もどる

    かけはし2020年9月21日号

浮き出た温暖化と新型奴隷労働


米国

カリフォルニアの大火災

バリー・シェパード

 

降雨のない雷
による山火事

サンフランシスコ湾岸地域では、灼熱の猛暑の中で、二週間もたたないうちに記録的な山火事がいくつも急激に発生した。
 八月二四日現在、一二〇万エーカーが焼失するとともに、約一二万人が自宅から避難している。その山火事のうち二つは、カリフォルニア州の歴史上、二番目と三番目の大きさと格付けされている。そして、それらはまだ拡大している。いままでで最大の山火事は二〇一八年に発生したものだった。
このことは、パンデミックの間に起こっており、そのことが自宅から避難している人々にとっての困難を増大させている。というのは、彼らが避難する場所では、距離をとるという規則に従わなければならないため、そんなに多くの人々を受け入れることができないからである。
一二〇〇以上の家屋やその他の構造物が破壊された。
カリフォルニアにおける巨大なセコイアのもっとも古くからある自然保護区の一つが炎上している。その中には樹齢二〇〇〇年以上の樹木もある。セコイア樹木の中には、長年にわたって多くの火災に耐えてきたことを説明する耐火性のある樹皮のおかげで助かったものがあるかもしれないが、多くの樹木はそうではなかった。すでにこうした樹木の多くは、枝や緑の針葉をもつ、高くそびえる木の頂部が焼かれており、それらが再び成長して元の状態に戻るまでには何年もかかるだろう。
 火事はまだ燃え広がり続けている。これまでに七〇〇件の火災が発生しており、そのうち数十の火災は、消防士が今も消火活動を続けている大規模なものである。
 これらの火災は、都市部からその北部・東部・南部にかけての地域を含む広域サンフランシスコ湾岸地域で発生している。濃い煙が、健康を害する状況を作り出しながらその地域に広がり、八〇〇万人の人々に影響を与えている。
 湾岸地域のこうした火災は、一晩で約一二〇〇回も落雷を起こした異常な雷嵐によって発火したものである。これらは「ドライライトニング」による落雷だった。雷は雷雨の中で発生するものだ。「ドライライトニング」は、嵐の下の空気が熱せられているために、嵐にともなう雨のほとんど、あるいはすべてが地面に到達する前に蒸発してしまうときに発生する。現在の場合がそれである。
 雨があれば火災を鎮めることができたかもしれないが、そうした雨もなかったため、落雷によって火事が起きたのだった。
 雷嵐自体は熱帯暴風雨が衰えたものによって引き起こされた。それは、メキシコから太平洋を北上し、カリフォルニア中央部へと進路を変え、引き続き北上して熱波に遭遇した。

山火事の激増
は明白な事実


カリフォルニアには、晩秋から冬にかけての雨季と、晩春から秋にかけての乾季の二つの季節がある。雨季には植物が成長し、そのあと乾燥して、火事の火種となるのだ。
乾季の中でも、近年では二種類の火災シーズンが発生するようになった。一つは六月から九月までの火災シーズンで、温暖な気候と乾燥した気候の組み合わせによって引き起こされる。これらの火災は、内陸部の標高が高い森林で発生する傾向がある。これが今、私たちが経験していることだ。
第二の火災シーズンは、一〇月から四月にかけて雨季であっても発生し、カリフォルニア州東部の砂漠から山脈を越えてカリフォルニア州に入ってくる強い西風の熱風によって引き起こされる。これらの火災は、第一のシーズンの火事よりも三倍の速さで拡大し、都市部により近いところで燃える傾向がある。それが予測できることである。
カリフォルニア州民は歴史的に乾燥した時期に山火事が発生することを予想してきたが、気候変動は、過去一〇年間で顕著に見られたように、火災の数とその強度を大幅に増加させた。地球温暖化の影響を示す一つの例として、一九三二年に記録が残されはじめて以降で、州内での最大規模の山火事がこの一〇年間に一〇回も発生していることが挙げられる。
コロンビア大学地球観測所のパーク・ウィリアムズ博士は、八月二二日付の『ニューヨーク・タイムズ』で「この光景すべての背後には、今までよりも気温が二〜三度上昇していることがある。地球温暖化がなければ、そんなことは起こらなかっただろう」と指摘した。このことが、過去一〇年間に乾燥した状況をもたらしたのだ。
火事一つひとつと気候変動との間の関連性を判断するには、時間がかかる。そして、科学研究の発展による分析も必要となる。しかし、人間が作り出す温室効果ガスの影響が、大気中で起こるすべてのことの根底にある。その中には、気候変動が時間をかけて、乾燥した場所をさらに乾燥させる傾向も含まれている。カリフォルニア州をはじめとする西部諸州では、ますます燃えるように暑くなる未来が予想されるのだ。

