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    かけはし2020年9月7日号

労働者・市民の反転攻勢を


安倍首相の辞任を新しい闘いのステップに

改憲阻止・沖縄の闘いと共に

コロナ被害の深刻化の中で

 八月二八日、安倍晋三首相は首相官邸で記者会見を行い辞任を表明した。持病の潰瘍性大腸炎の再発を「辞任の理由」としているが、歴代最長政権の樹立をレガシーに、コロナ事態で火だるまになる前に政権を投げ出して逃げ出したというのが本当の理由だろう。コロナウイルスの影響で四〜六月期のGDPが年率換算で二七・八%のマイナスという数字は、たしかにお腹も痛くなるほどの衝撃だろう。
 コロナパンデミックと危機の前に安倍が描いていたストーリーは、東京オリ・パラの成功と八月二四日の連続首相在任記録を樹立して勇退する。あるいは二一年一〇月に任期満了になる衆院選を勝ち抜いて、自民党総裁四選を実現して憲法改正を実現するというものだったろう。
 当初、安倍政権や資本家階級に限らずエコノミストのほとんどが、コロナパンデミックは四〜五月の二カ月間でほぼ終息し、経済活動も穏やかに回復して、二一年からはGDPもプラスに急上昇するだろうと楽観主義的に予想していた。その根拠となったのはコロナ感染拡大が先行した中国湖北省の武漢ロックダウンが四月八日に七六日ぶりに解除されたことや、宗教団体による集団感染が発生した韓国での感染鎮静化を目撃していたからであった。しかしその予想はまったく的中しなかった。コロナパンデミックはその収束の目途も絶たないまま全世界に拡大したのであった。日本でも第二波が猛威を振るっている。

資本主義の歴史的危機

 東京商工リサーチの発表によると、一九年度の企業倒産は八三八三件(前年度比二〇%のマイナス)で、自主廃業は倒産件数の約五倍にあたる四万三三四八件(同二五%のプラス)だった。現在のコロナ流行の長期化という状況を考えると、製造、宿泊、飲食、小売り、旅行運送などで、倒産と自主廃業そして人員削減による合理化が爆発的に拡大して、大失業時代の到来ということになるだろう。現在の時点で完全失業率はさほど上昇していないが、失業予備軍である「休業者」数は四月の時点で五九七万人(前年同月一七七万人)と、過去最多を記録した(総務省発表)。この数は全就労者の約一〇%になる。
すでに自動車、電機などの大手製造業でも非正規や外国人移住労働者への雇止めによる解雇が拡大しているが、正規職の整理・解雇の拡大も中小・零細企業に限らず予想される。航空大手のJAL・ANAやJR各社は四〜六月期決算で歴史的な巨大赤字を計上している。自動車も九カ月連続で国内売り上げが前年度を下回るなど大苦戦している。トヨタは四〜六月期の決算で予定していた八一〇〇億円の利益が吹き飛んだ。航空大手は来年度の新規採用中止を発表するなど、社員の一時帰休や経費削減と構造調整が進んでいる。企業倒産の拡大と大型倒産の発生は、金融機関の不良債権を拡大させて金融危機に発展することになるだろう。
安倍晋三はこうした日本資本主義の歴史的な危機に立ち向かうことができずに、あるいはその能力が自身にないことを自覚したからか、政権を投げ出して逃亡したのである。
第二次安倍政権の最大の課題は「デフレからの脱却」であり、そのために金融緩和と財政出動による「アベノミクス」という景気刺激政策であった。安倍政権は毎年のようにスローガン的に看板政策を打ち出したが、そのほとんどが看板倒れに終わったし、そのことのまともな検証もなされることはなかった。要は「やっている気」をパフォーマンスすることだった。しかしアベノミクスは失敗した。安倍政権が残したのは、二度の消費税増税(五%から一〇%)と国債発行残高の約二六〇兆円増加、そして法人税とカネ持ち所得減税だった。
アベノマスクの全国配布と全国一律の一斉休校要請は、安倍と経産省出身の秘書官ら側近だけで決定したことであった。これは二月上旬まで開催されていた札幌雪まつりの影響で、最初に新型コロナウイルスが感染拡大した北海道知事の実施した政策の完全な「猿まね」だった。こんな愚策しか思いつかない。それこそが危機を目の前にした安倍政治の現実だったのである。

