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    かけはし2020年9月14日号

重要だが支持の理由にはならない


米国

カマラ・ハリスの副大統領候補指名

トランプは即座に反動的に対応

マリク・ミオー

米国政治貫く
不変の回転軸

 米国政治は常に人種とレイシズムを軸に回転してきた。一人の女性が最高位の被選出公職に選出されるならば、白人男性の卑劣な性差別主義もまたあふれ出す。
 民主党副大統領候補へのカマラ・デヴィ・ハリス指名に関して、ドナルド・トランプ大統領はあらためて、インドとジャマイカからの移民であった彼女の両親に引っかけて、「誕生地にまつわる」問題をもち出した。一人の強力な女性について話す際に彼が普通行うように、トランプはハリスを「意地が悪い」「下品」、さらに「急進的な極左」と呼んだ。
 これは偶然ではない。黒人女性は米国史上常に、他のどのようなグループ以上にけなされてきた。奴隷制は黒人女性を、彼女たちのレイプをこととする所有者のための、動産に、また子ども生産者にしたのだ。
 ほとんどの黒人女性と南アジアの女性は、一検事としての、また民主党主流政治家としての彼女の実績にたとえ多くの不同意があるとしても、彼女の選出に満足を得ている。
 左翼はもっと割れている。ジョー・バイデンが企業優先の大統領候補だからだ。しかしながら、トランプという極右大統領はバイデンを、「中道左翼」のブルジョア政治家(「よりマシな悪」あるいは「気質に合う」選択肢)のように見せることになった。

ハリス指名
なぜ重要か


 バイデンがカリフォルニア州上院議員のハリスを彼の副大統領候補者として選出した時彼女は、どちらかの主要支配階級政党によって大統領あるいは副大統領として候補者指名を受けた、初めての黒人かつ南アジア人女性となった。
 トランプは、「アメリカ・ファースト」と白人民族主義という対外、国内政策を指揮してきた。トランプは二〇一六年には、メキシコ人移民や他の非白人の人々に攻撃を加えた。
 トランプは、ハリス選出後四八時間も経たない内に、副大統領に立候補する彼女の憲法上の適格性に異議を突きつけた。憲法は、そうするためには米国領土内で生まれた市民のみに資格がある、と規定している。トランプは、カリフォルニアのオークランドで生まれたハリスに対し「誕生にまつわる」常軌を逸した嫌疑をもち出したのだ。彼女のスタンフォード大学エコノミストである父親のドナルド・J・ハリスは、ジャマイカで生まれた。彼女の南アジア人の母親、ガン研究家のシアマラ・ゴパランはインドのタミル・ナドゥで生まれた。
 トランプは、前大統領のバラク・オバマに対しても、「外国で生まれたよそ者」との同じ言いがかりをつけた。
 驚きではないが、ハリスもトランプによって、彼の反移民かつレイシズムイデオロギー促進に向けて、「よそ者」と見られているのだ。この戦術は、二世紀にわたって利用されてきたが、普通に機能している。
 一九六七年まで移民法は、北欧からの移民に便宜を与えてきた。労働力が必要になった時、他の者たちにも扉が僅かながら開けられた。たとえばそれは、鉄道建設のために、中国から男たちがカリフォルニアにつれてこられた時だ。
 一九六七年、広範囲におよぶ新たな移民法が採択され、アジア、アフリカ、また他の非白人諸国からの移民を可能にした。その時まで、カリブ海、アジア、アフリカ出身者では僅かの資格のある学生だけが、高等教育を行う諸々の学校に入学できた(隔離が制度化されていた南部にある全員白人の単科大学を例外として)。

公民権運動
支持者の娘


 ハリスはオークランドにおける六〇年代世代の子どもとして、彼女の父親や母親と共に、公民権を求める抗議行動に出かけた。彼女の母親は、二人の娘に「黒人」と名乗るよう力づけた。
 ハリスは、歴史的に黒人の単科大学であり、「南部のハーバード」として知られたワシントンDCのハワード大学に入ることを決めた。ハリスはこうして黒人の政治と文化に深く根を下ろすことになった。
 大学とロースクールを終えた後彼女は、公選弁護人よりもむしろ検事になることを決めた。
 「進歩的管区司法長官」という概念は存在していなかった。それは、公民権運動支持者の娘による選択としては普通のことではなかった。彼女は、比例を失して黒人に害を与えている犯罪的な司法システムを、そのシステム内で働くことによって変えたかった、と語った。
 ハリスはリベラルな風土のサンフランシスコで管区司法長官を勝ち取った初めての黒人で南アジア人の女性になった。次いで彼女はカリフォルニア州司法長官に立候補した。そして再度、それを勝ち取った初めての非白人女性になった。
 ハリスは二〇一六年、カリフォルニア州から上院議員に選出された初めての非白人女性になったが、それは米国史上僅か二人目の黒人女性だった。彼女は二〇二〇年大統領候補指名を追求したが、牽引力を得ることができず、早々と脱落し、バイデンを承認した。
 サンフランシスコの管区司法長官としてのハリスのもっとも基本的な立場は、隠密捜査警官が殺害された後も含めて、死刑に反対することだった。同時に彼女は、刑務所改革や大量収監をめぐる進歩的な課題設定を進めることはせず、警察力強化を支持した。ハリスは、ブラックス・ライヴズ・マター(BLM)運動の高揚によって彼女の立場を修正することになった。彼女は、BLMを支持するが、その中でのもっとも急進的な要求は支持しない、と語っている。