囚人消防士が
光当てる問題


アメリカをはじめとする資本主義の緊縮政策を反映して、パンデミックが発生したときに医療システムがパンデミックに対応する備蓄品を持たないところまで削減されたのと同じように、カリフォルニア州を含む多くの州では消防体制が手薄になっている。
消防士の数が減らされた分を、訓練を受けた囚人の消防士を使うことで補っている。
パンデミックと火災が交錯しているのは、刑務所がウイルスの感染源となっているため、残された刑期が五年未満の囚人の一部が帰宅を許されている点にある。つまり、消防士の訓練を受けた囚人の多くはこのグループに属していて、その結果、消防士の要員が大幅に減少しているのである。カリフォルニア州は、この危機を緩和するために、他の州やオーストラリアにも消防士の派遣を求めているが、きたるべき何ヶ月間で状況はさらに悪化するだけだろう。
大量投獄という制度化されたシステム――抑圧された黒人や他の有色人種の人々を苦しめる新たな人種隔離政策の源――を考えると、囚人の消防士が外に出られる機会を歓迎することは不思議ではない。彼らはしばしば、火事を封じ込めるために防火帯を整備するなど、もっとも危険で困難な仕事に使われることが多い。
彼らには時給一ドルが「支払われて」いる。南北戦争後に可決された憲法修正第一三条は奴隷制を禁止した。しかし、そこからは囚人は除外されていた。これは、悪名高い「鎖でつながれて働く囚人」に代表される人種隔離制度(ジム・クロウ)の一部として使われたことで有名だが、現在でも、大量投獄制度の資金調達を助ける目的で、代価を支払わせて奴隷的な囚人労働者を請負業者に委託するために使われている。
カリフォルニア州の囚人消防士に関しては、州は刑務所にお金を払わずに、正規の消防士数を減らして経費を削減するために、こうした消防士を利用している。正規の消防士が、その代わりに正規の消防士数を増やすために闘っていることは明らかである。
しかし、囚人の消防士について言えば、彼らは仕事が大好きなのだ。『ニューヨーク・タイムズ』の最近の記事によれば、「カリフォルニア州民の中には、元受刑者の消防士も含んで、そのプログラムが目的意識を提供し、囚人に自分自身を証明する機会や他の人を助けることの満足感を与えていると言う人々もいる」とのことである。
「『それは私に方向性と価値観を与えてくれた』と、一年間を囚人の消防士として過ごしたフランシス・ロペスは言った。『ハイタッチしてくれる人がいる。「火事と闘ってくれた、われわれの自宅を守ってくれた受刑者に感謝する」という大きな張り紙がある。それを目にして、「良いことをすることができる。尊敬される人間になれる」と思えるんだ・・・』」。
「彼が不満に感じていることは、受刑者が釈放されたら、消防の仕事にそのまま就けるような道が提供されるべきということである」。消防部門は、刑務所の収監された履歴を持つ人々を雇用するのを嫌がっているのだ。
大量投獄および(まだおこなわれていない場合でも)奴隷労働のシステムを解体する一方で、この経験は、社会主義の下で刑務所を完全に廃止することへの過渡期の一部として、犯罪者に賃金を払って本当の意味での社会的に有用な仕事を提供することについて、労働者国家が何をなしうるかを示すものでもある。