安倍の政策は破綻の連続


第二次安倍政権が力を入れてきた外交も総崩れとなったと言わなければならない。トランプ政権が仕掛けた米中貿易戦争と新冷戦のはざまで、地政学的に板挟みとなったのは日本と韓国であった。ここでの安倍外交はトランプのご機嫌伺いをしながら、一方では中国とは本気でケンカしたくないというものであった。トランプと安倍の関係は、安倍にゴマをする政治家や官僚の関係と重なる。こうして安倍はトランプに大量の武器の押し売りをされてしまうが、河野防衛相がイージス・アショアを「返品」することでどうにかメンツを保つことになる。中国との関係は米中対立が深刻化するなかで、日本との関係を悪化させたくない中国の対日政策に救われた格好になっている。韓国は経済関係や朝鮮との関係も考慮しながら、またTHAADミサイルの配備をめぐって中国から受けた手痛い報復措置を配慮しながら、より積極的な対中政策を打ち出している。
安倍外交は北方領土をめぐるロシアとの外交、原発と石炭火力発電を世界的に売り込む外交、朝鮮の拉致問題解決、軍隊「慰安婦」や徴用工問題での韓国との対立の激化など、ことごとく失敗している。拉致問題などはそもそも解決する気がなかったのだろう。また韓国との関係も「和解の道」を探ることなく対立を煽っている。その背景にあるのは「日本はアジアのNO1でなければならない」とする時代遅れのナショナリズムである。GDPではとおの昔に中国に追い抜かれ、一人当たりのGDPも半導体やスマホの開発・製造で成長してきた韓国と台湾に今にも追いつかれようとしている。近隣諸国との友好的な関係を築こうとしてこなかった安倍外交は、結局のところトランプの子分として「手駒」になる運命だったのだ。
結局、第二次安倍長期政権が残したものは、特定秘密保護法と集団的自衛権の行使を可能とする安全保障関連法ということになる。これが第二次安倍政権のレガシーだということができる。しかしこれらは米帝国主義が日本帝国主義に突き付けていた要求であった。その意味では米帝国主義の外交成果なのである。

新たな「選挙ブロック」を

 最後に第二次安倍政権を歴代最長政権としてしまった最大の要因について触れなければならないだろう。それは民主党政権(〇九〜一二年)に対する「国民的幻滅」の影響が大きいということである。沖縄新基地問題や日米地位協定に対する弱腰政策、福島原発過酷事故への対応と原発再稼働などの原発維持政策、東日本大震災の影響がままならないなかでの消費税増税の決定など「コンクリートから人」と自らが掲げた旗をあっけなく降ろしてしまった。こうして政権交代による自民党政治に替わる「新しい政治」への希望とその受け皿は「幻想」となってしまったのである。
そしてまだ続きがある。一七年の衆院選を前にして小池都知事の「希望の党」入りをめぐって、安全保障関連法を擁護する内容が含まれた「踏み絵」を踏んだのが国民民主党に結集する者たちだ。この者たちはこの時点でバリケードの反対側に完全に移行したのである。無所属としてグループを作っている野田や岡田らも政治的には国民民主党に近いということができる。
次期衆院選に向けて、立憲民主党の枝野らが進める旧民主党系再結集の動きは結局、彼らも含めてまったくその政治体質が変わっていないということを端的に表している。国民民主党を引き込むために「連合」を仲介として使ったが、安倍政権による三年間の「官製春闘」の成果なのかわからないが、連合組合員の六割以上が自民党に投票しているのが現状である。今や連合は自民党の大票田なのだ。立憲民主党は「原発ゼロ」を政策として明記したが、旧同盟系から強い反発があり、またリベラル色を消すために「中道政権」をという声まで上がっている。これではどちらがどちらに飲み込まれるのかわからない。結局は「政策より数」というところに集約されてしまうだろう。「夢よもう一度」とどちらを向いて政治をしているのかわからない立憲民主党も、九月一六日の結党大会でバリケードの向こう側に行ってしまうのだろう。それは立憲民主党のこれまでのリベラル支持者を失うことを意味している。結党大会は旧民主党系の没落の始まりとなるだろう。
しかしこうした動きに対して世論は冷ややかである。八月二二日の「毎日新聞」の世論調査によると、旧民主党の再結集に「期待する」が一七%で「期待しない」が六八%だった。共産党、社民党、新社、緑そして「れいわ」も引き込んだ新たな野党共闘と労働者・市民による選挙ブロックをめざそう。(高松竜二)



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