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韓国は、いま    かけはし99.12.13号より

まだ国家保安法に未練があるのか

改正論の国民会議議員と存続論のハンナラ党議員の討論

 国民会議が通常国会で国家保安法を改正することにしたことで、この問題が争点に再浮上した。ハンナラ党は反対の立場であり、自民連も改正に消極的だ。在野の各人権団体は改正支持と完全撤廃論とに分れている。国民会議イ・サンス議員とハンナラ党キム・ヨンガプ議員を招請して賛成論、反対論を聞いた。討論は11月18日午前「ナウヌリ」がインターネットおよびPC通信で生中継する中、一時間にわたって行われた。(「ハンギョレ21」編集部)



変える必要があるのかないのか

司会 改正推進の背景を話してほしい。
イ・サンス議員 南北間の情勢が変化している。国連への加入を同時に行い、南北間の基本合意書が署名され、金剛山観光も行っている中で、単純に政府を自任しているということだけで反国家団体と見るのは問題がある。法自体が人権侵害の素地が大きい。国連の人権機構も廃止せよ、と言っている。
キム・ヨンガプ議員 国家保安法は北韓が存在しているから、ある法律だ。北韓の対南戦略から体制を守るための国民的意志の表現が国家保安法だ。過去に人権弾圧の事例がありはしたが、国民の政府が発足してからは、そんなことは、ほとんどない。つまり法自体ではなく、法を執行する運営の問題だ。北韓は共産赤化統一に、わが国家保安法が障害になると考え、廃止を主張する。そのために国家保安法は一層、必要なのだ。
 法自体が問題だ。七条の讃揚、鼓舞・同調罪は絶えず論争を生んでいる。場合によっては北韓のサーカス団が南韓で公演するとき「ああ、上手だ」と言っても北韓構成員の行動を讃揚したから法に触れるという恣意的解釈の可能性がある。
キム 北韓は変わっている。だが対南赤化戦略は変わっていない。西海(黄海)での交戦があったし、潜水艦の侵入もあった。いまもわれわれの知らない間にどれほど多くのスパイが活動しているか知れない。国連・人権委員会が国家保安法の廃止を勧告したと言うけれど、その機構は死刑制度も廃止せよと言っている。彼らの主張を受けいれたことは、われわれは一度もない。ただ参考にするだけで……。
 米国と犯罪人引き渡し条約を締結したが、米国では国家保安法の事犯は犯罪とみなさないために引き渡しはしない、と言っている。これだけを見ても外国で国家保安法をどう考えているかが分かる。北韓が対南赤化戦略を放棄していないのは事実だ。だが南北間の状況は多様な変化もあり、変わらない部分もあるのだから、変化した部分については変化に合わせて法を改正すべきであり、変化していない部分に関しては安保の必要性があるのだから伸縮して対処すべきだ。
キム 北韓サーカス団の公演を上手だと言えば讃揚鼓舞罪になるというのは余りにも拡大解釈であり、本質の歪曲だ。そういうことで処罰したことがあるか。以前、北韓公演団が来たとき拍手を送った。実によかった。だから、こういった問題で処罰をしないために南北交流協力法がある。こんなことまで結びつけて讃揚鼓舞罪を問題があるというのは行き過ぎだ。
 論理的に、そんな解釈も可能だという話にすぎない。だが撤去民(強制的に居住場所を奪われた人々)たちがうっぷんをぶちまけて「キム・イルソンよりひどい奴らだ」と言って拘束されたケースがある。南北交流法があるから問題はないと言うが、かつて全く同じに北韓を訪れたイム・スギョン氏とパク・チョロン氏(当時、青瓦台補佐官)の場合、イム氏は拘束され、パク氏は長官(大臣)になった。このように法が恣意的に執行されてきたことをさておいて、いまや南北交流協力法があるから大丈夫だ、と継ぎはぎ式にやるのでは困る。
キム きのうニュースを見ていると、ある広告会社がキム・ジョンイルをモデルにすると言っていた。現在、保安法があるのに、それが許可されたとのことだ。キム・ジョンイルはわれわれの敵であり、いろいろと悪い印象をもっていたが、チョン・ジュヨン(現代グループ)会長が行って、キム・ジョンイルは「礼儀正しい若者」だと全く異なる面を示し、いまやモデルにまで出てくることになった。
 そうであれば、育ちゆく子どもらが北韓をどのように考えるか心配になるが、いずれにせよ現行法はそこまで許容する。だから現行法は問題がない。スム・スギョン氏は許可を受けずに行ったのだから潜入・脱出であり、パク氏は政府当局者として国法にしたがって行ったのだ。

