ所再処理工場は〇六年三月に開始したアクティブ試験で、約四二五トンの使用済み燃料を再処理し、約六六五八キロのプルトニウム製品(ウランとの混合酸化物の重量)を生産した。原子力委員会の年次報告「プルトニウム貯蔵量約三六〇三キロ」がほぼ対応する計算だ。また、ガラス固化のトラブルが重なり、処理できていない高レベル廃液約二二三m3が強制冷却が必要な不安定な状態で保管されている。
WEBサイト「核情報」の集計では、この試験中の〇六〜〇八年度のトリチウムの海洋放出量は二一五〇兆ベクレルで、福島第一原発タンク保管総量八六〇兆ベクレルの二・五倍となる。六ケ所再処理工場がフル稼働したと仮定すると、年間八〇〇トンの使用済み燃料を再処理し、トリチウム海洋放出の年間管理目標値は九七〇〇兆ベクレルで、福島第一の貯蔵量の一〇倍を超える量の放出が許可されている。
規制委員会は今回の事業変更許可申請に対する合格証とも言える「審査書」案について、五月一四日から三〇日間の「科学的・技術的意見の募集」(パブリックコメント)を行い、延べ七六五件の意見が寄せられた。トリチウムの放出量や被曝についての審査が欠落しているとの意見に対し、今回以前の申請で許可されてた事案として事実上取り合わなかった。もしも六ヶ所再処理工場が運転開始(もしくは試験再開)され、トリチウムの海洋放出を実施することが明らかになれば、現在福島第一からの海洋放出に反対する各地の漁協や自治体から抗議が集中するばかりか、三陸をはじめ広範囲の一次産業品への忌避、近隣住民への差別などが危惧される。

核燃料サイクル施設の
抜本的見直しが必要!

 規制委員会は適合の判断について、梶山弘志経済産業大臣に「エネルギー基本計画と整合性」についての意見を求め「整合する」との回答をえた。事故の確率を抑える工学的な審査を行う規制委員会の立場から、再処理工場の政策的課題に責任をもつことを回避するためだ。
梶山大臣は六月三〇日に青森県庁を訪問、三村申吾知事は国が県と原子力政策を審議する「核燃料サイクル協議会」を開催するよう求めた。大臣はむつに移動し原子力関連施設が立地する四市町村長との会談を行った。
核燃料サイクル施設建設の前提となる海洋調査に六ケ所村の泊漁協が最後まで反対した。臨時総会で強行採決されたのがチェルノブイリ事故直前の一九八六年三月。事故を境に「反核燃」の声が青森県内の都市から農村地域に広がり、国政選挙では反対派が連勝した。この時期からのスローガンが「青森を核のゴミ捨て場にするな」であった。九五年の県知事選は保守分裂に猪年となり、木村守男が現職を破った。木村知事以降の県政は「地元の了解なしに青森を核のゴミ捨て場にさせない」姿勢を貫くようになる。
青森県は核燃料サイクル施設が完成せず、核のゴミ捨て場化することへの警戒から、「核燃料サイクル協議会」の開催を求めてきた。国は「ゴミ捨て場にはしない」ことを明文化することを避けた。「口約束」に拘束力をもたせるために協議会を設置させた。協議会を設置しても青森県は実力行使を行った。一九九八年三月、三回目の返還ガラス固化体の輸送船の接岸を知事権限で許可せず、二日間立ち往生させた。青森県の要求は「核燃料サイクル施設を完成させよ」「国は核燃料サイクル政策を堅持せよ」へと転換した。

いまだ候補地も決め
られぬ最終処分場


二〇一一年の福島第一原発事故後、民主党政権は「エネルギー基本計画」を棚上げし、翌一二年九月に「革新的エネルギー・環境戦略」をまとめた。核燃料サイクル政策では「引き続き従来の方針に従い再処理事業に取り組みながら、今後、政府として青森県をはじめとする関係自治体や国際社会とコミュニケーションを図りつつ、責任を持って議論する」と現状維持する内容だ。青森県は見直し内容によっては「実力行使を行う」と民主党政権に通告した結果の現状維持だった。当時、今井尚哉首相首席補佐官は資源エネルギー庁次長として立ち回り、「戦略」を閣議決定から閣議報告へ格下げさせた。
「核燃料サイクル協議会」での要求は何か。
現行の「エネルギー基本計画」は一八年七月の閣議決定、三年ごとの改定を基本としており、改定の準備がはじまっている。要求はまず、次期「基本計画」での核燃料サイクル政策の堅持だろう。再処理工場の完成と操業開始に向け、国が具体的にかかわるよう要請するだろう。地元への支援強化では「風評被害」対策も加わるかもしれない。
青森県は一九九五年、五〇年の期限付きで返還ガラス固化体の一時保管を受け入れた。最初の受け入れからちょうど期限の半分を超えた。一方、最終処分場は候補地すら決まらない。候補地に名乗り出ても調査に二〇年、建設では先行するフィンランドでは七年を要した。最短で二七年後としても、国は青森との約束期限は超過した状態だといえるだろう。

