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    かけはし2020年8月31日号

解決できない難題が噴出


リニア工事

減水・湧水・水位・水量、エコパーク

いのちの水位を守りぬこう

静岡

 【静岡】リニアトンネル工事をめぐる問題がいっきに噴き出している。よく知られている毎秒二トンの大井川の減量と湧水を全量戻すとしていたJR東海の見解が揺らぎ、今では戻すことができないというのだ。
 その最大の原因が山梨県境付近にある大規模な断層の存在であり、またこれに連なる幅八〇〇メートルに及ぶ破砕帯の存在にある。JR東海の山梨県側からの工事では一〇カ月間で約二一〇万トンもの湧水が山梨県側へ流出すると予想しているが、この予測には何の根拠もない。
 そもそもこの工事区間は超難工事区間とされており、一〇カ月かかるのか一年かかるのかは分かっていない。かつて旧国鉄が昭和初期、丹奈トンネル工事で丹奈盆地の水田とワサビ田が完全に抜けたという経験がある。それは琵琶湖の水の三つ分に相当するという(丹奈トンネルは火山地帯なので南アルプスとは山体の性質は異なるが)。
 しかも、JR東海は静岡県が求めた垂直ボーリングを一切行っていない。このため南アルプスの地質などを知るデータが足りないのだ。

水位の大幅低下
見通しは立たず


そして最近になってJR東海は南アルプスの尾根付近(赤石岳)の水位が三〇〇メートルから最大四〇〇メートル下がると予測していることが分かった。ということは何を意味するのか。
既にここは六年前にエコパークに認定されているのだが、この水位の大幅な低下は付近の二つの池や高山植物群(お花畑)などに重大な影響を与えることになる。JR東海はこの予測で七〇%の生態系に影響を与える恐れがあるとしている。
大井川上流部は尾根近くから湧水があり、沢に流れ落ちている。その上、この山体は隆起を続けているとともに、きわめて軟弱な地盤で成り立っているため、大井川上流部の林道が絶えず崩落を繰り返している。昨年の台風19号で、東俣線の林道は完全に塞がれてしまっている。ここは工事用道路として、整備しなければならないが、これに何カ月を要するか見通しは全く立っていない。
だから、問題となっている準備工事か本体工事かの論議のある千石付近のヤードには人も機械も入っていないし、JR東海によればこのヤードの工事面積が五ヘクタールを超える改変工事はその安全性などを県の審議会にかける必要があるとしているので、千石のヤード工事の目途は立っていない。

影響は「軽微」
というウソ! 


その上、今度は中下流域の水量について国交省の有識者会議は一方的に「軽微」と決めつけようとしているが、依然地元の反発はきわめて強いのである。大井川伏流水について、JR東海は年間の平均値を出しているが、毎年のように大井川の取水制限を行っているので自然条件の変化は必ず伏流水にも影響が出てくる。中下流域の島田、藤枝、焼津には名の知れた大小の酒蔵が五社程度あるからだ。
しかも長島ダムから取水する八市二町の自治体と水利権者(農業、工業、生活)にとって、六二万人の生命にかかわる大問題なのだ。かの牧之原台地の茶園は全面的に大井川の水に頼っており、掛川の上水道に至ってはその九割というのである。
このように重大かつ決定的な水と環境保全上のエコパーク設定に支障が生ずる恐れは各所に存在している。そのひとつに、つばくろ沢に予定されている残土置場の問題がある。ここにトンネル掘削残土三六〇万立方メートルを置き、植林などを行うので景観に問題は起きないとJR東海は言う。果たして、そうか。そして、コロナ禍の下でのリニアの必要性合理性が問われている。

島田、掛川で
市民の学習会


「命の水を守ろう!」と開かれた島田で七〇人、掛川で九〇人近くが集まった(主催はリニアを考える静岡県ネットワーク)。
そこでは多くの市民が発言するとともに県ネットが準備している「リニア工事差止訴訟」についても報告があった。そして、この九月五日には静岡市でも同様の集会を予定している。このように、市民の強い意思と意見、そして訴訟に参加を表明した利水当事者が原告となれば大きな力、インパクトを持つことになるだろう。攻防が続く。 (S)