トランプは
命への脅威

 ハリスが大統領候補指名を勝ち取ることができなかった理由の一つは、彼女ではトランプを打ち破れないのではないかと恐れたことを理由に、黒人女性の多数が彼女を支持しなかった、ということだ。
トランプは非白人民衆にとっては命に関わる脅威と見られている。歴史は、白人至上主義が今なおどれほど危険なイデオロギーとして残っているか、そしてこの資本主義システムをどれほどまで下支えしているか、を示している。アメリカスタイルのカースト制度は、その所属階級がどうあれ、頂点にある白人カースト、および底辺の黒人、に基礎を置いているのだ。
黒人民衆は、二〇〇八年のオバマ選出が人種は非科学的概念という新たな認識に導く可能性がある、と期待した。その期待は、その結果として「人種偏見のない」社会が生じる、というものだった。しかしながら二〇一六年のトランプの勝利は、今日に続く白人の反動を高めた。
資本主義のシステムは、財産および生産手段の私的所有以上のものに基礎を置いている。それは、人種やレイシズム、および肌の色の分割線を維持することと内的に織り合わされている。トランプは、労働者階級の白人男性、また全体としての白人の多数内部にある意識的、無意識的感情を利用した。それこそが、彼が今なお再選を勝ち取る可能性をもっている理由なのだ。
二〇一六年の白人民族主義の反動は、二〇二〇年の選挙で起こり得ることに関する黒人と非白人の民衆に対するある種の警告だ。それこそが、ほとんどの黒人の男と女が「安全な」白人中道派ブルジョア政治家、ジョー・バイデンに票を投じると決めた理由だ。

左翼に必要
な選択とは


ハリスがバイデンの指名を容認したことを受けて、長年のマルクス主義者で活動家のアンジェラ・デーヴィスはその重要性について、オンラインの資金調達者に向け慎重に語った。いわく「私の考えは、構造的にレイシズムであり女性差別であるシステムに参加する新しい主体を単純に見つけることが、われわれを進歩的な方向に導くことになろう、というものではない。しかし同時に私は、われわれは選挙システムに参加しない、ということをそれが意味する、とも考えない」。
八月一四日、デービスはロイター通信社に次のように語った。
つまりカリフォルニア州司法長官としてのハリスの役割に言及しつつ、「われわれは一検事としての〔ハリスの〕経歴に結びついている実質をもついくつかの問題を忘れてはいけない」「しかし……、これらの矛盾を抱えて働くことができるということが、フェミニストのアプローチだったのだ」「そしてそうであるならば、その脈絡の中で、私は非常な興奮をおぼえている、と言うことができる」「私の考えでは、それは公認候補者を大いに気質に合うものにしている。それは確かなことだ」と。
デーヴィスは一九六〇年代以来急進的な活動家だった。そして今はカリフォルニア―サンタ・クルズ大学の名誉教授だ。彼女はまた、一九八〇年と一九八四年には共産党の副大統領候補者でもあった。
ハリスに関する彼女の見方は、左翼と社会主義運動の多くが今熟考しつつあることだ。デーヴィスは、ハリス指名の重要性、およびハリスがレイシズムに基礎を置くシステムを支持しているという事実、これを認めることが抱える矛盾を提起した。
BLMの盛り上がりの中で街頭の抗議行動を率いている人々――黒人の前衛――がいる。彼らは、警察行為と政府の諸機関に原理的な変更と改革を勝ち取る上で、抗議行動を鍵と見ている。大統領選は、重要だが運動にとっては二義的と見られている。
他方、この抗議行動を支援している被選出の民主党公職者たちは、投票を今後の九〇日を通じて主要だと考えている。彼らは警察行為に対するささやかな改良を支持している。彼らは、警察から資金を引きあげ警察を解体するという要求を拒否している。彼らは、警察行為の中にいるのは「二、三の腐ったリンゴ」にすぎない、と不誠実な言明を行っている。それでも事実は、ほとんどの警官は最悪な警官の悪行を可能にする者たち(「青い壁」)、と示しているのだ。
もっとも急進的なグループは、黒人の前衛指導部と提携し、しかし反資本主義の展望を前に進めている社会主義者を含む、戦闘的活動家たちだ。彼らは民主的な闘争を、資本主義システムの抜本的な転換に向けた第一歩と見ている。
ハリスの指名はさらに、それが、移民の権利、公民権、LGBTIの権利、そして特に女性の投票権獲得一〇〇周年に際した女性の権利の防衛を照らし出す一つの方法であるがゆえに、重要だとも見られている。
女性参政権推進運動は歴史的だった。しかしそれは、白人民族主義から影響を受けていた。指導者たちは、黒人の男が投票権を得ることへの支持を拒絶した。彼女たちはまた、一九二〇年八月に採択された、女性に投票権を与えた修正一九条に、合法的に隔離された南部の黒人女性が含められるべきと要求することも拒否した。州の諸法は、黒人の女と男に投票権を否認する人種的差別を可能にした。
アメリカ民主的社会主義者(DSA)――米国内最大の社会主義者グループ――は、バイデン―ハリスの公認候補者を承認するかどうかをまだ決めていない。その全般的な選挙政策は、民主党員あるいは無所属として立候補するDSAメンバーを支持する、というものだ。何人かのDSAメンバーは緑の党大統領候補であるホーウィー・ホーキンスに票を投じそうだ。
ハリスの立候補には意味がある。しかしそれは、非白人勤労民衆がバイデンのための活力ある運動に向かう理由にはなっていない。ハリスはバイデンのナンバーツーとして、バイデンの大企業向け政策と好戦的政策を擁護するだろう。重要なことは、サンフランシスコとカリフォルニアの親警察司法長官としての彼女の実績であり、ブラック・ライヴズに対する言葉上の支持ではない。

▼筆者は、退職航空整備士で、労組活動家、および反レイシズム活動家。『アゲンスト・ザ・カレント』誌編集顧問でもある。(「インターナショナルビューポイント」二〇二〇年八月号) 


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