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    かけはし2021年1月25日号

買春を容認する社会でいいのか


12.19

岡村隆史発言が見せつけたものに怒ろう

 リレートーク・学習会


 12月19日午後12時半から、渋谷駅前で「岡村隆史発言が見せつけた買春容認社会を怒ろう!!」リレートークそして午後1時半から渋谷勤労福祉会館で学習会が行われた。
 ?「岡村発言は性風俗店に行くことを勧めるものだ。女性たちが貧困におとしめられ、風俗産業に行かざるをえない現実を容認するものだ。女性の自殺者が急増している。発言の撤回と謝罪を求める」。
 ?「他人の不幸が利益になるような性風俗産業がある。反対する運動をおこなおう」。
 ?「女性が2級市民にされ、富を男性が独占している。これを変えなければならない」。
 ?「地方自治体の3割に女性議員が一人もいない。草津町議会でも女性議員がたった一人しかいなかった。町長のその女性議員への性差別事件が明らかになるや不当な圧力で議会を追い出された。こうした現実を変えなければならない」。

買売春禁止
3つの流れ


駅前トーク後、渋谷勤労福祉会館で学習会が開かれた。
最初に、森田成也さん(ポルノ・買春問題研究会)が「性産業をめぐる北欧モデルと合法化モデル」を、増田都子さん(東京都学校ユニオン委員長)が「『婦人保護事業から女性支援法へ――困難に直面する女性を支える』(戒能民江・堀千鶴子著)を読んで」、として問題提起した。
森田さんは売買春禁止の流れを次のように説明して、具体的な事例(別掲載)を説明した。
「三つの立場がある。禁止主義(北米型で売買春を一律に罰する)、古い合法主義(公娼制度の容認)、古い廃止主義(日本など戦後多くの国が採用した売買春の勧誘、強要などを禁止)」。
「北欧モデルは売買春制度を社会構造的システムとしてとらえ、売春女性を被害者としてとらえ、買春者・ピンプ(ポン引き)を処罰する。スウェーデンなど」。
「新しい合法主義」。売買春は無害で、当事者の自由に委ねるべきであり、売買春を規制するあらゆる法律を撤廃して、最大限の自由化を図り、その中で偶発的に起こる暴力や不当な搾取のみを規制するべきであるとする。セックスワーカー論。オランダ、ドイツ、オーストラリアなど」。

婦人保護事業の
課題と取り組み


増田さんは本の内容を紹介した。とりわけ、2012年に厚生省社会局生活課浅野史郎課長が呼びかけて、「婦人保護事業等の課題に関する検討会」を設置し、「婦人保護事業の現代的課題とその取り組みへの『提言』――婦人保護事業の充実・活性化に向けて、今後の討議のたたき台のために」(提案)を発表した。以下、本からの引用。
「提案」は、売買春が個人の自由意志による行為だという一般的な認識に疑義を呈することから議論を始める。性は「自らの選択と責任の下に存在」するとされる。だが、「人間存在そのものと言える」性が売買される背景には貧困問題と拝金主義、性の商品化があり、売買春が「経済的社会的文化的構造から生み出される女性差別であり、男性を含む人間の尊厳を否定するものなのに、なぜ、反人権の構図としてとらえられない」のかと「提案」は問いかける。同時に、「真に自由で対等な性的関係の実現のためにも、売買春は一部の特別な人たちの問題」ではないと訴える。
そして、「売買春否定と婦人保護事業の歴史的源流」に廃娼運動と婦人救済事業があり、先駆的な民間の取り組みによって道が開拓されてきたことを述べたうえで、婦人保護事業が「性売買の中で人権や人間の尊厳を奪われ続けてきた女性たちの自立を支え、人権回復を援助する仕事」であること、婦人保護事業は女性問題の基点であり、「売買春構造に限りなく吸い込まれる女性たちを、これまで以上に積極的に受け止める」必要性を強調している。