気候変動が
米国を襲う


気候変動の問題に戻ろう。いまアメリカの反対側で起きているもう一つの側面は、めったにない出来事だ。つまり、メキシコ湾で二つのハリケーンが同時に発生し、アメリカに向かって進んでいるのである。それは、専門家が今年のハリケーンシーズンが激しいものになるだろうと予測していることの前触れである。地球温暖化が二つの方法でこのことを促進している。大西洋、カリブ海、メキシコ湾の水温を上昇させることで、ハリケーンにより多くのエネルギーを与えるとともに、大気中の水分を増加させ、結果として雨をより多く降らせるのである。
このことは、メキシコ湾で形成された熱帯暴風雨が、メキシコを横断して太平洋に入って北上し、その後、現在の火災を引き起こしたドライライトニングの嵐になったことに関係しているようだ。
二〇二〇年九月二日

▲バリー・シェパードは、サンフランシスコ湾岸地域の「ソリダリティ」メンバー。彼は、社会主義労働者党の指導部であったときのことを『社会主義労働者党:一九六〇〜一九八八』に書いている。現在は、オーストラリアの『グリーン・レフト・ウィークリー』と『ソーシャリスト・オルタナティブ』誌にアメリカから毎週寄稿している。
(『アゲインスト・ザ・カレント』九月二日)

ベラルーシ

プーチンによるベラルーシ
民衆敵視の警察作戦ノー

ロシア社会主義運動(RSD)

 ウラジミール・プーチンは八月二七日のTVインタビューで、ベラルーシの正当な権威に直接的な脅威がある場合、この国にロシアの警察部隊を送る用意がある、と語った。彼はさらにこのインタビューで、ルカシェンコを合法的な大統領であると考えている、また八月九日の選挙後のベラルーシ機動隊の諸行動は「穏健なもの」だった、とも明確にした。
 彼は、ルカシェンコを社会との対話に向かわせることで、ルカシェンコ自身が力説している類の対話をはっきりと受け入れた。つまりそれは、選挙結果の無条件受け入れ後の、ベラルーシ憲法におけるいくつかの変更プロセス開始ということだ。それは、ロシア社会が七月の憲法修正に関する投票という道化芝居の結果として得た類の「変更」、を否応なく思い起こさせる。
 プーチンの言明はあいまいさなく、双方の権威主義体制間で達した暗黙の合意を見せつけている。つまりロシアは、ベラルーシへの政治的影響力強化と引き換えに、ルカシェンコの権力維持を助ける、ということだ。その中でルカシェンコはこの間、クレムリンが描く世界の構図に完全に対応するできごとの見方――抗議に決起した人々は西側から資金を与えられ、支援されている、そして彼らの行動は、「カラー革命」(ウクライナやジョージアで親ロ政権を倒した民衆決起がこう呼ばれることがある:訳者)という完全に確立されたシナリオの下に起きている――を声を大に表明してきた。
 つまり、ベラルーシの大規模デモや労働者のストライキがロシアと西側の通常の地勢学的戦闘に収まるべくどのように今務めているか、というわけだ(反政府派指導者のスベトラーナ・チカノフスカヤがベラルーシの諸抗議行動は「親欧州でも反ロシアでもない」と繰り返し続けているという事実にもかかわらず)。この情勢の中では、隣国の抗議行動を抑圧しようとするプーチンの警察作戦は、容易に現実になる可能性があると思われる。
 われわれは、こうした作戦は帝国主義的介入という恥知らずな事実になるだけではなく、ロシアそれ自身内部でのあらゆる政治的反対派に対する諸々の抑圧をも強めることになる、と確信する。
▼RSDは、第四インターナショナルロシア支部、社会主義運動プペリョード(前進)とソーシャリスト・レジスタンスという二組織によって、二〇一一年三月に創立されたが、二〇一一年と二〇一二年における不正選挙反対の抗議行動の中で形成された連合、左翼戦線の構成組織にもなっている。(「インターナショナルビューポイント」二〇二〇年九月号)

【おしらせ】「化石燃料ゼロ時代 どうしましょう?精子のなくなる日」 たじまよしおさんの投稿を連載していますが、紙面の都合により、今号は休載とします。
(編集部)

 



もどる

Back