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    かけはし2020年9月14日号

核のゴミ捨て場を作るな


北海道寿都町が「応募」の動き

住民の力で絶対阻止を

最終処分場などいらない

 【札幌】八月一二日、後志(しりべし)管内寿都町(すっつちょう)が、国が進める原発から出る高レベル放射性物質(核のごみ)の最終処分場選定の第一段階となる文献調査への応募を検討していることが分かった。当初、町長は九月中に応募を最終判断する予定だったが、突然の発表に対し町内外の素早い抗議が巻き起こり、判断を一〇月以降に先送りする考えを明らかにした。

「文献調査」に
応じてはならぬ


寿都町は札幌市からも函館市からも一五〇キロ前後の北海道西部、日本海側に位置する漁業が主要産業の人口二九〇〇人余りの町である。泊原子力発電所から海沿いに約五〇キロ、町内の歌棄(うたすつ)付近では約三〇キロ、六ケ所村からは距離にして約二七〇キロである。
町の東部が原発から概ね三〇キロということで、原子力災害対策指針により事故時における「緊急防護措置を準備する区域(通称UPZ)」になっている。
そんな事情もあり、町のホームページには日本原子力文化財団などのサイトがリンクしている。同ページの防災・緊急情報の欄には二〇一七年に掲載された「弾道ミサイル落下時の行動について」つまりJアラートによる避難の仕方の説明がある。もし町が本気で今でも警戒し、町民の生命を守ろうとしているのであれば、危険な処分場の誘致につながる文献調査に応募しようとすることと避難の仕方には整合性はないだろう。
二〇二〇年度の町の一般会計予算は約五二億円、そのうち町税が二億円あまりとなっている。独自に風力発電所を建設・運営するなどして「稼ぐ行政」を進めてきたが、人口減による産業の衰退、さらにコロナ禍に襲われ基幹産業が打撃を受けた。
そんな中、文献調査に応じると国から最大二〇億円の交付金、次の概要調査に進めば最大七〇億円が加算される。
調査と誘致は別の話と町長は述べているが、まさにお金目当て、札束で頬を叩かれに行くようなものだ。交付金について国は「処分地選定に貢献する地域への敬意や感謝の念」と位置づけているが、それだけで済むとは思えない。

「核のゴミ」は
未来への危険


高レベル放射性廃棄物を通称「核のごみ」と呼んでいる。原発の使用済み核燃料からまだ使える部分を取り出した(再処理)後に残る放射能の極めて高い廃液で、ガラスと混ぜ固めた円柱形のガラス固化体にする。
国は一般の人が自然の放射線以外に受ける限度を一ミリシーベルトと定めているが、製造直後のガラス固化体の表面放射線量が一時間当たり約一五〇〇シーベルト、一五〇万倍の線量になり二〇秒浴びただけで一〇〇%の人が死ぬ量である。 
このため、ステンレス製容器に入れた固化体を特殊な粘土で包み、地下三〇〇メートルより深くに埋めることになっている。
固化体は高さ約一三〇センチ、直径約四〇センチ、重さ約五〇〇キロ。現時点でも全国の原発で大量の使用済み核燃料があり、固化体に換算すると、既に約二万六千本に相当すると言われている。
数の多さもさることながら、この放射能は人が近づいても安全とされるレベルまで下がるのに一〇万年かかり、遠い未来の世代まで残されることになる。
地層処分については、島村英紀(地震学)が著した『多発する人造地震 人間が引き起こす地震』(花伝社)が参考になる。シェールオイル・シェールガスの採掘、ダム建設、地下核実験、地熱利用やエネルギー問題「期待の星」の現場で次々と起きる謎の地震について解説した上で、著者は、二〇一六年から北海道・苫小牧沖で大規模におこなわれている「二酸化炭素回収貯留実験」(CCS)が、北海道胆振東部地震の引き金になった可能性を否定できないと指摘している。世界中で起きている人造地震(人為的な生産活動や開発によって図らずも引き起こされた地震)に警鐘を鳴らしている。
「科学的」という名のもとに、危険を増幅しながら怪しい経済優先の事業を「地層処分」という形で進めているのだ。

処分場選定の
手続きの問題点


処分場選定の手続きを定めた特定放射性廃棄物最終処分法は以下の手続きを踏むように定めている。まず文献調査(約二年)、概要調査(約四年)、精密調査(約一四年)、最終的に処分地を選定・施設建設(約一〇年)。同法にはそれぞれの段階に進む際に(計三回)所在地の知事と市町村長の意見を聴き、「十分に尊重しなければならない」と明記している。
また、処分事業を行う原子力発電環境整備機構(NUMO)は、知事や市町村長が反対する場合は「次の段階に進まない」と説明している。
しかし、二〇〇七年に高知県東洋町が国内で初めて応募した際、当時の知事は調査を認可しないように経済産業省に要請したが、経産省は認可した。文献調査の是非が問われる初期段階では知事の意見には限界があるということだ。
さらに、政府は二〇〇〇年に閣議決定した答弁書で、知事らが反対している状況下では「選定は行われない」と説明する一方、処分法の条文では「同意を得なければならない」とは書いていないとし、国の決定においては必ずしも知事の意見を「要件とするものではない」とも記した。すなわち、この二枚舌的答弁によると知事らが反対したとしても、その法的拘束力はないことになる。
処分地選定までに二〇年、処分場を建設してごみの搬入を始めるまでに一〇年。NUMOが過去に示した資料では、地元への経済効果が年間五〇〇億円を上回ると書かれていた。搬入を完了し処分場を閉鎖するまでに七〇年。文献調査からだと計一〇〇年かかることになる。政策決定をした責任を取るべき人々が一〇〇年後の姿を見届けることはない。

「核抜き条例」
の問題点は?