性産業従事者は
ワーカーなのか


増田さんは「1962年、性風俗が風営法の改正により届け出制となり、抜け道が用意され、売買春が地下に潜ることになった。この地下に潜ったとされる30万人という女性の性売買の性産業の問題を引きずり出して論じなければならない」と話した。そして、10月25日号の「ふぇみん 婦人民主新聞」に「岡村発言」から思うことと題して、この間の取り組みを紹介し、「性産業従事者を『ワーカー』と呼ぶのは欺瞞だ。ワーク=労働などではない」と投書した。
それに対して、「性的サービスを提供する人たちが労働者と認められなかったら、当たり前の賃金や安全な労働環境を、どう要求できるのでしょうか?」という反論の投書(11月5日号)が掲載されたことを報告した。
この問題の討論では、売買春社会をなくしていくことと性産業にかかわる人たちへの支援が必要であることは同じだが、「ワーカー」という言い方がどうなのかについては参加者間でも意見が分かれた。
スウェーデンでは買春者への罰則があるので、他の国へ行って買春する人がいるが、それへの罰則の法律がないことの問題点、オーストラリアでは売春者はアジア人の移民労働者が人身売買のような形で連れて来られている実態が報告された。草津町での新井さんへの不当な失職の攻撃への報告と支援について、フラワーデモなどについても今後考えていきたいとの表明があった。次回は1月30日土曜日午後12時半渋谷ハチ公前、宣伝活動、午後1時半から渋谷勤労福祉会館で学習会 。

(M)

森田成也さんの提起から

性産業をめぐる北欧モデルと合法化モデル


1、合法化モデル国の実態・ロリコン専用の合法売春店「ティーニーランド」(ケルン)……人気テレビ番組「30Minuten Deutschland」で紹介。

 「売買春はごく普通の仕事であり、高校の卒業証書も持たない18歳の女の子が大金を稼げる方法だ」。その中で60歳の常連客が登場し、2年前に妻を亡くしてから、このティーニーランドに月2回通っている。曰く「この子たち、体が引き締まっていて、熟女に負けず劣らずのスケベっぷり。 そこがいけてて、とてもいいんだ」。 店の経営者はそれでも、 「うちの客はロリコンではない」と主張。また、ドイツのアポリショニスト活動家であるマヌエフ・ショーンさんの論文では、この店の5周年記念のパーティーには、ドイツのセレブ、芸能人、政治家などが多数参加し、それがビデオに撮られて、堂々と公開されている。

?公衆トイレ兼用セックスボックスを自治体が設置(ベルリン) ……エリー・アローさん のツイートから(2020年8月7日)。ベルリン市の地区当局が公衆トイレ兼用のセックスボックスを町の各地に設置し(そこらへんでセックスをしているという地元住民の苦情と、セックスワーカーの保護という口実)、そこをドイツの男たち(白人の中高年)がまさに公衆便所で用を足すのと同じ気軽さで女性(ほとんどが20歳前後の外国人)を連れ込んで買春している。自治体政府はこのセックスボックスの維持費用として年間に10万ユーロも使っている(約1300万円)。
地域のNGOによると、このセックスボックスの前に男たちが列をなして並んでいることも頻繁に目撃されている。このセックスボックスはパンデミック中でも使用されていた。パンデミック中は売春店も営業が禁じられていたが、このセックスボックスは使われていた。

?ドライブスルー型セックスブースがオランダ、スイス、ドイツ各地に設置……ちょうど車に乗ったままマクドナルドのハンバーガーを注文できるように、車に乗ったまま、大型のセックスボックスに入って買春することができる施設が自治体の費用で設置されている。

 これらの事例が示しているのは、自治体がピンプとして被買春女性を管理しようとしていること、その口実がセックスワーカーの安全であること、そしてその「安全性」を追求しようとすればするほど、公的機関がますます売買春に深く関与するというグロテスクな状況になっていることである。しかし、それで実際に被買春女性の安全性が増したというエビデンスはない。なぜなら、公的な場所を提供したからといって、ピンプが、人身売買業者が一掃されるわけではないからだ。売買春を合法化したうえで、搾取と暴力だけを排除しようとするセックスワーク派の戦略は破綻している。

?ドイツにおける売買春の中の女性たちが受ける暴力の実態……ドイツ家族省が2004年に発表した表に明らかなように、セクシャルハラスメントや身体的暴力、精神的暴力、性暴力などの各項目において、被買春女性が受ける割合はドイツの女性全体よりも有意に高くなっており、とくに性暴力は、平均値の12%に対して、被買春女性は59%(約6割)となっており、平均値の約5倍である(もちろん、金が支払われたうえでの「レイプ」はここに入っていない)。同じく、「重大な傷害を伴う性暴力」は、平均の4%に対して、 被買春女性は36%であり、平均値の約10倍の多さである。