次期エネルギー基本計画をめぐる攻防


七月三日、梶山大臣は「二〇三〇年までに非効率な石炭火力発電のフェードアウトを確実にする」と発表した。「基本計画」では三〇年度の電源構成中、石炭火力の比率を二六%とすることを目指すが、最新実績ではこれを八ポイント上回る三二%だ。計画の比率は二〇一五年計画で決定した値で、一八年計画での変更はなかった。この計画値の非現実性が明らかになりつつある。
三二%のうち、非効率は半分の一六%で半分を占め、高効率は一三%、自家発・自家消費分が三%ある。基数では高効率が二六基、低効率が一一四基が稼働中で、低効率のうち約一〇〇基を休廃止させようという内容。高効率一三%に建設中の「最新鋭」で七%、それに残さざるをえない非効率を加えて二六%にしようという調整を開始している。実態は石炭温存だ。
石炭の比率をみかけで下げる他の方法がある。原発の運転期限延長を含んだ再稼働だ。
四〇年を超える運転を認められた原発は関西電力の三基(高浜一号・二号と美浜三号)と日本原電東海第二の四基だ。北海道電力は七月の株主総会後の記者会見で泊一号と二号の延長を検討すると述べた。九州電力は運転期限が四年後にせまった川内一号は「社内では何も決まっていない」「直近に取り組むべき課題」と、やはり今年の株主総会後に述べている。
六月二三日、茨城県議会では「東海第二原発の再稼働の賛否を問う県民投票条例案」が否決された。大井川和彦知事は議会後の取材に対し「県民投票か、県議会で決めるのか、アンケートを組み合わせたほうがいいのか、首長さんの意見を集約するのか。色んな選択肢の中で、いま『県民投票でいく』との決断にはない」(六月二八日朝日デジタル)と話した。東海村には一〇〇万Kw石炭火力二基が稼働中、六五万Kw一基が来年の運転開始予定だ。
七月一二日、過去最多七人の争いとなった鹿児島県知事選挙で、大井川茨城県知事と経産省同期入省の塩田康一が当選した。塩田新知事はこの川内原発運転延長の是非を巡り、「県民投票を視野に入れる」公約を掲げ、三反園前知事や伊藤元知事らを破った。九電さえ検討を始めていなかった運転延長を公約にすることで一歩抜け出したのかもしれない。
次期「エネルギー基本計画」の取りまとめはいつか。自公政権が続くと仮定すれば、来年七月二二日に任期となる東京都議の改選前だろう。福島事故から一〇年となるころに審議の概要、取りまとめの方向ばかりではなく、その先の一〇年の危機の深度も見えだすのではないか。
(八月二日 斉藤浩二)

8.1

国家による「慰霊・追悼」を許すな

コロナ危機と天皇制

反「靖国」行動が討論集会


「コロナ危機」と
ナルヒト天皇制


 八月一日、国家による「慰霊・追悼」を許すな8・15反「靖国」行動は、日本キリスト教会館で「コロナ危機と天皇制」をテーマに集会を行った。
 毎年反「靖国」行動は、八月一五日に武道館で行われる全国戦没者追悼式に天皇や安倍首相が出席し追悼を示してきたが、この国家行為を問題としてきた。すなわち、「国家による追悼は、被害者への謝罪や悔やみ、平和を誓うものなどではなく現在の日本社会の『豊かさ』が、『尊い犠牲』と一括りにされた『戦没者』によってあたかも生み出されたかのように讃えてみせることで、国家が殺した事実を覆い隠す行為でしかありません。そうすることによって、次に来る有事(戦争)に、『国のために戦う国民』を作り出すという国の狙いもあるはずです」と批判し、天皇と戦争のための靖国神社に向けて抗議デモを呼びかけてきた。
 今年は、新型コロナウイルス感染が拡大するなか安倍政権の人命軽視・切捨て、新自由主義的医療政策を許さず、またその犯罪を覆い隠すための装置である天皇制民衆統合によってからめとろうとする策動を暴き、抗議の一環として8・15反「靖国」行動を取り組む。
 皇室動向だが、コロナ危機下において「迷走」を続けている。天皇は、毎年恒例の植樹祭、国体、全国豊かな海づくり大会が延期となり、出席はすべて見送りとなった。天皇・皇后カップルを押し出した「令和流」天皇を演出してきたが、その宣伝活動の任務が中途半端に頓挫しつつある。右派らは「国難とも言える状況でビデオメッセージのような強い方法で発信してもいいはずだ」と言い出し、天皇の「お言葉」を引き出すことによって安倍政権の改憲攻撃と連動した天皇の政治利用をねらっている。
 宮内庁は、とりあえずHPで「新型コロナウィルスに関する(天皇の)ご発言」コーナーを設けて、この間のコロナ関連の「進講」「接見」を掲載している。被災地に駆けつけていた「平成」天皇の演出から、いかに「令和」天皇をでっち上げていくかに「苦慮」する虚像の公然化だ。コロナ危機下、8・15をめぐって右派動向も含めてどのような天皇制を押し出してくるのか警戒していかなければならない。集会はそのための前段学習として位置づけ設定した。