核抜き条例は「幌延深地層研究センター」の受け入れにあたり、二〇〇〇年に制定された、都道府県で唯一の条例である。核のごみを「持ち込ませない」とする当時の民主党と「慎重に対処する」という自民党の政治的妥協で作られたものであるため、明確な持ち込み禁止ではなく、強制力はなく実効性は事実上ない。
知事はこれまで泊原発の再稼働に同意するかはあいまいな姿勢だが、最終処分場建設には明確に反対している。
町民も道民も条例の重みを認識して明確に応募反対し、絶対に道内自治体を候補地にさせないという毅然とした態度を取るべきだ。

北海道が狙わ
れる理由は?


国や電力会社は以前から処分地として道内を有望視してきた。人口密度は東京都の一〇〇分の一、放射能が強く人が近づけない核のごみを埋めるには好都合。固化体を製造する六ケ所村から海上輸送するのにも便利だ。
処分場の候補地選定を進めるために二〇一七年に公表した「科学的特性マップ」。国は適地について「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」と回りくどく表現しているが、マップ作成のために新たな調査をしたわけでもなく、火山の半径一五キロ以内や活断層の周辺、地下資源のある場所などを不適地としたが、既存の文献にある地図を重ねただけである。
道内では陸地の面積の三割、沿岸部を中心に八六市町村にまたがる地域が最適とされた。もちろん寿都町は一部に活断層がかかるものの大部分が最適地である。
道内一七八市町村長に対する北海道新聞のアンケートによると、寿都町の応募検討への賛成はなく、七四人が反対した。回答者の多くが農業や観光など産業への影響を懸念していて、最多(四九人)の回答は「北海道全体で議論すべきだ」となっている。
また、多額の電源立地地域対策交付金を支給されてきた泊村、泊原発に隣接する共和町、岩内町、神恵内村を含む一〇四人は賛否を「答えられない」という回答であった。
厳しい財政事情は小規模自治体に共通する。どこが手をあげて応募をしてもおかしくはない。東陽町では今でも町民に当時のしこりが残っているという。近隣自治体とも断絶され、悪いイメージは払拭できていないと現町長は答えている。応募によって地域住民がまた賛否に分かれ、地域が分断されることが繰り返されることは明らかだろう。

住民対策開始
する北海道電力


北電は寿都町の応募検討表明を、最終処分場の必要性を周知する好機と判断し、以前から配布していたNUMOが作成した最終処分場に関するパンフレット一式を、安全確認協定を締結する同管内一六市町村に改めて配布した。
日本原燃の使用済み核燃料再処理工場が原子力規制委の安全審査に合格し、未定だが本格稼働すれば放射性廃棄物も同時に出るため、その処分地の選定が急がれている。
再処理を柱とする核燃料サイクルの破綻が明らかなのにも関わらず、国は原発の再稼働を進めようとしている。推進側には時間がない。

応募撤回求め
町民署名提出


二七日に「寿都に核ゴミはいらない町民の会」が応募検討の撤回を求める署名を町に提出した。
寿都町が六九五人、町民の約二四%が署名したことになる。
町は七日から一五日にかけて住民説明会を開催する方針を固めたが、推進の立場からの一方的な説明会になるのではないか。
町長は議員や住民らの賛否が微妙なラインなら応募しないと言っているが、楽観はできない。

住民の抗議の
声が高まる!


札幌でも抗議行動「脱原発をめざす女たちの会・北海道」(ほか一一団体)の呼びかけで抗議行動が行われ、約一三〇人が参加した。道内外で燎原の火のごとく反対運動、寿都町への抗議のメールなどを送る運動が起きている。
しかし、四日にも知事と経産相の会談があり、道議会では自民党が知事の反対姿勢を追及し「印象操作になりかねない」「町の行為に踏み込みすぎだ」などと国と自民党一体となった攻撃が始まっている。
一九八六年の幌延では反対運動に対し機動隊を投入した強行調査も行われ、当時の幌延町町議で酪農家の川上幸男さんは「動燃は泥棒猫のようなことをしてくれた」と表現した。このように国は反対運動のある事業に対し通過儀礼の説明しか開いてこなかった。沖縄の米軍基地問題でも説明会を開いて意見を聞いたというアリバイさえ作れば先に進むというやり方だ。
交付される金が一度入れば、小さな町はそれがなくなることを恐れ、ずるずると次の段階に進むだろう。国もNUMOも、おいそれとは手放さないだろう。町長の最終判断は一〇月以降となっているが、次々に繰り出される住民対策、誘致攻撃に対し、知事、町長に応募しないよう強制する様々な反対運動を構築しなければならない。(白石実)



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