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    かけはし2021年2月22日号

「時間規制対象外」の過労死最多業種


労働時間上限規制とトラック運送業の現状

宮城合同労組委員長 星野憲太郎

「逆説」がなぜ生じたか
 
 昨年4月から中小企業も含めて、年間時間外労働と休日労働を合算して720時間に上限規制された。ところが、「今は上限規制がなく、2024年4月から年間時間外労働が960時間に規制が予定される」という別世界の業種がある。それは、毎年の過労死の発生数が一番多い、トラック運送業なのだ。
 厚生労働省により公表された、2019年の「過労死等の労災補償状況」によれば、道路貨物運送業の脳・心臓疾患による過労死認定の件数は、29件であり、各業種の中で最も多く過労死認定を受けている(第2位が建設業の5件)。時間外労働上限規制には脳・心疾患発症による過労死認定基準である「時間外労働複数月平均80時間」がそのまま採用されており、その際トラックドライバーの過労死が意識されていたのではないか? 過労死が最も多い業種が「働き方改革」の時間外・休日労働の上限規制から外されるという逆説がなぜ生じたか?

トラック運転手から労働相談

 宮城合同労組で取り組んだトラックドライバーからの労働相談は、この半年間で4〜5件を数える。
内容は、コロナによる業績悪化を理由とする解雇、長年続いた残業代不払いなどである。解雇されたドライバーに関しては団交決裂し仙台地裁提訴して闘い、2月に解雇撤回と職場復帰をかちとったばかりである。このドライバーの賃金は労働時間ではなく、目的地と1回往復して何万円という計算が行われ、請負代金に等しいものであった。昨年夏まで社長に労働時間管理の概念がなかったが、団交と裁判を通して労働時間による賃金計算を確立させた。
次に現在残業代不払いで労働審判を申し立てている別の例を述べる。この運送会社のドライバーの賃金は宮城県の最低賃金173・3時間分を基本給月額として、これにコース手当、調整手当を加算して成り立っている。これまで会社は労基法37条の割増賃金を支払ったことがない。コース手当、調整手当の本質は「取り分」であるから労働時間との関連性がない。
組合の割増賃金支払い要求に対して会社側弁護士は、「コース手当が時間外手当と休日労働手当の性格を有し、調整手当が深夜労働手当の性格を有すると就業規則に記載しているので問題がない」という説明を団交で行った。また社労士は、「36協定には月の時間外労働の上限時間を102時間と記載しているが運送業には、一般企業のように45時間の網も、80時間の網もかかっていない」と開き直った。
過去に、佐川急便のドライバーは労働時間で賃金が決まる労働者ではなく、集荷及び配達の荷物の度合いで「取り分」が決まる請負人であった。会社とドライバーとの間に使用従属関係があると認定されるまで相当の時間を要した。
歴史的に、労基法の適用が遅れていたトラック業界に対し、労基署は全国トラック協会などを通じて労働時間の改善の前に拘束時間の改善指導を行っているのが現状だ。それは、拘束時間について「1日 原則13時間以内(最大16時間) ・15時間超えは1週間2回以内 ・1カ月 293時間以内 ※ 労使協定があるときは1日の拘束時間16時間」という内容である。2024年4月から年間時間外労働が960時間に規制されても、一般企業よりも240時間多く、しかも一般企業と違って休日労働に規制がかからないという落差はさらに継続していく。

ドライバーの人権回復を


過労死が一番多く出ている業種に対する労働時間規制が一番甘いのは、労働行政が運送業の険しい労働実態に歯が立たないからである。中小運送業のドライバーと共に闘うことを通して人権を守り、運送業の労働環境改善に役立っていきたい。


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