2027リニア開業問題

ただちに工事中止し、白紙撤回を
  南アルプスを破壊し、ムダな工事


大井川が枯れて
しまう危険性も


 リニア中央新幹線はJR東海の単独事業で、東京から名古屋までの二八六kmを四〇分で結ぶとしている。二〇一四年に着工し、現在各地で工事中、二〇二七年に開業を予定している。
 しかし、静岡県と地元治水組合が南アルプスのトンネル工事は大井川用水を枯渇させると反対しているために、工事がストップしている。このままだと、二〇二七年完成を断念、延長しなくてはならなくなっている。そこで、JR東海社長や国交省事務次官が直接、川勝静岡県知事に談判し、何としても静岡工区の工事を開始したいと、攻防が激しさを増している。
 JR東海は大井川の水の枯渇に対して、最初はあいまいな答えをしていたが、県側の強硬な反対に、「全量をくみ上げ、大井川に戻す」とまで、できもしない「公約」まで公言する始末だ。大井川下流流域住民はかつて、ダム建設によって水量が減りたいへんな被害を受けたことがあり、「甘い」約束を飲むわけにはいかない。地元市町村の首長たちはこぞって反対を表明している。地元静岡のマスコミでは毎日このニュースがトップに挙げられている。
 そもそもJR東海によるリニア新幹線は建設費に九兆円もかかる。東海道新幹線がすでにあるのになぜ新たにリニアが必要なのか、この根本的な問題についてJR東海は答えていない。開業しても赤字をJR東海も認めているくらいだ。ましてや、コロナ禍で新幹線は大赤字。ムダな公共事業の典型がリニア新幹線だ。トンネル工事に対して、大手ゼネコン四社による不正受注と談合が明らかになり刑事事件に問われた。
 そして、リニア新幹線は南アルプスの破壊・水の枯渇問題や電磁波問題、超高速運転の技術問題など、大きな問題を抱えている。ドイツでは転覆事故をきっかけにリニアを中止した。中国でも一旦導入したものの現在はごく短区間のみ運行している。リニアを本格的に推進しているのは日本だけだ。
 二〇二〇年一月一九日、川崎市・麻生市民会館で「南アルプスにリニアはいらない 巨大土木事業からの自然被害を訴える全国集会」で、県環境保全連絡会議地質構造・水資源部会委員の一員でもある塩坂邦雄さん(工学博士、技術士、特別上級技術者)は「褶曲(しゅうきょく)山脈の南アルプスはユーラシアプレートとフィリピン海プレートのせめぎ合いによって形成された。地質構造は、途中から直角に折れ曲がったり、新しい地層と古い地層がひっくりかえっていたりと、大変複雑だ。うかつに工事を進めれば、地下水が一気に噴出し、生態系が崩れてしまい、大井川流域が砂漠化する」と警鐘を乱打した。
 リニア新幹線工事は南アルプスに直径三〇mの竪穴を五〜一〇キロに一つずつ掘る。そこから出る残土問題をどこに捨てるのかも決まっていない。南アルプスは一年間に四〜五o隆起して山が崩れている。リニアはミリ単位の精度が必要であり、ずれると危ないのだ。
 
リニア中央新
幹線めぐって


 六月二六日にJR東海金子社長と川勝知事が初めてトップ会談に臨んだが、物別れに終わった。国交省も早期の工事再開を求め、藤田耕三事務次官が七月一〇日、知事に面会した。
 七月一五日、JR東海の金子社長はリニア中央新幹線について「二〇二七年中の開業は難しい」としたうえで、「計画を変更するなら、次はいつになるのかという話とセットになる」と述べた。開業時期など計画を変えるには、事業を認可した国土交通省との調整が必要で、当面は延期に向けた手続きは見送る方針だ。
 JR東海金子社長は二〇二七年の東京・品川―名古屋開業が遅れると、二〇三七年を目指す大阪への延伸も「影響を懸念している」と述べた。一方、静岡県を迂回するなどのルート変更については「いろいろな手続きを積み重ねて(現在のルートを)決めたので、あり得ない」とした。

川勝県知事へ
ゆさぶり激化


JR東海や国交省が作業員宿舎の建設の許可を、これは本体工事とは関係ないので許可してほしいとの要請に対して、川勝知事は作業所の建設は本体工事につながるもので、許可できないと拒否している。
そして、作業宿舎の建設が台風や豪雨によって出来ない状態であることを改めて確認するために、その現場の視察に行った。
二〇一九年一〇月一二日から一三日の台風19号によって、静岡県区間のリニア工事の東俣林道や西俣ヤードの大きな被害が出た。さらに、六月三〇日から続く大雨で被害が出ていた。「豪雨で作業用道路崩落。崩土や冠水など四カ所の被害を確認し、そのうち一カ所は路肩が崩落して復旧に数カ月間かかる」「千石ヤードの作業員用宿舎の水道施設が使えない」(静岡新聞7月10日)。「JRによると奥の作業拠点ではあわせて一五〇人が泊まり込みで作業していましたが、七月一二日までにはヘリコプターなどを使い全員が下山しました」。
七月二二日、東京都や大阪府など沿線九都道府県で構成する建設促進期成同盟会(会長大村愛知県知事)が一日も早い静岡工区の着工を求める声明を出し、静岡県に圧力をかけた。リニア中央新幹線を大阪万博やカジノなど巨大利権に結び付けようとする動きだ。
来年の静岡県知事選があり、県議会多数派である自民党の川勝知事への揺さぶりはいっそう激しくなっていくだろう。川勝知事もリニア新幹線そのものには反対していないという立場だ。静岡県だけではなく、山梨県・長野県・東京・神奈川・名古屋・大阪などで、差し止め訴訟など住民運動が起きている。地域からの運動こそがリニア新幹線の息の根をとめられるのかどうかがかかっている。イージス・アショアを止めた秋田に続け。そして、辺野古米軍基地建設反対運動とも連携しながら、巨大開発を止めよう。     (M)

 



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