もどる

    かけはし2020年9月14日号

これ以上放射能で海を汚すな


声明

東京電力福島第一原子力発電所事故で発生した汚染水の海洋放出に反対する

これ以上海を汚すな!市民会議

 東京電力福島第一原発事故による汚染水を海洋に放出しようという動きに反対して、これ以上海を汚すな!市民会議は、声明を発表した。福島県内では自治体議会の汚染水海洋投棄に反対する声明は二一議会に達しており、トリチウム汚染水海洋放出に反対する署名も二〇万筆を超えて大きく広がっている。全国でも、原発事故汚染水海洋放出反対の訴えを広げよう。(本紙編集部)


 東京電力福島第一原発事故による汚染水を海洋に放出しようという動きに反対して、これ以上海を汚すな!市民会議は、声明を発表した。福島県内では自治体議会の汚染水海洋投棄に反対する声明は二一議会に達しており、トリチウム汚染水海洋放出に反対する署名も二〇万筆を超えて大きく広がっている。全国でも、原発事故汚染水海洋放出反対の訴えを広げよう。(本紙編集部)
 いのちは海から誕生し、創造できないほどの長い時間をかけて、進化を続けました。そして、今、地球上に存在するいのちは海と繋がり、豊かな恩恵を受けています。さらにこれから生まれてくるいのちも、海と繋がり生きていきます。プラスチックによる海洋汚染に気づいた世界各地の人々は、自分たちが持てる知恵と技術を結集して、汚染のない海を取り戻そうと動き出しています。海がまるで人間の所有物であるかのように振る舞ってきた傲慢さを猛省し、自分のいのちが地球の70%を覆う海に生かされている事実に、謙虚になることを選択し始めたのです。
 翻って、今、この国は何を選択しようとしているのでしょうか。2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故は「原発で事故は起きない」との安全神話が大嘘であったことを証明しました。諸外国は原子力エネルギー政策から自然エネルギー政策への転換や、新たな原発建設の放棄を選択しました。福島原発事故被害の甚大さを目の当たりにし、「いのちと核は共存できない」という真実を学んだからです。しかし、原発事故を起こした当の日本は、原子力エネルギー政策を諦めることもせず、原発事故処理によって発生する膨大な汚染水約134万トン以上(建屋内滞留水を含む)を中長期ロードマップ上では、30年程をかけて海洋に放出することを選択しようとしているのです。

 「世界の原発や核施設からトリチウム水は放出され、何の問題もない」との説明を私たちは幾度も聞かされましたが、その影響については専門家でも意見が分かれているところです。放出されていることは事実としても、福島第一原発に溜まり続ける汚染水は、確実にメルトダウンしたデブリなどを「舐めて」発生した液体放射性廃棄物であるということです。本来であれば、厳重に保管し一滴たりとも敷地内から出してはならないものです。原発の運転中に放出しているトリチウム水とは、前提が異なります。海洋放出の決定を急ぎたい政府と東電のこれまでの対応は不誠実でしかありません。
2015年(平成27年)8月11日、東電から新たな汚染水対策であるサブドレンの地下水排出を提示された福島県漁業協同組合連合会は「苦渋の決断」として受け入れました。その際、同会が提出した「東京電力兜沒第一原子力発電所のサブドレン水等の廃水に対する要望書」の4「建屋内の水は多核種除去設備等で処理した後も、発電所内のタンクにて責任を持って厳重に保管管理を行い、漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わない事」において、2015年(平成27年)8月25日、東電は以下のように回答しています。

?建屋内の汚染水を多核種除去設備等で処理した後に残るトリチウムを含む水については、現在、国(汚染水処理対策委員会トリチウム水タスクフォース)において、その取り扱いに係る様々な技術的な選択肢、及び効果等が検証されております。また、トリチウム分離技術の実証試験も実施中です。
?検証等の結果については、漁業者をはじめ、関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うこととしており、このようなプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、多核種除去設備等で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします。(以上引用)