?合法化すれば売り手の女性の人権が守られるという神話……セックスワーク派は、売買春を合法化すれば、売り手の女性の人権は守られると言う。多くのデータ(すでに紹介したドイツのデータをはじめ)がその嘘を示しているが、ここではニュージーランドとオーストラリアで10年以上にわたって売春にたずさわってきたシボーンさんの証言を紹介する。

 お金を払ってセックスをする男性は、性的な満足感を求めるのと同じくらい、売買春の中の女性たち(受付嬢を含む)に精神的な不快感を与えたいと思っているのだと私は確信 している。
私はこの業界が合法である国ないし都市に住んで、仕事をしている。人々は、それがちゃんと管理されていると思っている。しかし、それは理想であって現実ではない。現実には、セックスを買う男たちは、ほとんどの場合、自分の買う女性に敬意を払わず、強姦や暴行をしても、その報いを受けることはない(だからこそ、彼らはそもそも売春婦を強姦することができると思っているのだ)。
私は、売春の合法化は、単にその社会の男性たちのうちにミソジニー的な態度や行動を強化し助長しているだけだと思う。それが合法的な産業であり、男たちは逮捕される心配がないので、これらの男性は自由で安全に売春店に入り、そこで働く女性を見下したり、あざけったり笑ったりすることを楽しんでいる。あるいはもっと悪いこともある。彼らは予約を取り、ワーカーをレイプしたり暴行したりする。
労働者の人権は合法化された売春においても守られていない(セックスワーク派のコミュニティが必死になってそう信じさせようとしているにもかかわらず)。もし本当に守られているとしたら、買い手の大多数は店への出入りを禁じられ、警察が絶えず呼ばれることになるだろう。売春を合法化することは進歩的ではないし、それが存在する社会では、 すべての人がそれによって傷っけられるのだ。

?旧ソ連・東欧の女性たち、とりわけルーマニア女性の悲劇……1990年前後におけるソ連・東欧の資本主義化によって、これらの国々の経済が崩壊し、国家福祉が一掃され、貧困が蔓延し(国民の半分前後が貧困層になり、貧困層の60〜80%は女性)、生活できなくなった女性たちをターゲットにして、人身売買組織が女性たちを大量に西欧に連れて行った。ちょうどそのタイミングと符合する形で、ヨーロッパの西側諸国で次々と売買春が合法化されていった(オランダ、ドイツ、スペインなど)。また、形式的には禁じられているが実質的に禁止されていない国々(イギリス、イタリア、ベルギーなど)も受入国となった。
とくにひどい被害を被ったのはルーマニアである。国家統計研究所によると、ルーマニアには1900万人の国民がいるが、そのうち600万人が国外で暮らしており、850万人が貧困の危険にさらされている。過去15年間に150万人以上のルーマニア女性が人身売買されて国外に出た。これは生殖可能年齢の女性人口の約4分の1に相当する。

2、北欧モデル国の状況

以下に2つの証言を紹介する。いずれも、APP国際情報サイトにアップした資料にもとづいている。
?最初の北欧モデル国スウェーデンで起きた大きな変化……ストックホルムでセックス購入禁止法を執行する売買春課のスウェーデン人警部シモン・ヘツグストレームの証言から。たとえば、「北欧モデル法によって、売り手の女性がより危険になったという説」に対して、ヘツグストレームは以下のように答えている。
しかし、そんなことはまったく起こっていないときっぱり断言することができます。私たちの政府は2010年に評価をしました。一流の弁護士であり最高司法部議長のアンナ・スカルへドさんが率いていたのですが、その結果、売買春における女性への暴力が増加しているという証拠はないとの結論に達しました。さまざまな証言から明らかになったことは、スウェーデンでは売買春の中にいる女性の方が実際により安全になったということです。なぜなら法そのものが買春者にプレッシャーを与えているからです。
スウェーデンの文化や文脈、そしてこの法律の規範的な影響を理解しなければなりません。この法律が施行されてから20年が経ち、社会全体に影響を与えています。セックスを購入することは、今では逮捕される可能性のある最も恥ずべき犯罪の一つとなっています。それが公になれば、仕事も家族も社会的ネットワークもすべて失う危険性があります。
買春者は、自分は法律を破るリスクを犯しているのに、これらの女性がいかなる形態の罰のリスクも負わないことを知っています。彼らは、電話一本で警察が駆けつけることを知ったうえで行動しなければなりません。つまり、女性が自分の身に何のリスクも及ぶこ となく警察に通報できることを知っているからこそ、買春者の振る舞いに圧力がかけられているのです。(編集の都合により、一部省略した。「かけはし」編集部)


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