「慈愛・慈恵」
天皇制を問う


北村小夜さん(教育者)は、「コロナ危機と慈愛・慈恵天皇制」というテーマで次のように問題提起した。
冒頭、「『日の丸・君が代』にそそのかされて軍国少女となり、熱心に戦争し、戦争が終わったら、天皇のために自分の青春を費やしたなと思い、これを取り返すために様々な取り組みをしてきた。まだ取り返せていない。戦争体験を伝えることは難しい」と現在の出発点を踏まえ、その現われとして「戦争中、芸術、音楽などを通して人々を戦争動員するために非常に役立っていた」事例を通して浮き彫りにした。
その一つとして藤田嗣治の戦争画「アッツ島玉砕」(1943)をとり上げた。北村さんは、「この絵に対して『反戦の意図を見た』(岩崎孝)と評価している人がいる。また、九条の会呼びかけ人だった加藤周一も、『画面には戦争賛美も、軍人の英雄化も、戦意昂揚の気配さえもない。戦場の極端な悲惨さを、まさに迫真的に描き出したのである』などと言っている。これらはウソだ。この絵の前で私も含めて多くの人が仇を討たなければならないと決意した。そのために画かされた絵だ。戦争実態を検証することが問われているのに戦争画の多くが、いまだに隠されたままだ。まさに戦争責任をとらない日本国の姿勢でもある」と批判した。
さらに「戦争中、陸軍省は戦意高揚のスローガンとして『撃ちてし止まん』(討って滅ぼしてやる)をプロパガンダとして広げた。その政策に便乗して金儲けしようとした企業は、広告にこぞって『撃ちてし止まん』のスローガンを取り入れた。人々の意識にこのスローガンを浸透させ、戦争に動員されていった」状況を現在の天皇賛美状況の危険性と同一性について比較検証し、今後の反天皇・反『日の丸・君が代』、改憲・戦争反対運動の課題へと切り込んだ。

「コロナ対策」と
現代医療の問題


片岡万里子さん(医療労働運動研究会)は、「『新型コロナ感染対策』から現代医療を考える」というアプローチで次のように分析、批判した。
「PCR検査抑制に見る現代医療は社会防衛のための感染症対策と人権無視・人命軽視に貫かれている。とりわけ「行政検査」とは、「公衆衛生」として国家が感染症拡大による国力の損傷を最小限に抑えることを目的にした人民管理・感染症患者あらいだし・隔離のための検査であり、医療における無症状のうちに感染を診断して重症化・死亡を防止する医療とはその目的において全く異なる。保健所や衛生研究所は、厚生省を頂点にした人民管理の末端行政機関だ」と批判した。
また、「そもそも医療に貫く優生思想と『忠良なる臣民(健民)』としての『自己責任論』が構築されてきた。それは医療費抑制策として医療機関の再編合理化による病床数削減を強め、高齢者の医療からの排除、ベッド回転率・入院期間の短縮、手術検査など高度専門化を押し進めてきた。それを『医療介護確保推進法』(医療法や介護保険法を、新自由主義経済に見合った体制へ全面再編した)へと集約し、国公立病院の再編合理化を展開してきた。つまり、『医療崩壊』は感染症以前から国家政策として作られ、患者選別・切捨ての『日常化』だ。コロナ感染症医療の中で選別・切り捨てがより強化された」状況を医療現場の実態報告も含めてリアルに指弾した。
まとめとして「感染症対策のための補正予算が国会で『野党の協力も得て』成立した。しかし厚労省予算は総額六六九五億円に過ぎず、一方、収束後の経済政策の予算は一兆七〇〇〇億円だ。コロナがあぶりだした反人民的医療を見据え差別・抹殺医療許さず、健康と命の権利を共に闘いとろう。天皇制のもとで叩きこまれた優生思想・健民意識と対峙し、団結して自力で医療を勝ち取ることだ」と強調した。
最後に主催者は、8・15反「靖国」デモ(八月一五日〈土〉/在日本韓国YMCA9階/一五:〇〇集合)への参加を呼びかけた。        (Y)




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