 この回答書が出された時点では、明らかにトリチウム以外の放射性物質の除去は可能であることが大前提となっています。またさまざまな選択肢や効果等が検証されており、結果については丁寧な説明を行うとしています。しかしながら、2018年8月末、「多核種除去設備等処理水取扱いに係る説明・公聴会」の開催直前に、メディアのスクープにより、トリチウム以外のヨウ素129、ルテニウム106、ストロンチウム90やそれ以外の放射性核種が、告示濃度基準を超えて残存していることが明らかになりました。分離技術の実証試験は予測した効果が得られなかったとの説明もありませんでした。メディア報道がなかったら、「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」(ALPS小委員会)の委員も漁業関係者も私たち市民も知ることはなかったと言えます。
国によって設置された同小委員会から「汚染水タンクの敷地拡大は可能なのではないか」と指摘されても、東電は検討していません。また「地元の生活を犠牲にして、廃炉を進めるのは論理が破綻している」「風評に大きな影響を与えないと判断される時期までの貯蔵が必要なのではないか」と出された意見も政府と東電は無視しています。海洋放出の大前提としている二次処理方法はこれから試験が始まるとのことですが、評価が出されるのはまだ先のことです。
このように海洋・大気湧出の可否を巡る議論を始めるまえに、当然、検証・達成・報告しておくべきことは何一つ為されていません。つまり、政府や東電は、漁業関係者を始めとする地域住民や国民に、責任を持って提案するために必要不可欠な判断材料や、海洋放出が可能であることの裏付けを全く持っていないと言わざるを得ません。よって政府や東電が「トリチウム水」と呼んでいるものは「トリチウム水」ではあり得ず、「処理水」になり得るかどうかの確証もないのです。

そうであるにもかかわらず、本年2月、同小委員会は「海洋や大気への環境放出が現実的な選択肢であり、海洋放出の方がより確実に実施できる」とする報告書を出し、政府は「海洋放出ありき」の方針を打ち出しました。それに対し、6月、全国漁業協同組合連合会と福島漁業協同組合連合会は、「海洋放出に断固反対する」との特別決議を採択しました。この強い反対は5年前、サブドレン等の排水を容認した際、「国は関係者の合意なしにはいかなる処理も行わない」と約束したことを国自らが反故にしようとしていることへの落胆と怒りです。
海洋放出に反対するのは漁業者だけではありません。4月6日から始まった関係者の意見聴取会では林業や農業、旅館ホテル業や小売業の代表者、自治体首長からも汚染水の海洋放出・大気放出の2案に対し明確な反対意見、慎重な対応を求める意見が出されました。さらに福島県内59市町村の内21市町村議会や東京都小金井市議会も同様の意見書を採択しています。
本年4月から4ヶ月近く行われた経済産業省の「多核種除去設備等処理水の取扱いに係る意見募集」に約4千件以上の意見が届きました。この数の多さは、明らかに多くの市民が汚染水の海洋放出に、大きな関心と懸念を持っていることを表しているといえるでしょう。今後、意見の分析が行われ、海洋放出について反対や慎重を求める意見が多い場合、その声を政策決定に反映するのは意見募集を行った経産省の責務であります。

 福島県漁業協同組合連合会・野崎哲会長の「関係者の意見を聞くと言うが、漁業者や地元だけでしないでほしい。国民的な議論にしてほしい」との発言の通り、もはや、汚染水の海洋放出は福島県民だけの問題ではありません。「福島以外の人が放出に反対するのは福島差別」(2020/07/20・テレビ朝日系のインターネットチャンネル Abema TV Prime)との細野豪志元原発担当大臣の発言は論外です。汚染水の海洋放出に関して「福島差別」と言えるのは、海洋放出に反対する多数の声を無視して「福島の復興のためには海洋放出しかない」と言い放つことです。この発言は私たち福島県民に寄り添っていません。汚染水こそ、福島の復興のために海や空に放出してはならないのです。
政府と東電はこの大きな世論を誠実に受けとめ、海洋放出ありきの前提を手放し、ALPS小委員会報告書には放出場所等は記載されていないことなどから、広く国民と汚染水の処分方法について協議を始めることを強く要望いたします。お互いの意見を聞き、話し合いを重ねながらより良い方法を見出していく過程こそ、民主主義を基盤とした政策決定であり、今を生きるいのち、未来に生きるいのちを尊び、全てのいのちの源である海に対し謙虚になることを選択する場にほかならないからです。
2020年8月27日