北の国家を認めるのか認めないのか

司会 条項別に探ってみよう。国家保安法第二条は、政府を僭称したり国家を変乱することを目的とする国内外の結社、または集団として指揮統率体制を備えた団体を反国家団体と規定している。国民会議は、ここで「政府を僭称したり」という個所を削除しようとしているが。
 キム・ジョンイルの写真を広告物に利用するのも許容されている雰囲気ではないか。だからいまは北韓が政府だと称しているという理由によって単純に処罰する時代は過ぎ去った、ということだ。北韓がわが国の民主秩序を破壊させようとし、国家を変乱しようとするときのみ、反国家団体と見るべきだ。
キム 大韓民国は正統性を持った唯一の国家だ。万が一にも北韓を事実上の政府と考えるなら、二つの国家が存在することになる。これは憲法違反だ。
 国家保安法存置論者たちは北韓をカイライ集団と規定しているが、わが憲法は平和的な統一を志向する、となっている。平和統一をするということは北韓を相手方と認めるということだ。
キム 国連に同時加入したがゆえに政府と見るべきだというのは誤りだ。国連に加入しようとすれば国家の資格がなければならないのはそうだが、これと当事者間の相互承認は別問題だ。アラブ国家とイスラエルはともに国連に加入したけれども相互承認したのではない。わが国と北韓も国連に加入はしたものの双方の間にいまなお承認はない。国際法上の実体は国家だけではない。南北韓は準戦時状態にある。したがって、われわれは中央政府の性格の交戦団体であって、北韓は地方政府の性格の交戦団体と見るのが妥当だ。
 南北基本合意書でも両者が大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国の名前で署名した。
キム 南北基本合意書は国家と国家の関係ではない。統一を期す過程で暫定的に生じた特殊関係だと南北関係についてダメを押した。
 (合意書のコピーを提示して)南と北は相手方の体制を認定し尊重すると書いている。相手方の体制を認定・尊重するというのは相手を認めてやっていくということだ。
キム (自身も持ってきたコピーを探しつつ)それは何と言うか……もう一度、続けて読んでごらんなさい。
 第一条はそうだ、ということだ。
キム 私が説明しよう。南北基本合意書の序文で見ると、双方の間の関係は国と国との関係ではない「統一を志向する過程で暫定的に生じた特殊関係」となっている。それを前提に基本合意書一条が、南と北は互いに相手方の体制を認定し尊重する、とした。ここで体制というのは、さっき言った交戦団体を意味する、ということだ。合意書の締結当時、南北の代表が基調演説を行いつつも、南北韓は相手方を国家と認定しはしなかった。
 いまは北韓の存在それ自体だけをもって反国家団体と言うのではなく、南韓の実体を変乱する実質的行動があるとき、反国家団体と考えようということだ。
キム この場を借りて一つ言っておきたい。過般「国の安保を憂える国会議員の会」というレベルで保安法改正に反対するとの署名を出した。そして、さまざまな人権団体がこれを非難するファックスを送った。さらには、参加した議員らの党支部事務所を襲撃するからとして警察がものものしく配置された。ソウルのある党支部は窓ガラスが壊れた。自分の人権は人権で、国会議員の人権は無視してもいいのか。社会の雰囲気が余りにも強圧的で暴力的になっている。
司会 国家保安法の改正に反対するという理由で弾圧を受けているという意味か。
 仮にもそういうことがあったのであれば、本当に許しがたいことだ。だが過去に進歩的人士だったと言って罵倒し、アカ攻撃で一方的に決めつけるようなことも、なくさなければならない。

金日成万歳を叫ぶと危険なのか

司会 次は第七条、つまり讃揚・鼓舞条項に移ろう。
 暴力を伴わない単純な宣伝・扇動が国家安保に脅威となるのか。自由民主主義国家では市場の自由が許容されたように、思想の市場の自由も許容される必要がある。万一、突拍子もない主張をする人がいたなら、思想の市場で虚構性、とんでもなさが暴露される。わが国は、そのぐらい成熟した。
キム ロマン的発想だ。暴力がなくとも、いくらでも宣伝・扇動し、讃揚することができる。光化門の交差点でキム・ジョンイルの写真を掲げて讃揚しても、立ち小便を軽犯罪で処罰する程度に扱うには時機尚早だ。また一つ問題はスパイ天国となることだ。スパイはテロだけをするのではなく、北韓を讃揚・同調するようにし、北韓体制を認定するようにする活動を行う。
 光化門交差点でキム・イルソン将軍マンセーを叫んで旗を振る人間がいるとしたら、おかしい奴だと取り扱われるだろう。そうだとしても国家安保が阻害されるわけでもない。その行為は(他の法規によって)処罰することもできる。いまは北韓の主張に対して理論的にだれかが賛同する話をしたからといって、わが社会が揺らぐ程度ではない。だから団体の名前でそんな体制の転覆的扇動を行う場合(利敵団体構成)だけ処罰すればよい、というのが、われわれの立場だ。
キム 国家保安法違反の事犯の90%以上が7条の讃揚・鼓舞罪を侵した人だ。そんな状況で、その条項をなくすというのでは法全体を廃止するのと同じであり、なぜ抜け殻だけを残そうとするのか。国家保安法の中で処罰できるものを全部取り去って、いったい何を処罰するというのか。
 キム議員は共産主義にうちかつ道は共産主義を阻み閉鎖することだと考えているが、私は開放してひき入れることが、うちかつものだと思う。西独も1968年に共産党を合法化した。
キム われわれは西独なのか。では西独は統一されたが、なぜわれわれはできなかったのか。保安法のゆえに統一ができないのか。今日、社会の雰囲気がスパイをつかまえられないようにしている。ソ・ギョンウォン氏事件を見ろ。何年か過ぎると、そのスパイから捜査過程での拷問だとか人権侵害だとか言って問題にされている。現行国家保安法も植物法同様になっているのに、さらに改正すれば公安要員はスパイを捕らえないだろう。つかまえても後患を恐れるだろう。
 私も、スパイは確かにいると思う。だが刑法のスパイ罪によって処罰することができる。北韓からやってきて北韓を讃揚するスパイがどこにいる。

なぜ「不告知罪」が存在するのか

司会 不告知罪の条項を討論しよう。不告知罪は国家保安法が規定した犯罪の嫌疑を知りながらも申告しない人間を処罰する条項だが。
 唯一、国家保安法違反の事犯だけ、不告知罪をおいている理由が分からない。内乱罪にも不告知罪はない。アボジ(父)が子息を申告せよというのも反倫理的なことだ。良心の自由の中で最も重要な自由は沈黙を守る自由だ。自分が判断して告発をしない、という沈黙の自由は尊重されなければならない。
キム 92年に改正され、金品の授受、讃揚、鼓舞、通信、便宜提供に関連した不告知罪は削除された。大韓民国の安全を危険にさらし、国家権力に致命的な危険な事態をもたらす恐れがある重大な犯罪であるスパイ罪だけが残ったが、統計を見ると法の改正以後、今日までこの条項が適用されたのは5件だけだった。改正法は親族について免除、減免することにした。
司会 いくつかの人権団体は改正ではなく、完全廃止を主張している。廃止はなぜダメなのか。
 本質的に国家保安法は南北間の問題ではなく南南間の問題だ。つまり分断体制にあって利益を得ている既得権勢力があり、分断のゆえに苦痛を受け被害に遭った人々もいる。わが社会の2つの大きな勢力だ。だから私は最善を主張しながらも、次善に満足する姿勢が必要だと思う。現在、保安法の廃止に反対する相当な勢力がいるために、すぐさま廃止するのは困難で、いったんは改正するのが良いだろうという考えだ。(「ハンギョレ21」第285号、99年12月2日付、司会、整理、パク・チャンシク記者)


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