これ以上海を汚すな!市民会議
共同代表 織田千代 佐藤和良

投稿

化石燃料ゼロ時代 D

どうしましょう? 精子のなくなる日

たじまよしお


(13)

 スキャケベクに批判的な研究者たちは調査結果のあら探しをして、データには不備があるため、ここから決定的な結論を引き出すのは不可能だと主張した。彼の研究チームは異常に精子数の少ない男性を除外した
と的外れの批判をし、しかも「異常」の定義は移ろうものだとくってかかったのだ。実際のところ、研究チームは産婦人科医のデータ以外は何も除外してはいなかった。そればかりか「懐疑派」は、スキャケベクの結論を論破するだけのデータを提出もせず、たんに疑わしいと述べたにすぎない。
この論争に刺激されて行われた研究により、少なくとも三つの分析結果が個別に得られた。うち一つは「懐疑派」の手になるものだが、結果はやはり精子数の減少を裏づけるものだった。フランス、ベルギー、スコットランドで行われたこれらの研究は、合計五四四○人の男性から採取した精液サンプルをもとに、原因が環境にあることを裏づける新たな証拠を提示していた。
新しい研究結果が明らかにしたのは、成年と精子数の驚くべき負の相関関係だった。誕生年数が大きくなればなるほど、平均精子数は低くなり、奇形精子の割合も格段に高くなっていた。三七二九人の男性を対象に行われたスコットランドの研究によると、一九四○年生まれの男性では精液一ミリリットルあたり平均一億二八○○万個あった精子が、一九六九年生まれでは七五○○万個にまで減っている。
ちなみにこの研究は、エジンバラのメディカル・リサーチ・カウンシルの生殖生物学部門の主導で行われたものである。

(14)

 ベルギーの研究では、一九九○年から九三年にかけて三六○人の男性から採取した精液サンプルが、一九七七年から八○年にかけてのものと比較された。その結果、異常な精子の割合がこの一六年間で驚くほど増大しつつあることが明らかとなった。正常な格好をした精子の数は三九・六パーセントから二七・八パーセントまで落ち込み、まともに泳いだり、動ける精子は五三・四パーセントから三二・八パーセントにまで減少していた。結論は、条件つきの控えめな言い方を好む科学者にしてはいささか大胆なものだった。すなわち「男性の生殖能力は危機に晒されている」というものだ。
ごく最近、ジャック・オジェー率いるフランスの研究者チームが、一九七三年から九二年までのパリにおける精子数の変化を調査した結果を発表した。オジェーがこのような調査に乗りだしたのはたんにデンマークで行われた研究を信用していなかったからだった。ところがオジェーが驚いたことには、自ら行った分析結果によっても、ここ二○年の間に精子の数が着実に減りつづけている事実がはっきり裏づけられたのである。

(15)

 このフランスの研究成果は特に説得力があった。ともすると誤った分析結果を導いてしまいかねない二つの重要な撹乱変数を正しく処理していたからだ。ちなみに問題の撹乱変数とは、年齢と節制である。精子の数はふつう加齢とともに減っていく。また性交後は急激に減少し、回復には二、三日を要するのだ。
そこでフランスチームは、一九四五年生まれの男性の三○歳時における平均精子数と、一九六二年に生まれた男性の三○歳時の平均精子数を比較することにした。一九四五年生まれの三○歳の男性(従ってサン
プルを採取したのは一九七五年)では、精液一ミリリットルあたりの精子数は平均一億二○○万個だった。ところが、一九六二年生まれの三○歳の男性(したがってサンプルを採取したのは一九九二年)では、ちょうど半分、すなわち精液一ミリリットルあたり平均五一○○万個まで落ち込んでいた。
この減少傾向が続くとすると、二○○五年に三○歳になる男性、つまり一九七五年生まれの男性は、精液一ミリリットルあたりおよそ三二○○万個の精子しかないことになる。これは一九二五年生まれの男性の精子数のほぼ四分の一だ。     (つづく)

 



もどる

Back